日本外人部隊 作:揚物
グラ・バルカス帝国本土での陸戦は塹壕網や要塞など、侵攻が遅れた間に用意された対策にミリシアルムーの連合軍は完全に停止。
そのため航空機による軍事工場などを主とした爆撃に切り替え、最悪な持久戦に陥ってしまった。
確かにグラ・カバルの演説によって戦意の低下や降伏と、民間人の抵抗が減るなどしてだいぶ楽にはなっているが、如何せん海路での物資輸送は困難を伴う。
「突破するにはさらなる物資の集積が必要です」
「航空爆撃するにはまだグラ・バルカス帝国の航空機が多すぎる」
「なんとかベータ3爆撃機の改良型を送る予定だが、まだ十分な生産がな」
ミリシアルとムーも周到に建造された要塞には手を出しづらく、そしてここを突破されると帝都に到達するとして戦意も非常に高い為、被害が増える事を容認しきる事は出来なかった。
その為航空優勢を維持する為に物資やパイロットの増員に前衛基地の強化など、連合軍は苦労している。
そんな中、日本は現在手出しはしない。民心慰撫によって敵対的行動を取らなくなったとはいえ、やはり敵対国家であることは間違いがない。
「では、また新たに農地を耕す時は連絡してください」
外人部隊は農機をもって畑を広げ耕し、水路を掘るなど徹底してグラ・バルカス帝国民への配慮を行う。
「ありがとうございます」
頭を下げるグラ・バルカス帝国民、ダイダロス平原基地で許可されている範囲の情報ではあるが、上下水道と道路の改良や電気の敷設などどちらに付いた方が利が大きいか、例え忠誠心が強くても生活が出来なくてはどうにもならない。
だからこそ、グラ・カバルに演説をさせた上で民心慰撫を行い、連合側に着かずとも中立を保つように手を尽くしている。
ダイダル平原基地での技術開発、それがある種の到達点に達した。
ムーから持ち込んだ資材を使い、僅か240時間で寿命を迎えるエンジン、しかし紛れもなくジェットエンジンであり、初歩的な参考情報から技術を積み上げ、その驚異的な進歩を見せた。
だが、これから先は一足飛びに進む事は出来ない。機械工学と航空力学の模型と実験の力技で到達できるのはここまで、ここから先は電気電子工学等複合的に必要になってくる。
ジェットエンジンを搭載する為の航空機の設計も進めているのだが、こちらはなかなか進んでいない。
エンジンの推力が絶妙な所で、双発なのか単発なのかでもめており、新しい飛行機の開発は難航していた。
「だから、推力を求めるなら双発が」
「メンテナンスコストだってあるのだ。 単発なら」
「胴体内部より翼下に装着したほうが載せ替えが容易で」
「いや、胴体内部にした方が速度効率が良いとデータが」
多様な知識を得ているがために、どうすればよいか混乱が生まれてしまい、本来急がなければならない状況でありながら開発が停止していた。
日本としてはまず換装及び整備が容易な翼下吊り下げ式を推奨し、メッサーシュミットMe262を参考にするように提案する事とした。
エンジンの信頼性の低さから一基が問題を起こしても機体を損失することなく着陸し、問題の確認と改良をすることができる。
「まずは、十分なエンジンのデータを取る事が大事です。 未完成では単発にすることも胴体内部に入れる事も、結果的には無駄になってしまいます」
模型及び図面でメッサーシュミットMe262を見せ、エンジンの交換の容易さによるテストの重要性を説明、とはいえムー技術者の意見も尊重し単発航空機の開発も並行する2体制とすることを進めた。
3式中戦車、日本が提供しムー国では曲がりなりにも量産が始まっている。以上の事から新しい戦車の開発を行う事を提案し、新たな技術者がダイダル平原基地に集まってきていた。
目指すところは61式戦車ではあるのだが、まずは基礎技術として3式中戦車の改良と改善に取り掛かり始めた。
「57mmから75mm砲へ換装するための開発を進めましょう」
「しかし、我々には105mmカノン砲があります。 搭載するならそちらのほうがよいのでは」
ムーの技術者は自国にそれ以上のものがすでにあるという。
確かに存在するが、砲自体の強度も低く無駄に大きい。その上切削精度が悪い為、効率が悪く威力はかなり減衰してしまっていた。
「切削精度が低すぎます。 基本から開発が必要ですので、簡単にはいかないでしょう」
前線から送り返されてくる3式中戦車、それをダイダル平原基地にまで持ち込み、問題点の改善など手が加えられている。
おそらく終わる頃にはグラ・バルカス帝国との戦争が終わっている可能性が高い。しかしそれでも戦後の事を考えてやらないわけには行かなかった。