【リレー小説】 この紅魔の乙女達に恋愛を!   作:勾玉

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最終話の2話同時投稿です。こちらは2話目です。


最終話 この紅魔の乙女達に恋愛を!後編【執筆:勾玉】

【めぐみん視点】

 

 

杖で殴りつけたゆんゆんが盛大に床を転がって壁に激突する。

そして、うつ伏せに倒れたまま数秒間制止した。その後、片頬を抑えながらゆっくりと体を起こした。心なしかプルプルと震えているような…

「ななな殴ったわね!!お父さんにもぶたれたことがないのに!!」

「うるさいですね。人の男を寝取ろうとする寝取りビッチには当然の報いです」

「ねねね、寝取りビッチ!?いきなり人の部屋に入ってきて何言って…むぐ!?!?」

 

私は、とりあえず動揺していて隙だらけのゆんゆんに飛び掛かって、持っていたアクアの水が入った瓶の口をゆんゆんの口に突っ込んで無理やり水を飲ませる。

 

「なにす…んぐぐぐ、ゴクリ…がぼぼぼぼ…」

ゆんゆんが少し溺れたような状態になりながらも、アクアの水を飲み込んだようだ。

「…よし」

「ゲフンゲフン……ケフっ、ケフっ……はぁ…はぁ…」

「大丈夫ですか?ゆんゆん…」

「………」

ゆんゆんはしばらく乱れた息を整えていたが、やがて顔を私のほうに向ける。光が失わた彼女の瞳が私を捉える。それは、惚れ薬で意識を奪われたカズマの瞳のようだ。

「…ゆんゆん、ま、まさか、アクアの水では効果が無いのですか…」

「………あんたねぇ、」

 

ゆんゆんは、そう前置くと…

 

「あんたねぇ!!!人の部屋にいきなり入ってきたと思ったら突然壁まで吹っ飛ぶくらい殴ってきて何してんのよ!ちょっと走馬灯みたいのが見えたわよ!その上、何、なんなの!?いきなり人の口に変な液体突っ込んでてきて私を溺れ殺す気!?ってか何よこの液体!!人にむりやり何を飲ませてくれてんのよ!いくら勝負に勝ちたいからって不意打ちなんて最悪よ!!カズマさんまで私の部屋に連れてきて何なの!?いじめなの!?」

「カズマを連れてきた?私が…?」

「そうでしょ!いつの間に連れてきたのよ!しかも私が変な液体で溺れかけてる姿とか見られたじゃない!もう最悪よ!!!」

「…」

私はその場にへたり込んだ。惚れ薬の支配下にあった間の記憶が飛んだということは、アクアの水が惚れ薬の効果を打ち消したということだろう。良かった。本当に良かった。

 

「本当に良かった…」

「全然よくなあああああい!!!」

ゆんゆんが涙目になりながら私の首をぎゅうぎゅう絞める。

 

私達のそのやりとりを唖然と見ていたカズマは気を取り直したようで口を開いた。

「お、おい!めぐみん、いきなり俺らの部屋に入り込んできて何やってんだ!!」

ゆんゆんは、私の首を絞める手を緩めてカズマの方を向く。

「ね、ねぇめぐみん…カズマさん、俺らの部屋とか言ってるけど、ここ、私の部屋よね…?っていうか、カズマさんが、なんか死んだ魚のような眼をしてるんだけど…あれ?それはいつも通り?いやでも、ちょっといつもと雰囲気が違うような…」

「…ゆ、ゆんゆん、とりあえず、私の、首から、手を、放して、ください…」

私がそう言いながら、ゆんゆんの手をぺちぺち叩くと、ゆんゆんは、ハッと気づいたように私を解放する。

 

「ゲフンゲフン…ふぅ…」

解放された私は一息ついてゆんゆんに軽く説明する。

「カズマは今、惚れ薬の効果で意識を奪われた状態です。あなたも先ほどまでそうだったようなので、私がこの水を飲ませて正気に戻しました」

「…ほ、惚れ薬!?え?でもそれって1人で飲む分には経験値を得るだけのやつよね…それはカズマさんにあげたはず…」

「説明は省きますが、あなたも惚れ薬を飲んだのですよ」

「で、でも、惚れ薬の効果は永続しないのよね…??」

「残念ながら、ウィズの説明によると、惚れ薬の効果を打ち消す薬を飲ませることができなければ、間もなくカズマの意識を戻すことができなくなります」

「そ、そんな…」

ゆんゆんが顔を青ざめさせる。

 

私達のやり取りを見ていたカズマは、はぁ、とため息を吐き、その光が宿っていない瞳をゆんゆんに向けて口を開く。

「なぁ、ゆんゆん、俺を元に戻そうと思っているみたいだけど、今の俺ならゆんゆんと一生一緒にいてやれるぞ?ゆんゆんを独りぼっちになんてさせないぞ」

「……めぐみん、私、カズマさんがこのままでも別に問題ないんじゃないかって思い始めちゃっているんだけど」

「おいこらビッチボッチ。ちょろいにもほどがあるだろう」

「そ、そうよね…今のカズマさんは薬でラリッてるだけだよね…って、ビッチボッチはやめてよ!」

 

ゆんゆんが声を荒げる横で、私はどうやってカズマに薬を飲ませるかを考えていた。アクアとウィズとは手分けしてカズマとゆんゆんを探していたためここにはいない。カズマに奪われた魔力はウィズのドレインタッチで回復しているが、この場面で爆裂魔法が役に立つとは思えない。

 

「ふぅ…」

私は一息つくと、カズマに向けて優し気な表情を向けて、説得を始める。

「カズマ、一緒に帰りましょう。確かに私はカズマと部屋に2人きりになるとちょっと緊張してしまって、雰囲気に耐えられずに、逃げてしまうこともありました。思わせぶりなことも沢山してしまったかもしれません」

 

私はカズマをハグするように、両手を広げてカズマを迎えるようにして、

 

「一緒に帰りましょう、カズマ。私も思わせぶりなことをするのは止めることにします。今夜…今夜こそ、私の本当に伝えたいことをあなたに伝えます。あなたも私の言葉をずっと待ってくれていますよね。今夜は部屋で待っていてくださいね、私も勇気をだしてあなたに全てをさらけ出すことにしますから」

 

カズマは私を真剣な表情でじっと見る。

「カズマ、これを飲んで帰りましょう?今日は、今日こそはちゃんと私の想いを伝えますから…」

カズマが口を開く。

「めぐみん…」

 

 

 

 

「…ぺっ!!」

「あっ!!」

 

こここ、この男…人が下手にでていれば…!!!

「ゆんゆん!パラライズです!この男を強制的に麻痺させて、その間に薬を口に流し込むのです!」

「い、いきなり攻撃的になったわね、めぐみん…ま、まぁいいわ。おそらくそれがベストよね…」

ゆんゆんは呆れたような口調でそういうが、スッとカズマに視線を向けて魔法の詠唱を開始する。

 

が…

 

「あ、あれ…?」

 

ゆんゆんは詠唱を途中で止めてしまい、自分の両手を見下ろした。

 

「ど、どうしたのですか!?」

「めぐみん、私、魔力切れみたい…」

「…えぇ!?何でこの大事なところで…って、まさか…」

私がカズマの方を見ると、カズマはニヤニヤとこちらを見ている。

「フッ、こんなこともあろうかとゆんゆんと一緒にいる間に魔力をドレインさせてもらったのさ」

…この男!何でこういう時に限ってやたら機転が利くのだろうか!

 

「仕方ない、アレを使うしかないようですね…」

「めぐみん、あれって…?」

「ゆんゆん、耳を貸してください」

そういって、耳を傾けるゆんゆんに私はゴソゴソと小声で告げる。

(ゆんゆん、カズマは今ゆんゆんのことで頭がいっぱいです。カズマの隙を作るにはゆんゆんの色仕掛けが効果的なはずです。ゆんゆんがカズマにパンツを見せて、それにカズマが夢中になっている間に私が解呪の水をカズマに飲ませます)

みるみるゆんゆんの顔が赤くなっていく。そして、私の話を聞き終わった瞬間、私を睨んで抗議する。

(ちょっと!それなら二人で掴みかかって組み伏せるとか、他にやり方があるでしょ!)

(いえ、この男はダクネスみたいに脳筋な相手に対してめっぽう強いのです。力技でいっても搦め手であっという間に無力化されます。搦め手には、搦め手を、です。さぁ、ゆんゆん!見られて減るもんじゃありません!ぴろりといきましょう!)

(何よぴろりって!私ばかりずるいわよ!それならめぐみんも一緒に…)

 

 

「『スティール』」

 

そう唱えた次の瞬間、カズマの手の中にはゆんゆんのパンツが握られていた。

 

「いやあああああああ!!」

ゆんゆんがスカートを抑えて叫ぶ。

 

「ま、まさか色仕掛け作戦を読んで、ゆんゆんがパンチラできないように事前にパンツを盗んだというのですか…この男…なんという読みの鋭さ…しかし、不十分です。むしろ、パンツを取られたことによってゆんゆんの色仕掛けは更に威力を増すのです!さあ、ゆんゆん、カズマに向けてぴろりと…」

「できなわよばかあああああああああ!!!!」

 

カズマはゆんゆんのパンツをごそごそとしまいながら私に向かって話し出す。

「なぁ、めぐみん、どうやったら諦めてくれるんだ?」

「な…パンツをしまいながら言うのがムカつきますが…このままではあなたの意識は戻らないんですよ?諦めるわけないでしょう」

「別に俺がこのままだって、誰も困らないだろ?」

「困ります!困りますよ!私が、困るんです!」

「ゆんゆんと一緒ならこれからもお前らの冒険に付き合ってやってもいいし」

「そういう問題じゃないんです!…そういう問題じゃ…」

「はぁ…」

私が食い下がるのに対してカズマはため息をついた。

 

「なぁ、めぐみん、いい加減にしろよな」

カズマの一言が私の胸を刺す。

モンスターから受ける強力な打撃なんかよりも、彼の言葉は鋭く私の心をえぐる。

「あ…あのですね…カズマに戻ってもらわないと、私はとっても辛くて…悲しくて…」

「めぐみん、改めて言ってやらないとわからないようだから言うけど…」

 

カズマは少し頭をかいた後に、改めて私を真っすぐに見て告げる。

 

「"邪魔"だ」

 

…痛い。

 

「…うぅぅぅ」

私は胸を抱えて、その場にうずくまっていた。大好きな人からの言葉が私の胸を締め付ける。

 

「め、めぐみん、大丈夫?」

ゆんゆんが私の脇にしゃがみ込んで私の背中をさすって言葉をかけてくれた。

 

カズマがこのままだなんて絶対に嫌だ。耐えられない。

 

と、私は抱えた自分の胸にしまっていた冒険者カードの感触に気づく。

 

…これしかない。

 

私は胸元から冒険者カードを取り出す。

「め、めぐみん、何しようとしているの?」

隣のゆんゆんが心配そうに私に問いかける。

しかし、私にはその問いかけに答える余裕は無く、ただ、カードに表示されているパラライズの文字を睨む。

 

「…ふぅ」

 

そして、大きく息を吐きだして決心する。

 

「ちょ、めぐみん!?あなた、本気!?」

ゆんゆんが驚愕の声を上げる。

 

もう、これしかない。爆裂魔法威力向上のために溜めたスキルポイント。

これを使えば、パラライズの習得が可能だ。それでカズマを麻痺させることができれば薬を飲ませることはたやすいだろう。

 

私はカードにゆっくりと指を下す。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

途中で指が止まった。

私の意志とは関係なく。

私は手首を掴まれていた。

 

私の手首を掴んで、動揺していたカズマの瞳には、僅かながら意識の光が灯っていた。

 

「お前、マジでそれは止めろよ」

 

私はただ、呆然と彼の瞳を覗き込む。

 

間もなくして、カズマの瞳から光が消えていく。

 

「…あっ」

 

カズマは私から冒険者カードを奪って自分のズボンのポケットに入れてしまう。

「あぶねぇ。危うく麻痺の呪文で動きを止められるところだった…」

カズマはそう言って私から距離を置く。

 

でも、確かにさっきの一瞬、私はカズマの瞳に光が灯るのを見た。

…そこに、手段を見出した。いや、私はどうしてもその手段に賭けたかったのだろう。

 

私は隣にいるゆんゆんの腕をつかむ。

「め、めぐみん!?」

「いったん外に出ます」

そう言って、ゆんゆんの腕を引きながら部屋から駆け出す。

 

「めぐみん!ゆんゆんを返せ!」

後ろからカズマが追いかけてきた。

 

「め、めぐみん!突然どうしたの!?」

私と並走しながら、ゆんゆんは私に問いかける。

「ゆんゆんにやってもらいたいことがあります」

私は宿の外に向かって走りながら、ゆんゆんに向けてそう言った。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ゆんゆんの泊っている宿屋から少し離れた公園。

そこまでの道のりで、私がゆんゆんに作戦を伝えたところ…

「か、カズマさん…!ここから早く離れてください!」

ゆんゆんは私の腕を振り切って、追ってくるカズマに顔を赤くして抱きついた。カズマはそれを受け止めてゆんゆんに声をかける。

「どうしたゆんゆん、あの頭のおかしいやつは何しようとしてるんだ!?」

「…めぐみんが…めぐみんが、この街のど真ん中で爆裂魔法を…って、ちょちょちょっと、カズマさん!どさくさに紛れて胸を揉もうとしないでください!!」

 

私はそのやりとりにちょっと青筋を立てながら告げる。

「ゆんゆん、よくも逃げてくれましたね。それとカズマ、あんまりゆんゆんにくっつかないでください」

私のその言葉にカズマは冷徹な目線をよこして返答する。

「おい、めぐみん、こんな街中で爆裂魔法を撃つなんて馬鹿なことは考えてないよな?まさか俺とゆんゆんを巻き込んで自爆しようとか、そんなじゃないだろうな?やるなよ…?絶対やるなよ?」

「やるなやるな、と言われれば、やらない紅魔族がどこにいるでしょうか」

「これだから頭のおかしい種族の中で一番頭のおかしいやつはああああああ!!!」

カズマは頭をわしわしとかきむしる。

「おい、めぐみん!これ以上、俺とゆんゆんの仲を邪魔するんじゃない!」

カズマが私に向かって叫ぶ。

「邪魔…邪魔ですか…」

 

私はそれを聞いて。

「クックック…」

紅魔族っぽく、私っぽく、笑ってやるのだ。

 

「私はあなたと出会った当初から、ずっとあなたの邪魔をしてきましたよね」

「な、なんだよいきなり…」

「爆裂魔法しか使えない私は、あなたが思い描いていた冒険にとってはずっと邪魔な存在だったでしょう。私はそれを自覚していながら、文句をいいながらも私をパーティに残してくれるあなたにずっと甘えていました」

そう、彼にとって私が邪魔だなんて今更だ。

「あなたを何度も散歩に連れ出して、魔力切れを起こした私をいつも背負って帰る役目を押し付けて…本当に、私は、あなたの邪魔ばかりしていましたよね」

「な、なに開き直ってんだよ…」

「きっと、これからも、私は、あなたが邪魔だと思うようなことを続けてしまうでしょう」

 

私は瞳からほろりと流れてきた涙をぐしっと拭う。

 

「でも、いつか、そんな邪魔な私であっても、いないと困ってしまうと、そんなあなたの人生に大きな影響を与えるほどの邪魔者でいてやりましょう!」

 

私はカズマに、真っすぐに杖をかざしてニヤリと笑う。

 

「私と出会ってしまったのが、あなたの運の尽きでしたね」

 

 

そして、私は目を閉じて、大きく息を吸い込み…

 

 

 

 

「黒より黒く…闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう…」 

 

「こいつ!!詠唱はじめやがったあああ!!」

カズマが叫ぶ。

 

「覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」

 

「ゆんゆん、呆けてないで逃げるぞ!!」

カズマがそう言って、その場から駆け出したようだ。

 

「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり…」

 

カズマとゆんゆんの気配がその場から消えても私が詠唱を止めることは無かった。

 

「万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」

 

私は杖を空に掲げ、開眼する。

 

「これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法…」

 

最大限の魔力を込め、彼に初めて爆裂魔法を見せたときに披露した詠唱をのせて、これまでの最大の破壊力をイメージした爆裂魔法を、解き放つ。

 

 

 

 

「『エクスプロージョン』ッッッッ!!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

【ゆんゆん視点】

 

爆裂魔法の破壊の光がアクセルの街の天を目掛けて昇っていく。

私はそれを確認しながら、カズマさんに手を取られて走っていた。

 

「あいつ、マジで街中でぶっぱなちやがった!」

前を走るカズマさんはその光を見て驚きの声を上げている。

 

と、カズマさんが突然立ち止まって私を庇うように抱きしめた。

急な抱擁に私は目を白黒させて、一気に顔を上気させる。

「かっ、かかカカカズマさんっ…!!いいい、いきなり何を…!」

「大丈夫だ!ゆんゆんだけは俺が守る!」

「…」

 

…あぁ、いつだったろう。私が恋愛小説で胸をときめかせた瞬間がここにある…

 

私の視界が涙で揺らいでいく。

私は恐る恐る、カズマさんの背中に震える手を回して抱き返す。

 

 

 

 

 

…やがて、破壊の光は射程範囲ギリギリの最高到達点に達して………空一面を爆炎で紅く染め上げた。

 

めぐみんの作戦の一環として、さっき私がカズマさんに抱きついたときに、私はカズマさんのポケットからめぐみんの冒険者カードを取り出して、全スキルポイントを爆裂魔法威力向上に使っていた。

 

 

 

それは小柄な少女から解き放たれたとは到底考えられない、暴力の顕現。

 

下手をすれば地表に届くのではないかという程の圧倒的な破壊力を世界に示す。

 

その爆風で、街の家々のガラスが割れる。

 

遅れて体の芯を震わす重低音と、まるで地震が起こったかと思わせる地響きがやってくる。

 

明らかに過去最高の爆裂魔法が、天に華を咲かせた。

 

 

 

私の涙が一瞬で乾く程の熱量が私とカズマさんを包み込んだ。

 

 

その熱を浴びて…

 

「やるなぁ、あいつ…」

カズマさんがぽつりとつぶやいた。

その瞳には意識の光が灯り、軽く頬を上気させて、とても、とても嬉しそうに瞳にその爆炎を映している。

「これは120点をやらないとなぁ…」

 

私はそんなカズマさんのとても嬉しそうな横顔を見て悟る。

 

 

あぁ…やっぱり、めぐみんは凄い。

 

どんな困難な状況でも爆裂魔法ひとつでひっくり返しちゃう。

 

めぐみんの本気は…全然違う。

 

 

 

 

私はめぐみんから託されたバックから、惚れ薬の効果を打ち消す水を取り出す。

 

「…カズマさん、薬の影響だったとしても…とっても素敵な夢を見れて、私は嬉しかった」

 

私は小さくそう言って、

 

口を開け放して爆炎に目を奪われているカズマさんの、

 

口の中に解呪の水を放ち…

 

 

 

 

めぐみんへのささやかな抵抗と、恋愛へのさよならの気持ちをこめて――――――

 

 

 

―――――彼の頬に触れるか触れないかほどのキスをした。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

エピローグ

 

【めぐみん視点】

 

惚れ薬の騒動から数日後…

 

ゆんゆんもカズマも無事に惚れ薬の支配から解かれて、今は日常を取り戻している。

 

そんな日常の中のとある朝、朝食後に私はアクアとダクネスと紅茶を飲みながら過ごしていた。

 

「それでね、カズマさんが私の高額なお酒を変なボタンの魔道具を使ってもってっちゃったのよ!それに気づいた私はカズマがいないのを見計らってカズマの部屋に忍び込んでお酒を取り戻したわ。ついでにボタンの魔道具も没収したのよ。これがまた面白い魔道具でね、でも、街中でぴこぴこ遊んでたらすぐに限度を迎えちゃったの」

なんというか…カズマが入手を喜んでいた魔道具の末路としてやたらとしっくりくる。

「おいアクア、勝手にボタンを持ち出して使ったらまたカズマに怒られて泣かされるんじゃないか」

「今回は、カズマさんが勝手に私の大事なお酒を持ち出したのよ。正義は我にありだわ!それにボタンに関しては、ちゃんとダミーを置いておいたから大丈夫よ」

「だ、ダミー…?」

「アクシズ教専用ボタンよ!これでカズマさんが魔道具だと思ってボタンを押すと、私に50票が入るってわけ!どうどう?素晴らしい作戦だと思わない?」

「アクア、なぜお前はそうやって自分から処刑台を上るようなことをするんだ…」

私は膝に乗せたちょむすけにベーコンを与えながらそんなやりとりをするアクアとダクネスを眺めていた。

 

「そういえば、あれ、結局カズマさんが全額払ったの?ほら、この前、めぐみんが街中で爆裂魔法の花火で遊んだことで、局地的に窓ガラスが割れてその被害に対する弁償金の請求が来たとかっていうアレよ」

アクアはゼル帝に朝食の豆を与えながら私に尋ねてきた。

「別に花火で遊んでいたわけではありませんよ。あの時はカズマの意識を取り戻すためにああする必要があったのです。それにガラス代の請求は全てあの悪魔のところにいってますから」

私のその話を聞いて、ダクネスが口にしていた紅茶を受け皿に置きながら疑問を口にする。

「どういうことだ?私が聞いた話だと、バニルがしたことといえばその惚れ薬の効果を打ち消す薬を騙して高額で売りつけようとしたくらいじゃなかったか」

「それが、今回の一件は、バニルが黒幕だったようなのですよ」

「「??」」

アクアとダクネスは同時に首をかしげる。

 

今回の件は、ゆんゆんが惚れ薬を買ったことが発端となったのだが、どうやらゆんゆんが惚れ薬を買うようにバニルが誘導していたらしいのだ。具体的には、バニルがカズマの姿に化けてちょろいゆんゆんを誘惑すると同時に、言葉巧みにゆんゆんに惚れ薬を買わせたというのだ。

バニルにとってみれば、意識が飛ばされるというデメリットがあるやたら高額な惚れ薬を売りつけ、更にその惚れ薬の効果を打ち消すアクアの水を高額で売りつけるという、うまくいけば二重取りが達成できる流れだ。カズマや私を巻き込んだのは、カズマの財布を当てにしてのことだろう。

なお、当の悪魔は、「惚れ薬は危険なものではあるが、効果を打ち消す薬があったので問題ないと思った」だの「むしゃくしゃしてやった。今は反省している」だの弁明を繰り返しているらしい…

 

「ほらね、あの悪魔はろくなもんじゃないわ!さっさと私が消滅してやった方が人類のためなのよ」

一通り説明を聞き終えてアクアは鼻息荒く言ってのける。

「しかし…その件は、ゆんゆんにとっては散々だったな…」

ダクネスはちょっと引き気味に言葉を漏らした。

「えぇ。あの騒動のあと、ゆんゆんは騙されたことを盾に、毎日のようにバニルに冒険者に変装させて一緒に酒場で晩御飯を食べさせてるらしいですよ」

「…なんというか、それは仕返しなのか…?まぁ、ゆんゆんらしいといえばそうなのだが…ゆんゆんはそれでいいのだろうか…」

確かに、ゆんゆんは最近ぼっちを拗らせてどんどん間違った方向に進んでいるような気がするが…まぁ、また悪魔に騙されないようにたまに様子を見に行ってあげよう…

 

「それにしても、私もカズマさんが惚れ薬でラリッてるところが見たかったわ」

「そうか?あの男は女に目が無いし、常に惚れ薬の影響下にあるようなものだろう…」

「あら、でも惚れる相手はゆんゆん限定だったんでしょ?あの甲斐性なしのカズマさんが女に生涯を捧げるとか言い出しちゃうのとか面白いじゃない。プークスクス!」

 

こんな出来事があったのだから、ゆんゆんはカズマのことを引き摺るのかもしれないと思ったのだけど、カズマに対して全くもって、いつも通りだった。前から思っていたけれど、彼女は私よりもずっとメンタルが強いのだろう。

 

 

それに比べて、私といったらカズマの一言、一挙手一投足に心を揺さぶられてしまう。

 

やっぱり私は、カズマのことが好きで好きで仕方が無いんだ。

 

あの後、ゆんゆんに聞いたのだが、私の全力の爆裂魔法を見てカズマは一瞬意識を取り戻したらしい。

その時に、私が放った爆裂魔法を嬉しそうに見て120点をつけてくれたのだとか。

その場面を想像するだけで、私は血が沸騰するように全身熱くなる。

 

私の人生のほぼ全てを掛けている爆裂魔法とそんな私の道のりを後押ししてくれる男。

 

―――――これが、これこそが、私の恋愛だ。

 

 

私は、ふと、その全ての始まりを、私に爆裂魔法を教えてくれたあのお姉さんとの出会いを思い出す。

あのお姉さんに爆裂魔法を教えてもらわなかったら、私はきっとカズマと巡り合えなかったし、私の、私らしいこの恋に到達することは出来なかっただろう。

 

 

私は、爆裂魔法を教えてくれたあのお姉さんに、いつか「ありがとう」が言えるだろうか、私の人生のほぼ全てを掛けた爆裂魔法を見てもらえるだろうか。

…と、その時は、そんなことを考えていた。

 

 

 

朝日が窓から差して、宙を舞う埃がキラキラ光る、そんな時間帯、のらりくらりと歩く彼の足音が聞こえてきた。

どうやら彼が起きてきたみたいだ。

その足音に私の心臓の音が気持ちよく早まる。

彼と過ごす一日が、思い出がまた私の胸に積み重なっていく。

 

 

 

………カタン

 

それは私の日常を変える前触れを知らせる音だった。

 

玄関のポストに新聞が差し込まれる音。

 

そして、その新聞の一面を飾る事件は、私の恋を大きく動かしていく。

 

 

『魔王軍幹部が最前線に参戦し戦況一変。王都の危機――――――』

 

 

『――――――戦況を一変させた幹部は、』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『邪神、ウォルバクとの事』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この紅魔の乙女達に恋愛を! 完




この度は『この紅魔の乙女達に恋愛を!』(タイトル考案者:Ceroさん)読了、ありがとうございます!
リレープロジェクトの発起人であったくせに書くのが一番遅いSS師の勾玉です。
そして、あまあまなカズめぐが書けないSS師の勾玉です。カズめぐ民の皆様、寛大な心で許していただければ幸いです。
この後は本作にⅯОSさんの素晴らしい挿絵が追加される予定なので、そちらもお楽しみに!

〇最終話の内容について
ゆんゆんが抱いていた冬将軍の人形、なんのこっちゃいと思った方、いらっしゃいますでしょうか?
このエピソードは、このすば小説の3巻に収録されています。アニメでカットされてしまったシーンですが、すごい面白いので読んでください!(ステマ)
そして、このリレー小説の最後のシーンは、原作9巻『紅の宿命』第2章のシーン3へと続いていきます。
また、リレー小説の最後のシーンを読んだ後に是非とも原作9巻第4章シーン9の直前を読んでください!

〇前回めぐさんのあとがきにあった、この作品の題材について
皆さんは何だと思いましたか?

カズめぐ
シリアス

そして、最後の題材…

それは…

『ゆんゆんが惚れ薬を服用する』というものでしたー!
まぁ、そのままでしたね(笑)
結局、惚れ薬で最後までおかしくなったのはカズマでしたが(笑)

〇協力してくださった方々へ
一番最初に私のリレー小説tweetに反応してくださり小説の題材を抽選してくださった、めむみんさん
今回のリレー小説のタイトルを考えてくださり徹夜で小説を仕上げてくださった、Ceroさん
このすばにシリアスという難しいテーマをたった2日で形にしてくださった、めぐさん
おひとりで全部に挿絵をつけるという膨大な作業を担ってくださった、МОSさん

ご協力ありがとうございました!


〇読者の皆様へ
お気に入りの作家さんがこのリレー小説に参加しているという理由で読んでくださった方、是非この機会に他の作家さんの作品も読んでみてください!
皆さん素晴らしい作品を作られています。面白いので、是非ともそちらも堪能してみてください!


そしてそして、ここまでお付き合いくださった皆様に最大の感謝を!
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