幻想郷の記憶   作:食用海苔

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第一章 幻想入り
一話 日常破綻


少年は”迷いの竹林”というところにいた。

 

出口や建物は全く見えてこない。

 

とにかく歩き続けて出口を探す。

 

なぜこうなったかは今から数日前のこと…

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

家では軟禁状態だったので今は家出して各地を転々としている。

 

まれに父の従者達が居場所を突き止めて保護という名の襲撃をしに来るのでいつも警戒を解くはできない。

 

 

 

ある日の夜

 

…ピンポーン

 

誰か来たので玄関まで行きドアを開けると、そこにはドレスのような服を着て頭にはドアノブカバーのような帽子をかぶった長い金髪の女性がいた。

 

「はじめまして、清別(すめわき)さじぁさん。」

 

その途端、すごく怖くて視線だけで殺されそうな…生まれて初めて覇気を感じて寒気が走った。

 

「私の名前は八雲紫。」

 

怯えて後ずさる。

 

「あなたと敵対する気は今のところありません。」

 

「…そ、そうですか…」

 

やっと声が出せた。

 

「早速ですが、幻想郷へ来ませんか?」

 

「…げん…そうきょう…?」

 

どこかで聞いたことがあるような響きだった…けれど本当は聞いたことがない言葉だったかもしれない。

 

「幻想郷とは全てを受け入れる幻想の存在たちの楽園です。妖怪や、妖精や、魔法使いや、幽霊や、神や…他にも色々な種族が共存しています。当然、人間もね。」

 

大体のイメージはついた。だが何故かあまり行く気にはなれなかった。

 

この時点ですでにさじぁは何の根拠も無く幻想郷の存在を信じていた。

 

「ただの人間が幻想郷に行ってなんの意味があるのでしょうか?」

 

「…半年程度あなたがどういう人物かを見ていたわ。」

 

なるほど、最近たまに感じた視線はあなたでしたか。

 

「今のあなたはなんの気力も感じられない。この世界に絶望している。そんな感じよ。」

 

しかも、と八雲紫は言葉を続ける。

 

「あなた自身がこの世界にとって幻想の存在なのよ。」

 

僕が…幻想の存在?

 

「…どういうことでしょうか?」

 

「あなたはただの人間ではない。この世界にとってはありえない存在なのよ、あなたは。」

 

「…それを確かめる手段はありませんが…僕は人間としてこの世界で生きていくつもりです。これまでと同じように。だから幻想郷には行きません。」

 

「そう…それは残念ね。せっかく穏便に済ませようと思ったのに。」

 

紫の纏っていた覇気がよりいっそう強くなり、気絶しそうなほどの威圧がかかる。

 

「…拒否権は…なさそうですね。」

 

「あるわよ。ただ…私に勝てればの話だけど。」

 

何もないところから突如として光球がたくさん出てくる。

 

「…っ!」

 

光球が体に当たると痛みが発生した。どうやらこの光球は攻撃するためのものらしいい。

 

圧倒的な量を躱して、躱しきれないものはは防ぎ、血を垂らしながら家の窓から出て逃げる。

 

けれど、そんなのは無駄という風に外には八雲紫が待ち構えていた。

 

「今からでも行くと言われればこれ以上痛くはしないわ。」

 

「お断りします!」

 

「残念ね…紫奥義『弾幕結界』」

 

次の瞬間、大量の光球どこからともなく現れて壁を造り、それが全方向から迫ってくる。綺麗と感じたがゆっくりと鑑賞している余裕はなく、それを避けなければ死ぬとまではいかなくとも確実に動けなくなるだろう。

 

光球の壁と壁のわずかな隙間をすり抜けて回避するが、隙間が狭すぎて少しでもずれるとあたってしまう。

 

体の至る所に光球が当たり血を流しているが、悲鳴をあげている体に鞭打って再び立ち上がる。

 

「まさか今の弾幕を初見で耐えるとはなかなか面白いじゃない…あなたはそれでも人間と言えるのかしら?」

 

その瞬間、何かが視えた。

 

ある土地を紅白の巫女服の女性と一緒に結界で囲む光景が、

さっき見た人に似た紅白の巫女服の女性と弾幕だらけの空中戦をしている光景が、

厳重に注意しながらスキマから僕を覗く光景が、

他にも色々な光景が視えた。

 

これは何でしょうか…彼女の記憶でしょうか?

 

あの空間の裂け目はスキマと、光球は弾幕と言うのですね…。

 

次の瞬間、鈍痛がお腹の辺りで響くとともに、現実に意識が戻る。

 

「ぼーっとしていると当たるわよ。」

 

そうだった。今は戦闘中だから何か視えても気にしている暇…いや、余裕すらないはず。

 

そう思っていると、突然攻撃が止んだ。

 

何でしょうと考える前に勘で後ろにジャンプする。

 

すると、さっきまでいた所の地面に裂け目が出来る。

 

「危なn…がぁっ!」

 

後ろから左肩を短刀で貫かれ、初めて体験する激痛で意識は朦朧として倒れる。

 

「あなたは強いけど、まだ甘いわ。」

 

立とうとするが、体が傷だらけなのか精神的に疲れたのか…体に力が入らず、立つことができなかった。

 

「何故そこまでして…僕にこだわるんです…か?」

 

身体中傷だらけなのに痛みはあまり感じず、感じたのは眠気と浮遊感だった。

 

「それは向こうに着いてから教えるわ。」

 

「…そう…で…」

 

そしてさじぁは意識を失った。

 

「傷が酷いわね、ちょっとやり過ぎたかしら…まぁ取り敢えず永遠亭に連れていきましょう。」

 

紫がさじぁを抱えてスキマに入る。

 

あとに残ったのは、ところどころ破壊された地面や壁に残った弾幕の跡と地面に染み込んださじぁの血だった。

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

目が覚めると横になって寝ていたことを自覚し上体を起こそうとするが、体中に痛みが走り上体を起こすのを諦める。

 

まず目についたのが身体中に巻き付けられた包帯、そして自分の体から伸びる線と管、その先には規則正しい間隔で機械音が鳴り、同じ波形を映す物体が。

 

「ここは…」

 

ここで目を覚ます前に何があったかを思い出す。

 

確か八雲紫に襲われた…うん、襲われました。向こうにとっては勧誘とか試したとかそんな感じかもしれませんが。

 

その後は動けなくなって…そこからの記憶がないですね。

 

まぁ取り敢えず眠気が襲ってきたのでもうちょっと寝ましょうか。

 

はぁ…惰眠最高…。

必要以上に寝れたのはいつ以来でしょうか…。

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

どのくらい時が経ったか、扉を開ける音がして起きる。

 

誰かと思って目を開けると、赤と青の奇抜な服の女性が居た。帽子に赤十字のマークがあるので医療関係者だろうと推測する。

 

「おはようございます、ここで医者をしています。八意永琳です。」

 

「…清別さじぁです。」

 

「清別さんは外の世界から来たのですか?」

 

「外の世界…?」

 

「幻想郷の外のことよ。」

 

「…まさか、ここは幻想郷なのですか!?」

 

「そう。ここは幻想郷の中にある、永遠亭という病院みたいなものです。」

 

「そうですか…。」

 

幻想郷の景色を見ようと窓から外をみてみるが、塀と竹しか見えなかった。

 

「それにしても、あなたとても危険な状態だったわよ。何で助かったのか不思議なぐらいね。」

 

「八雲紫によると僕は人間じゃないらしいですけど。」

 

「それでもよ。確かにあなたは純粋な人間ではないわ。」

 

「じゃあ僕は何なのですか?」

 

「半人半妖。暫く安静にね。」

 

そうして永琳は部屋から出ていく。

 

「半人半妖、ということは人間半分、妖怪半分でしょうか…そもそも妖怪がどういった存在かはわかりませんが。」

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

ただベッドの上で横になって居るだけでは暇なので、八意さんに永遠亭の本を貸してもらっている。

 

だが大半が医療関係で高難度の本ばっかりだが、今読んでいるのはいざというときに役立ちそうな応急手当の本である。

 

ちなみに本の名前は『効果絶大!すぐ治る応急手当・処置 in SURVIVAL』。

 

すると八意さんが部屋に入ってきた。

 

「大体は治ったかしら。」

 

「えぇ、刺された右肩以外は。」

 

「ちょっと包帯外すわよ…これだったらあと二日ってところかしら。」

 

「そうですか。」

 

それじゃあねと言いながら永琳は部屋を出ていく。ついでに今読み終わったこの本を持ってってほしかったんですけど。…他人に甘えてばっかりなので自分で行きますか。

 

歩けるようになった体で本を持って部屋を出る。

 

長い廊下を進んでいると途中の部屋で誰かと誰かが話しているのが聞こえた。

 

どちらの声も聞き覚えのあった。

 

『あの子の容態はどう?』

 

『だいたい回復してるわよ。あと二日ってところね。』

 

『じゃあ退院するときに会いに行きましょうかねぇ…嫌われてなきゃいいのだけど。』

 

『それは難しいわね…だってあなた、あの子に何したか分かってるの?』

 

『優しく勧誘して断られたから連れてきただけよ。力尽くで。』

 

『はぁ…もう、好きにして。』

 

八雲紫と話している時点で心の中では永琳は一瞬にして敵に切り替わっていた。

 

全力で気付かれないようにその場を去る。とりあえず部屋まで行けば一安心。

 

さて、どう逃げましょう?

本はこの部屋に置いておくとして、窓から逃げるのがいいか、それとも正面から逃げるか。

 

窓の方が良いだろうと思って窓からの脱出を試みた。

 

窓を開けそこから屋敷を出て塀を越え、竹林を駆け抜ける…はずだった。

 

やはり無理ですね。流石”迷いの竹林”と呼ばれるだけありますね。記憶力の無さには自身がありますからね。

 

しかも妖精みたいなのが飛ばしてくる弾幕がやっかいなんですけど。

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

…そんなこんなで今に至る。

 

傷も治ったので、巻かれていた包帯はもういらないのでそこらへんに捨てといた。

 

そういえば何で永遠亭に居たのだろう?あ、八雲紫がここに連れてきたからか。

 

なんて考えしていると、雨が降ってきた。

 

でも手持ちの持ち物の中に傘なんてない。

 

「明日は風邪確定ですね。」

 

まぁ風邪になってもあそこへ戻る気はないんですが。

 

完全に暗くなっても、ずぶ濡れになっても、出口が見つかるまでただひたすら歩く。

 

さっきから妖怪やら妖精やらがこっちを狙っているが、避けたり防いだりしながら進む。

 

すると突然声を掛けられた。

 

「大丈夫か?迷ってるなら案内してやろう。」

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