幻想郷の記憶   作:食用海苔

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主人公のプロフィール
名前:清別(すめわき)さじぁ
能力:記憶を見る程度の能力
容姿:髪色は白でかなり長いが、
   編んではいない
   目の色は透き通った青


二話 妹紅のパーフェクト妖力教室

「大丈夫か?迷ってるなら案内してやろう。」

 

雨の中さじぁに声をかけたのは白い髪に赤いもんぺを着た女性だった。

 

「見ない顔だな。こんな時間まで何しにここに来たんだ?」

 

「永遠亭から出てきたんですが、道に迷ったらしく…」

 

「そうか…取り敢えず私の家に来な。」

 

「ありがとうございます。」

 

「私は藤原妹紅だ。よろしくな。」

 

「清別さじぁです。こちらこそ。」

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

藤原さんの家に着いたのは良いんだけど、せっかく雨宿りさせてもらったのに話がないのはちょっと気まずいと思って話しかけてみる。

 

「…藤原さんはいつも迷った人を助けてるんですか?」

 

「堅苦しくすんな。妹紅でいい。…そうだな。そういや、さじぁは妖怪か?」

 

「…八意永琳が言うには半人半妖らしいですよ。」

 

「そうか…最初は人だと思って話しかけてみたら妖力を持っていたからな。どこに住んでんだ?」

 

「帰るところはまだありませんね。まだ幻想郷に来たばかりなので。」

 

「…そんなお前があそこに何しに行ったんだ?」

 

「気付いたら永遠亭でしたよ。」

 

「そうか…じゃあどうやって幻想郷に来たかはわからないんだな?」

 

「どういうことですか?」

 

「外から来るってことはあの結界を越えてくるってことだからな。あの結界…博麗大結界を越えるには外の世界からある程度忘れられるか気絶でもしてないと通過できない。それか自分自身が幻想の…非常識の存在になるか。まぁ、誰かに連れてってもらうんでもいいが、とにかく普通は幻想郷には来れないんだよ。…お前の場合は恐らく幻想の存在ってとこかな。」

 

「なるほど。」

 

実際は違うのですが…まぁいいです。

 

少し窓を覗いてみると、すでに雨は止んでいた。

 

「そろそろ行きますね。」

 

「…どこか行く当てはあるのか?」

 

行く当て…ないですね。できれば元の世界に帰りたいのですが、帰り方なんて知りませんし。

 

もういっそのこと幻想郷に住むことにしましょうか。その方が平和に暮らせるかもしれないですからね。

 

「…特には。適当な所で暮らそうと思ってます。」

 

「それなら自分の身は自分で守れた方が良いだろ。ちょっと鍛えてやる。」

 

「何をですか?」

 

「妖力の扱い方だ。」

 

「妖力、ですか?」

 

「半妖のお前なら妖力は少しくらいあるだろ。まずは妖力を認識するところからだ。ほら、やってみろ。」

 

いきなりやってみろと言われても…あ、これが妖力ですか。体中を流れている感じですかね。意外と簡単に分かります。

 

「へぇ…何も言わなくてもわかるのか…ならそれを右の手に込めてみろ。少しでいい。」

 

そう言われて全身を流れている妖力を右手に少し寄せる。

 

「できたか…ならあそこの竹に放ってみろ。」

 

言われるがままに寄せた妖力を体の外へ解き放つ。

 

すると半径10cmくらいの弾幕が生成され、蒼く光りながら重力で落ちることなく真っ直ぐ進んで竹に当たると、衝撃で竹が揺れた。

 

「こんな感じですか?」

 

「…あ、あぁ…本当に初めてかどうか疑わしいほど上出来だ。あとは弾幕の速度を変えたり、軌道を曲げたり、追尾弾にしたり、形状を変えたり、色を変えたり、威力調整をしたり、と色々とある。」

 

「…弾幕は奥が深いですね。」

 

「あと、妖力枯渇には気をつけろよ。妖力っていうのは妖怪にとって生命力そのものだから、それがなくなれば最悪死ぬ。さじぁも例外じゃないと思う。」

 

「そうですか…まぁ、そこまではしないと思いますが。」

 

実際、減った妖力は微量ですし。

 

「今度は飛行練習でもするか…。さじぁ、飛べるか?」

 

「…飛ぶ、ですか?」

 

「普通は妖力持ちなら飛べるんだが、どう説明したらいいか…やっぱり飛ぶっていうのは感覚だな。よし!」

 

妹紅はさじぁを抱えあげる。

 

「うわぁ!ちょ、何するんですか!?」

 

「言ったろ?飛ぶのは感覚だって。だからお前も一度あの風を切る感覚を身につけてほしいなって思って…」

 

「そうならそうと…ってもうこんなに!?」

 

すでに五メートルくらい浮上していた。

 

「じゃあいくぞ!」

 

「ふぇ…ギャーーー!!」

 

まず急降下。そして地面すれすれで向きを変えて水平に。少ししたら今度は上に向きを変えて螺旋状に昇っていく。ある程度上に行くと今度は宙返り。

 

「さじぁ、大丈夫か?」

 

「…いいえ。」

 

「そうか、続けるぞ!」

 

「ちょ、人のはな…ギャーーー!!」

 

今度はロールしながら進む。いきなり急ブレーキをかけて方向転換。その先には竹が並んでいる。竹の間を縫うように進み、最後は妹紅の家の前に静止してからゆっくり着陸。

 

「これなら感覚はだいぶ身についただろう…って」

 

「もっと…人のことを…おぇ…考えて…」

 

体にしっかりと重力がかかっているのに謎の浮遊感が相まって少し気持ち悪い。

 

「さじぁ、お前…浮いてるぞ!」

 

「何を言って…って、え?浮いて…!?」

 

足元を見るとたしかに浮いていた。

 

「…。」

 

確かに浮遊感はしていたけれど、本当に浮遊していたなんて…どうやら妖力を浮力に変換して浮いてるらしいですね。ほんの少しずつ妖力がなくなっていく感覚がします。

 

変換を止め、足を地面につける。

 

「…こんな簡単にできるんですか?」

 

「…感覚さえつかめばできるよ。」

 

「…少し練習してみます。」

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

「色々とお世話になりました。取り敢えずその人間の里ってところに行こうと思います。」

 

ここは竹林の入口付近。ほとんどの人間は里に集まって暮らしていると教えるとそこに行くと

 

「…やっぱり私がついて行こうか?」

 

「大丈夫ですよ。それにこれ以上妹紅さんにお世話になる訳にはいきません。」

 

「…里はこの方向に真っ直ぐだ。里は人間の集まっているところだからな、妖怪は畏れられて退治っていう方向になるかもしれない。くれぐれも気をつけろよ。」

 

「わかりました。では、またいつかお会いしましょう。」

 

「あぁ、またな。」

 

そう言って、私は竹林の中に戻った。

 

「なんなんだ、あいつは…。」

 

さじぁが見えなくなったとき、私はため息をついていた。

 

「初めて使ったっていう妖力をいとも簡単そうに扱って…」

 

さっき竹林の入り口で別れた奴のことを考えていた。

 

「飛ぶのもすぐにできたんだよなぁ…」

 

妹紅の家が見えてきた。

 

「今ならまだ簡単に倒せるが…あの成長の速さは尋常じゃない。一年…いや、半年後にはもう勝てなくなるかもな。」

 

誰もいなくなった家の中に入る。

 

「本当になんなんだ、あいつ…ただの半妖じゃない気がするが…」

 

今日はもう休もうと思って布団に入る。

 

「まぁ、考えすぎかな。」

 

今日は何故か心地よく眠りにつけた。

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

さじぁが退院するはずだった日。

 

「えーりんー、来たわよー。」

 

永遠亭の玄関に腑抜けた声が響いた。

 

「大賢者がそんな気の抜けた感じでどうするのよ…。」

 

「別にいいじゃない。藍が相手してくれないから少し退屈だったのよ。」

 

「…あなた最近幽々子に似てきたんじゃない?」

 

「気のせいよ。それよりも、彼はもう完治したの?」

 

「あの調子で回復すればもう完治してもおかしくないわよ。」

 

「何よそれ…まるで見てないみたいじゃない。」

 

「実際に見てないわよ。というか見れない。」

 

「…どうして?」

 

「…逃げられたのよ。窓からね。」

 

「…え?」

 

紫の表情が困惑になり、さらに驚愕に変わる。

 

「…え、ちょっと、あなた医者でしょ!?患者の一人も見てられないの?」

 

「紫、まずは落ち着いて。」

 

深呼吸して息を整える。

 

「まずはごめんなさい。そもそも逃げるなんて想定してなかったから…。」

 

「そんなことはもういいわ。問題はさじぁがどこにいるかね。」

 

「捕まえる気なの?…まだ逃げてから3日だからそこまで遠くにはいないはず…。しかも彼、飛べない筈だからかなり範囲は絞れるわね。…というか周りは迷いの竹林よ。そう簡単には出れないわ。」

 

「ありがとう。」

 

そう言うと紫の後にスキマができた。

 

「嫌われないように気をつけることね。」

 

私の忠告は届いたのか、スキマが閉じる寸前に紫がこちらを見ていた気がした。

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

辺りはすっかり暗くなり、妖怪の力が増す時間。

 

人里の方向にまっすぐ行ったつもりなんですけど…おかしいですね。なんか立派な洋風の真っ紅な建物に着いてしまいました…。

 

とりあえず地面で横になってる緑の中華服を着た人にでも道を聞きましょうか。

 

「あの…」

 

だめだ…この人寝てる。しかも地面で。

 

起こしたほうがいいでしょうか…っていうかこの人門番じゃないですか?

門番が寝ててもいいのでしょうか…

 

「あの…」

 

全然起きる気配がありませんね…

 

揺すっても全然起きない…

 

仕方ない。門をくぐろう…といっても、鍵が掛かってるので門は開けずに上から飛び越すしかないんですけど。

 

門を越えると、素人の僕でも手入れが行き届いているのがわかる庭が見えてきた。

 

「綺麗ですね…」

 

その時、下から金属音が聞こえた。

 

何かと思って見てみるとナイフが道のタイルに刺さっていた。

 

「そこの侵入者、止まりなさい!」

 

今度は前を向くと、ナイフを何本か構えているメイド服で銀髪の女性がいた。

 

「大人しく投降しなさい!」

 

突然周囲にナイフが数本現れて飛んでくる。

 

真っ直ぐ飛んでくるそれらを避けながら目の前の女性に問いかける。

 

「あの!何か勘違いしてませんか!?」

 

「何が勘違いだって言うのですか?そこの美鈴を倒してこの紅魔館を侵略しに来たんでしょう!」

 

「美鈴ってあの緑の人ですか?それならあの人は地面で寝てるだけですよ!!」

 

「…ゑ?」

 

 

 

 

*◎*

 

 

 

 

「私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレット…うちの咲夜がすまなかったわ。」

 

目の前にいるのは薄い水色の髪に真紅の目をした子供…と侮ることなかれ。鋭い牙にコウモリのような羽を持つ彼女は吸血鬼そのものだった。

 

そしてあの八雲紫ほどではないにしても、強力な覇気と妖力のようで違う何かの力を持っている。

 

「誠に申し訳ありませんでした。」

 

そして深々と謝罪しているのはここのメイド長の十六夜咲夜さん。

 

「別にあなたが悪いわけじゃありませんよ…起こさなかった僕が悪いんです。」

 

「いいえ、いつも寝ている美鈴も悪いのですが、美鈴が寝ているということに気づけなかった私が悪いんです。あなたのせいではありません。」

 

「それでも僕が悪いんですよ。」

 

「そんなことありません。私が…」

 

「はいはい。二人とも責任の取り合いはそこまでにしなさい。咲夜、美鈴の躾をしてきて頂戴。」

 

渋い顔をしながら承知しましたと言って十六夜さんは大広間から出ていき、残ったのは僕とレミリアさんだけになった。

 

「さじぁといったかしら。今日はここに泊まっていきなさい。外から来たばかりだし、泊まる所もないでしょう?」

 

「いいんですか?」

 

「えぇ。うちが迷惑を掛けた相手に何もしないわけないじゃない。」

 

「…ではお言葉に甘えて、一晩泊まらせてもらいます。」

 

「あら、一晩で良いの?もっとゆっくりしていけばいいのに。」

 

「一晩で十分ですよ。もともと道を聞くために寄っただけですから。」

 

「…一応聞くけど、目的地はどこなのかしら?」

 

「人が集まって住んでいるという里です。」

 

「人間の里ね…とりあえず今は咲夜にあなたを部屋まで案内させるわ。」

 

チリン、とレミリアさんの近くにあったベルを鳴らすと突然十六夜さんが湧いて出た。気配どころかそこに現れるまでの動きさえ見えなかったということは…どうなってるんでしょうか?

 

「彼を部屋まで案内して。」

 

「承知しました。さじぁ様、こちらです。」




次話から投稿ペース落ちると思います。
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