ここにいてはいけない 作:コズミック変質者
主人公のモデルは某R18ゲーの外道神父と殺塵鬼さんです。
ジリジリと肌を焼く、輝く陽射しが絶え間なく降り注ぐ。海に面しているこの場所だが、今の時間帯は風が弱く、木々の葉を弱々しく揺らすことしか出来ない。そんな風では少しでも体の暑さを誤魔化すことは出来ない。
普段なら嫌気がさすほどの暑さ。暑さに対して人一倍免疫が薄い自分からすれば灼熱の地獄のようなはずの外は、恐ろしい程に冷えきっていた。実際には冷えきっているのは環境ではなく自分自身。目の前に起こった事態に、精神の揺らぎが体温を奪っているのだ。
目の前にいるのは同年代の男の子が二人。わずか人口が2000人しかいない、日本本島から遠く離れた離島の田舎島。子供の数はそこまで多くはなく、学校も小中高を複合して一つしかない。必然的に同年代である彼らは同じ学校に通い、同じクラスで共に勉学を修める故に友人と呼べる関係であった。
特に、目の前にいる二人は特に仲がいい。その関係は友人以上、親友以上、最早それすらも超えた何かだ。まるで互いが互いの欠けているパズルのピースのように。違和感を抱かないほどに彼らは噛み合っている。
彼らが喧嘩をしたところなんて見たことがない。普通以上の相互理解をしているが故に、どちらも引くべき時を普通以上に弁えている。
少なくとも彼らを知りえてから、一つの不和も見たことがなかった。
ならば、これはなんなのか。
一騎。黒髪の男の子の手には短い木の枝が。木の枝の先端は自然に着色されたとは言い難い色が着いている。
総士。茶髪の男の子の手から血が垂れている。その血は手から出ているのではなく、その手が押さえ付けている場所。即ち左目の眼球から。絶え間なくぽたぽたと、熱い地面を赤に染める。
何が起こったのか、理解なんて出来るものか。やった本人もやられた本人も理解が追いついていないのに、第三者の自分に何が理解できようか。
灼熱の時間が続く。冷めた体は点より降り注ぐ日光によって熱を必要以上に取り戻し、肉体から汗という形で水分を奪っていく。だが今流れている汗は冷や汗だ。起きた事象に対する膨大な不安。
手に血が付いていることに気づく。これは勿論自分のでは無い。目から流血する総士の血が飛び散ったものだ。この程度の量では鼻腔を刺激することは無い。だが何故だろうか。感情の起伏が激しく薄い自分の冷えた心に、どうして言い様のない熱が籠っているように感じるのだろうか。
手を見て、総士を、一騎を見る。ああ何故なのだろう。どうしてこんなにも心が震えるのだろうか。本来であればすぐに何らかの、大人を呼ぶなどの行動に移すはずなのに、どうして自分はこうして彼らを見ているのだろう。
一騎、総士。二人の表情。そこから伝わる感情が、どうしてこんなにも美しく見えてしまうのだろう。
どこかへと走り去る一騎。必然、彼の心は耐えられなかった。親友を傷つけたという事実に、一瞬で彼の心は砕け散る。
「総士」
苦痛に耐える総士の名を呼ぶ。走り去る時に一騎が捨てた木の枝を拾い上げ、総士に近寄る。どうしてだろうか。彼はここにいるのに、ここにいないような気がする。何を言っているのか自分でも分からない。感覚的なもの故に言葉には表せない。
「オレがやったことにするんだ」
どうしてこんなことをするのだろうか。確かに一騎は友人だが、ここまでする義理などどこにもない。悪いことをしたら分かりやすい贖罪のために罰を受けなければいけない。そんな当然のことから、彼を逃そうとしている。
「オレが、お前の左目を傷付けた。この枝で」
その後、一騎が呼んだのかは知らないが、残された自分達を大人達が見つけた。傷付き蹲る総士と、凶器であろう血濡れの枝を持つ自分。火を見るよりも明確な構図。味方は、いなかった。
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一年後。島を出ることになった。総士の左目が傷付いて一年。針の筵の様な生活だったが、不自由など一つもない。子供らしくないと自覚できるほど発達した精神に、周りからの印象に揺らぐことは無かった。
親しかった友人達からは、まるで怨敵でも相手取るかのような態度を取られた。当然だろう。総士は学校中から人気者であった。それに対して子供らしくなく、可愛げが微塵も存在せず、人付き合いも上手くない自分など比べることする烏滸がましい。
島を出るのは追放されるからではない。居づらいからという訳でもない。島から出ていく大人に便乗したのだ。普通なら見ず知らずの、それも友人を傷付けるような猟奇的行動に出る子供など、誰が一緒にいたいと思うのか。しかし以外にも、彼は一緒に連れていってくれた。
名残惜しさ等欠片もなく、引き止めてくれるものもまたいない。我が事ながら人望がないな、と嘲笑すらしてしまう。一騎かそれ以外の子供が見えたような気がするが、遠くて正確には分からない。
「君はきっと、島から出たことを後悔することになるだろう。あそこには世界から失われた全てがあった」
ミツヒロ・バートランド。島に出ることを便乗させてもらった大人。島には珍しく、日本人ではなく外国人の名を持つ人で、『元』友人の遠見真矢の父親。
哀れんでいるのか、そうでないのかは定かではない。無機的な声質にはどこか自分と同じ壊れたような人間性を感じる。
「まるで、島の外には何もないみたいですね」
「それは自分の目で確認するといい。見えてきたぞ」
航空機の窓へミツヒロさんが目を向け、自然と釣られて目を向ける。そこには竜宮島と同じように木々があり、竜宮島にはない高い建物があった。だが木々は何年も伐採が行われていなかったように生え茂って街らしき場所にまで侵食し、人工物である建物は虫食いのような穴が各所に空いている。
「これが今の日本だよ。君たちが島で教えられてきたのはかつての日本。奴らが島に来るまでの、平和だった時の世界さ」
「奴ら?」
「フェストゥムだよ」
その声には憎悪があった。人を壊し狂わせ恐怖を与えるほどの悍ましい憎悪が。しかしどこか、痛ましささえ感じてしまう。
「奴らが全てを奪った。この世界から、私達から何もかもを」
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目的地に着いた自分達を出迎えたのは、スーツを着たブロンド髪の妙齢の女性だった。周りには護衛の為に武装した兵士達が何人もいる。物騒なライフルだけではなく、身体の各所にはグレネードなどといった爆発物まで。
「ようこそ人類軍へ、ミツヒロ・バートランド。そこの彼が例の子ね?」
「手厚い歓迎、感謝します。ええ。彼こそが人類に希望を齎す子供です」
どうやら自分のことを言っているらしい。希望を齎す、一体なんの話をしているのかは分からないが、大体の検討はついている。フェストゥムに関係する何か。特に兵器や戦闘関係の何かが自分にはあるのだろう。目に見えるものではなく目に見えないもの。潜在的な才能等だろうか。
「はじめまして。私は新国連軍事務総長へスター・ギャロップ。貴方は?」
「柚原、瑞貴」
「よろしく、ミスタ瑞貴。早速だけど、私達のお願いを聞いてくれないかしら?」
「素晴らしいわね」
モニターに映し出される、半年前にDアイランドから連れてきた少年。未だ幼い歳ながら、大人顔負けの精神力と、同年代の中でもずば抜けた身体性能。知能の方も申し分なく、試しに与えた人類軍の資料をたったの一週間で覚えてみせた。
何よりも目を見張るのは有人人型兵器『ファフナー』の操作能力。そしてファフナーを動かす上で何よりも重要なシナジェティックコード形成数値。黄金律に近いほど良いと呼ばれるこの値は、ミツヒロが見た時は歓喜するほどの物だった。
「正に彼こそ、人類にとっての黄金の林檎ね」
未だにファフナー試作型すらも完成しない。旧時代と呼ぶしかない戦車や戦闘機が人類軍の現戦力だが、瑞貴のおかげでファフナーの開発データは急激に集まりつつある。
「問題は彼に相応しい機体と、彼の為のバックアップ設備ね」
既にへスターの頭の中では瑞貴を中心としたファフナー部隊がフェストゥムを蹂躙する未来が映し出されている。シュミレーションの記録は前代未聞とされるSSオーバー。しかも今も尚その戦闘能力は上昇を続けている。
だがそれだけ性能がいいと、安易に戦場に投入できなくなる。現存のファフナーは試作型すら出来ておらず、ファフナーと呼ぶには疎かすぎる。例え期待が完成したとしても、完成した機体がどれだけ動くかは未知数。ともすれば瑞貴の反応速度に期待がついてこられない可能性もある。
そんな不十分な状態で戦場に送り出し、もし喪失してしまえば人類は勝利から大きく遠ざかる。
将来的に予想される瑞貴の戦闘能力はファフナー一個大隊以上。下手に量を減らすくらいなら、圧倒的は質によって押し潰す。圧倒的は質はより長く、幾多の戦場に投入する。
その為にはまずは同化現象と呼ばれるものをどうにかしなければならない。へスターはファフナーの専門家では無いためあまり詳しくはないが、ミツヒロの力説によってどれだけ重大な案件なのかはへスターに伝わっている。
「バートランド博士に連絡を。どれだけ予算をつぎ込んでもいいからファフナーの開発と同化現象の処置については即刻研究を急ぐように。必要ならいくら
ここで負ければ人類は滅ぶとへスターは踏んでいる。ならば躊躇うことなど有り得ない。引き金を引き遅れて滅びるという愚かな結末を認めるわけにはいかない。
へスターの席を虎視眈々と狙うものは五万といる。存命中はくれてやるつもりは無いが、次に着いたものが判断を遅らせる愚か者の可能性もある。
非人道的大変結構。全ては人類の未来のために。貫く思想はその一点だった。
次話から本格的に話を進めます。