艦これの北上さんを題材にした恋愛ものです。

 執筆するのは3年以上ぶりかつ恋愛ものは初めてなのでお手柔らかにお願いします。

 北上ものフエロフエロと祈って

 pixivにも投稿しています。アカウント名が違いますが気にしないでください。

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供給が無ければ自分で作ればいいって聞いたから書きました。後悔はしていない


北上と俺のお話

 ---きっと、自分は恋なんてしないだろうと思っていた。

 

 人が多い都会の中、誰よりも柔らかな笑顔で隣を歩く北上。平和そうな彼女の姿を見ながら、俺はふと過去の事を思い出す。

 

 突如として現れた人類を敵視する存在、深海棲艦。そしてそれに唯一対抗できる存在、艦娘。生存戦争に終わりはなく、未だに両者は殺し合いを続けている。

 

 なぜ深海棲艦が現れたのか、そしてどうして艦娘が助けてくれたのか。その理由もわかっていない。ただ一つ確かなことは、奴らは人類の敵であり、彼女達は人類の味方であることだけ。

 

 しかし、艦娘達にはある欠点があった。それは、適性のある人間が指揮しないと十全な力を発揮できないということ。そのため、国民の中から選出された適性者達が"提督"として彼女達を指揮する事になった。かく言う俺もそのうちの一人だ。

 

 最初はなにをしていいのかわからず、艦娘のみんなの足を引っ張ってばかりだったのは、良くも悪くも今となっては思い出話だろう。上もこちらに対して何も期待していなかったためにろくに勉強することも出来なかった、と他人に責任を押しつけるのはよくないか。

 

 とにかく、提督と呼ばれるだけのお飾りから抜け出したかった。そんな立場に甘んじるほど俺たちは腐ってはいなかった。

 

 ---女の子だけを前線に立たせるのは大人としてどうなのか。

 

 そんな俺たちに手を差し伸べてくれたのも彼女達だった。艦船の記憶を持っているということは、過去の戦術や教訓を知っているということ。そんな彼女達が教官となってくれたのはありがたいことこの上なかった。そうして徐々にまともな"指揮官"として成長していった俺たちは、徐々に制海権を取り返していった。そうして、ようやく束の間の休息をとれるようになったのだった。

 

 「提督?どしたー?」

 

 そんな風に昔の事を思い出していると、心配した北上がこちらの顔をのぞき見つつ声をかけてきてくれる。なんでもないと言おうとして、どうせばれるか、と思い直し

 

 「いや、昔は大変だったなと思ってた。それから、こんな風になるとは思ってなかった」

 

 「こんな風って、こういうことですかっと」

 

 そういうと、俺の右手をぎゅっとつないでくる。彼女の手から伝わる温度は暖かく、これに絆されたのだと思うと少し恥ずかしくもなってくる。それに気がついた北上はさらに腕を絡めてくる。俺の負けだと悟ると、おとなしく彼女の手を握り返す。その様子に満足したように頷きつつ、北上は歩く速度を少し速めつつ目に付いた出店を指さして

 

 「次はあれにいきましょー。きっとおいしいですよー」

 

 

 

 *

 

 彼女に惹かれたのはいつ頃だったか。あれは確か、大規模作戦中のことだったか。

味方の損傷が激しく、危うく轟沈する直前まで傷ついてしまった娘を出してしまったときに、作戦が悪かったせいだと自分を責めていたことがあった。ある意味で自分は思い上がっていたのだ。今まで調子よく進みすぎたこともあり、全て自分のせいだと内心かなりダメージを受けていた。弱音は吐けないと、みんなの前では強気になっていた。いままでと同じように指揮をしつつ、その裏では今度こそ轟沈が出てしまうのではないかと恐怖に震えていた。なんとか無事に作戦を乗り越えた後もそれは続いて、あるときただ一人気づいたのがとある日に秘書艦を担当した北上だった。あのときも最初はいつもの調子で

 

 「最近どしたのさー」

 

 と聞いてきたのだ。一瞬あっけにとられそうになるが

 

 「...別に、どうともしてないが?それより報告を頼む。」

 

 といつも通りに振る舞う。それを聞いた北上はふぅん、と彼女もいつも通りに報告をする。そのことに心の中でほっとしつつ、作業を進めていく。しばらくすると、突然彼女は切り出したのだ。

 

 「あのさ、提督。そんなにあたし達は頼りないかな?」

 

 「え...?」

 

 動かしていた腕が止まり、彼女の言葉に一瞬思考が追いつかなかった。頼りない?そんなばかな。むしろ俺の方が役に立ってないだろうに。そう思いながら、どう言葉を返そうかと考えていると、そのまま言葉を続ける。

 

 「だってさ。提督無理してるよね?あの日からずっとそう。でも、なにも相談してくれないじゃん。じゃあ、あたし達のこと信頼してないってことでしょ?」

 

 「そんな、ことは」

 

 「じゃあなんで言ってくれないのさ!」

 

 「それは...」

 

 言葉に詰まる。だって、それは自分の問題だからというのは簡単だった。でも、きっと彼女が言いたいのはそういうことじゃないのだろう。いつからか俺は理想の"指揮官"しか見えて無くて、共に戦う仲間ではなく上司と部下として区切りを引いてなかっただろうか。そう思うと、また自分が情けなく感じてくる。全部自分でできるなんて思い上がりをしていた自分に腹が立つ。そんな俺に彼女はそっと語りかける。

 

 「あんまり自分をいじめすぎないでよ。あたしで良ければ聞くからさー」

 

 すでに限界だった俺はその言葉に俺は逆らえなかった。ぽつりぽつりと語り出せば、思いが流れ出す。それを全て聞いた彼女はただ静かに

 

 「提督はばかだなー。提督だけのせいじゃないのに」

 

 「そう、なのかな」

 

 「そう。調子に乗ってたのはあたし達も。でも、そうだなー」

 

 ---ありがとう。心配してくれて。提督が提督でよかったよー。

 

 その言葉に救われた。自分のやってきたことは間違いも多くあったけれど、それでも意味はあったのだと実感できたから。きっと、この瞬間には心惹かれてたんだと思う。

 

 

 *

 

 

 「やっぱりたまに食べるお外はおいしいねー。ほら、提督もいっちゃって!」

 

 熱々のたこ焼きをはふはふと頬張る姿に微笑んでいたらこちらに差し出されたので、少し周囲の目を気にして躊躇っていると口の中に無理矢理突っ込まれる。

 

 「あっふ!!!」

 

 「んー?どしたーー?大丈夫ー?」

 

 にやにやしながら言う彼女に少しイラっとくるも放り込まれたモノの熱さに耐えきれず必死に口の中を冷まそうとしてしまう。その姿が面白かったのか腹を抱えて笑い始める。 くそう、その笑顔をかわいいと思ってしまうのだからずるい。結局は惚れたほうの負けか、と思う。

 

 「ほらほら、そんなことしてないで早く次行きますよー!」

 

 楽しそうな声を聞くと、自然とこっちの口も緩んでしまう。人混みの中はぐれてしまわないようにと手を引く彼女に俺は

 

 「はいはい。焦らないでゆっくりいくぞ」

 

 と苦笑しつつ言った。彼女の手には、太陽の光に反射し光る一つの指輪があった。

 

 

 *

 

 

 ---艦娘の限界突破用アイテムが開発された

 

 その話がでたのは、いくつかの大規模作戦を乗り越えたあとの話だった。

 

 当時の最大練度にたどり付いた艦娘がある程度出てきた頃、艦娘にはいくつかのリミッターが掛けられていることが判明したのだ。それはまるで人の脳に付いてるそれと同じような機能。肉体や脳が壊れないための安全装置。それをなるべく安全に外そうとして完成したのが、大本営から送られてきた指輪だった。

 

 最初はまさかそんな、と半信半疑だった。しかし、実際に使ってみたという他の鎮守府からの情報で、本当に艦娘の練度が上がっていったという情報を得てからは逆にどうするか迷う羽目になったのだが。

 

 艦娘と提督双方が指輪を装着し、提督自身が艦娘の負担を肩代わりするシステム。互いに指輪をつける姿から誰が呼んだかケッコンカッコカリ。同じ宿舎に泊まり、場所は違えど共に戦ううちに親愛が恋愛になることは珍しくない。もちろん戦闘能力向上のために使う人もいたが、大抵は好きな者同士、強い絆で結ばれてる者同士が指輪をつけていることが多かった。

 

 もちろん色恋沙汰は女の子の大好物。演習などで他の鎮守府と触れあうことのある艦娘達はいつしか俺が誰に渡すのか、という話で持ちきりになっていたこともあった。

 

 ---提督は誰とケッコンカッコカリする?

 

 その言葉に葛藤していたのは良く覚えている。誰に渡すのか。そもそも指輪は最大練度になった艦娘にしか渡せないから対象も限られている。そんな時ふと頭に思い浮かんだのは、前に北上に慰められたときのことだった。

 

 あんな情けない姿を見せておきながら指輪を渡す?なにをばかなことを。頭の中に浮かぶ記憶を忘れるために首を振る。よし、と活を入れ直して執務室の扉を開ける。そこに居たのは、

 

 「おつかれー。今日の秘書艦はあたしがやったげるよー」

 

 紙束を抱え、私に任せろといった感じでふふんといった感じにどやっている北上の姿が目に入る。

 

 「北上か。よろしく頼む」

 

 あれ?いま自分変な顔してないか?と心配になるほどのタイミングだった。そういえば、あれから北上が秘書艦をやってくれる事が多くなった気がする。...いやぁ、まさか。

 

 「とりあえず今日の業務は---」

 

 「そうねぇ。じゃあこの資料は---」

 

 とりあえず、何食わぬ顔で作業を進める。何かをしている間は無心でいられるから、ってこれではまるで恋をしている男子のようではないか。

 

 しかし、まじめに考えてみよう。練度が上がって変わるのは耐久力、回避力、対潜能力。重雷装巡洋艦である彼女は装甲が薄く、敵潜を探すことに特化はせずとも優れている。ならば、戦力上昇として彼女に渡すのは戦術的に正しいのではないだろうか。そう、あくまでケッコンカッコカリなどというのは俗称だ。別に好きな相手に渡す義務があるわけでもないし...。でもどうだろうか。受け取る側はどう思うのか。...よし、ここは遠回しに聞いてみようか。

 

 「なあ北上。ちょっと質問なんだが」

 

 ふと思い出したかのように話を振る。やばい、下手な大規模作戦並に緊張してきたぞ。

 「どうしたー?」

 

 俺の横で紙を捌きながら、彼女がそう答える。心臓がバクバクいうが、それを抑えてなるべく平常心で話を続ける。

 

 「いや、大本営から渡された新しい装備のことなんだが...」

 

 ぷっ、と彼女が吹き出しながら

 

 「それは恋愛相談ってこと?あたしに相談するとはいい趣味してるねぇ!」

 

 そういうと彼女は俺の肩を寄せて耳元でこう囁いた。

 

 「それで。誰に渡そうとしているんですかね」

 

 「いやいやいやいや、どうしてそうなる!?」

 

 彼女の香りを感じた瞬間、反射的に俺は彼女から距離を取る。緊張で早くなっていた心音はいまや別の理由で高鳴っていた。それを気取られまいとして距離を取ってしまった。彼女はちぇ、といいながら再び机に目を落とす。

 

 「ならなんなのさ。まさか、ただ戦力増強のためだけに渡すとか言わないよねー」

 

 ばれている...。やはり彼女に隠し事はできないようだ。返す言葉が見つからず目を逸らしていると、彼女はため息を一つ吐いた。

 

 「あのさ提督。あたし達は船であると同時に女の子なんだよね」

 

 ---普通に遊んで、普通に恋をしてみたっていいと思わない?

 

 いつでも彼女は真っ直ぐな言葉で俺を揺さぶってくる。俺は全てを受け入れるように目を閉じ、深呼吸を一つ。

 

 ポケットに入れていた指輪を手につかみ、北上の方へと歩み寄る。あっけにとられる彼女とすぐ近くまでたどり付いた俺はただ一言口にする。それを言うまでにかけた時間はどれくらいだっただろうか。とても長かったような気もするし、ほんの一瞬だった気もする。それでも、勇気を振り絞って言葉を紡いだのは鮮明に覚えている。

 

 「受け取ってくれるか」

 

 この瞬間、おそらく初めて彼女が驚く姿を見た気がする。目を見開き、口をぽかんと開けながら数秒。やがて俺がなにを意味したのかを理解すると、今度は逆に彼女の顔が真っ赤になる。真っ直ぐ目を見つめ続けると、やがて彼女は目を下に逸らす。

 

 だめだったか、と思うと同時にある種の納得もした。このときの俺は自分で言うのもあれだが、かなり自己評価が低かったと思う。だから、結果がダメでも正直になろうという気持ちで告白していた。故に、目を閉じながら差し出した指輪をそっとポケットに戻そうとしたその時に、

 

 「待って」

 

 と腕を弱々しい力で捕まれた。下を向いたまま、彼女は小さな声で言った。

 

 「まぁ、なんてーの?そうねぇ...いい感じじゃん?最近...。まぁ、なんかそう思うんだよね、うん...。まぁ、そんな感じ?」

 

 「それは、つまり」

 

 彼女は顔を上げると、涙を流しながら笑顔でこう言ったのだ。

 

 「ありがとうね、提督。あたしを選んでくれて」

 

 その時の表情を、俺は絶対に忘れない。戦争の中、恋愛なんてできないと思っていた。けれど、そんな事はない。誰かを思う気持ちさえあれば、きっと誰だって普通の恋をできるのだろう。

 

 ---いいねぇ。痺れるねぇ!

 

 

 *

 

 

 「海だねぇ」

 

 「海だな」

 

 陽が沈む頃、最後に辿り着いたのは海だった。いつも海を見ているが、それは誰かを死地へと見送る時ばかりで、こうして平和な海を見るのは新鮮だった。夕日が水平線に飲み込まれていく。それを目に焼き付けると、瞳を閉じて光り輝く海へと祈る。いつか、みんなで平和な海を取り戻せますようにと。

 

 目を開けると、目の前に北上の顔があった。おおよそ、デート中に別の事を考えていた俺にいたずらしようとしたのだろう。そのまま進めば触れあいそうな距離、北上はちぇ、と言うと俺の正面から横に移動して、肩にもたれかかってくる。二人で静かな海を見つめながら、問いかけられる。

 

 「明日も、この景色を見られるかな」

 

 彼女は戦うことに恐れを抱いているわけではない。でも、ふと弱気に思ってしまうのだろう。明日も生き残ることが出来るのか、それとももしかしたら...、と。俺に出来るのは、作戦を立てて彼女達を送り出すことだけ。だから、その言葉に返せるのはただ一つ。

 

 「北上」

 

 「んー?ん!」

 

 俺の言葉に反応した北上の唇を一瞬だけ奪う。未だに慣れない感触に、自分からやったことなのに戸惑いながらも、彼女の目を見てこう答えた。

 

 「生きて俺の横に帰って来てくれ」

 

 「...!もちろん!まあハイパー北上様ですからね!」

 

 彼女はそう笑うと、いつもの調子で歩き始める。置いて行かれないように、俺もその足取りを追う。これまでもそうだったように、これからもそうするだろう。俺は彼女の隣に立っていたいから。追いつき、北上の右手をぎゅっと握りしめる。

 

 そうして二人並んで、俺たちはゆっくりと帰りゆく。この思い出は、これから先の戦いで負けられない理由になる。きっといつか、二人で本当の平和を掴むその日まで。


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