異端の鬼狩   作:カチカチチーズ

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 異端の狩人『無限列車』編
 始まり──────



列車と狩人

 

 

 

 

 一心は走りながら後ろを走る三人組について、考えていた。

 同じ任務に就くのだから、としのぶより教えられていた彼らについての情報を反芻しつつどう扱うかを。

 まず猪頭の少年・伊之助について、刃毀れし斬るよりも引き裂くことに特化したような鋸に近い日輪刀を二振り、すなわち二刀流の剣士である。そう聞いていた一心は素直に稀な人材であると認識していた。

 というのも、二刀流というものは当たり前だが難しいものであるからだ。刀という鉄の塊を両手ではなく片手で且つ別々に振るうのだ。これが片方が脇差であったり、一心の振るう異形の日輪刀のような短刀が二振りであるならば問題もないだろうが、あろうことか伊之助の振るうのはどちらも通常の刀である。無論、一心とて二刀流の隊士がいるのは知っているが、それは『柱』であるため関係ない。そのような稀有な剣士が常中を会得しているという事実は一心にとって内心なかなかに興味がそそられるものであった。ましてや『獣の呼吸』という独自の呼吸をしようしているのならばなおさらというもの。

 次に目を付けたのは善逸。曰く、『雷の呼吸』の使い手。一心とて『雷の呼吸』の使い手を他にも知っているが元『鳴柱』の弟子であるというのは目に着けるべき部分であった。実際のところもう一人『鳴柱』の弟子であるという『雷の呼吸』の剣士を一心は知っているが、次いつ会うのかわからない剣士よりもすぐ近くの剣士であるのだろう。『鳴柱』から教授された業を知るのは狩りの為にも有意なものになるのは明白であった。本人の性格には目を瞑らねばならないという一心としては酷く難しいものがあるが。

 そして、最後に────

 竈門炭治郎。『水柱』冨岡義勇の弟弟子、曰く『ヒノカミ神楽』という謎の呼吸法を扱ったそうであるが、しのぶも初めて聞くものであり、一心も現物を見なければ何とも思えぬためその神楽については思考の片隅に追いやり、そして彼が妹である鬼を連れていることも今は割り切っていた。無論認めてなどいないが、任務を共にする以上私情をぐだぐだと出すのは死に繋がるため、これも思考の片隅に追いやっていた。

 

 

 と、任務先である件の列車がある街近くにある藤の花の屋敷前で一心はその足を止めた。追いついた三人組を尻目に一人一心は屋敷に入っていったと思えばすぐに屋敷から姿を現した。入った時と違いその手には三つほどの長物が入るような黒い袋が握られていた。

 

 

「えっと……」

 

「山村だ。いまから街と駅に入って列車に乗る。騒ぎが起きてしょっ引かれても面倒だからな、日輪刀はこれに入れておけ」

 

 

 そういって竹刀袋を投げ渡し、一心は懐から取り出した水筒を軽く呷る。

 そんな一心を、竹刀袋に日輪刀を入れながら炭治郎は見ていた。

 

 

「(不思議な人だ。それにいままで嗅いだことのない、不思議な匂いもする。なんだろう……)」

 

 

 こうして、炭治郎が一心に会うのは三度目だった。一度目は那田蜘蛛山での任務、二度目は午前中の蝶屋敷、そしてこの任務。柱合会議での『風柱』ほどの感情はないが、自分の妹を虫など汚物などと言われてしまえば、思うところはある。だが、今日までまったく関わって来なかったからなのか、炭治郎は一心との距離をはかりかねていた。

 特に那田蜘蛛山で会った時とは匂いが違かった事もその要因の一つだろう。

 

 

「……何か用か竈門」

 

 

 そんな炭治郎の視線に気がついたのか、一心は視線のみを炭治郎に寄越すと炭治郎はしばし逡巡してから口を開いた。

 

 

「今回はよろしくお願いします」

 

「……………………」

 

 

 炭治郎の口から出てきた言葉に何か変な空気を感じていた善逸と言われた一心は言葉が出なかった。どう考えても雰囲気からこうなるのは違うのであろうが……と、一心は考えたがすぐにそれを思考の片隅に追いやり、息を吐く。

 

 

「そうか。なら、いい」

 

 

 炭治郎が那田蜘蛛山での出来事に対して何かを言ってくるのであれば一心とてある程度は答えるつもりであったが実際に飛んできたのは今回の任務での挨拶だけ。しのぶから何か言われたのだろう、と一心は一先ず納得しつつ水筒をしまい、街の方向へ足を向けた。

 

 

「列車に遅れる訳にはいかない。走るぞ」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駅に着いた一心らの内、炭治郎ら三人をそのまま列車へ向かわせた一心は列車の切符を買うために一人離れ、駅の中を歩いていた。

 流石に駅という人が多い場所だからか、頭巾に首巻きというおよそ顔が見えない格好ではなく頭巾を脱ぎその顔を晒して、目を細めながら思考を回していた。

 

 

「…………列車の中では振り回しが効かない……ともなれば、何を使うか……」

 

 

 一心の懸念は列車内での狩り。列車という限られた空間であり且つ乗客という守らねばならない人質がすぐ近くにいるという未知の環境では自身の武器が一つ使えない事に不利と判断していた。

 故に

 

 

「山村様」

 

「…………ああ」

 

 

 呼び止める声に一心は振り返れば、そこには『隠』の人間が立っていた。

 炭治郎が背負っているモノを一回りほど大きくした箱を背負っている男に一心は背負っていた爆発金槌をしまっていた袋を下ろし、そのまま二人で壁際に移動する。

 

 

「言われた通りのモノを」

 

「そうか」

 

 

 床に置かれた箱を一心は開いて、中から一振りの杖を取り出してからしばし逡巡するかのようにしばし箱の前で片膝を着いて手を止め、腕ほどの長さの袋包みを箱から取り出して箱をしめて、先程まで肩にかけていた爆発金槌の袋と同じように袋包みを肩にかけて立ち上がる。

 そのまま壁に寄りかかせていた爆発金槌の袋を『隠』に手渡す。

 

 

「…………山村様」

 

「なんだ」

 

「……それ、日輪刀すか」

 

 

 『隠』のそんな何とも微妙そうな声に一心は軽く明後日の方向に視線を向けながら、その手の杖を軽々と回し操りながら息を吐く。

 

 

「『つまらないものは、それだけで良い武器ではあり得ない』が奴の心情だからな……尋常のモノではないのは仕方がない」

 

「えぇ……」

 

「はぁ……まあ、いい。後藤、任せたぞ」

 

「……任されました」

 

 

 そう言って話を切り、そのまま一心は切符売り場へと向かっていった。

 そうして、切符を購入した一心は杖を弄り回しながら列車の方へ移動していく。その頭の片隅で三人組と鬼が何か面倒事を起こしていないかどうか、とりわけ猪頭という明らかに目立つ見た目をした伊之助が脳裏に過ぎり一心は目を細めその歩を早める。

 既に頭巾を被り直し、人混みをすり抜けて進んでいく。

 そのまま列車前に辿り着くとそこには

 

 

「何してる貴様ら!!」

 

「げっ!!やばいやばいやばい!逃げろ!!」

 

 

 何かをやらかしたのか笛を鳴らす駅員と彼らから逃げるように走る三人組。それを見かけた一心は長めのため息をつきつつ、頭巾越しに頭を軽くかいてから彼らが逃げた先を追うように走り出す。

 駅員を撒いた三人組を見つけ、大事ではないが軽い騒ぎを起こした伊之助を軽く叱りつけ、一心は三人組を連れて時間が過ぎる前に無限列車へと乗り込んでいく。

 

 

「…………あまり、こういう事は一々言いたくはないがあまり変な騒ぎを起こすな。鬼殺隊として無用な被害を出したくなければな」

 

「は、はい……」「すいません」

 

 

 消沈する炭治郎と善逸から視線を切り、一心は列車に興奮して騒いでいる伊之助に視線を移すも言うだけ無駄だ、と判断しため息をついてからそのまま車内へと入っていく。

 

 

 







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