異端、更新遅れました。
鬼滅は最終回を迎えましたが頑張って最終巻発売+1ヶ月までには終わらせたいとは思っています。
夢を見ている。
何も変わらないあの日から毎夜毎夜、必ず眠りつけば見続けた夢。
見覚えのある山に見覚えのある川、見覚えのある山林、そしてそんな山中にひっそりと建つ一軒の山荘。
どことなく獣の匂いが感じられるがだからといってそれが鼻をつくわけでもなく、違和感を感じさせるわけでもないそんな狩人の家。
掘っ建て小屋とは言わない。
狩人ながらこういった大工仕事にも器用だったあの人が作ったというこの家は以外にもしっかりとしたものであったし、住んでいて狭いだのボロいだのそう言った文句は何もなかった。
きっと、この目の前にある戸を開けば中にいるのだろう。
それでも、俺はこの夢を見続けて一度たりともこの戸を開く事は、いや手をかけることすら俺は出来なかった。きっと開けてしまえば何か決定的なモノが崩れ落ちてしまう、そんな風に思っていたから。
そう、この家に来た日はどんな日だったか。
あの日はまだ、夏が本番になる前梅雨に入って少し経った頃合だった。
俺はとある山麓にあった小さな村のどこにでもいるような平凡極まりない夫婦の一人息子として生まれた。村には同年代の子供はおらず、いたとしても俺よか歳上で子供だった時分の俺とは遊ぶよりも家の手伝いをしていた。
だからだろう。俺も一人で遊ぶよりも父親の後をついてまわっては仕事を手伝い、母親の隣に腰掛けては仕事を手伝い、おおよそ遊ぶという事をしていなかった。無論、だからどうしたという話だが。
そんな娯楽はなかろうがそれなりに充実はしていたであろう俺の日々はある日途端に終わりを告げた。
梅雨に入ったからだろう二、三日は続いた雨が明けはしたがそれでもまた何時雨が降り始めるのか分からなかった曇り空のあの日、母親が倒れた。
疲労、と俺は思っていた。だが、意識が薄れていく母親がポツリポツリと零しながら教えてくれた事によれば数日前から血混じりの痰が出ていたそうだ。
あの頃の俺には病気やなんやらの知識なんてものはなかった。だがしかし、父親は別だったようだ。母親の言葉にすぐさま母親が何を患っているのかを理解した父親は母親を背負って家を出た。
仕方がなかった、としか言えない。
俺たちが住んでいた小さな村には医者なんてものはいないし、医者がいるのは山を越えた隣の街。医者を呼びにいくよりもそのまま母親を背負って医者の所へ行く方がよっぽどマシだった。
倒れた母親を背負って山を越える、それに母親が耐えられるのかと聞かれれば俺には分からないし父親もそこまでは分からない。少なくともその時の父親は気が動転していたのもあるのだろう。
俺は一人で家にいた。
一人で、何日も何日も家で両親が帰ってくるのを待っていた。
そこそこには丈夫だったのが幸いだったのだろう。
俺はそんなに食べずにずっと待っていられた。
うろ覚えの記憶を思い返す限り、一週間は経っただろう。村の人間が俺の家にやってきた。
父親が死んだらしい。
母親を隣街の医者のもとへ運んでその帰りに、その前日まで降っていた雨が原因で起きた土砂崩れに巻き込まれて死んだ、と村人が俺に教えてくれた。
そして、そのすぐ後に街からやってきたという医者の手伝いが俺に教えてくれた。
父親が死んだ事を聞いた母親がすぐにそのまま息を引き取った、と。
両親共に死んだ。
その事実があまりにも俺には重かった。理解出来なかった。分からなかった。
俺はどうすればいいのだろう。そんな風に思っていた。
小さな村、というのもあったのだろう。周りの家は子供一人新しく養う余裕がなかった。
実の子供ならまだしも、見知った家の子供などそこまで見ていられなかった。一人野垂れ死ぬか街で物乞いにでもなるか、そんなふうに考えていたと思う。
『なら、うちに来るといい─────』
そう、俺に手を差し伸べてくれたのが先生だった。
数年前から山の中にある小屋で狩人として暮らしている先生。村にも月に何回かは降りてきては村で収穫した作物の一部と狩りで獲た獲物を交換していた。
そんな先生に俺は拾われた。
狩人であるにも関わらず、山で狩人となる前は外国にいたという先生から俺は狩りの仕方だけでなく医療についてや文字の読み書きなど様々な事を教わった。
先生との数年間は両親との人生以上の充実感があった。
丸眼鏡に無精髭、どこか温厚そうな顔の先生が喜ぶのが好きだ。笑っているのを見るのが好きだ。仕事の時、真剣そうに普段とはまた違った表情を見せる先生が好きだ。
俺は先生を何時しか二人目の父親の様に慕っていた。だから、いままでとは違う生活も何も苦じゃなかった。
元々遊び回るような性格でもなかったから、先生の手伝い授業それら全てが俺には楽しかった。
そうして、三年が経った頃。
ああ、いつだったか、冬も真っ盛りだったか……山には雪が降り積もり、狩人としての仕事もそこまで忙しいということもなく、溜め込んでいた金を持って街の方に降りてはモノを買い、暖かな食事を食べるそんな日頃。
その日の夜、寝ていた時分にふと目を覚ませば先生がゴザを羽織り靴に足を通している後ろ姿があった。こんな夜分にどうしたのだろうか、と俺が半ば眠りながら問うてみれば返ってきたのは狩りという一言。
その時、俺はただ熊か何かが迷い込んだのだろうと考えた。先生ならば大丈夫、そんな風に考えながら俺はまた微睡んだ。
────痛みが走り、俺は目を醒ました。激痛だ、腹が裂けたかのように激痛が迸り俺の中から血が流れ出ていくのを俺は感じとった。
いったいどうして?
もしや熊が小屋に入ってきたのだろうか、とすら俺は考えたが俺の視界には熊なんてどこにもいやしなかった。代わりに俺の目の前にいたのは一人の人間。
どこかで見た覚えがある様な姿の誰かはその右腕におびただしい程の血をつけており、俺はこの誰かに腹を裂かれたのだ、と理解した。
叫び声を上げたかった。
痛みに震え泣き叫びたかった。
だが、俺の声は何も出なかった。きっと恐怖と激痛の二つの感情で声なんて出なかったのだろう。
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一閃だった。
小屋に潜り込むのと同時の抜刀、背後からのそれは確実に不埒者の脊髄を両断した。
悲鳴が漏れるよりも先に、ヤマムラは不埒者の首根っこを掴み小屋の外へと放り投げ、速やかに腹から夥しい血を流し半ば意識を失いかけている義息へと駆け寄った。
出血は酷いがそれでも傷は浅く、内臓は傷ついておらず止血し傷を縫えば問題はないはず、そう診たヤマムラはすぐに止血するために布を取り出そうとして、寸前に背後から感じた悪寒にヤマムラは振り返ると同時に刀を振るう。
金属音が鳴り響いた。
そこには先ほど小屋から放り投げたはずの男がいた。
目が血走り、尋常ではない表情の男にヤマムラは顔を顰め、刀を右手で持ち腰に吊り下げていた短銃を左手に持つ。
そうして、男とヤマムラは対峙し、先んじたのは男だ。
大ぶりな一撃だ。それでも常人には視認できない速度で放たれたそれにヤマムラは刀を合わせ弾き、そのまま突きを喉へと放つ。
人外ですら反応できぬそれは深々と男の喉を引き裂き首の骨すら破壊して見せた。そのまま、刀を振るい首を半分裂いて見せ返す刃でもう半分を切り裂き刎ね飛ばす。
男は自らがどのように殺されたのかを理解することなく死んだ────などという事はなく、刎ね飛んだ首を掴み無理やりくっつけるようにして、首を繋げて見せた。
「獣め、いったいどこからまろび出た。首を刎ねて死なぬか────ならば、刻んで刻んで刻みつくしてその汚物のような虫ごと踏みつぶしてやろう」
目を細め、狩人としての貌を露わにしヤマムラは千景を振るった。
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端的に言えば、俺は生き、先生は死んだ。
俺は鬼に襲われ、先生は失血死しそうであった俺を生かすために自らの血を俺に輸血してくださった。
医療の知識を持っていたからと言って、輸血なんて言う高度な医療は本業でもない限りは難しいものであるはずだった。
鬼狩りとなり、しのぶらと関り医療に触れるようになってよく理解できた。にも関わらず輸血は成功し俺はこうして生きている。だが、先生は死んだ。
はたして、それを成功と呼ぶべきか……だが、先生は失血死したわけではなく、純粋に死んだらしい。
しかし、先生は俺を生かすために行い俺は生きたのだから、結果としては成功と言えるのだろう。
俺は鬼に恨みがあるわけではない。鬼に憎悪を向けはするがそれは恨んでいるからではない、この身に流れる血が、先生から託された血が、どうしようもなく人外を、獣を、蛞蝓を、虫を、人の世に蠢く汚物を尽くを殺せ、踏み躙って、潰して、狩れと訴えそして「虫」を見ることで俺は鬼狩りとなった。
俺はそれでいい。
この狂気に浸って狂乱する、そういう生き方で俺は良いのだ
─────だから、カナエ。お前みたいになれはしないんだよ、俺は