異端の鬼狩   作:カチカチチーズ

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 ポケモンソードにハマっておりました(正直)
 ワイルドエリアに入り浸り、カレーを食べるグソクムシャを愛でたり、レイドで稼いだアメを注ぎ込んだスカーフエラがみウオノラゴンを愛でたり、隻腕ぽそうな名前のアーマーガアを愛でたり、かわらず持たせたジグザグマを愛でたりしてました。
 キャンプ楽しい



狩人と隊士

 

 

 

 

 下弦の弐、討伐より既に数日。

 山村一心はこれと言った負傷はなく、精々が鳩尾に決まった一撃だけであった為に蝶屋敷に赴くこと無く、近場の藤の花の家でしばし療養してから新たな任務へと出ていた。

 一日で集落を二つ抜け、山を三越え、鬼を四殺した。

 強い鬼は確かにいただろう。

 しかし、所詮は十二鬼月にすらなれないような木っ端鬼。不用意に姿を晒せばその剣脚が頸を砕き、頸を守れば爆発金槌によってその防御ごと頸を破壊し、隠れ潜む鬼はその頭上より頭蓋と共に頸を踏み潰し、爆発金槌も大仰に脚も振れぬ挟所に逃げれば歪んだ刃が躊躇なくその頸を刎ねる。

 ひたすらなまでに作業的に殺す。

 

 

「…………何故、だろうな」

 

 

 藤の花の家にて、一人酒を呑みながら山村一心はその目を細める。

 あの日から、山村一心の中に妙な思いがうねっていた。それは迷い、という程ではなくとても不思議な感覚がそこにあった。

 

 

「いや、これは孔か」

 

 

 ぽっかりと空いた空虚な孔。

 それを山村一心は何なのかは分からない。だがしかし、その代わりにあの日から溢れなくなったものは理解していた。

 山村一心は鬼と相対すればそこにあったのは強い感情。おおよそ三種類もの感情の炎がとめどなく溢れだしていた。

 『侮蔑』『憎悪』『憤怒』

 人の淀み、穢らわしい汚物、蠢く虫を踏み潰すために溢れ出すそれらの感情を焚べて熾すは狂気狂乱。それらは正しく山村一心の戦いの根幹であったはずなのだ。

 にも関わらずあの日からそれが何処にもない。

 それは決して、鬼に、虫に対する殺意が消えたわけというわけではない。だがしかし、だがしかし、今まで焚べていた薪が自分の内から溢れ出なくなったというこの状況に山村一心は強い不安感すら抱いていた。

 恐らくは今抱いている孔の正体は薪が消えたが故に生まれたものなのかもしれない。だが、それならば何故消えたのだろうか?

 こうして、藤の花の家に来てからずっとそればかりが山村一心の中にあった。理解出来ない、分からない、知らない。

 

 

「………考えるだけ、無駄か」

 

 

 枡に注いだ酒が無くなったのを見て、再び目を細め酒を枡にまた注ぐがぴちょりぴちょり、と水滴が垂れるばかり。それに息を吐きながら、片付けを始める。

 窓から覗く満月は山村一心の悩みなど知らないとばかりに嫌になるほど美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を終え、寝癖でややはねていた髪を櫛で軽く整えつつ山村一心は息を吐き、窓へと視線を向ける。

 開け放たれた窓、そこにまるで事前に合わせたかのように一羽の鎹鴉が降り立ちけたたましく鳴く。

 

 

「任務!任務!カァアア!」

 

「桔梗ではないのか」

 

 

 羽先が白んでいる自身の鎹鴉ではないことをその喋り方から改めて気が付き、片目を瞑る山村一心はそのまま目の前の桔梗ではない鎹鴉の言葉に耳を傾ける。

 

 

「北北東!北北東!現地ニ居ル隊士ト共ニ鬼ヲ斬レェ!!」

 

 

 桔梗や一部の鎹鴉とは違うどこか片言めいた言葉に山村一心は息を吐きながらも着ていた浴衣を脱ぎ、傍らに置いておいた隊服へと腕を通していく。

 山村一心は鎹鴉が嫌いであった。それはよくある鴉が嫌いであるとか、そういったものではなく純粋にこの鎹鴉の片言染みていて、妙に甲高い声が耳に響いて苛立つのだ。それ故に山村一心は鎹鴉が嫌いであり、普通の鎹鴉と違い頼もしさすら感じさせる桔梗が他の鎹鴉と違って好ましかった。

 

 

「……はぁ」

 

 

 ため息を吐きつつ、日輪刀を装備し直してから、山村一心は部屋を出て藤の花の家の人間に発つ旨を伝えていく。

 昼餉に、と渡された握り飯が入った包みを懐に忍ばせてから、見送られて山村一心は任務地へと向かって走り始める。

 飛んでも走っても対して速度が変わらないからか、図々しくも鎹鴉が山村一心の肩にとまり風を受けている事に軽く山村一心は苛立つがしかし、一応しっかりと方向の指定などの仕事自体は鎹鴉が行っているため、怒鳴りはしない。

 だから、せめてもの嫌がらせに山村一心は少しばかり脚を速める。

 そうすれば、唐突な加速に鎹鴉が悲鳴をあげる。がとまっていた場所が場所であるからか、もろにその悲鳴を耳に響かせてしまい山村一心は自分の行いを後悔しながら目的地へ向けて走っていく。

 

 

 

 四時間ほど走っただろうか。

 途中、集落を見かけた時にその付近に鬼の痕跡がないかを軽く探していた為にやや、遅くなってしまったが時間としてはまだ正午前後であり、共に戦う隊士との連絡等を行う時間は設けられるだろう。

 軽く息を吐きつつ、目を回している鎹鴉を木の幹へ転がしてから山村一心は目的地である街へと入っていく。移動中に鎹鴉から聞いた情報によれば、この街には藤の花の家があるらしく、そちらの方に昨日から滞在しているようだ。

 

 

「……それなりに使える隊士であれば、良いのだが」

 

 

 山村一心が思うのは昨今の隊士の質の低下。

 思い返すは先日、爆発金槌とブーツの整備の為に『火薬庫』のもとを訪れる前にあった友人である『風柱』不死川実弥との合同任務後の食事の際に不死川実弥が零した文句。

 ここ数年の隊士の質が低下している事を不死川実弥は腹立たしげに語っており、事実一部の例外を除けば山村一心も不死川実弥と同じく隊士に対して薄々そういった感想を抱いていた。

 実際にこの一件は先日の柱合会議でも問題の一つとしてあがっていたのだが、それは今『柱』ではない山村一心には関係の無い話である。

 さて、そういった理由がある為に山村一心は今回の任務で共に戦うまだ見ぬ隊士に対して一抹の不安を抱いていた。対象の鬼が『上弦』でもなければ、最悪一人で鬼を狩れば良い、とも思考の片隅に置いてはいるが。

 

 

「失礼、鬼狩りの者だが」

 

「はい、お話は伺っております」

 

 

 藤の花の家へ足を運び、玄関前で掃いていた家人へと声をかければ事前に聞いていたらしく、そのまま止まることなく中へと案内され、二階へと上がっていく。

 締め切られた襖の前で家人は足を止め、山村一心はふと何やら知っている気配を感じ取った。

 

 

「失礼致します。お待ちの鬼狩りの方が参りました」

 

「中へ……」

 

 

 家人の言葉へ室内から言葉が返る。

 それに家人は頷くと山村一心に礼をしてから、邪魔をしないようにと配慮したのかすぐに離れていく。それを視界の端に収めながら山村一心は室内から返ってきた声にやはり既知感を覚えた。

 ともなれば、間違いなく今回共闘する隊士というのは知己であるのだろう。

 頭の中で何人かの知り合いは除外しながら、襖を開ける。

 

 

「失礼」

 

「……うむ」

 

 

 襖を開けた先にいたのは二人の男。

 うち一人はやはり山村一心がよく知る男であった。『南無阿弥陀仏』の文字が染め抜かれた鶯色に近い羽織を着、首と手首には数珠を巻いている巨漢。その男は鬼殺隊最強と言われる最年長の柱、『岩柱』悲鳴嶼行冥。山村一心も彼、悲鳴嶼行冥とは何度か合同任務を行った事があり、数少ない敬意を払う相手でもある。

 そして、もう一人の男は山村一心が知らない男。正座している為、詳しい身長は分からないがかなりガタイの良い男で、感覚からしてそこまで歳はとっていない……十代半ばを越えた頃合の歳だろう、と山村一心は経験則から考えると共に彼を見る。

 鋭い目付きに鼻面を走る一文字の傷、髪は側面を刈りあげながらも真ん中は特徴的ななんとも猛々しい髪形であり、人混みに紛れてもそのガタイの良さとその特徴的な髪形から簡単に見つける事が出来るであろう。そんな彼を見ていると山村一心は何か、ツンとした奇妙な匂いを感じて────

 

 

「山村、座るといい」

 

「っ……はい」

 

 

 何か言う前に悲鳴嶼行冥に促され、山村一心は用意されていた座布団へと座る。状況としては山村一心の対面に悲鳴嶼行冥が座っており、その左斜め後ろに男が控えている。

 そんな光景に山村一心は如何に悲鳴嶼行冥が『岩柱』だとしても普通の隊士がわざわざそのように座るだろうか?そう考えつつ、ふと一つの考えが脳裏を過ぎった。

 

 

「悲鳴嶼さん。そっちの隊士は継子ですか?」

 

「違う……継子ではなく、弟子だ……」

 

「………………名前は」

 

 

 悲鳴嶼行冥の言葉に山村一心は目を瞑り、空を仰ぎそうになるがそれを抑えて紹介を頼みつつ、内心でため息を零す。

 

 

「不死川玄弥、という……」

 

「で、弟子の不死川玄弥です……」

 

 

 悲鳴嶼行冥の紹介によりようやく言葉を口にした男、不死川玄弥はそのまま頭を深く下げる。その声音からはまるで目上の人間に対して緊張でもしているかのようでそれに山村一心は疑問を抱く。何故にこんな風に緊張しているのだろうか、と。

 そんな山村一心の意を察したか、そのまま悲鳴嶼行冥は口を開く。

 

 

「少しばかり、お前の話をしていた……」

 

「なるほど」

 

 

 それは緊張するわけだ。

 そう、呟きながら山村一心はその目を不死川玄弥へと向ける。

 確かに先程から感じるツンとした奇妙な匂いも気にはなるが、わざわざ継子ではなく弟子をとっているのか、不死川玄弥の姓はつまるところそういう事なのか、と様々な疑問が山村一心の中に渦巻いていた。

 だが、そういった疑問は後回しにして、山村一心は悲鳴嶼行冥に今回の任務についての説明を要求する。

 

 

「今回の鬼はどうやら複数。例の那田蜘蛛山の様に群れているわけではないが…………いわゆる縄張り争いというものだ」

 

「つまり?共食いで下手に被害が大きくなる前に確実に仕留めろ、というわけか……」

 

「そうだ……負傷し逃走する事で鬼の拡散が起きる前に我々で討つ」

 

 

 最年長らしい威厳を感じさせる声音に山村一心は頭を下げ、了承の意を伝えつつ息を吐く。

 複数の鬼がいるというのならば、なるほど一般隊士では被害が大きくなる可能性が高い、それ故の『岩柱』。些か、継子ではない隊士が一人いるという事に山村一心は一抹の不安を覚えはするがしかし、それを補って余りあるのが『岩柱』悲鳴嶼行冥という男。

 

 

「鬼がいるのはこの街外れの山の中だ……私は東をゆく……玄弥と一心は西を頼む」

 

「は、はい!」

 

「心得た」

 

 

 

 今夜もまた、鬼狩りの夜が訪れる────

 

 

 

 

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