光には存在しない者達   作:ペペロンチーノ伯爵

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第三話『世界の外』

~pm02:30~

ー≪Bランク危険警戒区域G-35≫ー

 

 

「……こちらAR小隊、定時連絡です」

 

≪ッッ………こちらゴースト、通信良好だAR小隊。報告しろ≫

 

「はい、今のところは敵性存在を確認できず、現在は目標物まで移動中です」

 

≪了解した、引き続き目標の回収を急いでくれ。ゴーストアウト≫

 

四度目の定時連絡を終え、その度にM4は胸を撫で下ろした。

 

「っふぅ…間違えなかった……先に進みましょう」

 

「何をそんなに緊張しているんだM4」

 

「だって、通信を開く度に全く違う人が応答するから……」

 

「この時点で知らないことだらけなんですけど」

 

「そうだな……こりゃ困った」

 

ゴースト部隊の仕様で初めに困惑したのは各場所、地区の名称がグリフィンとは異なり、地区を言うときは地区ごとの危険性のランク付けをされ、目的地はしっかりと名前が書いてあった。

AR-15はゴーストから支給された端末を完璧に使いこなしながらAR小隊の足元に映像を投影し、3Dモデルに変形させて立地を具体的にする。

 

「目的地はここアルジア湿原の南西部に位置する……この円の範囲内に目標物があるわ」

 

「目標物の説明は受けてないが……まぁ心配いらないだろうこの区域はBランク、対した危険性はないからな」

 

「ねぇねぇAR-15!私にもソレ貸してー!」

 

「嫌よ、瞬殺されるから」

 

「指揮官がAR-15に任せたいって言ってたから、その方がいいわSOPⅡ」

 

「ブーブー!」

 

「ダメなものは駄目よ」

 

そんな事を話していると、目的地の近くから銃声が鳴り響いた。

 

「なに!?」

 

「今のは目的地の辺りで鳴った……もしかして」

 

「私達が追っているのは人間だってこと?」

 

「とにかく急ぎましょう!早く!」

 

「焦るなよ皆、走るが慎重にだ」

 

M4を先頭に走っていると、目的地周辺で鳴り続いていた銃声が止んだ。

近くの茂みに隠れ、周囲を見渡していると、M16が何かを発見した。

 

「おい、あれ見ろ」

 

「………っ!」

 

「あれって……」

 

「鉄血人形……よね」

 

「どうしてあんな所に……あっ」

五人が目撃したのは、開けた沼地で倒れ込む一体の鉄血人形で、それを囲むように三人の武装した人間が武器を向けたまま鉄血人形に近付いていた。

 

「なぁM4、まさか目標物ってのは……」

 

「あの鉄血人形の事……ですか」

 

「なんで鉄血なんて助けなきゃいけないのさ、あのまま放っておこうよ」

 

「……それは駄目よ、任務だから」

 

「では、あの人間達を射殺しますか?」

 

「おいおい…私達は人殺しじゃないんだ、少し銃で脅せばさっさと出ていくー」

 

「ほんっと甘いわね」

 

その声と共に、枯れたような発射音に続いて三人の人間は脳天から血飛沫を弾かせて倒れる。

五人が振り返ると、武器からマガジンを抜いて放った分の弾丸を詰める45が呆れた表情で立っていた。

 

「おい45!何も殺す必要は無いだろ!脅すだけで良かっー」

 

「遅いのよ」

 

「………は?」

 

「任務をこなすことよりも、目の前にある状況の打開しか考えてない」

 

「っ?現状を切り抜ける方法を考える事の何がダメなんですか?」

 

「ダメに決まってるでしょ?」

 

45は倒れてうずくまる鉄血人形に近付き、その身体に触れる。

 

「回線が閉じきってない……信号を喪失してから20秒経ってる……クソ」

 

「さっきから何をー」

 

「どうしてさっさと人間達を殺さなかったの?」

 

「どうしてって……私達は無駄に人は殺さない、現に今のだって誰も死なずに済んだはずだ」

 

「そうね、それならどれ程良かったか………でも現にこの鉄血人形は死んだわ」

 

「……何ですって?だってさっきまで」

 

「何も見えてないのねAR-15、アンタはもう少しマシだと思っていたのに………武器を持たない人形が三人に追われたまま無傷でこんな湿地の奥深くまで来れるわけないでしょ?それに加えて新たに撃たれでもすればもう虫の息よ」

 

「………あ……」

 

「気付いた?でももう遅いのよ、鉄血人形は死に、指揮官が欲しがってた情報は手に入らない……始めから私が行ってればこんなことにはならなかった…もう少し、もう少しだけ早く来ていれば……」

 

「……なんでそこで自分を責めるんだ45…悪いのは私達だろ?」

 

「………始めからAR小隊なんて信用してないし、こうなるのは分かってた、だから指揮官の目を盗んで追ってきた………分かってたのだから、貴女達を責めたりしない、私がもっと早く来てればそれで良かっただけのことだったのに………」

 

その時、AR小隊の背後で物音が聞こえたと思えば、勝手に分隊を抜けて行った45を追ってきたグレイブスと9が茂みから姿を見せた。

 

「こんなところに居たのか45……何をしてる?」

 

「指揮官、本部で休んでないとダメって言ったのに………!」

 

「分隊の一人が消えたんだ、そう言うわけにはいかない、それよりもこれはどういう状況だ?作戦はどうしたAR小隊、無事に………」

 

グレイブスは完全に機能を停止した鉄血人形に近寄り、45に振り向いた時に状況を完全に把握した。

 

「なるほどな……AR小隊」

 

「っ、はい」

 

「本部に帰途して報告書を提出しておけ」

 

「………あの」

 

「なんだ?」

 

「……………なんでもありません」

 

「なら行け」

 

AR小隊を見送り、グレイブスは45に視線を向ける。

 

「45、AR小隊が気に入らないのは分かるが、少しはー」

 

「彼女達にゴーストの仕事は無理よ、どんなに強くても、物事の序列が分からなければ早死にするだけ、ならさっさとグリフィンに引き渡した方が楽よ」

 

「………それは俺も同意見だ」

 

「…ならさっさと!」

 

「だが、今は正規軍の弱体化が先だ、AR小隊の状況が分からないグリフィンは下手に俺達に手が出せない、その内に正規軍を弱らせてゴースト殲滅の余裕を無くさせればいい、そうしてから………」

 

「………?」

 

「グリフィンの出方を見て、必要ならば殺せばいい」

 

「……分かった」

 

グレイブスは45と同じように元々AR小隊に期待など微塵も抱いてなかった、それはゴースト全体がそうであり、失敗することを前提で任務を与えていた。

そしてAR小隊は臨時でゴーストに編隊されている、つまり厳密に言えばゴーストになったわけではない、故に、彼女達がゴーストに編隊してから、141分隊以外のゴースト隊員を一人も見たことがないし知らないのだ。

ゴーストでない者にゴーストは姿を軽々しく見せない。

その現状を知らずとも、彼女達が必死にゴーストの仕事に従事するのには理由があった。

 

「………今日も誰も居ませんね」

 

徒歩で本部に帰途したAR小隊の内、ROが一直線の廊下を歩きながら呟いた。

 

「ああ、本当に……私達しか存在していないような空気だ」

 

「本当にここが本部なのかって疑いたくなるわね………」

 

「ま、考えても私達に分かるわけないさ」

 

「あの、姉さん」

 

「なんだM4?」

 

「本当に、指揮官に協力して良かったんですか?」

 

「………確かに、グリフィンはゴーストの殲滅を命じてきた。だが本来の私達の敵は鉄血であって人間じゃないはずだ、それに指揮官がゴーストである事実が出てきた時点でクルーガーさんならゴーストとの衝突を避けようとするさ」

 

「どうして分かるの?」

 

「そんなの、言わなくてもグリフィンの人間なら誰でも分かるだろ?」

 

M16の言葉で四人は再度思い出し、再認識する。

グレイブスという男の強さとその恐怖を。

 

「思い出したか?今までは指揮官が味方だったからこそ良かったが、もしもあの人が敵に回ったらどんなことになるか………」

 

「……か、勝てるわけが………」

 

想定し、予感したROが身体を縮ませて震え上がる。

 

「今までは私達の敵に向けてきたあの目がこっちに向けられたら……想像したくもないわね」

 

「クルーガーさんならきっと何とかしてくれるはずだ、でなきゃ、グリフィンは二日と持たずに消える」

 

M16はあっと思い出したようにRO635の肩を叩いた。

 

「そう言えば、指揮官の『スキル』について何か分かったか?」

 

「………スキル?」

 

どうやらM16とROの間だけで何らかの調査が行われていたようだ。

 

「え、ええ……ですが、とりあえず彼女達に説明した方が良いのでは?」

 

「一体何の話?」

 

「指揮官が居なくなった後、私とROは指揮官の戦闘データを集めてシミュレートしてたんだよ」

 

「それは……何のために?」

 

「いずれ、指揮官とぶつかるかもしれないって思ったからな」

 

「始めから、分かってたのね」

 

「いいや、これはあくまで保険だし、この調査をしたからといって私達が指揮官に勝てるわけがないと思うよ、まぁ、ちょっとした興味って奴かな」

 

「それでー?その調査ってのはどうなったの?」

 

ROは纏めておいた報告書を指定されていたボックスの中に丁寧にしまい、五人は自室へと踵を返す。

 

「私が参考資料にしたのは指揮官の戦闘映像や記録、共に戦ってきた経験と他の人形からの証言を元にしました」

 

「それで?何が分かったの?」

 

「指揮官には、私たち戦術人形に備わっている一種の特技、もしくは潜在的なスキルが存在する可能性があることが分かりました」

 

「なるほど、そのスキルをお前的に名付けるとしたら?」

 

「スキルの名前ですか……?えぇっと………そうですね、ならサード・デス・リアリティ(三死の現実)というのはどうでしょうか」

 

「……理由は?」

 

「はい、まず指揮官の危機察知能力は尋常ではありません、指揮官はきっと感じ取っているんですよ、現実で起こりうる三つの死に関するタイミング『殺意』『死に直結する脅威』『死期』この三つの感覚を事前に察知して動いてるように思えます」

 

「それってほとんど未来予知と同じじゃない……」

 

「その通りです、ですがいま挙げたこのスキルだけでなく、その他の感性についても常人の数倍、いえ、比較できないほど恐ろしく優れています」

 

「私も前から思っていたんだが、指揮官は別に身体的な柔軟性は常人と同じくらいなんだ」

 

「そうなの?」

 

「でも確かに、指揮官がアクロバティックに動いてる所は見たこと無いかも」

 

「そうだろ?前に指揮官の身体を生で見たことあるんだが、別にこれといって筋肉が付いてるわけでもないし、むしろ軍人としては貧相な部類さ、柔軟性に関しても特筆できる特技はなかった、もちろん、格闘技や銃撃戦はずば抜けてる、でもパルクール技みたいな曲芸紛いの動きは出来ない、その程度さ」

 

「なるほど、つまり身体的な能力ではなく、感覚的能力で勝負してるわけね」

 

「………んー、あんまりよく分からないけど、要するに指揮官と戦うのは無理ってことでしょ?私、指揮官と殺し合うなんてイヤだよ?」

 

「珍しく同意見ね、その調査で分かった通りなら、どう頑張っても私達が指揮官と殺り合うなんて無謀よ」

 

「ええ、例えグリフィンが束になっても……いえ、それどころか正規軍が一緒になっても勝てる見込みなんて何処にも見当たらない」

 

「だからこうして大人しくゴーストにしたがってるんだろ?指揮官だって無益な労力は使わないはずだ」

 

一同の行動意志を再度認識し、五人は共にグリフィンVSゴーストという最悪の事態を避けるように全力を尽くすと意気込んだ。

 

その一方、141分隊の部屋の自室で床に伏せるグレイブスに昨日の偵察にて使用した再生剤の本格的な副作用が現れ始め、彼の身体を蝕み始めていた。

 

「指揮官……起きてる?」

 

「……………45か………………なんだ?」

 

著しく意識が低下し、視線が朦朧としていて明らかに弱っているグレイブスを看ていた45は床に伏せる彼の隣に座り、額に左手を添える。

 

「……………」

(熱は無い………ついさっきまでは普通に立って歩いていたのに。横になると言ってからはずっとこの調子……)

 

膨らんでいく不安感を振り払い、45はグレイブスに精一杯の余裕と笑顔を見せた。

 

「指揮官、お腹空いてない?お粥、作ってきたんだけど……」

 

「………あぁ、いただこうか」

 

食欲は全く無い、だが45の労力を無駄にしたくなかった。

 

「身体、起こしてあげるね」

 

「………すまない」

 

指揮官の場合、自力で何とか出来ると思っているときは「別にいい」と断ってくるのだが、今回の場合、自分の身体がもはや自力でどうにか動かせる状況に無いことを分かっている。

彼が嘘を付いたことはない、つまりこの謝罪は本物で、彼の衰弱も本物だと言うことだ。

 

「ん……しょ………」

(軽い……指揮官は自分の身体に全く力を入れていないのに………こんなにも軽い……)

 

まるで中身が無く空洞なのでは無いかと思えてしまうほど、グレイブスの身体は軽かった。

 

「はい……どう?食べられる?」

 

45の両膝に置かれた配膳トレーに乗っている小さいお椀から沸き立つ湯気の香気を吸い込む。

食欲が沸いた訳ではないが、かなり上手に、そして丁寧に作られている事が分かる。

 

「…………ここ最近、辺りの気温が著しく低い……」

 

「寒いの?何か持って来ー」

 

グレイブスは配膳トレーを退けようとする45の冷えきった両手を優しく、出来るだけ力を込めて握った。

 

「っ………」

 

「米を研ぐのは冷たくて辛かっただろう………すまないな……」

 

米を使った料理を作ろうとした時、いつもなら米研ぎは水が冷たいからと絶対に拒否していたのを覚えている。

俺がダウンしたことで無理にやらせてしまったのだろう、心の底から申し訳なく思う。

 

「ううん、9と二人で協力したから、辛くなかったよ」

 

「………そうか」

 

ほとんど力が入っていない指揮官の暖かい手を握り返し、片手でスプーンを取ってお椀のお粥を一口掬い、何回か息を吹いて冷まさせてから指揮官の口元に運ぶ。

 

「…あーん」

 

「……んっ……っ……………うまい、ありがとう45」

 

味付けの塩加減も丁度よく、細かく刻み込んである減塩梅の甘い酸味が程よく味にインパクトを与えている。

 

「ホント?これ、前に指揮官が作ってくれたのを再現しようと思ったんだけど……うまく出来てた?」

 

「前に………あぁ、お前達を救いだしたあの時の話か………」

 

「うん、私はよく覚えてる……」

 

「そうだな……完璧とはいかないが…限りなく近い出来にはなってるな………俺が回復したら、教えてやろう」

 

「約束ね」

 

「あぁ………」

 

おかわりは出来なかったが、45が持ってきたお椀の中身は何とか完食した。

 

「あの、指揮官………」

 

「……………AR小隊についての話は……終わったハズだぞ」

 

「っ………うん」

 

「お前は自分で正しくと思って行動に出たんだ……それ自体は何ら間違っていないし、俺も9も気にしてない………」

 

「………うん」

 

「事前に相談しろとも言わないし……分隊行動を徹底しろとも言わん、ただ………後悔だけはしないことだ」

 

「分かってる………ありがとう指揮官」

 

話終えると、指揮官は私から目を反らして眠りに付く。

だがその時、何者かが扉を開いて部屋の中に入ってきた。

 

「……イェソド司令」

 

「UMP45か、9はどうした?」

 

イェソド司令の手にはさまざまな報告書が纏められたファイル、そしてわざわざこの部屋に入ってくる理由を考え、45は少し身構える。

 

「9なら、お風呂に行きましたけど……?」

 

「そうか、まぁいい。起きろグレイブス」

 

「なッ!?」

 

グレイブスの状態をよく知っている筈のイェソドは無慈悲に衰弱している彼を呼び起こした

 

「っ………ん………イェソドか……」

 

「仕事だ、すまないな」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「ああ、分かった」

 

「仕事の内容はこの書類にー」

 

「待てよッ!!!!!」

 

イェソドが床に伏せるグレイブスにファイルを手渡したところで、45がイェソドの伸ばす腕を鷲掴みにして睨み付ける。

 

「ッッ………指揮官は今、かなり衰弱してるんです!!イェソド司令だってそれは分かっていますよね!?」

 

「分かっている、だが俺はグレイブスに頼みたくてその仕事を持ってきたんだ、やるかどうかはグレイブスが決めることだ」

 

そう言って手渡した書類を指差す。

 

「そんなの……指揮官が断らないと知ってるからって………!」

 

ギリギリとイェソドを睨み付ける45の腕を引き寄せ、噛み付く前に止める。

 

「落ち着け45」

 

「ッッ………指揮官は良いかも知れないけど、私は……」

 

「ほら、見てみろ」

 

「なに………っ」

 

任務の内容が記された書類を受け取り、一通り目を通す。

 

「………絶対中立領域の都市地区への情報収集?」

 

「そうだ、グレイブスには戦闘不可侵領域に行ってゴーストのメッセンジャーから重要情報を受け取ってきて欲しい、いま動けるゴーストはお前たち141分隊しかいない、他の分隊は正規軍の中継基地を確保し、そのまま本丸である正規軍の第1陣本隊基地攻略で数を割いている」

 

「………この任務の危険性は?」

 

「お前は知らなかったかUMP45、街の名は『セーフ・ガード』絶対中立領域に指定されている街の一つであり、指定された街での個人的、政治的、軍事的な武力行使を禁忌とする中立地区だ、世界指名手配犯でもなければ滅多に追い出される事はないし、如何なる理由があったとしても街内部、外部指定区域で攻撃されることはあり得ない、つまり、安全だ」

 

「……それはいいがイェソド……その重要情報と言うのは?」

 

「グリフィンからゴーストへ向けた何らかの交渉らしい、俺の予想では停戦を促す何かだと思うが……」

 

「分かった……やろう」

 

そこで45が口を出してきた。

 

「でも、指揮官はいまろくに立つことも出来ないんじゃ………」

 

「作戦開始は2日後だろう?ならそれまでに歩けるようになればいいだけだ、流石に戦闘は勘弁だがそれくらいなら役に立てる」

 

「っ……………」

 

「なら決まりだなグレイブス、作戦決行は2日後、それまでに身体を仕上げろ」

 

「ああ、やってみるさ」

 

「そしてUMP45」

 

「……………何ですか?」

 

「UMP9にも伝えろ、お前たち二人は攻略作戦の前線に行ってもらう」

 

「っ、そんな!指揮官を一人で行かせるんですか!?」

 

「危険性の無い任務に三人もゴーストを割いてる余裕はない、構わないなグレイブス?」

 

「いいだろう、二人を行かせる」

 

45の応答を待たず、イェソドは部屋を出ていった。

イェソドとのすれ違いで事の事情を知らない9が疑問符を浮かべながら部屋に入ってきた。

 

「指揮官ー、さっきイェソド司令が……この空気は一体?」

 

「……………」

 

「45、少し9と二人にしてくれないか?」

 

「分かった…」

 

「え?え?」

 

グレイブスは45の退出を確認し、9を手招きして近くに来させる。

大人しく近くに寄って来て座り込む9に笑みを見せ、事の事情を一から説明した。

 

「うーん……なるほどねー」

 

「そう言うわけだ、大丈夫か?」

 

「私は全然大丈夫だよ?でも45姉はすぐには納得できないかも」

 

「………やはり、そうだろうか」

 

「うん、昔の45姉ならキッパリと割り切れたと思うんだけど、指揮官と合ってから45姉は常に指揮官に気を使ってるからね」

 

「そうなのか?」

 

「そうだよ?ちょっと指揮官がむせた位でもすごい心配するようになったんだよ、依存っていうか、心配症というか………」

 

「そうだったのか」

 

「だから指揮官と離れ離れになるのを嫌がってるんだよ」

 

「……………それは困ったな」

 

「あぁ、でも大丈夫!45姉の事は私に任せて、指揮官は任務に集中してね」

 

「任せても大丈夫か?」

 

「うん!大丈夫!」

 

「なら………任せたぞ……………俺は少し寝る」

 

ゆっくりと瞼を閉じる指揮官の額に手を添えて、9は優しく微笑んだ。

 

「………いつまでも指揮官におんぶに抱っこじゃ迷惑かけちゃうから……ゆっくり眠ってね」

 

2時間後、141分隊のUMP45、UMP9は正規軍の第1陣本隊基地攻略の最前線へと出撃した。

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