光には存在しない者達   作:ペペロンチーノ伯爵

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第四話『無機物の意志』

~pm16:20~

ー≪第二次作戦:コールド・オブ・ウォー≫ー

 

参加部隊

一軍

≪第一攻略部隊:404小隊≫

第一作戦と同一

 

≪第二攻略部隊:AR小隊≫

第一作戦と同一

 

二軍

≪第三攻略部隊:SC(スコープ・カウンター)小隊≫

隊長:K5

副隊長:WA2000

隊員:M200

隊員:Gr MP5

隊員:P7

 

 

 

 

 

最悪の破天荒に見舞われた第二攻略部隊のAR小隊は吹き荒れる猛吹雪の中を突き進んでいた。

 

「うぅ……しゃむい……」

 

「この吹雪はヤバイな……全身が凍る……!」

 

「防寒着無しだから……ね」

 

「急がないと目的地に遅れるわ、急ぎましょう」

 

「んもー!!こんなの聞いてないよ!!さむーい!!!」

 

とは言えこの極寒の中でも彼女達のスピードは遅れるどころかむしろどんどん速くなっている、現在の雪原の温度はマイナス15度、それに加えて嵐のような吹雪に打たれながら防寒着無しでも行き倒れないのはグレイブスに訓練された賜物だろう。

 

「指揮官……こちらAR小隊、目的地まで残り8分」

 

≪……遅い、あと5分以内に到達しろ、コマンダーアウト≫

 

「相変わらず鬼畜だよぉ……」

 

「前と変わらないわよ、それに。この程度で遅れるのは私達が鈍っている証拠よ」

 

「その通りだな、さっさと勘を取り戻さないと見限られて作戦から外されてしまうぞSOPⅡ」

 

「それはイヤ……がんばりゅ……」

 

その時、AR小隊に第一攻略部隊の404小隊から通信が届く。

 

≪ッッ……こちら404小隊、UMP45よ、どうぞ≫

 

「こちらAR小隊、聞こえてるわ」

 

≪ポイントαの放棄された正規軍指令部に離反者達の痕跡を発見、データを送信するけど、指揮官から指示があるまで待機しててね≫

 

「了解………送信されたデータを受信、目的地にて待機します。通信アウト」

 

通信を終え、M4は隊員達の方に振り返る。

 

「聞いてた?目的地に着いたら警戒体制を敷いて待機よ」

 

「なるほど、罠かどうか確認するのか……」

 

「それなんだけどさ、何かおかしくない?」

 

「……どういうことSOPⅡ?」

 

「廃都市のこともそうなんだけど、指揮官にしてはデータの解析が遅いと思ってさ、もしかしたらもっと早くに気付いていたのかもよ?」

 

「………確かに、あり得るわね、私達を止めた時の様子も少し焦っていたし、なにか予想外の事が起きたんじゃ?」

 

 

~同時刻~

ー≪141指令部・指令部≫ー

 

 

副官を就けずにデータの解析を続けるグレイブスはずっと考えていた。

 

(第一作戦の時、AR小隊と通信した後に送られてきたデータの解析はすぐに終わった……だがいくらやってもAR小隊に俺の声が届かなかった、彼女達の声は聞こえるがこちらから通信を掛ける事が出来ない………いや、問題はその最終対策で俺がオープン回線を使った事だろう、相手はそれが目的だったんだ。やろうと思えば専用回線、機密回線、暗号化回線、オープン回線全てを塞げる何者かがオープン回線のみを開放した、俺の位置を逆探知するために……しくじったか)

 

グレイブスは解析し終わったデータの内容を確認してAR小隊に無線を掛ける。

 

 

「AR小隊、データの解析が終わった」

 

≪こちらAR小隊、了解です。指示を≫

 

「お前達のマップに送信したポイントに軍用の古い兵器格納庫がある、そこを制圧して中を調べろ、当たりならビーコンを設置して離脱、迅速にやれ」

 

≪了解しました。これより行動開始……通信アウト≫

 

通信を終了したタイミングで第三攻略部隊のSC小隊からの無線が繋がる。

 

≪……指揮官、聞こえる!?指揮官!?≫

 

「聞こえている、どうしたK5」

 

≪偵察地点βで大規模な鉄血工造の編成部隊を確認!その中には所属不明の傭兵部隊も一緒に行軍中……!!どういうことなのこれは!?≫

 

「ふむ……奴等の目的地はどこか予想できるか?」

 

≪待っていま地図を……これはッッ!?≫

 

「なんだ?」

 

≪目的地は森を抜けた先にある鉄血の前線基地かも!今はそれしか……あれは………!!≫

 

K5は息を荒くしたまま沈黙、数秒後にようやく声を上げた。

 

≪聞こえてる指揮官……?≫

 

「ああ、聞こえてる」

 

≪もしも私の見間違いじゃなければ……行軍する鉄血部隊と一緒に核兵器も輸送してる!≫

 

「………鉄血が絡んでいるのか…しまった………」

 

≪………どうするの指揮官?≫

 

「これより全部隊を出撃させる、SC小隊はその場を退避して全力出撃時の合流予定地点に向かえ」

 

≪了解……でもどこに攻めるの?≫

 

「全部隊が合流した時点で説明する、さぁ行け」

 

通信を切り、全力出撃の札号を発令した後にグレイブスは軍用回線に接続して個人に連絡をとった。

 

≪……誰だ?≫

 

「………聞こえるかヘリアン?」

 

≪グレイブス……クルーガーさんから話は聞いていたが……いや、それはいい。何の用だ?≫

 

「あぁ………実は……」

 

 

~5分後~

ー≪全力出撃により帰投中の404小隊≫ー

 

 

汚染区域から離脱して順調に歩を進む416がぼやいた。

 

「全力出撃って言ってもどうせやることは同じなんでしょ……面倒だわ」

 

「でも、どこを攻めるのかは教えてもらってないよぉ……」

 

「何処だろうと変わらないわよ」

 

そんな二人を後ろから着いて歩いていたUMP姉妹にゴースト専用の無線が入った。

 

≪ッッ……ゴーストプロトコル……始動≫

 

「……了解、指揮官~」

 

「じゃあ行こっか、45姉」

 

二人は不気味な狼のゴーストが描かれた仮面を被る。

前を歩く416とG11はそんな事に気付きもせず歩いていると、急に二人の耳元でそっと囁かれた。

 

「「さようなら、404」」

 

「なにッッ?」

 

勢いよく振り返ると、そこに45と9の姿はなかった。

 

「……45?9?」

 

二人が居たはずの床には、姉妹の腕に巻かれていた404小隊のシンボルが捨てられていた。

 

「………やっぱり……もう戻れないのね………」

 

「………しょうがないね……うん………」

 

きっとこうなるであろうと、416とG11は分かっていた、だからこそ、こんなにも悲しく、こんなにも涙が出るのだろう。

全力出撃の為に指定ポイントに集まった全人形達に無線が入った。

 

≪………………こちらヘリアン、聞こえるか?≫

 

突然の事に困惑する人形達の意思を感じ取ったようにヘリアンは溜め息を付く。

 

≪現在、グレイブスは離席中でその間は私がグレイブスの意図を伝える。いいな?≫

 

もちろんそれで納得する筈がない、声を荒げて説明を求めるが、ヘリアンはそれらを一喝して鎮まらせる。

 

≪いいか、これはグレイブスの意思である。故に私の声はグレイブスの声だと思う事だ、わかるな?≫

 

その言葉で一瞬の乱れは治まり、人形達は静かに指示を仰いだ。

 

≪よし……AR小隊≫

 

「……はい!」

 

≪AR小隊は直ちに眼前の兵器格納庫を制圧、内部を確認して報告しろ、その後に遅れて全力出撃部隊と合流してくれ≫

 

「了解しました!」

 

≪残りの部隊はK5を部隊長に指定のポイントに向かえ、そして武装したあらゆる敵を倒せ≫

 

「こちらK5……了解しました」

 

≪では、行動開始だ≫

 

ヘリアンの通信が切れる頃には既に格納庫へとAR小隊が突入しており、内部を守っている傭兵部隊を倒し、格納庫の兵器搬入口を降りて行く。

格納庫内部は所々にひどい損失が見れるが電力は通っており、ついさっきまで使っていた痕跡があった。

だがそれよりも不思議に思ったことが一つ。

 

「……さっきから傭兵部隊ばかりで離反者達の姿が見えない…」

 

「なぁに、どうせ奥の部屋で核兵器と一緒に震えてるだろうさ」

 

「アッハ、そう考えると何だか楽しくなってくるね!」

 

「人形の次は人間の死体遊びとか止めてよ……?」

 

「だいじょーぶ大丈夫!」

 

すっかり敵の気配も無くなり、搬送用レールの上を歩いてその奥にある巨大なゲートまでたどり着いた。

 

「……開けられる?」

 

「うーん…ちょっと待ってて」

 

すぐそばにあるコンソールに向かうSOPⅡを見ながら顔を俯かせているM4の肩にM16が手を乗せる。

 

「あ……」

 

「考えてることは分かる……でもな、そう簡単にはい修正、全部元通りとは行かないものさ」

 

「うん………」

 

「指揮官は……グレイブス・フェニックスはあくまでグリフィンの機密情報を盗んだ裏切り者、それは変わらない」

 

「分かってる………」

 

そうだとしても、彼女は諦めきれなかった、一体指揮官は何を考えて、何を思って、何を背負っているのか、知りたかったのだ。

それが本人にとって迷惑になることだとしてもだ、自分のわがままで彼を困らせてしまうとしても知りたい。

指揮官がもう戻らないことを察している人形は少なくはない、皆がそれぞれの想いで納得し、受け入れたのだ。

中にはそう行かない者もいただろう、分かっていても受け入れられない人形はもちろんいたが、グレイブスを信じているからこそギリギリの境界線で前に進める。

そんな中でM4は深くグレイブス・フェニックスという人物にのめり込んでしまった、引き込まれてしまったのだ。

尋常ならざる人生を歩んできた彼女だからこそ、彼を知りたがった、彼に興味を抱いた、この特別な感情を伝えたかった。

 

「それになM4……」

 

「……?」

 

「これは私の直感だが、指揮官にはまた会えるさ、それがどんなに形であれ…な」

 

「ホント……?」

 

「保証しよう、必ず会えると」

 

「………分かったわ……ならそれまで、絶対に死ねない……」

 

「ああ、そうだな」

 

「あ!開きそうだよ!!行くよー!」

 

零れそうな涙を拭い、M4は武器を構える。

 

「みんな、油断しないで……っ?」

 

「なんだこの悪臭は……!?」

 

「うわ!すごい臭いだよ!!」

 

「ッ………」

 

ゆっくりと開かれるゲートの隙間から漏れだす異常な程の悪臭に顔をしかめながら照準をゲートの中に合わせるが暗すぎて全く様子が分からない、武器に装着したフラッシュライトを点けて中に勢いよく突撃したが、その光景は想像を絶していた。

 

「う………!?」

「これは……どういうことだ?」

 

「離反者達が全員死んでる……?」

 

「殺されたっぽいよ…?」

 

「一体どうして……誰に?」

 

M16が辺りを照らして見渡すと、ブリーフィングで見た核弾頭を容れるために使われる保管庫が放置されていた。

 

「おい!見ろ!」

 

「ッッ……?」

 

「あったの?」

 

「ああ……中身もある、だがこれは………」

 

「足りない………一発足りない!」

 

その時、周囲のコンピューターに接続していたSOPMODⅡが何かを起動したのか暗闇に包まれた部屋の明かりが点き、正面の壁一面にスクリーン映像が映し出される。

映像には離反者達が焦った様子で核弾頭をこの部屋に運び入れ、ゲートを閉じる姿がある、だが数秒後にゲートは普通に開き、鉄血の装甲兵士が進行してその手に持ったブレードで斬り殺す姿が映されていた。

そして保管庫から一発だけ核弾頭を鉄血が持ってきたであろう別の保管庫に収納して去っていく。

 

「これは………」

 

「不味いわね……」

 

「あ、見て見て!」

 

運び出される核弾頭とすれ違う様に一人の傭兵が姿を現す。

そして辺りを見渡し、全てを記録していた監視カメラを発見すると、その傭兵の姿にノイズが走ると、その身体が崩れ落ち、傭兵という殻の中から一人の幼い少女が出てきて可愛らしい笑みを浮かべると同時に監視カメラが途絶えた。

 

「な……に……?」

 

「傭兵が……つまり、擬態?」

 

「鉄血のボスにあんな奴が居たなんて……」

 

「小さい奴ならデストロイヤーとかドリーマーが居たが……奴は何なんだ……」

 

突如、AR小隊に緊急通信が入る。

 

≪AR小隊!!聞こえる!?AR小隊!!≫

 

「K5さん!?どうしたんですか!?」

 

≪ああ……やっと繋がった。すぐに合流して!≫

 

「一体何が……!?」

 

≪指定ポイントはそこから数キロ離れた荒野にある大規模難民集落よ!なるべく急いで!!鉄血の部隊がー………ッッ………ッッッッ………≫

 

「K5!?どうしたの!?全力出撃部隊!!!」

 

「急ぐぞM4!ビーコンだけ設置してHQに信号を送信する、ヘリアンさんには追って連絡すればいい」

 

「どうして難民の集落なんて……」

 

AR小隊はすぐにその場を離れ、止み静んだ雪景色のなかを全速力で駆け出す。

 

 

~同時刻~

ー≪鉄血工造・大規模前線基地≫ー

 

 

少女はクスリと笑みを浮かべながら集落に向かって進攻する鉄血の機械人形達を画面越しに眺める。

 

「順調ね……後はあの集落さえ確保出来れば全てが整う。後は見ているだけで終わる……アハハ……」

 

≪……デコイ、状況は?≫

 

「あら、丁度良いわね、あとはあの立地を確保すれば私の仕事は終わりよ……楽勝だったわ」

 

≪この作戦は私達が目覚めてから最初の作戦だ、失敗は許されない≫

 

「分かってるわよ、すぐに終わるわ」

 

≪そうだな……だが一つ問題がある≫

 

「ええ………亡霊ね」

 

≪すぐそこまで来てるぞ、対処出来るのだろうな?≫

 

「もちろんよ……誰も私達を止められない」

 

その時、デコイと呼ばれた少女の背後で侵入者を探知した事を知らせるアラートが鳴り、画面が切り替わる。

 

「亡霊ね……最初のアラートに引っ掛かったなら一番遠くの………っ!」

 

彼女の予想は大きく外れ、画面に映った三人の侵入者は既に彼女がいる前線基地の中央部まで来ていた。

 

「どうして!?機械人形がやられた痕跡は無い、全てフル活動してるのに………」

 

≪む……何かあったのかデコイ?≫

 

「いいえ、何も問題ないわ、それにたかだか三人だけ、居場所が分かった以上どうにでもなるわ」

 

≪三人でも油断するなよ、ゴースト部隊をそこらの軍隊と一緒にするな≫

 

「心配性ね……なら一応、報告しておくわ、相手は三人部隊のゴーストで二人はお揃いの狼が描かれた灰色の趣味の悪いお面を被ってるわね、そしてもう一人は赤黒い色で顔の右上に角の生えた髑髏が描かれてる、どいつもこいつも趣味の悪いー」

 

≪まて、赤黒い角の生えた髑髏の面だと!?≫

 

「………そうだけど?」

 

無線の声の主は非常に焦った様子で声を荒げた。

 

≪今すぐに逃げろデコイ!お前に勝てる相手じゃない≫

 

「は?いきなり何よ、こいつがなんだって言うの?」

 

≪そいつは『切り札』だ!とにかく逃げろ!≫

 

「切り札……『アクシス様』がもっとも殺したがっている奴のサブネームね?」

 

≪分かっているなら撤退しろ!早く!!≫

 

「丁度いいじゃない、私達の初仕事でアクシス様に捧げる土産には……」

 

≪無理だ!お前では勝てー≫

 

 

ブッ………

 

 

無線を切り、デコイは画面に映る男を見つめる。

 

「どんなに強いか知らないけど……所詮は人間、どう頑張っても私には勝てないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………さて、敵に見つかったな」

 

左腕に141の腕章を巻いたUMP姉妹とお揃いのパーカーを靡かせながらグレイブスは仮面越しに呟く。

 

「そうだね、きっと今頃は私達の背後から無数の鉄血が押し寄せて来てる頃だね」

 

45はこちらを睨み付ける監視カメラを破壊し、妖しく微笑む。

 

「やっぱり指揮官は何着ても似合うね!うん!格好いいよ!」

 

グレイブスのパーカー姿をじっくりと観察しながら興奮する9の頭を撫でくり回して落ち着かせる。

 

「激戦になるぞ二人とも……目標はこの前線基地に存在する鉄血の全滅、その後、素早く帰投する。いいな?」

 

「了解でーす」

 

「終わったら今度こそいっぱいご褒美頂戴ね!」

 

「あぁ………終わったらな」

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