光には存在しない者達   作:ペペロンチーノ伯爵

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第一話『記憶汚染』

………………すべてを………殺す

 

 

 

 

 

それは………正しいのだから………だから俺は………

 

 

 

 

 

殺した………………殺した………隊員を全員………殺した………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ゴースト本部・宿舎~

ー≪141:グレイブスの私室≫ー

 

 

「………アクシス、そしてグリフィンか……」

 

作戦から帰投したその翌朝、グレイブスは今回の事を頭の中で整理していた

 

「……………」

(グリフィン…奴等の事はいつもと変わらない、問題になれば最悪の場合、根滅すればいいだろう……だが問題はアクシスだな)

 

アクシスはグレイブスが使用したGFウイルスによって完全にこの世から消滅したはずだったが、奴は復活してしまった、それは変わりない事実である。

その証拠に、グレイブスの目の前に開かれたパソコンのディスプレイに映るペルシカの情報にはアクシスと思われる不干渉ネットワークが世界中の電子世界を行き来している痕跡が見つかり、グレイブスが以前見たアクシスの痕跡と酷似していることからほぼ間違いないと判断した。

 

(奴はどうやって復活したんだ……?GFウイルスを使うことが当時の最後の手段だった、そしてそれは現在も変わらない………)

 

ペルシカの言うとおり、アクシスがGFウイルスに完全な耐性を持っているならば、ゴーストは新たな策略を立てなければならない。

 

「指揮官~入るわよー」

 

「45か、勝手に入って来ても構わないが開けながら入るなら無言で入ってきてくれ」

 

「私もいるよ指揮官!」

 

「今日は早起きだな9」

 

二人はグレイブスの目の前に開かれたパソコンを発見して彼に駆け寄る。

 

「これがアクシスに関するペルシカの情報?」

 

「そうだ、奴の復活は1年前、そこから着実に戦力を拡大していき……たった1年で鉄血人形、そして自ら造り上げた兵器を揃えて使役している」

 

「鉄血の人形を使役することなんて出来るの?」

 

「むしろ奴等は使役されやすい、ボスクラスは無理だが、そこらの鉄血に意識決定権や感情は無く、行動原理は全て暗号化されたネットワークで管理されている」

 

「………てことは、アクシスの十八番って事?」

 

「そうだ、奴はネットワークという概念そのもの、いくら厳重に暗号化されようとも、奴は何の気なしに侵入して自由自在に操れるんだ」

 

「それじゃあゴーストプロトコルも危ない!?」

 

「どうだろうな、ゴーストプロトコルはステルスモジュールを使っているから一年じゃ見付けられないだろう、だが一度見つかれば侵入は容易だ」

 

「それって普通にヤバくない?」

 

「実際はそうでもない、ゴーストプロトコルは確かに俺達にとって重要なネットワークシステムだがゴーストにダメージを与えられるほどの情報も権利もない、ゴーストは元々ネットワークを極端に避けるからな、だから普段作戦指示を貰うためだけに会議室まで行くし、作戦報告も無線もしくは口頭だろ?」

 

そう言われると確かに、そんな風に二人は頷いた。

 

「だからアクシスがゴーストに攻撃を仕掛けるなら間接的にではなく、武力を使った直接的な戦闘になる」

 

「………ねぇ指揮官?」

 

「どうした45?」

 

「指揮官がアクシスを倒すために使ったウイルスってどうして指揮官の名前が使われてるの?GFウイルスはどんなウイルスなの?」

 

「………………………」

 

指揮官は私の問にしばらく沈黙し、深く考え込む。

 

「そうだな……お前たちには話しておこうか」

 

そう言って私達をリビングまで連れてソファに座り、ゆっくりと話してくれた。

 

「……GFウイルス、正式名

≪グレイブス・フェニックス≫ウイルスはあらゆる存在や概念に干渉するミーム汚染だ」

 

「ミーム汚染……たしか特殊情報災害汚染とかって言う………当たり前だと思っていた知識や理解や記憶をそっくりそのまま上書きされちゃうんだよね?」

 

「その通りだ9、GFウイルスによる感染ジャンルはミーム汚染。感染経路は『他者への口外』『情報の閲覧・漏洩』の二つ、つまり見ても聞いてもダメ、かなり強力なウイルス、そしてGFウイルスの正体は………グレイブス・フェニックスの記憶だ」

 

「指揮官の記憶………それがミーム汚染?」

 

「ああ、俺の記憶を何らかの形で知ったモノは人間であれば発狂し、ネットワークに感染すればその回線は侵され永久的に破損する……」

 

「………どうして指揮官の記憶にミーム汚染が?」

 

「それを知ったとき、お前たちはGFウイルスに感染する」

 

「っ………」

 

話しに区切りを付けた時、グレイブスのポケットに入れてあったスマートフォンに着信が入った。

 

「………ペルシカだ、少し出てくる」

 

「え、うん」

 

自室に戻り、椅子に腰かけて電話に出る。

 

「………俺だ」

 

≪おお、まさかワンコールで出てくれるとはねー≫

 

「出なかったら何度も掛けてくるだろ」

 

≪良くわかってるじゃないか……さて………まず私の話の前に、君の疑問に答えてあげよう≫

 

「疑問……?何のことだ」

 

≪グリフィンの事さ、どうして君達を狙っているのか、どうやって存在に勘づいたのか、教えてあげるよ≫

 

「………いいだろう、教えてくれ」

 

≪最近、正規軍のインターフェースに送り主不明のメールが届いたのさ、そしてその内容は君達ゴーストの存在を匂わせる云々な事が書いてあった……意味分かるかな?≫

 

「まぁ、十中八九アクシスだろうな、正規軍の厳重なファイヤーウォールを抜けてメールを送れるのは奴しかいないだろう、動機も予測できる」

 

グレイブスは机に掛けてあった予備のガンポーチからG17を抜き出して眺める。

 

≪そして、正規軍は君たちの始末をグリフィン………もといクルーガーに命令したのさ≫

 

「クルーガーは受けるしかなかったわけか……逆らえば正規軍に潰されるからな」

 

≪そうだねぇ……特異点を越えたとしても、君がしてくれたようにM16を解放しても……傘をへし折ろうとも……圧倒的権力を持ってるのは正規軍だからね~≫

 

「だからこそ、俺達ゴーストがいるんだ、分かっているだろう?」

 

≪……………そうかも知れないけど、君達は実際にはたった100人ぽっちの集団、どれだけ優秀だろうともそれは敵に気付かれていない状況でこそ発揮できるものだろう?もしも正規軍に君達の居場所がバレて彼らが本気で潰しに来たら君達は終わりさ≫

 

「その通り、俺達は闇の底から刃を突き立てる、闇が消え、光によって生まれる影が無くなれば俺達は無力になる」

 

≪ふふふ、まぁ君なら正規軍との全面戦争になってもしれっと生きてそうだけどね………≫

 

「……もう無駄話は終わりにしよう、そろそろお前の本題を聞かせろ」

 

≪おっとそうだったね、良い知らせと悪い知らせ、どっちが聞きたい?≫

 

「良い知らせから頼む」

 

≪正規軍が正体不明の送り主を調べ始めた≫

 

「なるほど、それは実に良い知らせだな」

 

≪でしょ?これで君達にこれからも情報を提供し続けられる≫

 

「いや、お前はもう関わらない方がいいぞ」

 

≪そういうわけにはいかない、こうして君達に協力することで私は君とお話が出来るからね♪≫

 

「………………悪い知らせは?」

 

≪私達IOPもグリフィンのゴースト狩りに参戦することになったよ≫

 

「ふむ……お前は?敵か、味方か?」

 

≪そうだねぇ……これからする質問の答え次第ではどちらにも転がるかな≫

 

「いいだろう………何が知りたい?」

 

通話越しに何枚かの書類を擦り合わせる音が聞こえた。

 

≪さてさて~それじゃあ単刀直入に聞くけど、キミ……存在そのものがGFウイルスのミーム汚染の感染媒体なんじゃないかな?≫

 

「………どうしてそう思った?」

 

≪舞踏会でもチラッと言ったような気がするけど、君が以前指揮していたグリフィンの戦術人形には存在するはずのない人間らしい意思決定権があったんだ、でも彼女たちを調べてもそのような機能は見当たらず、搭載されているハズがないものが彼女たちには宿ってるんだよね、そしてこの現象が起きたのは君が彼女達と関わってから≫

 

「なるほど……それで?お前の見解は?」

 

≪私の考察では感染には3段階のレベル……いや、シーズンとでも呼ぼうか?≫

 

「………………」

 

≪まずシーズン1は常に君から発生しているミーム汚染で、近くに存在するあらゆるモノに何らかの影響を与える、今回のケースで言えば人形のような無機物に心のような生物的感覚を与え、君の範囲内で強力な鎮静力が働く、だから人形達をたった数日で信用させ、たった数ヶ月で纏め上げた≫

 

「………………」

 

≪そしてシーズン2、これは多分……洗脳にも近い感染症で、君の思想や目的、意思決定に陶酔してしまうミームらしい汚染……原因はきっと君と一緒にいる時間の長さによるものかな?少なくとも数ヶ月ではないね、あくまで憶測だけど1~2年での侵攻かな?≫

 

「それで、シーズン3は?」

 

≪それがGFウイルスの真骨頂だよ、君が存在しているだけで周りに自然的に広がるがとてつもなく危険で強力なミーム汚染を撒き散らす……シーズン3はさらに深く君を知ること、つまりは『記憶』だね?君の中にある一部の記憶が最も危険なミーム汚染をもたらす、それが最後の段階、合ってるかな?≫

 

「………………5段階だ」

 

≪……………え?≫

 

ペルシカの声に余裕が無くなった。

 

「俺が保持するミーム汚染には5段階、お前の言葉を借りればシーズン・ファイブまで存在する」

 

≪………それはつまり、記憶を覗く前って事だよね……流石に……?≫

 

「いや、シーズン3までは正解だった、だが俺の記憶にはその記憶の度合いによってミーム汚染の濃度が変わる、アクシスに使ったのはGFウイルス・シーズン5だ、だがシーズン3でも十分過ぎるほど強力だ……」

 

≪………なるほど、シーズン4について喋れば私がミーム汚染に感染するわけね≫

 

「そうだ、だが心配するな。GFウイルスは俺が喋らない限り誰にも感染しない、感染するのはシーズン2までだ」

 

≪分かった……教えてくれてありがとうねグレイブス君≫

 

そう言ってペルシカは通話を切り、スマートフォンを机の上に置いた。

 

「………グレイブス君、それはつまりね……君は誰にも記憶を喋れないってことだよ………それほど苦しい事はない、どんなに辛い過去があろうとも、君は呟くことも出来ない……」

 

通話を終えたグレイブスがリビングに戻ると、ソファーの上でいつ招き入れたのか楽しく談笑しているイェソドの姿を見つけた。

 

 

「いつの間に……?」

 

「さっきだグレイブス………それで?ペルシカはなんと?」

 

「良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」

 

「良い知らせから聞きたいー!」

 

「悪い知らせからの方が良くない?後が楽よ」

 

「グレイブスのお好みで構わん」

 

「ならジャンケンしろ二人とも、ジャンケンだ」

 

「よーし!行くよ45姉!!最初はグー!」

 

「ジャンケン………ポイっ!!」

 

「………………じゃあ悪い知らせから行くぞー」

 

「うぅ……負けた…」

 

「フフン…♪」

 

グレイブスは向かい合う二つのソファーのUMP姉妹側の手前に立ち、壁に寄りかかってイェソドに聞かせるように話す。

 

「まず、グリフィンが俺達の存在を認知してはいないが深く探りを入れているのは事実であり、更にグリフィンのゴースト狩りにIOPが加わってより手強くなった」

 

「なるほど……つまり我々の存在が認知されるのも時間の問題か」

 

「それって……どうなるの?」

 

「良い知らせは……俺達の存在を仄めかしたのはアクシスだ、アクシスは正規軍にメールを送り、正規軍はゴーストの排除をグリフィンに命令したと言うこと、そして正規軍はゴーストの排除と同時にアクシスの正体を探り始めた」

 

「それはいい知らせだな、ゴーストプロトコルなら正規軍の収集した情報を探るのは容易い」

 

「そう言うことだ」

 

「確かに………でも一気に色んな話が出て来て困っちゃうねー、まずはどうするの?」

 

そこでイェソドが手を叩いてソファーから立ち上がり、三人にそれぞれ同じ書類を手渡す。

 

「それについて、お前たちに新しい任務だ………正規軍が一枚噛んでいる話は事前にペルシカから暗号化されたメールとともに把握していてな、正規軍への攻勢に出る」

 

「それが新しい任務?」

 

「でも正規軍は手強いよ?私達で対処できるほど簡単じゃないと思うんだけど?」

 

「確かにな、いくらゴーストが精鋭の集まりで正規軍よりも高性能な技術を保有するとはいえ、物量差を考えれば俺達に勝ち目はないぞイェソド、策はあるのか?」

 

「もちろんいきなり本部に殴り込んだりはしないさ、ここは俺達の十八番で行く、作戦名は≪グランド・ウォー≫正規軍の圧政を善しとしない難民反政府ゲリラ勢力の侵攻に扮してお前たち141分隊はまず正規軍の前哨基地を奪取する。そしてそこを拠点にいくつかのゴースト分隊を送り、その分隊と共に次のエリアである中継地を制圧、そこまでが一次作戦だ」

 

グレイブスは書類に目を通しながら口を開く。

 

「ゲリラの総戦力は3000+141分隊三名に対して前哨基地の防衛に就いている正規軍の戦力は機工兵含めて兵士8000、自立型戦闘兵器500………かなり厳しい戦いになるな、141が全滅するのは万が一にもあり得ないが前哨基地へたどり着く前にゲリラが全滅したらその時点で作戦は失敗だな」

 

「でも、戦場はビル街の奥地、時間は掛かるけど複雑な地形での戦闘はその場から動けない防衛側が不利のはずでしょ?補給ラインを叩いて兵糧作戦に持ち込めば……」

 

「本来ならそれが正解だ9、だが今回は相手が悪い、奴等が所有する戦闘兵器は電力供給無しで1年以上稼働する優れものであり、時間が掛かりすぎる……それにこの作戦……一見ゲリラ側からの攻勢に見えてそうじゃない、正規軍側の蹂躙がオチだ」

 

「どゆこと?」

 

グレイブスは部屋の端っこに置かれたホワイトボードをテーブルの上に置き、ペンで戦図をスラスラと描き始める。

 

「この戦場から俺達は省く、まずゲリラが所有する具体的な戦力、ゲリラ兵が2800、そして航空兵器が50、残りは非武装車両を含めた地上兵器だけだ……そんな戦力に正規軍が黙って迎え撃つ訳がない、どう考えたって向こうから打って出てくるに決まってる、攻めてくる敵よりも圧倒的な戦力があるなら守るより攻めるべきだからな、ようするにこの作戦の成功率は極めて低い」

 

「………なら、どうするの?そんなに危険な作戦………」

 

「低いが……ゼロじゃない、ゲリラ達の勝率が直接141分隊の勝率に繋がるのは確かだが、逆に言えば俺達の勝率がゲリラの勝率に繋がる、俺達の役目はいかにゲリラ兵士の数を減らさずに彼らを前に進めるかが鍵だ」

 

「でも、それも結局ゲリラ兵の頑張り次第でしょ?私達がいかにうまく動いたとしてもゲリラ兵が怖じ気付いて逃げ出したらおしまいよ」

 

「それはやってみないと分からない、だがゲリラ兵たちは皆追い詰められた挙げ句の抗争なのだろう?ならば大丈夫さ、背中に壁を押し付けられた人間は前以外には進めないからな」

 

「あの……それってつまり私達が一番働くってことじゃないんですか指揮官?」

 

「そうだが?」

 

「うへ……頑張ります」

 

「話はまとまったか141?この作戦を受理してくれるか?」

 

「ああ、激戦になるがやる価値はある」

 

 

~Aクラス紛争区域前~

ー≪反政府ゲリラ車両トラック内≫ー

 

 

トラックの荷台の中で、緋黒の角が生えた鬼の仮面を被ったグレイブスはUMP姉妹と同じパーカーの上に黒のローブを羽織って両手に持ったAK-47に40ラウンドマガジンを装填する。

 

「そこの仮面を被った三人組」

 

「っ………?」

 

向かい側に座っていた中年位の男がこちらを顎で差しながら話し掛けて来た。

 

「あんたら、キャンプ場に居たときからそうだが、どうして仮面を被ってるんだ?」

 

「………………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「まさかとは思うがあんたら、正規軍のスパイなんじゃー」

 

そこまで聞いてやむ終えずグレイブスが答えた。

 

「すみません……こっちの二人は私の兄妹で、狐色の子が妹で、こちらが姉です」

 

45と9は仮面を被ったまま静かに頷いた。

 

「仮面を被っている理由は………その………正規軍の奴等に家族を殺されたあと、残された私たち三人は正規軍に顔を焼かれました………それで妹たちは喉を失い、私は片眼が………」

 

「あ………それは………その、すまなかった、そんなつもりは無かったんだ、私が悪かったよ…可哀想に………」

 

「いえ、ここには多くの人たちが私達以上の苦しみと怒りを持ってます、ですから……こうして武器を手に立ち上がったんです」

 

グレイブスの演技は完璧だった、ペラペラと話しているうちにトラック内のゲリラ達の信頼を勝ち取ったのだ。

 

「その通りだ……!正規軍の奴等を殺して俺達の生活を奪い返すんだ!!だからここでー」

 

刹那、グレイブスが乗っているトラックの横を並走するバンが十字路を曲がった瞬間に弾けとんだ。

 

「っ……!!!」

 

「なに!?何が起こった!!!」

 

すぐにグレイブスは45と9の手を引いてトラックから飛び降りると。

さっきまで乗っていたトラックが目の前で吹き飛ばされた。

 

「ふぅ……行くぞ二人とも」

 

「危なかったねー、お兄ちゃん♪」

 

「お兄ちゃん……結構いいかも」

 

「ふざけてる場合じゃない、作戦開始だ」

 

グレイブスの予想通り、正規軍は一方的な蹂躙作戦を執行して次々とゲリラ兵達に攻め込んで来た。

 

「45、9、俺が渡した弾丸は持ってきたか?」

 

「持ってきたよ?」

 

「あるよー」

 

ゴーストが開発生産した

『UMP専用弾薬:10㎜フルメタルジャケット弾』

を装填した二人はずっしりとしたその重みに少しの違和感を覚えながら構える。

 

「その弾なら正規軍が使ってるアーマードスーツの装甲を簡単に貫けるだろう」

 

「なるほど………指揮官のは?」

 

「ん?あぁ……AK-47の基本弾丸である7.42㎜ソビエト弾の特徴は貫通力が低い代わりにターゲットが固ければ固いほどそれに対する強力な炸裂力があるから奴等の装甲には逆に有効なんだ」

 

「へー……そうなんだ」

 

「………来るぞ、俺が先導する」

 

ゲリラ兵に混じって最前線まで出た三人は的確に不利な戦況を背負わされている戦場に向かって効率的に敵を殲滅していく。

グレイブスの背中に続いて9が武器を構えて弾を連射すると、いつもより重く感じていたはずの武器が一発撃つ度に照準器が大きく跳ね上がる。

 

「うわっとと……すごい反動……」

 

「しっかり制御しろ9、遅れるな」

 

「だってさっき使い始めたばっかりだもん!!」

 

「あと20秒で完全に使いこなせ、出来なければお前を前線から下げる」

 

「んな!?あり得なくない?ねぇ45姉!?」

 

「ん?私は慣れたけど」

 

「早っ(゜ロ゜;や!!」

 

絶対に無理だから!!ぜったいムリ!!

そんな事を考えながらもなんとか当てられるようになってくると、それを見計らったようにグレイブスは次の戦場へと駆け出し、区間を制圧し始める。

 

「………やっぱりすごいなぁ指揮官……」

(すごい音してるけどほとんど外さないし……反動を完璧に制御してるんだろうな…どうしたらあんなに強く………)

 

「きっと心構えが私達とは根本的に違うんだと思う」

 

「45姉………」

 

39発ジャストで撃ち止めてマガジンを弾き飛ばしながら次のマガジンを装填して素早く撃ち始める指揮官の背中を見ながら45は独り言のように呟いた。

 

「たったの一発でも外したら死ぬ、狙いがコンマ数秒でも外れたら終わる。きっと指揮官はそんな風に考えながら戦ってるだと思う、指揮官だからこそ常時張り詰めた状態で戦い続けられる………」

 

「それが指揮官の強さってこと?」

 

「………多分違う、でも、近いかもしれないわね」

 

次の弾倉を入れ換えた所で指揮官が振り向く。

 

「何をボヤいてる、集中しろ、死ぬぞ」

 

「あ、はい!」

 

戦況は141分隊が考えていたよりも好転しており、順調に正規軍の猛攻進を突破して前哨基地攻略が本格的に視野に入ってきた。

その一方で前哨基地の司令官を任されていた正規軍兵士は既に本部に応援を要請していた。

 

「こちら第74号前哨基地!ゲリラ兵の猛攻を止められず、先見部隊が全滅しました!念のために追加の援軍を求む!!」

 

≪………そう焦るな、既にそちらに援軍を送ってある≫

 

「ありがとうございます、因みに数は?」

 

≪西と東に最新型一つずつ、北にはグリフィンの人形の小隊を一つ、そろそろ現地に到着するころだろうな≫

 

「ご冗談を……信じて下さい!ゲリラの勢いは凄まじく!念を入れなければ突破されてしまいー」

 

≪黙れ、私の判断に口答えするのか?≫

 

「っ……申し訳ありません……」

 

戦場は更に激化し、前哨基地に近付くにつれて正規軍も守りを固めてきたことも相まってゲリラ側の戦死者も増えてきた。

だが戦況は依然としてゲリラ側が優勢であり、彼等の勢いは凄まじくその行進を止めることは出来ないだろう。

 

「指揮官!この調子なら!」

 

「ああ………だが油断するなよ、敵の司令官が優秀なら既に援軍を要請しているはずだ、一発で戦況をひっくり返される可能性だってある」

 

「分かってるわよ、このまま慎重に行きましょ」

 

この戦場の気配の揺れに本能的に気付いていたグレイブスは常に備え付けてあるゲリラ間の無線機に気を張っていると、その時が来た。

 

≪だ、誰か!!≫

 

「っ!!」

 

≪誰か西部の公民館に来てくれ!!どんどん殺られてる!!相手はッー………≫

 

「………」

 

銃声と共に途切れる無線を聞いてグレイブスは二人を連れて現場に向かおうとした時、別の無線が入った。

 

≪東部にも増援が必要だ!!!このままじゃやられちまう!なんなんだアイツっー………≫

 

こちらも途切れ、戦況は徐々に不安定になっていく。

グレイブスは思考を素早く巡らせ、0.2秒だけ足を止めてすぐに北へと駆け出す。

 

「45!お前は東へ、9は西に向かえ、そして状況を俺に報告しろ、報告に応じて応戦に向かう」

 

「了解!!」

 

「分かったわ、行ってくる」

 

「いいか、あくまで偵察だ、決して交戦するなよ、相手が誰であろうともだ」

 

「はーい!」

 

「無茶はしないわよ」

 

左右に別れて駆け出した二人を見送り、飛来する弾丸から身を隠しながらグレイブスはゲリラ兵と共に正規軍を殲滅していく。

前哨基地まで残り数キロの地点まで押し込んだ時、最前線を進むグレイブスを含む数十人の身体が赤く点滅し、その頭上に見覚えのあるマークが印された。

 

「これは………………ッッ!烙印か!!」

 

グレイブスは背後でマークに困惑しているゲリラ達を気に掛ける暇などなく、急いで近くのビルの中に飛び込む。

すると猛烈な爆裂とその爆風によって一瞬にしてゲリラ兵の集団が全滅して前線が崩壊する。

爆風によって吹き飛んできた瓦礫や破片によってグレイブスが羽織っていたローブは弾け飛び、141の腕巻きを付けたパーカー姿が露になる。

 

≪ッッ………指揮官~?東に居たのは正規軍の最新兵器だったよ、ほかに増援もいなさそうだし、私一人でやれそうだけど?≫

 

≪指揮官!こっちも多分おんなじ最新兵器が一機だけだよ~!一人で終わらせちゃっていい?≫

 

「っ………ああ、それなら素早く処理してくれ……こっちも少し野暮用ができた」

 

視線を上げると、グレイブスの目の前には良く見慣れた小隊がこちらに武器を構えたまま近付いてきていた。

 

「………厄介だな……」

 

グレイブスはゴースト専用の回線を起動して静かに呟く。

 

「作戦の失敗要素が出てきた、早急に対処を頼む………」

 

「そこの人間!ゆっくり立ち上がって武器を捨てなさい!!」

 

グレイブスに武器を向けるのはグリフィンの141部隊のAR小隊だった。

 

「…………っ!気を付けて下さい!あの男、舞踏会で私達が逃した者と同一人物かもしれません!!」

 

「っ!!」

 

「こんな所で再開するとはね……!」

 

「………………」

(やはりROの察知能力はずば抜けているな……)

 

男はスクっと立ち上がり、角が生えた鬼のような仮面から覗く蒼色の眼光はAR小隊の面々を睨み付ける。

 

「っ………………武器を、捨てなさい!」

 

「あの服装……何処かで………」

 

「この状況で反撃しようなんて考えない方がいいわよ」

 

「大人しく武装解除すれば危害は加えません、さぁ、早く!」

 

「………………」

 

男が両手に持ったAKを腰より下げるのをM4が目で追ったその瞬間、男は後ろに糸が切れたように倒れ込みながら片手に下げたAKをこちらに向けて連射してきた。

 

「なに!?」

 

「っ!撃て!!!」

 

怯まず応戦し始めたが、放たれた7.42㎜弾がSOPⅡの膝に被弾してしまった。

 

「SOPⅡ!!」

 

「視線を逸らすなM4!!」

 

「ッッ!?」

 

倒れ込んだ男は地面を速く、そして滑らかに転がって柱に隠れた。

 

「SOPⅡはROに任せた!AR-15!M4!畳み掛けるぞ!!」

 

「了解!」

 

「分かった!!」

 

散開して素早く柱を取り囲もうとしたが、男は破壊力の高いAK-47を連射して柱をズタズタに炸裂させ、柱を貫通した7.42㎜が正面で走っていたM16に何発か被弾する。

そして両側から回ってきたAR-15とM4が同時に武器を柱の裏に向けた瞬間、姿勢を極限まで低く保ったグレイブスはAKをM4に投げ付けながら左手に持ったP226をAR-15の肩に一発撃ち込んで狙いをずらせ、投げ付けたAKに一瞬だけ怯んだM4の懐に滑り込んで彼女の脚を蹴り払ってAKを空中で回収。

 

「ッッ……あっ……!」

 

体勢が崩れた彼女の武器のマガジンを片手で奪い捨て、腕を引いて隣で狙いを付け始めていたAR-15に投げ飛ばした。

 

「クッ………!」

 

「強い……!!」

 

「ちっくしょう!!」

 

重なった二人に向けてAK-47を構えた瞬間、グレイブスの目の前に閃光手榴弾が飛び映った。

 

「っ………」

 

閃光手榴弾を肘で二人の方に殴り飛ばし、右目を閉じながらM16に銃口を向ける。

M16も倒れ込みながらグレイブスに狙いを定めていたが、正確に狙いを定めていない彼女が放った数発の弾丸はグレイブスの致命傷には当たらず、逆に同じ条件で狙いを定めた彼の弾丸は一発も外す事なくM16の左肩、右膝、脇腹に三発とも命中した。

そして最後の弾丸はM16の頭部に目掛けて放たれたがM16はこれをギリギリで躱す。

 

「ぐっは………っ危なかった……!」

 

「………………っ」

 

弾切れのAKを腰に下げ、P226を抜いてこちらに銃口を向けているROの両膝を撃ち抜いて動き始める前にSOPⅡの腹部に一発撃ち込む。

そしてAR-15に支えられながら武器を構えようとするM4の武器を蹴り落として距離を取りながら五人全員を視界にいれてAR-15とM4に銃口を向ける。

 

「っ………!」

 

「………………」

(………そろそろか)

 

「お前……目的は何なんだ?なぜゲリラの味方をしてる?」

 

「………………」

 

M16の問いを無視して銃を構えていると、グレイブスに無線が入った。

 

「………了解した」

 

グレイブスはP226を下げ、マガジンを抜いて弾倉を取り替えようとした。

その一瞬を見逃さなかったM16が武器を構えて引き金を引こうとした瞬間、彼女達にも無線が入る。

 

≪その男を撃つな!≫

 

「ッッ………ヘリアンさん……?」

 

≪何処から発動されたかは分からないが……楔の誓約が発令した≫

 

「楔の誓約……?なんだそれは!?」

 

≪楔の誓約、その権利を発動した者の要求は必ず執行される≫

 

「何ですかそれ……そんなのがあるなんて聞いてないですよ!?」

 

「………………」

 

≪私だってこんなものがあるなんて知らない、だがクルーガーさんからの命令だ、従え≫

 

「ッッ………!!!」

 

≪………だが、楔の誓約には発動者の要求に見合った何かしらの対価を開示しなければならない、その男が開示する対価次第では誓約は拒否できる≫

 

「対価だと………?」

 

AR小隊が仮面の男に注目すると、男は左手に付けた腕時計に目をやり、少しだけため息を付いた。

 

「お待たせ指揮官~!ちょっと遅れちゃった」

 

「え……?」

 

「指揮官もいま終わったところ?楔の誓約を発令したみたいね」

 

「そんな……バカな?」

 

「このままじゃ作戦に大きく遅れが生じるからな、仕方なかった」

 

「まさか………貴方は………!?」

 

左右から現れたお揃いの狼の仮面を付けた二人は指揮官と呼ばれた男の隣に立ち、三人は仮面を外した。

 

「45……9…お前ら……」

 

「ほんの数ヶ月振りね、M16」

 

「久しぶりAR小隊のみんな、元気にしてた~?」

 

「ッッ………指揮官……?」

 

「久しぶりだな、AR小隊」

 

グレイブスはP226の弾倉を入れ替え、ホルスターにしまって今度はAKのマガジンを抜き捨てた。

 

「舞踏会に居たのも……貴方だったんですか………でも、あんなに近くに居たのに全く気が付かなかったなんて……」

 

AK-47のマガジンの取り替えを終えたグレイブスはROにさっきまで付けていた仮面を向けて見せる。

 

「?…………はっ!」

 

「分かったか?」

 

「その仮面のジャミングの仕組みは、私達の認識システムにズレを生じさせる……ですか?」

 

「そうだ、この仮面を被っている限りは知っていても俺をオレと確実に認識することは出来ない、ゴーストの基本的な装備だ」

 

「………ゴースト………………!?!?」

 

M4は目を見開き、もっとも恐れていたその言葉に息が詰まった。

 

「俺達は亡霊………この世に存在するはずのない者……決して、光には存在しない者達だ」

 

「そんな……そんなこと………本当に………?」

 

「俺達の目標は正規軍だ、お前達に用はない………だがそれでも俺達ゴーストの邪魔をするなら………」

 

グレイブスは45と9を連れて5人の間を通り抜ける。

 

「次は無いぞ、ゴーストは迷いなくお前たちグリフィンを潰す」

 

「………………」

 

グレイブスにとってAR小隊は今でも家族のような存在である、だがそれはあくまでグレイブスの中だけの存在であり、ゴーストと敵対した時点で家族のように接した存在も彼は仕事として割り切り、AR小隊を家族として扱いながら家族として彼女たちAR小隊、そしてグリフィンの人形達を殲滅できるだろう。

それはAR小隊も知っている事だ、グレイブス・フェニックスという男は嘘を付かない。

 

「警告はしたぞ、それじゃあな」

 

「っ………」

 

「命拾いしたわね、これ以上私達に関わらないほうが良いわよ」

 

「次は本当に殺しちゃうからねー、バイバーイ」

 

その後、ゲリラ兵の波は止まらず、2日と掛からずに前哨基地は完全に制圧された。

ゲリラ側の勝利である。

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