学園都市の第六位   作:さかき(ヒロタカリュウ)

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行間 昔話

 昔話をしよう。

 

 そもそも、テュールとは覚えている限りでは五番目の名であり、藍花悦とは四番目のそれだった。

 

 名前とは、単なる個々人を指す識別信号に過ぎない。

 研究者たちはこぞって俺に名前を付けた。怪物だの化物だのといった蔑称を含めれば、俺という人間を指す信号の種類は両手の数では足りなくなるほどだ。

 

 俺が目覚めた時、つまり、記憶喪失になたっであろうその日は、出来すぎたような一日だった。

 

 学園都市内で目覚めた俺。病院のベッドの上だった。あのカエルみたいな顔をした、医者の病院。おおよそ25年も前の話だ。あの頃は『冥土返し(ヘブンキャンセラー)』なんてご大層な呼び方はされていなかったが、腕前については既にそこらの医者を凌駕していた。

 

 俺は不老不死であり、体についた傷は勝手に修繕される、という呪いをかけられているそうだった。その原因は、アレイスター=クロウリー。つまり学園都市統括理事長であると聞かされた。なにしろ、俺には右腕がまるまる無かったのだ。医者がいくら優秀と言えど、欠損した肉体の一部を作るような技術は持ち合わせていない。そこで、医者は知り合いであるアレイスターと協働し、俺の体を不老不死にすることでことなきを得たのだという。

 前述の通り、俺は体を傷つけられれば時間経過で修繕する。だが、まるごと欠損した右腕が生えてくるとは、流石に医者も考えられなかったらしい。事実、回復は微々たるもので、抉れた肩口が閉じられるように皮膚が伸びているだけだった。あるいはさらに時を待てば生えるかもしれないが、片腕になってしまっては都合が悪い。俺は医者に相談したあと、アレイスターと契約し、とある実験に参加するという条件で体をサイボーグ化した。右胸と右の背中の皮膚を削り、義手を支える強度を確保するため外面を大きく機械化。そこに機械義手を装着することで、日常生活に支障をきたさない程度に右手を使って行動できるようになった。

 

 実験の内容は、脳に超能力開発を施したいという話だった。俺は記憶喪失で一般常識は欠如していたが、それでも正気の沙汰とは思えなかった。だが、身元も不明でここまで世話になり、さらに約束もしているとなると流石に今から逃げられない。当時は金もなかった。俺はそれを承諾し、学園都市で初の能力開発を施された。俺は当時のスーパーコンピュータを超える演算処理能力と、『筋力強化(アクチュエータ)』と呼ばれる超能力を手に入れた。

 

 実験の報酬として、莫大な資金が手に入った。不老不死であるので、金が無くても生きていけるが、しかし社会というシステムの中で暮らす以上、金というのは必ず身の回りにくっついている。あって困るものではない。俺は以後も金を報酬に数多の実験を受けることとなった。

 

 アレイスターは不気味な男だった。その容姿から年齢を窺い知れることはできないが、どこかで見たことがあるような気がする顔だった。もしかすると、記憶を喪失する前に会っていた可能性がある。或いは、全てを隠していて、記憶喪失の原因がアレイスターにある可能性もあった。

 

 全て推測に過ぎないが、しかしヤツが何かを企んでいるのは間違いない。『プラン』というものが何を指すのかもわからない。

 

 そして全てを知るのは、もう少し先のこととなる。

 アレイスター=クロウリーとは。

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