真・ごとき転生 スウォルチルドレン   作:サボテン男爵

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アイドルマスター編

 一本角の生えた赤い鎧の戦士が、コンクリートの壁に叩きつけられる。

 轟音、反響、舞い上がる土埃――そしてうめき声。

 

「ぐ……が、あ……」

 

 頑強な鎧越しでもあっても遮る事の出来ぬダメージに、苦痛の声が上がる。

 しかしそれに対して答えるのは、黒い怪人の冷ややかな声音。

 

「ふん……所詮は非ィ戦闘系世界への転生者。戦いの経験値がまるで足りん。“彼”のように7年間の鍛錬を続けた訳でもなく、“カブト”の力が本物と遜色なくとも宝の持ち腐れ」

 

 仁王立ちする黒い怪人を前に、カブトの力を持った転生者はよろめきながらも立ち上がる。そしてベルトに手を当て――

 

『Clock Up』

 

 機械音と共に、周囲の光景が一気にスローモーションへと様変わりする。

 タキオン粒子を使った時間流への干渉――クロックアップシステム。

 あらゆる相手に対し“スピード”で勝るというアドバンテージを手に入れる。

 

「だが無意味だ」

 

「なっ!?」

 

 通常の時間に置き去りにしたはずの怪人は何事もないかのように動き、カブトの転生者は何度もベルトに手を当ててクロックアップが正常に作動していることを認識し、愕然とする。

 

「時間への干渉は、何も貴様だけの特権ではない」

 

「お前は、一体……」

 

「アナザーダークディケイド――もっともその様子では、“ジオウ”以前の転生者のようだな」

 

 カブトの転生者も、目の前の相手は知らずとも仮面ライダーディケイド自体は知っていた。

 その言葉から、自分が死んだ後の仮面ライダーに登場した怪人だろうということも。

 だとしたら――仮にあの怪人が、ディケイドと同等以上のスペックをもつ相手だとしたら――

 

「くっ――!!」

 

 駆け寄り、拳を振り抜く。

 本来なら超高速となるはずの一撃は、同じ時間流に立つ相手には相応にしか映らず。

 拳は予定調和のようにいなされ、次の待つのは反撃の連打。

 

 殴打、蹴り、肘打ち――特殊な能力は一切用いない、純粋な格闘攻撃。

 しかしながら流れるようなコンビネーションで放たれる連撃は、確実に赤い鎧を打ちのめす。

 

『Clock Over』

 

「頼みの綱のクロックアップもここまでか。もっとも、何の役にも立っていなかったがな」

 

「こんなっ! ところでっ!」

 

 焦りと共に、ベルトに装着されたカブトゼクターを操作する。

 

『Rider Kick』

 

 赤い角から右足へと雷が走り、必殺技へのパワーがチャージされる。

 タキオン粒子を波動へと変換し、触れたものを原子崩壊させる蹴撃。

 

「うおぉぉぉぉーー!!」

 

 跳び上がり、足を突き出し、アナザーダークディケイドへと矢のように奔り――

 

 カウンターとして振り抜かれた黒い拳に仮面を叩き割られた。

 

「があっーー!?」

 

 地面を転がり土まみれになる赤い鎧。

 砕かれた仮面の奥からは、揺れる生身の瞳が覗いている。

 

「カブトもどきが、オレに何かできると思ったか?」

 

 淡々とした声が、朦朧としたカブトの転生者の耳に届く。

 

「相手の隙も作らずに使った考えなしの大技が、本気で通用するとでも? ふん、その様子ではもう碌に聞こえてもいないか」

 

 通常の時間流へと帰還した二人。

 しかし戦いの行方は既に明らかで――否、そもそも戦いと呼べるほどのものだったか。

 終始怪人がペースを握り、赤い鎧はなぶられただけ。

 

 もはやこれ以上の言葉は不要と、アナザーダークディケイドは倒れ伏したカブトの転生者へとゆっくりと歩を進める。

 

 コツ、コツ、コツ、コツ――ガタリ。

 

 自らの足音に異音が混じるのを察知し、怪人は歩みを止めた。

 

「あっ……」

 

 向けられた視線の先で、ビクリと体を震わせる女の子。

 小柄な体躯に、くせっ毛気味の長い緑色の髪。

 物陰に隠れて今の一連の流れを見ていたのだろう。

 

「一般人か――さっさと消えろ。子供の起きている時間じゃない。今日のことは忘れるといい」

 

「わ、私は……」

 

 威圧感のある言葉を前に身を縮こませる少女だが、震えながらも立ち上がる。

 

「そ、その人に! 一体何をするつもりだ!?」

 

 答える筋合いも、義理も、必要もない。

 だが奮い立たせた勇気に敬意を払ったのか、怪人は重々しく答える。

 

「――こいつはこの世界に紛れ込んだ異物だ。相応に処理するのみ」

 

「き、君は……」

 

 今のやり取りの間に意識がはっきりとしてきたのか、カブトの転生者が弱々しく声を響かせる。

 

「南条……光?」

 

「え?」

 

 ポカンとして目を丸くする少女。

 

「知って、いる? 私のことを、ヒーローが知ってくれている?」

 

 光と呼ばれた少女の体が震える。

 それは先ほどまでの怯えによるものではなく――歓喜と感動によるもの。

 少女は声を張り上げる。

 ステージで数多のファンに向ける声を、一人のヒーローへと向けて。

 

「頑張れっ!! 負けるなヒーロー!!」

 

 その純粋な思いのこもった声援を前に、カブトの転生者は――

 

「……………………………………お、おう」

 

 なんかもう、滅茶苦茶後ろめたそうな目をしていた。

 

                      ◇

 

転生者愚痴りスレ Part19

 

 

 

101:名無しのごとき氏

なんて茶番だ。

 

 

102:名無しの寺生まれ

いつもの如くやさぐれているっスねー。

 

 

103:名無しの装者

また何かあったんですか?

 

 

104:名無しのごとき氏

人間って、見た目の生き物なんだなー、って。

 

 

105:名無しの装者

その言葉は私に刺さる。

あの時はごめんなさい。

 

 

106:名無しのごとき氏

>>105 いいよ。

一から説明すると、今回辿り着いたのはアイドルマスターの世界線。

この後はアイマスと略するので悪しからず。

 

 

107:名無しの記憶探偵

ふむ。そうなると、アイドルかプロデューサーに転生者がいたのかね?

 

 

108:名無しの装者

アイドルかぁ。翼さんも歌手だし、ちょっと興味あるかも。

 

 

109:名無しのごとき氏

>>107 ご名答。プロデューサーの転生者がいて、依頼を受けた。

なんかライブ中に非合法に撮られた写真がばらまかれているから、調べてほしいって。

 

 

110:名無しの鬼っ娘

写真撮ったらダメなんだっけ?

 

 

111:名無しの寺生まれ

基本的にはそうっスね。最近は解禁される場合もあるっスけど。

でもわざわざごとき氏に頼むようなことっスか、ソレ?

 

 

112:名無しのごとき氏

ただの盗撮写真ならマナーの悪い観客で済むんだけど、明らかにおかしな写真があったからって。

アングル的に、観客席からは絶対に撮れない写真が混じっていたんだよ。

それこそステージの上から撮ったようなものまで。

 

 

113:名無しの魔法提督

なるほどな~。そりゃ怪しい。

 

 

114:名無しのごとき氏

そっからは現地の探偵とかと協力しながら調べてね。

調査の詳細は省くけど、一人の男が写真の流出元だってわかった。

後はどうやって写真を撮ったのかって部分だけど、監視していたらその男、仮面ライダーカブトの力を持った転生者の事がわかってな。

 

 

115:名無しの記憶探偵

………………なんだかものすごくくだらないオチが見えた気がするのだがね。

 

 

116:名無しの寺生まれ

オレもっス。

 

 

117:名無しの魔法提督

え~っと……つまりクロックアップを使って写真を撮ってた?

 

 

118:名無しのごとき氏

ざっつらいと

 

 

119:名無しの装者

字面からごとき氏さんのやるせなさが感じ取れますね……

 

 

120:名無しの鬼っ娘

クロックアップって何さ?

 

 

121:名無しのごとき氏

簡単に言えば時間操作。

周りの時間をすごくゆっくりにして、相対的に超スピードで動ける。

登場する回や作品ごとに描写は違うけど、今回の場合は時間停止に近いレベルだった。

 

 

122:名無しの装者

そんなトンデモ能力を盗撮に使った訳ですか。そうですか……

 

 

123:名無しの寺生まれ

ひたすらに空しいっスね。

 

 

124:名無しのごとき氏

まあ種さえ割れてしまえば後は簡単。

能力の相性的に、オレなら問題なかったし。

実際本人も弱かったから。

 

 

125:名無しの魔法提督

でも主役ライダーの力を持っていたんだろう?

 

 

126:名無しのごとき氏

“力”だけだよ。中身はてんで素人さん。多分ケンカすらやったことないんじゃないかな。

主人公補正もなかったし、案山子みたいなもんだ。

 

 

127:名無しの記憶探偵

なかなかに辛辣だね。

 

 

128:名無しのごとき氏

ちょっと思うところがあるってだけだよ。

それでまあ、倒すのは簡単だったんだけどさ。――現場に南条ちゃんが居合わせた。

 

 

129:名無しの魔法提督

あー、確か特撮趣味のアイドルの子だったっけ? うん、オチが見えた。

 

 

130:名無しの寺生まれ

倒れた仮面ライダー。迫る怪人。うん、“見た目”ってそういうことっスか。

 

 

131:名無しの装者

私の時と同じパターンですね(白目

 

 

132:名無しのごとき氏

元々カブトモドキもライブの時に出現するから、偶然がかみ合ってエンカウントしたというか。

ご丁寧に仮面砕け演出までしちゃったからなー。

南条ちゃん、あのカブトモドキのこと応援し始めちゃって。

 

 

133:名無しの鬼っ娘

でも実態は盗撮犯なんだよね? 間が悪いなー。

なんか憑かれてるんじゃない? アンタ。

 

 

134:名無しのごとき氏

>>133 最近そんな気がしてきた。いや、実際ずっと前からそんな気もしてるけど。

まあだからアレだ。子供の夢を壊すわけにもいかないし、急遽時間を止めてカブトモドキと作戦会議。

 

 

135:名無しの鬼っ娘

シュール過ぎるんだけど。

 

 

136:名無しの魔法提督

子供に現実を教えるのも、大人の役目じゃないのか?

 

 

137:名無しのごとき氏

現実を教えた後の責任とかとれないし。

それだったら夢を守って、問題を先延ばしにした方がマシだ。

 

 

138:名無しの魔法提督

そういうとこだぜ、ごとき氏。

 

 

139:名無しのごとき氏

うっさいわ、わかってるよ。

幸いというか、カブトモドキ君も南条ちゃんからの応援で完全に心が折れたっぽくてね。

「なんかもう穴があったら入りたい。いや、いっそ墓穴に入りたい」って。

ぶっちゃけオレから殴られた時よりも、よっぽどきつかったってさ。

 

 

140:名無しの寺生まれ

まあ盗撮しといて、知らずとはいえその被害者から声援受けるのはきついっスよね……

 

 

141:名無しの装者

根はそこまで悪い人じゃなかったんですかね?

 

 

142:名無しのごとき氏

擁護するわけじゃないが、盗撮写真もアウトなシーンや際どいシーンとかはなかったからな。

写真も彼がバラまいた訳じゃなかったみたいだ。

自分用のアルバム的なものだったみたいだけど、パソコンのフォルダに入れといたのがハッキング喰らって流出したっぽい。

強盗とか盗みみたいな他の犯罪行為にも力は使っていないし、単純にアイドルのファンで、そこに力を持ってしまった故の結果というか。

“魔が差した”ってやつだな。

 

 

143:名無しの記憶探偵

ふむ、だったら今の内に止めることができたのは僥倖だったのだろうね。

止めるものがいない犯罪行為というのは、最初は軽くとも徐々にエスカレートしがちだ。

 

 

144:名無しの魔法提督

ごとき氏なら楽に対応できても、普通は対処できないスピードだからなぁ。

 

 

145:名無しのごとき氏

まっ、そんな感じで本人からの協力も得られたから。急遽寸劇を演じる羽目になった訳だ。

主演オレ、監督オレ、脚本オレ、演技指導もオレ。

時間止められるのってこういう時に便利だよな。

時間がない時でも何回か練習できる訳だから。

 

 

146:名無しの装者

こう、何というかすごい力なのに使い道が……

 

 

147:名無しのごとき氏

平和的に使える内が一番いいんだよ、この手の力は。

とりあえず“秘密裏に戦ってきたヒーロー、最後の戦い”的な演出をして。

適当に戦った後必殺技を打ち合ってオレが倒れ爆散し、ヒーローもまたひっそりと姿を消す的な展開に。その後エンドロール。

 

 

148:名無しの鬼っ娘

爆散って、爆薬とか持ってたの?

 

 

149:名無しのごとき氏

ホラ、オレ爆破能力も持ってるし。

 

 

150:名無しの寺生まれ

ああ、あのライダー系ボスが何故か持ってる手をかざしたら爆発するやつっスね。

 

 

151:名無しの記憶探偵

それで南条嬢は誤魔化せたとして、実際にカブトの転生者はどうしたのかね?

 

 

152:名無しのごとき氏

依頼を受けたプロデューサーに連絡とって、謝罪させた。

カブトの力はこっちでウォッチにして回収した。

本人も、持ったままだとまたいつか変なことに使っちゃうかもって納得したから。

 

 

153:名無しの鬼っ娘

ふぅん、意外と潔いんだな。

 

 

154:名無しのごとき氏

良くも悪くも、平凡な感じだったから。

だからこそ、ちょっとしたきっかけで善にも悪にも転ぶんだけどね。

 

 

155:名無しの魔法提督

じゃあそれで今回の一件は解決した訳か。

 

 

156:名無しのごとき氏

うん、まあ、いや……むしろ個人的にはこの後の方が大変だったというか。

 

 

157:名無しの装者

まだ何かあったんですか?

 

 

158:名無しのごとき氏

オーフィスがたまたま会った武内Pにスカウトされて。

「誤解しないでほしいのですが、彼女には他のアイドルにはない――そう、非人間的とでも言うべき魅力を持っている」って。

なんで分かるんだよ、あの人。しかもかなりグイグイくるし。

 

 

159:名無しの寺生まれ

あー……仏頂面に見えて情熱の人っスからねー。

 

 

160:名無しの装者

スカウトかー、ちょっと憧れちゃいます。

でも受けなかったんですよね? 何でです?

 

 

161:名無しのごとき氏

冷静に考えろ、あの超マイペース娘に芸能活動なんてできる訳ないだろ。

下手すりゃ同僚たちに適当に加護とか与えかねないぞ。

超能力系アイドルとかがマジモンの超能力者になるかもだぞ。

しかもオーフィス自身が微妙に乗り気になるから、止めるのにも苦労したし。

 

 

162:名無しの魔法提督

カオスになる未来しか見えないな。

 

 

163:名無しのごとき氏

しかもなー、公園のベンチで3人で話してたら警察から職質受けて……

 

 

164:名無しの寺生まれ

えっ? ごとき氏何かしたんすか?

 

 

165:名無しの記憶探偵

ふむ……怪しげな男二人に挟まれたゴスロリ幼女。傍から見れば事案だな。

 

 

166:名無しのごとき氏

だろう? 多分誰かが通報したんだろ。

誰だってそーする。オレだってそーする。

 

 

167:名無しの鬼っ娘

自分で言っちゃうのかい。

 

 

168:名無しのごとき氏

オレとオーフィスなんて、住所不定無職どころか国籍もないんだぜ?

警察とかハッキリ言って鬼門すぎるというか……

 

 

169:名無しの魔法提督

え? その辺り偽造とかしてないの?

 

 

170:名無しのごとき氏

知らんよ、偽造の仕方とか。

 

 

171:名無しの魔法提督

いや、そこは知っとけよ。ラスボス。

 




《ちょっとした設定集》
〇南条光
特撮趣味の女の子で、現役アイドル。その日、彼女は運命に出会う――
……その実態のごたごたっぷりはさておいて。


〇仮面ライダーカブトの転生者
本編でこそライブの盗撮に走ってしまったが、根は普通に善良な転生者。――それ故に、南条光からの声援を受けた時の罪悪感がマッハ。
事件後はカブトの力を手放し、盗撮写真も全て破棄。真面目な一ファンとして活動している。




 以上、今回はアイマス世界が舞台でした。
 カブトの転生者とごとき氏との戦闘力の差は、『一般人出身系ライダーが初変身時にラスボスと交戦した場合』的なイメージです。うん、勝てないね!
 南条ちゃんの勘違いは、あの場面に遭遇したら仕方ないよねって感じです。
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