「オール・フォー・ワン…」ブルブル
「がぁぁぁあぁ!ぐっ カハッ」
オール・フォー・ワンに恐怖を抱えている天月は震えだす。しかし、いつもなら彼女を落ち着かせるために抱きつく黒牙は呪いにより、苦しんでいた。
「そんなに怯えられると、いくら僕でも傷つくんだけどなぁ…」
そう言いつつも、天月の怯える様子を、黒牙の苦しむ様子を見て、楽しそうに笑っている。
「なに、しにきたの…」
「いや?あの時君を逃したのはやっぱり惜しいと思ってね、迎えに来たんだよ」
「え…」
「さあ、僕と一緒に行こう。天月君」
「い、いや…」
天月が弱々しく抵抗するものの、オール・フォー・ワンは気にならないという風に彼女の腕を引っ張り、立たせる。しかしその時、黒牙からフラフラとだが立ち上がり、天月をオール・フォー・ワンから引き離し、守るように立ち塞がった。その様子には、流石のオール・フォー・ワンも驚き、大人しく腕を離した。しかしそれも一瞬のことで、興味深そうに見る。
「へぇ…まだ立ち上がれたのか」
「神輪は、俺が守る…絶対に、連れて行かせはしない…!」
「メリオダス…」
「でもさぁ、立ってるのもやっとだというのに、龍生君はどうやって彼女を僕から
守るつもりなんだい?」
「…」
「考えも無しに出てきたのかい?君も大概バカだね」
「それでも…俺は、こいつを守りたいんだ…!」
黒牙は、強い意志を宿した瞳でオール・フォー・ワンを見る。その目を見たオール・フォー・ワンは、しばらく思案していたが何かを決めたように顔をあげた。
「よし、龍生君。君が僕と一緒にきてくれるなら、天月君は諦めよう」
「俺?」
「うん。僕は君のことも欲しかったからねぇ。もし来るなら、彼女に手は出さない。
どうだ?いい案だろう?」
「俺、は……」
「メリオダス、ダメよ!貴方がいなくなるなら、私が行く!」
「天月君はこう言ってるけど、君はどうする?いや、どうしたい?」
「本当に、エリザベスに手を出さないのか」
「もちろん。これでも僕は義理堅いんだ。約束はちゃんと守るよ」
「…わかった」
「メリオダス?!」
「その代わり、絶対に手を出すな」
「交渉成立だね」
「少し、待っててくれ」
「わかった」
黒牙は、天月へと向いた。
「『神器』戦鎚ギデオン」
「メリ、オダス…?」
天月の方へと振り返った黒牙は、戦鎚ギデオンと小型ナイフを一本、彼女へ渡した。その瞳は光が宿っておらず、表情も消え、まるで“3000年前のメリオダス”のようだった。
「お前なら使えるはずだ。護身用として渡しておく。俺はもう、お前を守れないから」
「ッ!待って、待ってよ!私を置いて行かないで…!」
「じゃあな、エリザベス。いや、“柏出 リツキ”」ボソッ
そして、黒牙はオール・フォー・ワンと共に姿を消した。先輩ヒーローが戻ってくると、そこには黒牙から渡された『神器』戦鎚ギデオンと小型ナイフを抱きかかえ、泣いている天月だけがいた。のちに天月は、オール・フォー・ワンが現れた同時刻に、ヒーロー殺し ステインと脳無が現れ、現地にいたヒーローたちは、そっちの対処に追われていたと聞く事となる。先輩ヒーローの連絡により到着したヒーローや警察が黒牙を探したが見つからず、天月は雄英の校長により、ヒーロー殺しと遭遇したA組の3人と同じ病室へと入れられた。
そして歯車は回り始める…