朱天の母   作:日向ヒノデ

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とりあえず禍津城のお話は今回でお終いです。
次回はアンケートの結果によりけりです。

…感想が、欲しい…。


鬼の酒宴

「そっっれじゃぁかんっぱーい!!いやぁ朱天の料理なんて何百年ぶりかしらぁ?美味しいわぁ」

料理が完成した瞬間、血溜まりから『やっぱ朱天はどんな姿でも可愛いわぁ!!』と叫んで復活した八重禍津姫は、前々から変なテンションだったのが余計に上機嫌になっていた。

 

「…なぁ朱天。何故汝の母はあそこまで上機嫌なのだ?」

「さぁ、大方溜まりに溜まったストレスが爆発してるんちゃう?いつもはもう少しおとなしゅうはずやし…」

「…そうかなぁ?」

「ふふ、解るはずもないわぁ。あんな面白い夢を見たら誰だってこうなるわよぉ!」

 

騒ぎ続けている八重禍津姫を無視しながら吾と朱天は会話をする。

この一時を楽しみ、喜び、そして酔おう。この胸に巣食う悩みもこの一時だけでも忘れよう。そうでなければ朱天が作ってくれた美味い料理も、復活した八重禍津姫が作ったつまみと八塩折之酒もまずくなる。

この時ばかりは我道王も外道丸たちも文句は言うまい。むしろもっと楽しめというに違いない。

 

朧気にしか覚えていないが、初めて酒吞とであったときのことを思い出す。

あの時もきっと吾は心の底から喜んでいたに違いないし、酒吞も楽しんでいただろう。

──だが、そのようなときも終わりを告げる。

 

「それで、愚母。あんたは何を思てあそこに襲撃したん?うちだけやなくてタケルはんも呼びはるし…」

「あら、唐突ね朱天」

 

つまみも酒も尽きかけ、残っているのは強烈な酒気だけになった頃、唐突に朱天が切り出した問。

たったひとりであの場に襲撃し、朱天だけでなく日本武尊まで召喚し、吾を攫ったことについての問だ。

 

─その問は確かに吾も気になるところだ。

あの場には吾を除いても七騎のサーヴァント、それに弱っていたとは言え超弩級に強いギルガメッシュもいたのだ。

普通に考えてそのような場に単独で突撃するなど愚かを取り越して気狂いな行いだ。

聞けば負けて討たれてもおかしくないところまで追い込まれたそうではないか。

吾を攫うにしてもそんな危険を犯す必要は無いし、朱天を呼ぶ時に天敵であるはずの日本武尊まで呼んでいるのだ。

後者に至っては自分の首を余計に締めるような行いだ。

 

「そうねぇ、あそこに襲撃したのはただ単に面白そうな気配の出どころを知りたかっただけよ。

朱天とタケルちゃんを召喚したのは正直”ついで”な部分もあるのだけど…。理由を上げるとしたら

朱天を呼んだのは私の代わりとして動いてほしい事があるから呼んだだけ。

タケルちゃんも召喚したのは神武ちゃんが召喚されるよりかはマシだからさっさと確定させたかっただけよ。それに、この様な異常事態にはお誂え向きな子だしね。

まあ、結果論だけど、時代を修復する者達の助けになりやすい子だから良かったんじゃないかしら?

茨木ちゃんを攫ったのは…。そうね、見ていられなかったのが理由かしら。

…まあたいした理由なんて無いわよ。今ここで言った理由だって今考えた部分もあるし…」

 

「…まあ、そないなとこやろうと思うとったけどなぁ…」

…まさかの衝動的に動いただけだったのか…

 

八重禍津姫の考えなしさに呆れてものも言えなくなる。

 

「ああ、あと茨木ちゃん週に一回ここに来てくれてカミサマに認めてもらえるよう修行すること、海の水をその度に持ってきてくれるなら監視は付けるけど自由にしていいわよ」

「へ?」

 

間抜けな声が出る。

 

「な、何故ぇ?!」

 

だって、それは吾を攫った意味が無くなる行いだ。

吾は八重禍津の一時的な弱体化を知っているのだ。この情報をギルガメッシュや日本武尊あたりに流せば八重禍津姫討伐隊が組まれるだろう。吾をみすみす逃す必要は無い。むしろ鬼質として交渉の材料なり、なんなりと活用するべきだ。

 

「ああ、仮に私が弱っている情報をタケルちゃんに流しても彼、動かないわよ」

「へ?!」

「そりゃそうよ。だって彼は祓う英雄よ。なら、”カミサマ”の権能で不規則に氾濫し続ける呪ったティグリス川の解呪と治水のために日夜監視しているはずよ。今に至って襲撃してこない次点でこれは確定ね。

それに、彼は良くも悪くも慎重だからね。私を殺せる確信を持たない限り乗り込まないだろうし。

…それに、彼がここに乗り込んだら貴方の大事な娘は ──どうなるのかしらね?」

 

先程までの巫山戯きった気配は消え、懐から白蛇を取り出しながら混沌とした赤黒い瞳で吾を真剣に見つめる。

 

吾は

「わ、わかった。それならば、うむ…問題は無いな…」

うなずくことしか、出来なかった。

 

「まぁ、私のしようとしていることが茨木ちゃんには受け入れ難そうなのも理由にあるわ。こっちに関しては朱天に任せるわ」

「はーい。精々頑張るわぁ」

 

吾には八重禍津姫がしようとしていることは分からないが、とにかくロクでもないことをするのだけは理解した。

では、そのロクでもないことで真っ先に被害を被るのは誰か?

…言うまでもない。弱者たちだ。

 

(なら、吾は尚更盗賊団結成を急いだほうがいいな…)

「じゃ、料理も酒も話したい事柄も酒の席には適さないことを除けば無くなった茨木ちゃんはもう退室していいわねぇ。朱天、お願い」

「はいはい。もう、鬼使いが荒いんやからぁ」

「ほへ?」

 

朱天が手を振り下ろした瞬間、吾が座っていた床が抜けた。

 

「──にゃ、にゃんとォォーーーーーーー!!!!」

「現代じゃこのことをこう言うらしいわねぇ

──茨木ちゃん。ボ●シュート」

 

───

 

「──うにゃぁっ!!! 痛ッ!!」

 

外壁がパカッと開き、吾は勢いよく腰から河原に向かって滑り落ちた。

 

城の外観は中以上に禍々しく、耐性のある吾ですら吐き気を催すほど悍ましかった。

横に目をやれば八重禍津姫が取り出してた吾を見張る白蛇がとぐろを巻いて佇んでいる。

 

(なにはともあれ、ここから逃れることは出来たのだ。

吾の目的である盗賊団結成のためにもまずは団員を集めるのが先決か。

それに、一日だけとは言え吾は週に一度は留守になるのだ。信を置ける者も見つけたい)

 

まずは最初の一週間。今後の良し悪しもこの週で決まると言っても過言ではない。

腰を擦るのもそれまでにし、最初の一歩として団員を見つけるために生きた人間を探すことを始めた。

 

 

───

 

開いた床が閉じ、束の間の静寂が城内を包む。

 

「…で、愚母の目的は何なん? うちが勝手に材料にしていた八塩折之酒を使って茨木はんになんかけったいな術かけとったけど」

 

先に静寂を破いたのは朱天。真剣な表情で母である八重禍津姫を睨む。

 

「そうねぇ…私がしたいことは人類の保護、かしら」

「どないな風にそれをするん?」

「…人間を攫って、近くに作った村で保護しているわ。もちろん街の周囲には私自ら作った結界で囲っているから脱出も侵入も困難よ。中には500人程度なら数年間は飢えない量の食料も準備しているわ」

「どないな方法で人間を管理するん?」

「そりゃ私は魔性だからね、理不尽に荒ぶり、恐怖を以て彼らを愛し(壊し)続ける。そして人間は私達の支配から逃れるために反乱するわ。そうなれば私達は人間を襲い(愛し)、人間は私達から逃れるために抗い(愛し)続ける。ね、愛で満ちた素晴らしい世界よ」

「…それはまあ愚母らしい発想に方法やねぇ。ま、うちは愚母のサーヴァントさかい言われたことには従いますわぁ」

「そう、期待しているわ。愛しい愛しい我が娘よ。

…それはそれとして八塩折之酒を勝手に使ったのは許さないわ」

「…結果的には役に立ったやろ?」

「ええ、結果的には役立ったわ。あの子が朱天に聞きたがっていたことは今聞くべきことじゃないからね。

…けどぉ、あれ簡単には作れないすっごい貴重なお酒なのよぉ!?それを全体量の半分も使うなんてぇ…わたし悲しいわぁ!」

「それで、うちにどないな罰を与えるん?」

「決まっているじゃない…」

 

「存分に私の愛を受けなさ~い!!」

「…想像通りやねぇ」

 

朱天を引きずりながら八重禍津姫は寝室へと浮足立ちながら足を進めたのだった。

 

───

 

「はぁ…母さんも無理しはるんやから。いつもより手ぬるい愛し方やったねぇ。疲れとるんならさっさと寝ればええのに」

 

星が降りてしまいそうな夜の蚊帳。それを禍津城の一室より鬼の少女は見上げる。

 

「はぁ、まさか母さんがあそこまで狂っとるとはねぇ…」

 

思い返すは母の目的。

彼女を知らない者からしてみれば如何にも狂った魔性らしい行いだろう。

だが、この鬼の少女からしてみれば違和感しかないことだったのだ。

まず、八重禍津姫という神より魔性に堕ちた存在はそこらへんの人間を愛することは決して無い。

何故なら、興味を持たれる前に殺されるからだ。

八重禍津姫という魔性は気に入ったり、興味を持った者はそれなりに気に掛ける。

愛した者は殺してしまうほど()し、自ら()されに行く。

一転して嫌うモノには徹底して嬲り殺す(拒絶する)

─そして、興味がないただの人間は気にかけることなく殺すだけ。

 

つまり、自ら積極的に見ず知らずの関わりすら無い人間を愛するのはおかしいのだ。

…大方、なれない環境に召喚されて、なれない役割をこなそうと空回りしているのが原因だと検討づける。

 

それに、人間を保護する方法にも魔性と神としての考えも混じっている。

このことも朱天姫の違和感の原因だ。

…といってもこれは神核を所持しながら召喚された弊害だと考えればまあ、仕方のないことだと諦めよう。

 

だが、母さんが節操なく人間を愛するのはなんとなくムカつく。

 

「母さんの正気を取り戻させるためにも、好きにやりましょか」

とりあえず個人的に解決すべき問題を見つけた鬼の少女は寝ている愚母を程々に()すためにに部屋を後にした。

 




八重禍津姫
頑張りすぎて絶賛空回り中。
朱天曰く、対神武天皇のときと同じくらい真面目。だけど頑張りすぎている。
とのこと。精神年齢が未熟過ぎた。

朱天姫
母が節操なく人間愛してるのが気に食わない。
独自に活動しようとしている。する(確定)。

イバラギン
週一八重禍津姫ブートキャンプに参加決定。
修行内容
八国荒斬を8万回素振り
八重禍津姫と手合わせ(殺る気マンマン)
お腹を開いてぐちょぐちょ

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