Fate/last night《完結》   作:枝豆畑

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今回は物語の核心に迫ります?よ




どぞ


第九話 螺旋

 

 

 

膨大な魔力の奔流、激しい閃光。辺りにはまだ魔力の粒子が残留している。

 

激しい宝具同士の激突の末、先に口を開いたのはキャスターの方だった。

 

「破魔の紅薔薇に必滅の黄薔薇…まったく、そちらの国では槍には厄介な能力が付くのが定石なのかね?」

 

そう呟くと、キャスターは右手をダラリと力なく下げ、手にしていた巨大な石斧を地に落とした。そして石斧は役目をと言うように、魔力の粒子となり消滅した。

 

キャスターの右腕は、裂けたように肩から肘にかけて大きな傷ができていた。そこからは血が吹き出ていて、キャスターの顔から余裕を奪っていた。

 

…では、ランサーは?

 

 

 

 

「…っく、ぐぁ…」

 

ランサーは苦悶を洩らし、玉のような汗を流していた。

 

…ランサーの足元は、真っ二つに折れた破魔の紅薔薇が転がっていた。

そして本来ならばそれを握っているべきランサーの右腕は、肩から先が千切り取られたかのように無くなっていた。ランサーの足元に、血で出来た水溜まりが徐々に広がっていく。

 

__先の宝具同士の激突で、キャスターの宝具の威力の大きさを悟ったランサーは、己の右腕を盾にしたのだ。そして必滅の黄薔薇でキャスターの右腕に傷をつけ、相殺しきれなかった残りの斬激は、狙いを定められなくなり、ランサーに当たることはなかった。

 

ランサーは肩で呼吸をしながら、キャスターの方を見た。

 

「…っぐ、お互い傷の大きさは違えども、剣をとれるか否かでは同じこと…それでは自慢の弓も扱えまい?」

 

キャスターは右手の状態を確認する。

 

(腱が…切られている…。あの状況下で、あの男は腱を狙って切ったというのか…)

 

この腱を切ったのは必滅の黄薔薇。あの呪槍を破壊するか、担い手であるランサーが消滅しなくてはこの傷は癒えない。

 

「やってくれる…たしかに、これでは私は戦えないな。そしてこれからマスターを救出に行くだろう君の脚に、魔術師である私は追い付けないだろうさ」

 

キャスターはやれやれ、と首を振るとそのままなにも言わずにランサーから目を反らした。

 

「…キャスター、次こそはお前を倒す。それまで、精々片腕で生き残ることだ。」

 

そう言うとランサーは、右腕の傷みを堪えつつ、主を救出すべく城へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁぁあぁぁぁああぁッ!!」

 

切嗣の礼装、起源弾の餌食となったケイネスは、体のいたるところから血を吹き出し、そしてついに倒れた。

 

(これで一人目…)

 

止めを刺そうと切嗣は銃口をケイネスに向ける。

 

だが切嗣が引き金を引こうとしたその瞬間、切嗣とケイネスとの間に男が割って入ってきた。

 

「チィッ!」

 

切嗣はその男…ランサーに向け銃を放った。だが相手はサーヴァント、現代の重火器程度では傷ひとつつけることはできない。

 

(キャスターはなにをしている…!)

 

 

ランサーは全ての弾丸を軽く槍で往なすと、切嗣へと顔を向ける。

 

「貴様を今ここで殺すことがどんなに容易いことか、貴様も魔術師ならば分かるだろう。だが今は事を急いでいる。__次に会うときは必ず、貴様を、そしてあのキャスターを殺す。」

 

その時切嗣は、影に隠れていたランサーの全貌を見た。

 

右腕は抉れたように無くなり、絶え間なく血が吹き出している。口ではああ言っているものの、その美貌には余裕は無く、苦渋に満ちていた。

 

そしてランサーは器用に左腕でマスターであるケイネスを抱えると、窓から飛び降りて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『キャスターとランサーは戦闘を止めました。互いに右腕に重傷を負っています。ランサーはアインツベルン城へ、キャスターは未だに移動していません。』

 

綺礼もアサシンと視覚を共有していたのでわかってはいたが、改めてアサシンから報告を受けた。

 

「そうか。それでは今からそちらに向かう。キャスターが移動しないよう、足止めをして…」

 

『綺礼様、ご、ご報告があります』

 

綺礼が言葉を紡ぎ終わる前に一人のアサシンが綺礼の前に現れた。

 

「…なんだ?」

 

綺礼は尋ねた。

 

『黒の、黒の騎士王が、こちらへ…キャスターの元へと向かっています。』

 

「なんだと!」

 

綺礼は焦りを露にして声を荒くした。

 

「なんとしてでもそいつを止めろ!騎士王に、キャスターを殺させるな!」

 

今のキャスターは手負いの状態だ。もし黒の騎士王と対峙してしまったら、間違いなくキャスターは殺されてしまう。

 

(私は問わねばならない…!今やつに死なれてはならんのだ…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャスターは右腕の状態を改めて確認する。

 

(やはり今のままでは戦闘はままならないな。当分の標的はランサーか…)

 

必滅の黄薔薇による傷は癒えることはない。サーヴァントにとってこれは、エーテル体を維持するための魔力を常に消費することを意味する。

 

「厄介な呪いだ、まったく……!?」

 

キャスターは息を呑んだ。膨大な殺気が、とてつもない早さでこちらへと向かってくる。

 

「…っ!この気配は…!」

 

キャスターは気配の向かってくる方角を見やる。

 

(今来るか…アルトリア!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(サーヴァントの気配が1つ消えた…これはランサーか)

 

走りながら黒の騎士王は記憶を辿った。そうだ、あの時ランサーをマスターを助けさせるために見逃したことがあった。

 

「……」

 

騎士の誓い…そんなもののために、私はかつて敵を見逃したのだ。

 

(では残っているほうは…?)

 

感じたことがある気配だ。だが思い出せない。

 

「……」

 

あと数秒もすれば敵の元へ着く。だがなんなのだろうか、この気配は。何処と無く胸騒ぎがするのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近づいてくる、彼女が。

 

あと数秒もすれば、対峙することになる。

 

 

 

 

 

(…来たか!!)

 

現れたのは黒い甲冑に身を包んだ一人の騎士王。

 

あぁ、忘れるはずがない。どんなに記憶が摩耗しようとも、彼女のことだけは思い出すことができる。それが、たとえどんな姿になっていようとも…

 

「やれやれ、困ったものだ。こうも連戦続きだといくら私でも体がもたんよ。」

 

内心の焦りを隠し、キャスターは皮肉気な笑みを浮かべる。

 

「…そうか、この気配はお前のものだったか。」

 

黒の騎士王は呟くようにそう言うと、キャスターへと目を向けた。

 

「アーチャー、今回のお前のクラスは何だ?」

 

「!!」

 

(なぜ、それを知っている!?)

 

キャスターは驚愕をこらえきれず、黒の騎士王の問いに答える。

 

「…なぜ、それを知っている」

 

騎士王はそれに対してつまらなげに答えた。

 

「知っているものは知っている。聖杯戦争で貴様と会うのは2回目だ。」

 

「なん…だと…?」

 

キャスターは考える。黒の騎士王は、アーチャーとしてのあの●●●●●を知っている。

 

つまりは…

 

「__君は、第五次聖杯戦争を知っているのか…?」

 

 

 

 




こんにちはSHIKIGamiです

いよいよ黒セイバーです

やっと出てきました


話は変わりますが…

画展空の境界

いやー感動しました

月の珊瑚

ホロウリメイク

SNアニメ化リメイク

なんだか今年の型月は熱いですね

それでは

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