Fate/last night《完結》   作:枝豆畑

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いいですね




どぞ


第十四話 慟哭

教会前も静寂に包まれ、聞こえるのは周囲の木々が風に揺られる音だけだ。

つい先程までそこにいた数えきれないほどの暗殺者たちは、月明かりに照らされた石畳の広場の中央にはすでに影すらも残されていない。

 

「ふん…幕切れは興醒めだったな」

 

ライダーはそう呟くと、アーチャーへと目をやった。

 

「どうだ英雄王、今宵はこれまでにせんか?」

 

黄金の王はなにやら不機嫌そうな瞳でライダーを睨んだ。

 

「フン…我とて興が冷めたわ。戯れはこれまでだ、()()()。貴様は我の気が向いたらまた相手をしてやる」

 

「ほほう、そいつは楽しみだわい」

 

アーチャーは霊体化し、姿を消した。

 

ライダーはそれを確認すると、キュプリオトの剣で空間を切り裂いた。戦車はもうないが、切り裂かれた空間からはライダーの愛馬が姿を現した。

 

ライダーは手綱を引き、未だに呆然と立ち尽くしている己のマスターを呼ぶ。

 

ウェイバーは呼ばれてようやく意識がはっきりとし、ライダーの手を借りてブケファラスへと跨がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんという…ことだ…」

 

遠坂時臣は、まさかライダーがあのような規格外の宝具を所持しているとは思わなかった。

 

『自立した英霊の連続召喚…宝具としての能力も、桁違いです』

 

通信を通して綺礼が言う。

 

「英雄王の乖離剣と同格…まさかあんなものを隠し持っていたとはな…」

 

冷静さを取り戻し、時臣は頭の中を整理する。

 

「だがこれで、ライダーの対策も可能になった。アサシンの大多数を失ったが、それに釣り合うくらいの結果は得たわけだ。感謝しているよ、綺礼」

 

『いいえ。それよりも師よ、残りのアサシンが、例の黒の騎士王を見つけました』

 

「…なんだって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、聖杯戦争の初日にほぼ全てのサーヴァントが集結した港の倉庫街。

 

黒の騎士王は、サーヴァントの気配を辿ってここまで来たのだが__

 

「貴様の方から私を呼ぶとは、探す手間が省けた…サー・ランスロット」

 

騎士王は獲物を見付けた獅子の様に、ヘルムの下で冷酷な笑みを浮かべた。

 

「…お待ちしておりました、王よ」

 

街灯に照らされ、姿を現したのは黒い鎧に身を包んだ湖の騎士(セイバー)

 

「この様な形とはいえ、まさか貴方と再び相見えるとは思ってもおりませんでした」

 

そう語るセイバーに、騎士王はほう、と呟いた。

 

「願ってもない…何せ私が聖杯に託す望みとは、アーサー王、貴方にかつての過ちを裁いていただくことなのですから…ですが」

 

セイバーは兜越しに、騎士王を見つめる。

 

「私が裁かれるべきは、今の貴方ではない…!王よ…!何故その様な姿に…!あれほどにまで理想を求めていた貴方が…!なぜ…!」

 

掠れるような、それでも尚力強い声でセイバーは叫んだ。

だが騎士王はそれにも動じることはなく、淡々と答える。

 

「何度も同じことを言わせるな、湖の騎士。理想を求め、理想に殉じ、その先にある絶望を知ったのが今の私だ。すなわち、これが私のあるべき本来の姿だったわけだ」

 

「何を…貴方は…!」

 

斬、という音をたて騎士王が黒き聖剣をコンクリートへと突き立てる。

 

「黙れ。いつまでつまらん御託を並べる気だ。貴様も聖杯に招かれしサーヴァントならば、言葉ではなく剣で語るがいい」

 

そう言うと騎士王は、目にも見えるほどの黒く禍々しい魔力を放出する。

 

「っ!…いいでしょう。ならば王よ、今宵は私が貴方の過ちを正します」

 

そういうとセイバーは、握っていた剣に魔力を通し、己の仮染め宝具とした。

 

「フン、裏切りの騎士が、王の過ちを正すだと…?」

 

騎士王は、突き立てていた聖剣を抜き放ち、セイバーへと切っ先を向けた。

 

「ほざけ、ランスロット卿。礼儀を教えてくれる…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!セイバーのやつ、時臣のサーヴァントじゃない上に、よりにもよってあの騎士王とおっ始めやがった…!」

 

間桐雁夜は、蟲を通してセイバーと騎士王との戦闘を視ていた。

 

「…っく!あぁぁぁぁあ!!」

 

セイバーへの魔力の供給のため、身体の刻印蟲が暴れまわる。

 

「くそ!俺は早く時臣を殺らなきゃいけないってのに…!ふぐっ!あぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、キャスター?」

 

切嗣たちよりも先に拠点をアインツベルン城から民家の武家屋敷へと移していたアイリと舞弥は、屋敷の片付けをしていた。

 

そこへキャスターが戦闘を終えたのか、姿を現した。

 

「切嗣はどうしたの?」

 

マスターよりも先にサーヴァントが戻ってきたことを不思議に思ったのか、アイリはキャスターへと訊ねた。

 

「なに、彼も無事だ。我々は勝った」

 

キャスターは倒したのは我々ではないようだがね、と心の中で付け足した。

 

「それよりアイリスフィール、何か手伝うことはないかね?」

 

「そうね…じゃあ結界を張るのを手伝ってもらおうかしら?」

 

 

 

「これでいいのか?アイリスフィール」

 

「ええ、問題ないわ」

 

屋敷の庭にある土蔵の中に、人間大の陣を描くとアイリは背伸びをした。

ふと見ると、キャスターがアイリが描いた陣を何やら神妙な顔で見つめていた。

 

「キャスター…どうかしたの?」

 

「いや…何でもないさ。よくできている。これなら10年経っても問題なく発動する」

 

キャスターはいたって真剣に答えたつもりだったが、アイリは何故かクスクスと笑っていた。

 

「私はなにか、おかしなことでも言ったかね?」

 

「ごめんなさいね。でも10年経ってもって、サーヴァントがそんな未来のこと言うなんて可笑しいじゃない?」

 

アイリはひとしきり笑うと、キャスターの方を見た。

 

「ねぇキャスター、貴方に渡しておきたいものがあるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁっ!」

 

「ふっ!」

 

重なる剣戟。セイバーと騎士王は互いに拮抗し、剣が弾かれ合う度に熾烈な火花が飛び散っていた。

 

「遅いっ!」

 

しかし、剣が持つ神秘の差か、それとも単なる保有魔力の差か、セイバーの剣は騎士王の渾身の一撃により弾き飛ばされた。その衝撃によりセイバーの体勢も大きく崩れる。

 

「!」

 

「散るがいい!」

 

騎士王はセイバーの兜ごと叩き斬らんとばかりに、聖剣を力任せに降り下げた。

 

「チィッ!」

 

だが相手は彼の湖の騎士。英霊となった今でもその無窮の武練に衰えは無く、騎士王の聖剣を両手で捕らえ、直撃の寸前で受け止める。

 

「!?」

 

騎士王はさらに力を籠め押しきろうとしたが、聖剣にセイバーの魔力が流れ込むのを感じ取った。

 

「フン、相変わらず手癖が悪いな…!」

 

騎士王は剣を握っていた片方の手を離すと、セイバーに向けその手から禍々しい魔力を放出する。それはさながら、獲物に喰らいつく獅子の如くセイバーの腹へと噛みついた。

 

「ぐあっ!」

 

魔力放出の直撃をくらったセイバーは大きく吹き飛ばされた。

 

「手にした物を自分の物とするその能力…人の妻に手を出した貴様には相応しい力だ」

 

「…!!」

 

セイバーは身体を起こすと手近にあった電柱を引き抜いた。そしてそれを破城槌の如く構えると、騎士王へと突進した。

 

「くだらぬ!」

 

騎士王はそれを軽く剣で往なし、さらに追撃を加えようと剣を振るった。

 

「くっ!?」

 

だが弾き飛ばされたのは騎士王のほうだった。剣で往なした様に騎士王には見えたが、それはセイバーがタイミングを合わせ減速したにすぎない。大きな隙が出来たように見せかけ、その実セイバーが本命の一撃を弾かれないよう確実に与えるために力を溜めていたのだ。結果として、セイバーの大きなスイングは騎士王の脇腹へと直撃させた。

 

「…フン、だが軽いな、ランスロット卿」

 

しかし騎士王は剣をコンクリートへ突き刺し、杖のようにすることでその一撃を耐えた。

 

「王よ…思い出してください。円卓の誰もが、騎士の誰もが、貴方が愛した民草が…誰もが貴方を理想の王としていた…!そんな貴方が、なぜ絶望に身を委ねるのですか!」

 

「くどい。貴様に何がわかるか」

 

騎士王は苛立ちを顕にし怒鳴った。

 

「ランスロット卿…以前私に「王は人の心が解らない」と言って、円卓を去った奴がいたな」

 

「王よ…!」

 

ランスロットは思わず悲痛の声を漏らした。

 

「あぁそうだ…あの男は正しかった。私は人の心が解らない。考えてみれば簡単なことだ。王であるために人の心を棄てたこの私に、人の心を理解できるはずがない…!」

 

騎士王は剣を握る力を強くした。

 

「そんなことだから私は国を滅ぼしたのだ。だがここで矛盾が生じる。王であったが故に国を滅ぼしたならば、私は一体どうすればいい…?」

 

「…っ!!」

 

「ならば、絶望に身を捧げるしかない。私にはその義務がある。私の浅はかな理想のために散った命たちのためにも…!」

 

騎士王は剣を構えた。

 

だがセイバーは構えようとしない。

 

「それは違う…!私だって、ガヴェイン卿だって、モードレット卿だって…貴方に仕えた時からその様な覚悟はできていた…!」

 

剣を構えていないセイバーに、騎士王は容赦なく斬りかかる。

 

「く…」

 

セイバーは後ろへ大きく跳躍することで直撃を免れたが、聖剣の一撃は肩へと斬りつけられていた。

 

「五月蝿いぞランスロット卿…!」

 

騎士王は剣についた血を払い、セイバーを睨み付ける。

 

「剣を構えろ、ランスロット卿。偽りの剣などではなく、貴様の本当の剣(アロンダイト)を出せ」

 

騎士王はさらにセイバーへと斬りかかる。

 

「王の過ちを正すのも騎士の務め…かつて私は貴方を裏切ったが、それでも私にはその義務がある…ならば__」

 

ギィン、と騎士王の一撃がセイバーにより弾かれる。

 

「ほう…ようやくその気になったか…!」

 

手に握られていたのは無毀なる湖光(アロンダイト)、ランスロットという騎士の真の宝具。

 

 

 

 

「ならば__例え貴方を()してでも、私は貴方のその絶望を絶ちきって見せる…!」

 

 

 

 

 

 

__戦いは、さらに加速する。




どうも、SHIKIGamiです

いやアイリ、夜中に片付けするなよ

とかいうつっこみは無しの方向でお願いします

…だって片付けないとねぇ?

引っ越しの時と同じですよ



さて、ようやく黒セイバーに進展がきました

ここからが本当の意味での本編です

忘れてないですよね?主人公は彼女ですよ?

紅茶はあくまで引き立て役うわごめんなさい石投げないでください


あと今別作品のプロットを構成中だったりします

Fate/last night の外伝?的な感じになるのでしょうか

発表はもちろん本編が無事完走した後の予定です

もう一度言いましょう。完走した後です。

大丈夫だ。俺ならちゃんと完走できる。

__例え、更新が遅くとも




それでは、また

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