Fate/last night《完結》   作:枝豆畑

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どうも


どうぞ


第八話 誇り

 

 

 

 

 

 

ランサーは森を駆け抜ける。鬱蒼とした森は、どこも同じような景色だ。だがランサーには己が走るその先にあるサーヴァントの気配を確かに感じ取っていた。

 

(この殺気は、あの時の港の倉庫街のものと同じ。ならばこの先にいるは…)

 

先日の戦いにて、ランサーはマスターに令呪を使用させながら、敵サーヴァントの首級は愚か、何一つ戦果をあげることができなかった。その上、マスターとの関係はさらに悪化してしまった。

故にランサーは今、名誉を挽回するためにも敵サーヴァントを討つことを強く望んでい。

 

ランサーが走るその足を止めたのは、木々に囲われた広場に入ったその時だった。

 

「!!」

 

ランサーのあと一歩手前という場所に、矢が3本刺さった。

 

「…やれやれ、私も腕が落ちたものだ」

 

同時に、紅きサーヴァントが影から姿を現した。

 

「…1つ聞くが、貴様はキャスターのサーヴァントか?」

 

「違うと敵に情報を与えるつもりは毛頭ないが…どちらにせよ消去法でそうなるか。」

 

「ならばキャスター、俺とセイバーの一騎打ちを邪魔したのも貴様か?」

 

するとキャスターはランサーの問いを鼻で笑った。

 

「フン…邪魔、とはいったいなんのこだろうか?あれほど周囲に気を撒き散らしておきながら、敵に狙うなとでも言うのかね?」

 

「貴様…!」

 

「それともあれか、騎士道や英雄としての誇りに反するとでも言いたいのか。あぁ、それはすまない。生憎私はそんなもの持ち合わせていなくてね。そんなものに縛られていては、真実を見失ってしまう。」

 

「なんだと…」

 

ランサーは驚愕した。世に名を刻んだ英雄どもの中に、誇りを持たぬものがいようとは。

 

「兎に角、これは戦争だ。戦に自分の都合を押し付けていては、勝てるものも勝てなくなってしまうだろう。」

 

「…っ!!」

 

 

__それは、今のランサーをそのまま形にしたような言葉だった。

 

「…戯れが過ぎたな。ランサー、敵の陣地に入ってきたんだ。殺されても文句はあるまい?」

 

ランサーはそれに対しキャスターを睨みつけた。

 

「ふん、承知のこと。こちらとて貴様の首を獲るために来ているんだ。それに…」

 

ランサーは両手に槍を具現化させ、キャスターへと矛先を向けた。

 

「それに、貴様とはどうやら馬が合いそうにない。遠慮無くいかせてもらうぞ。魔術師が敵前に姿を現したこと、後悔するがいい…!」

 

「…フン」

 

キャスターもそれに答えるかのように、両手に双振りの短剣を握った。

 

「これは忠告だが…」

 

そして、にやりと笑みをうかべて言う。

 

「敵は肩書きだけで判断しないことだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしたのですかマダム?」

 

アイリスフィールと久宇舞弥は、切嗣が戦っているだろう城から離れ、もう1つの用意してある拠点へと身を移そうとしていた。

 

「…えぇ、新たな侵入者みたい。そしておそらく、そいつは言峰綺礼よ」

 

「!!マダム、それは…」

 

驚愕と焦燥を顔にうかべる舞弥に対し、アイリスフィールは優しく笑った。

 

「でも大丈夫。切嗣なら心配いらないわ。だから、ここはあの人を信じてあげて?」

 

舞弥は少し戸惑ったが、しばらくするどアイリスフィールに同意した。

 

「そう…ですね。切嗣が、まけるはずがない。」

 

「えぇ、だから大丈夫。さぁ舞弥さん、行きましょう」

 

そして二人は、アインツベルンの森を後にした。

 

 

__この時、確かに言峰綺礼は森に侵入していた。だが、彼が求めているものは今は衛宮切嗣ではない。彼は、ランサーとキャスターが戦っている方向へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『キャスターとランサーが戦闘を開始しました。』

 

 

森を走る綺礼に、アサシンはそう伝えた。

 

先日のハイアットホテルの爆破の後、言峰綺礼は衛宮切嗣のサーヴァント、キャスターと対峙した。その際、キャスターは自分が求めているものが何かを知っていると言っていた。

…根拠はない。根拠は全くないのだが、何故か綺礼にはキャスターの言葉が真実だとしか思えなかったのだ。

 

「分かった。手を出す必要はない。そのまま監視を続けろ。だが…万が一、ランサーがキャスターを倒しそうになったら、全力でそれを阻止しろ」

 

『わかりました』

 

(私は、問わねばならない。私が、一体何なのか、何を求めるのかを…)

 

 

 

 

 

 

 

 

状況は拮抗していた。リーチで勝るランサーがキャスターをずっと攻め続けてはいたが、なかなかその一手を決められずにいた。

 

一方でキャスターもランサーが大振りの技を繰り出そうとすれば、その隙を突かんばかりに剣を振るっていた。

 

「ッ!貴様、本当にキャスターのサーヴァントか!槍兵と剣で戦うことのできる魔術師など、聞いたことがない!」

 

「魔術師でも、必要ならば剣だって弓だって手にとるさ。それともなんだね、白兵戦ならば勝機があるとでも?」

 

「フン、いやどうやら俺はお前を甘く見ていたようだ。謝る」

 

「謝ることはない、むしろもっと魔術師の剣を味わっていくといい」

 

「は、それはありがたい…!」

 

そして二人は再び剣戟を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

かつての、自分が知っている第4次聖杯戦争ではない。

 

 

ランスロットがセイバーとして召喚され、そして何よりも、自分がイレギュラーとして現界している。

 

「一体、なぜ…私は…」

 

黒き騎士王は少し考えたが、やがて1つの結論にたどり着く。

 

「何を考える必要があろうか。そこに聖杯があるのだ。敵が誰だろうとも切り捨てるまでのこと」

 

そして、黒き騎士王は行動に移った。

 

間違いなくサーヴァントがいる、自分もよく知る地へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

ランサーは果敢に攻めていたその手を止め、キャスターから距離をとった。

 

「どうかしたのかねランサー」

 

ランサーはキャスターの問いに答えようか躊躇したが、顔を苦渋に満たせながら答えた。

 

「我が主が危機に瀕している…どうやら、俺を残してそちらの本丸に切り込んだらしい」

 

するとキャスターは皮肉げな笑みを浮かべた。

 

「ほう…つまりは私のマスターにやられかけているといることか。いや、我がマスターも中々やるじゃないか」

 

ランサーはそう言うキャスターを睨み付けると、左手に持っていた短槍に巻かれた呪符をはがした。

 

現れたのは黄色い禍々しくも美しい槍だった。

 

キャスターはそれを見つめた。

 

「ゲイ・ボウ…ランサー、やはり君の真名はフィオナ騎士団、輝く貌のディルムッド…!」

 

「俺の槍を見ただけで、俺の真名を見破るとは…つくづくお前には驚かされる」

 

キャスターは手に持っていた双剣を消した。

 

「なるほど、宝具を使って俺を倒し、マスターを助けに行くということか。」

 

「そういうことだ。悪いなキャスター、時間がない。お前にはここで退場してもらう…!」

 

そう言うとランサーは両手に槍を構え、地面を蹴りあげた。

 

同時にキャスターは己の経験から、あの槍に対抗できるモノを検索する。

 

あの双槍に負けないリーチが必要だ。

 

あの双槍を圧倒する威力が必要だ。

 

あの双槍に対抗する手数が必要だ。

 

「!!」

 

ランサーの目に映ったのは、右手に体格に不釣り合いな石斧を掲げるキャスターの姿。

 

見る者を圧倒するそのあまりに巨大な大剣が、接近するランサーを叩き潰さんと言わんばかりに振り下ろされようとする。

 

「っ!!はぁぁぁぁっ!!」

 

対するランサーも己の全身全霊をもって槍に神秘を灯す。

 

 

 

「貫け、必滅の黄薔薇!」

 

「全工程投影完了_________」

 

「抉れ、破魔の紅薔薇!」

 

「_________是、射殺す百頭」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもお久しぶりです

最近忙しくてなかなか更新が進みません

でも必ず完結はさせますよι(`ロ´)ノ

今回は原作を読み返さずに書いてしまった&深夜に眠い目をこすりながら書いたので若干のグダグダ感が気になりますね汗

次回はなんとかします


それではまた










あ、先生のくだりはカットで(^^

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