重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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始めに・・・

この小説に立ち寄って下さり、ありがとうございます。


知識が至らなかったり、「?」と思われるような文章が見受けられる事があるかも知れませんが、それでも構わなければ、よろしくお願い致します。







プロローグ

2012年、大海を挟んで睨み合っていた『大和皇国』と、その国に対して挑発行為を繰り返す軍事国家『デスペラード連邦』との間に、とうとう決定的な亀裂が走った。

対話を望む皇国に対しての返事は何十発ものミサイルだったのだ。

軍事力で劣る皇国は直ちに同盟国である『エルメリア連邦共和国』に救援を要請。

戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年 8月13日 

大和皇国領海まで残り数海里の地点

 

 

《メーデーメーデーメーデー!こちらミサイル駆逐艦グムラク!艦内火災が拡大し、消火不能!艦長代理は総員離艦を決定!グムラクは総員離艦する!》

 

被弾し、至る箇所から炎を上げる駆逐艦からクルーが次々と海に飛び込んで行く。

 

「やられたか・・・!状況報告!」

 

「はっ!現在我が方の戦力はこのザンクードを入れて駆逐艦1の残り2隻。対する敵艦隊は戦艦1、駆逐艦1の2隻です!」

 

焦燥した顔付きの艦長の声に反応して、士官の1人が現在の状況を報告する。

 

「ドローか・・・」

 

「大和皇国のミサイル駆逐艦が、対艦ミサイルで敵駆逐艦を撃沈!ああ・・・!?クソがッ!相討ちです!」

 

艦長が目を細めて唸っていると、士官の1人が盛大に悪態をついた。

先程彼が言ったように、皇国のミサイル駆逐艦がデスペラードの駆逐艦を撃沈せしめたのだが、敵は最後の置き土産だと言わんばかりに対艦ミサイルを斉射。

複数のミサイルに対処が追い付かなかった皇国駆逐艦は炎を噴きながらゆっくりと傾斜を始め、とうとう両勢力とも1隻ずつとなってしまったのだ。

そんな時、レーダー士官が敵戦艦の突然の動きに気付く。

 

「艦長!敵戦艦、真っ直ぐに突っ込んで来ます!進路を変えよともしない・・・。損害を気にせず、強引に突破するつもりですっ!!」

 

随伴艦を全て沈められて自棄を起こしたのか、はたまた、たかが1隻ならば問題無しとでも判断したのか、敵戦艦は主砲を撃ち続けながら、こちらに向けて近付いて来ていた。

 

「・・・砲雷長、この艦の武装はどれが死んで、どれが生きている?」

 

「前甲板の兵装は35.5cm砲と130mm両用砲の1番砲を残し全損。魚雷、残弾無し。ヘリオスも同じく残弾無し。EMLは砲台の油圧とスーパーキャパシタを激しく損傷して使用不能です。

━━が、こちらに関してはスーパーキャパシタが蓄電状態でなかったのが不幸中の幸いでした」

 

「むぅ・・・」

 

砲術長の言葉に、艦長は苦虫を口一杯に噛み潰したような表情を浮かべる。

この数時間も前からの戦闘によって、使える武装のほとんどが弾切れもしくは破損していた。

 

「分かった。つまり、あとは昔ながらの砲撃戦で、と言う事か・・・。味方の増援は?」

 

「到着までは少なくとも30分は掛かるかと」

 

「それでは間に合わんな。情報が正しければ、あの戦艦にはミニ・ニューク(小型核弾頭)搭載の砲弾が積まれている。無理にでも突破して市街地に撃ち込めば、チェックメイトと言う訳か」

 

「艦長、ご指示を」

 

副長が、俯く艦長に声を掛ける。

それに反応して周りを見渡すと、その場にいる前員が静かにこちらを見つめていた。

 

「スゥーー、ハァーー・・・。ぃよし!」

 

艦長は1度深呼吸をしたあと、CICの画面に映る敵戦艦を睨みつけながら、大きく口を開いた。

 

「艦首左30゜回頭!!ここから先は絶対に通すなっ!!」

 

「「「アイアイサー!!」」」

 

ザンクード、あと少しだけ頑張ってくれ・・・!

 

その思いに呼応するかのようにザンクードは機関音を響かせながら、敵戦艦に向かって前進して行く。

 

「敵主砲弾、艦上構造物に直撃!レーダーマストが倒壊しました!」

 

「まだだ!これしきの事でザンクードは沈まん!主砲、撃て!」

 

金属の破片を撒き散らし、近くにあった設備も巻き込みながら海面へと落ちて行く大型レーダーなど目もくれず、艦長は手近な物に掴まった姿勢で指示を続ける。

 

「お返しだっ!!」

 

35.5cmと130mmの砲弾が敵のバイタルパート(重要防御区画)や艦橋の装甲を削り、今度は向こうから砲弾が返ってくる。という事をただひたすらに繰り返す。

それは、まさに軍艦同士の殴り合いのようであった。

 

「とどめだ!砲手、側面のあの一番削れている箇所を狙え!」

 

「了解!」

 

「撃てっ!」

 

放たれた砲弾は相手のひしゃげた装甲を貫き、重要区画内の弾薬庫に直撃。敵戦艦は破片と黒煙を大きく撒き上げながら、真っ二つになって沈んで行った。

 

「敵戦艦撃沈!!」

 

「っしゃあ!!」

 

「ザマァ見やがれってんだ!!」

 

苛烈な砲撃戦の末に紙一重の所で敵戦艦の撃沈に成功したCICは歓喜に包まれる。

━━が、そんな明るい空気のCICとは一転、ダメージコントロールセンターから暗い一報が届いた。

 

《艦長・・・ザンクード大破。敵からの最後の1発が喫水線下部、それもかなり消耗していた箇所に直撃して浸水しています。最善を尽くしましたが・・・もう、これ以上は手の施しようがありません・・・》

 

「そう、か・・・。艦内全域に通達する。本艦は大破し、修復及び航行は不可能と判断。直ちに原子炉を閉鎖し、ザンクードクルーは総員離艦せよ」

 

「艦長、賢明なご判断です。さあ、この艦はじきに沈みます。急ぎ退艦を」

 

「ああ、分かっているよ副長。全員救命胴着を着けたら怪我人から順にボートに乗せて行け」

 

そう指示を出した艦長自身も救命胴着を身に付け、海に飛び込んでボートに乗り移る。

 

「艦長、ザンクードが沈んでいきます」

 

副長の指差す先には、夕日を背にゆっくりと海面にその巨体を横たえていく乗艦の姿があった。

クルー達が目尻に涙を浮かべてそれを見守る中、艦長がスゥッと息を吸い込む。

 

「総員!!散って行った勇敢な戦士達とザンクードにぃ・・・敬礼っ!!」

 

バババッと、一糸乱れぬ海軍式の敬礼。

 

「ありがとう、ザンクード。お前と共に戦えて光栄だったよ」

 

『━━こちらこそ、光栄だったよ』

 

「っ!!・・・ああ、安らかに眠ってくれ・・・」

 

先程まで僅かに顔を覗かせていたボロボロの艦上構造物もついに海中へと姿を消し、ザンクードはその生涯を終え━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザァンと聞こえるのは波の音。

見上げると、一面に広がる蒼い空と大きな入道雲が浮かんでいる。

 

「・・・・・・どこだ?ここ」

 

1隻の戦闘艦が、大海原にポツンと立っていた。

 

 

 

 

 

 

 重原子力ミサイル巡洋艦

 ザンクード、抜錨する!

 

 

 

 

 


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