重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第11話 演習のあと。そして、期待を裏切らない○○○

波乱の演習から2週間後。

 

 

報復措置とは言え、海軍中将をミサイルで攻撃した俺は間違いなくお縄につくか即解体されると覚悟していたが、埠頭に帰った俺や古鷹達に待っていたのは元帥からの謝罪だった。やはり肥太は猫を被って周りを欺いていたようだ。

しかし、黒い噂もちらほらとは存在しており、近々抜き打ちで査察しようという提案もあったらしい。

もっとも、件の鎮守府は半壊し、そこを預かっていた司令官は汚職兵士諸共俺に吹き飛ばされたのだが・・・。

 

で、本題━━いや、結論から言うと、俺達第八鎮守府のメンバーは全員この第五鎮守府に異動する事になった。

何でやッ!と思う方もいるだろうが、理由は簡単。

“第五鎮守府を預かっていた司令官が死去した”

から。

まあ、生き死にに関わらず、古鷹達の証言も合わせて奴のこれまでの行いが明るみに出たので、どのみち司令官の任を降ろされて後任が来る予定だったが、元帥が直々にウチの提督をこの第五鎮守府の司令官に任命したのだ。

因みに第八鎮守府はあっても無くても支障の無い場所だったらしく、第五鎮守府でもカバー出来る範囲だとの事で、後日解体されるらしい。

戦果を上げさせない為か、嫌がらせがしやすいからか、それとも見張りやすいからか。どちらにしろ肥太がどれ程の奴か、たかが知れる。

この異動の話を留守番をしていたみんなに伝えると大層驚いていたが、全員の了解を得てここに引っ越したという訳だ。

はっきり言ってこっちの方が設備は良いし、おまけに間宮と明石と呼ばれる艦娘も着任させてくれるらしい。

そして何より良いのは、ここの艦娘逹が友好的になってくれた事だ。

着任当初、提督の挨拶の際は通夜か葬式のような雰囲気で、すすり泣く声や無言で彼を睨んでいる者もいた。

だが、俺達第八メンバーは勿論、提督本人の人となりに少しずつ触れたみんなの心は徐々に解けて行き、今では「バーニングラァァァヴ!」と言いながら強烈なタックルと抱擁をかましている艦娘もいる程までに成った。

その際、彼の初期艦である電が「ナノデス」と言いながらニッコニコしてたのが脳裏に焼き付いているが・・・。

そう言えば木曾と古鷹が自己紹介のあとにガシッと固く握手をしていたので、艦娘同士の仲も悪くは無さそうだ。何かお互いに通じ合うものでもあったのだろうか?

まあ、鎮守府自体も少しずつではあるが復興が進んでおり、ここに異動になった事に関して特に(・・)文句は無い。

 

 

 

 

 

「ったく、肥太の野郎は書類仕事すらまともにできない奴だったのか?」

 

肥太が残して逝った書類を始末しなければならないという事を除けば。

何で肥太の分の書類を提督では無いお前がやっている?と疑問に思うだろう。

実は現在提督は本部に召喚されて2日程不在であり、その間は代わりに俺が提督(仮)をしているという訳だ。

 

提督や俺逹が手を着けてるのに2週間経っても消えない書類とか、いったいどれだけ溜め込んでんだよ・・・。

 

「クソッ、ハンマーヘッドじゃなくてヘリオスを一斉射してやれば良かった・・・」

 

「んな事したら、この鎮守府がデッカイ広場になっちまうだろ。ただでさえここの牢屋みたいな寮を改装しながら、お前が破壊した箇所も修繕中だってのに」

 

そうツッコミを入れてくるのは、俺の横で執務の手伝いをしてくれている木曾だ。こういう時、人手があるのは本当に助かる。慣れない仕事をこなす時は尚更だ。

 

「冗談だよ。でも、この悪趣味な執務室諸共潰したら、そこに積まれてるクソ忌々しい紙の束も一緒に消えて一石二鳥だったかもな。っと、もうこんな時間か。木曾、悪いがちょっと開発してくる。デイリー任務・・・?だそうだ」

 

「分かった、書類は進めとく。ああそうだ、本日付けで間宮と明石が着任するからさっさと帰って来いよ?」

 

「成功失敗を問わず、1回やれば良いそうだから直ぐに終わるだろ。じゃ、頼んだ」

 

そう言って無駄に豪華な執務室を後にした俺は廊下を歩いて工廠へと向かった。

 

早めにあの執務室を何とかしないとな。目がチカチカするし、ここの艦娘達もあの部屋に良い思い入れは無いだろうし。・・・いっそ、提督に許可を貰って某緑の匠(最強のリフォーム士)のようにきれいさっぱり(・・・・・・・)するか?

 

と、非常に物騒な事を考えながら。

 

 

 

 

 

 

「「「・・・・・」」」

 

工廠では作業中の妖精達が奇怪なものを見るような目で、ある一転を凝視していた。

 

「なあ、俺達は絶対親友になれる気がするんだ。お前もそう思うだろ?」

 

「・・・・・」

 

その視線の先には、艦娘や妖精ならば誰しも見た事があるであろう何の変哲も無い開発機と、それに話し掛けるザンクードの姿があった。

 

「俺には分かる!きっと、開発機はみんながみんな、悪気があって資材を粗大ゴミに変えるような奴じゃないってな」

 

「・・・・・」

 

ザンクードは開発機と向き合って話し続けるが、当然、開発機は何も語らない。

 

・・・ギャリソンさん、あの人がザンクードさんですよね?

 

ああ、本人だ。それがどうかしたのか?

 

いや、何で開発機に話し掛けてるのかなぁ?と思いまして

 

・・・色々あったんだよ、色々と。だろ?ディーレイ

 

遠い目をするギャリソンが、偶然隣にいた攻撃ヘリコプターのパイロット。コールサイン、リキッドこと、ディーレイに話を振る。

 

・・・ああ、第八鎮守府で少しな。あれはあまりに痛々しくて見てられなかったよ。なあ?ジャック

 

ボスの言う通りです。うっうっ、ザンクードさん、可哀想に・・・

 

開発は運にも左右されますからね・・・

 

開発機と会話を(一方的に)し続けるザンクードを見て、工廠妖精や彼の艤装妖精逹はコソコソと会話する。

 

「開発機、俺はお前を信じているからな!」

 

そう言って、彼は資材を投入してボタンを押す。すると、開発機はガチャガチャと音を立てて動きだし、チーンというチャイムと共に扉が自動で開いた。

別に特別な訳でも無いが、ザンクードにはこのチャイム音が、まるで開発機自身が「任せなっ!」とでも言っているかのように感じた。

 

「さてさて、いったいどんな物が出てくるかなぁ♪」

 

ワクワクした表情で煙が晴れるのを待つ。その鉄製の扉の中には━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クレバーフィッシュ「僕と契約して原子力重雷装巡洋艦になってよ!」

 

「」

 

「「「Oh・・・」」」

 

 

「~~♪」

 

古鷹は鎮守府の廊下を歩いていた。行き先はザンクードがいるであろう執務室だ。

目的の部屋の前に到着した彼女は、コンコンと執務室のドアをノックする。

 

「開いてるぞ」

 

中から女性の声が聞こえ、ザンクードさんの他に誰かいるのかな?と思いながら、古鷹は「失礼します」と言ってドアを開ける。

その部屋の中には木曾が椅子に座って書類と対面していたが、ザンクードの姿はどこにも無かった。

 

「おはようございます、木曾さん。・・・ザンクードさんは・・・?」

 

「うん?古鷹か、おはよう。あいつなら今は工廠だ」

 

「工廠、ですか?」

 

「ああ、今はあいつが代理で提督をやってるからな。今しがたデイリー任務の消化で開発をしに行ったんだよ」

 

「成程、デイリー任務でしたか」

 

納得したように、ポンッと手で相槌を打つ古鷹を見て、木曾は「ただなぁ・・・」と続ける。

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、オレも村雨から聞いただけで実際に見たわけじゃないんだが、あいつ開発運が━━」

 

 

ウ゛ェ゛ ア゛ア゛!!憎゛ラ゛シ゛ヤ゛ァ゛ァ゛!!

 

 

木曾の声を遮るように謎の奇声が聞こえたあと、執務机に置かれた内線が騒がしく鳴り響いた。

 

「工廠からだ。どうも嫌な予感がする・・・。どうした?」

 

《どうもこうもありませんよ!ザンクードさんが━━》

 

《畜生!何でこいつばっか出るんだよッ!!》

 

工廠からの内線を開くと、妖精が悲鳴混じりの声で何かを言っていたが、ザンクードの声のせいでよく聞こえない。だが、木曾にはある程度の察しがついてしまった。

 

《は、早く止めに来て下さい!このまま暴れでもしたら━━》

 

《提督はそこそこ性能の良いレーダーを開発できたらしいのに!贔屓(ひいき)か?贔屓なのかッ?!》

 

因みに余談だが、そのレーダーは木曾の艤装に搭載してある。初邂逅(かいこう)の際、彼女がザンクードの存在にいち早く気付いたのはこれの恩恵だ。

 

《いったい、俺がお前(開発機)に何をしたって言うんだぁぁぁ━━》

 

プツン━━

 

木曾はそっと受話器を元に戻し、古鷹の方に顔を向けた。

 

「・・・取り敢えず、工廠行くか」

 

「あはは・・・ですね」

 

2人は苦笑いを浮かべながら、執務室をあとにする。

この5分後、ザンクードは無事2人によって鎮められ、工廠と憎き開発機は事無きを得た。

 

 




開発機「わけが分からないよ」

ザンクード「俺もだよッ!!」
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