重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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「えー、ニュース速報です。本日、ザンクード氏が工廠にて蛮行に及ぼうとしたところ、2人の巡洋艦娘によって鎮められました。
なお、ザンクード氏は『まったく身に覚えが無い』、『記憶があやふや』と、これらを否認しています」

ザンクード「・・・おい、今のニュースキャスター連れて来い。あの野郎にエルメリアン魂を叩き込んでやる・・・!!」







第12話 明石、間宮着任

工廠での一件のあと、執務室に戻って書類の処理作業を再開しようとすると、古鷹が自分も手伝うと言ってくれた。

当然、その厚意を無下にする訳でもなく、俺、木曾、古鷹の3人で書類を消化し始めたのだが、作業が進む進む。

慣れた手つきで瞬く間に積まれた紙が片付いていった。

それでも、まだまだたくさん残ってはいるが・・・。

頭すら隠れてしまう程積まれた書類を見て、「ハァ」と誰にも聞こえないように溜め息をついたその時、執務室のドアが小気味の良い音を立てて叩かれた。

 

「どうぞー」

 

張りの無い声で入室を許可するとドアが静かに開き、2人の女性が入ってきた。

1人は割烹着を着ており、もう1人はピンク色の髪が特徴的な女性だ。見た事が無い顔なので、恐らく木曾が言っていた今日着任する艦娘だろう。

 

「本日付けで着任した給糧艦の間宮です。腕によりをかけてお料理を作らせて頂きますね。よろしくお願いします」

 

「同じく本日付けで着任した、工作艦の明石です。艤装のメンテナンスなどがあれば、お任せください!」

 

「ああ、2人ともよろしく。俺はザンクードだ。今ここの提督は不在なんで、少しの間だけ代理を務めている」

 

「木曾だ。これからよろしくな」

 

「重巡古鷹です。よろしくお願いします」

 

そう自己紹介を終えると、途端に明石がこれでもかという程に目を輝かせ始めた。

 

「あなたがあのザンクードさんですかっ?!」

 

「お、おう、他に同名の艦はいないと聞いているから、多分君の言うザンクードは俺で間違い無いと思うぞ?」

 

彼女の凄まじいまでの食い付きに顔を引きつらせながら後退りした俺は━━

 

 

 

 

 

 

 

「艤装を分解して隅々まで調べさせて下さいっ!!」

 

「ダメだ」

 

いきなりとんでも無い事を訊かれた。

 

「少し!少しだけですから!」

 

「ダメだ。て言うか何が少しだ。スパナとドライバーを両手に持って言われても説得力皆無だぞ」

 

「・・・ダメ・・・ですか?」

 

ダメの一点張りの俺を見た明石はそれならばと、今度は上目遣いをして攻めてきた。

 

「くっ・・・!そ、そんな上目遣いをしてもダメだ!」

 

「そんな殺生な!?工作艦として、見た事の無い新たな艦艇の艤装を指を咥えて放置できるわけ無いじゃないですか!」

 

あぁ・・・第八鎮守府から連れてきた妖精さん達と気が合いそうな娘だな・・・。

 

「そもそも、分解するなんて言われて許可を出せるわけ無いだろ」

 

「分解と言っても、完全にバラさない限り艤装は大丈夫ですよ」

 

「むう・・・」

 

ギャリソン達に見張ってもらえば大丈夫だろうが、しかしなぁ・・・。

 

「少し!少しだけですから!」

 

「『はい』を選ぶまで同じ事を延々と繰り返すロープレのNPCかよ・・・」

 

またさっきの話に戻る明石にツッコミながら、俺は眉間に手を宛ててかぶりを振る。

このあと3回程ループした結果、分解はしない代わりに、ギャリソン達の監視付きで少しだけなら調べても良いという事で決着がついた。

「ぃやったー!」と叫んでガッツポーズをする明石を見て、これまた個性的な艦娘が着任したなぁっと思っていると、執務室のドアが勢い良く開け放たれて2人の少女が入ってきた。

 

「ザンクードさん、何か手伝える事は無いかしら!」

 

「お手伝いに来たわよ!」

 

この第五鎮守府の駆逐艦娘であり、新しくきた俺達にいち早くなついてくれた雷と暁だ。

因みにこの2人、響と電の姉妹艦だったりする。

 

「おお~2人とも、手伝いに来てくれたのか?それなら今日着任した2人の案内を頼めるか?」

 

「お安いご用よ、雷に任せといて!」

 

「ふふん、一人前のレディーである暁の出番ね!」

 

2人とも胸を張って、フンス!と効果音が鳴りそうな顔をしながら快く了承してくれた。

 

「そうか、ありがとな~」

 

そう言って、2人の頭を撫でる。

 

「えへへ、もっと私に頼って良いのよ?」

 

「もう、頭をナデナデしないでよ!・・・えへへ

 

はっはっはっ、可愛い奴らめ。

 

そんな事を思いながら2人の頭を撫でるザンクードの後ろでは、「あいつ、駆逐艦にえらく人気があるな」と木曾が呟き、古鷹は自身の頭に手を置いて頬をほんのりと赤く染めていた。

 

「それじゃあ頼んだぞ」

 

一頻り撫でたあと、雷と暁は満足そうな顔をしながら明石と間宮を連れて執務室を出て行き、それを見送った俺達は再び書類作業に戻った。

 

 


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