重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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       WARNING!!

今話『リトルウォーズ』は食事中等にご覧になる事をオススメしません!








第14話 リトル・ウォーズ 前編

草木も眠る丑三つ時。

1つの小さな戦いが幕を上げようとしていた。

 

 

 

工廠 ザンクード艤装内 居住区

 

 

「んぁ?ふぁ~ぁぁ。変な時間に目が覚めたな・・・」

 

そう言って自分のベッドから降りた妖精━━レッカーは、「眠れそうで眠れない・・・」と呟いたあと、何の気無しに艤装外へと続く鋼鉄製の扉を開いて外へと出る。

それと同時に、彼の体のサイズがスゥーっと大きくなっていった。

 

「毎度思うが、こいつはいったいどういう原理なんだ?」

 

レッカーは自身の体高が高くなるのを感じ取りながら、そう呟く。

艤装内に収めるには些か大き過ぎる妖精達の身体は、艤装の内外で大きさが米粒よりも小さなサイズから親指サイズにまで、まるで魔法のように変わるのだ。

 

「まるで、どっかの青い猫型ロボットが持ってる、何とか(・・・)トンネルみたいだな」

 

いや、待てよ?そう言や、ザンクードさんって全身青色(を基調とした迷彩服)だし、艤装は原子炉を搭載してる・・・。ハッ!?まさか、ザンクードさんは未来から来た猫型ロボットなのか?!

・・・想像したら中々にショッキングな絵面だけど。

 

とまあ、半分寝惚けた彼の残念な妄想は放って置くとして、これがどういったメカニズムかはまったく解らないが、皆そういうものとして、今日(こんにち)も当たり前のように過ごしていた。

 

「にしても、ここの工廠は本当に広いな。第八の倍以上はあるぞ」

 

艤装の甲板上に立ちながら、感嘆の声を漏らす。

視線を横にスライドすると、ザンクードの他にも、ここに在籍する艦娘達の艤装が保管されているのが目に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサガサガサ・・・

 

「っ!?」

 

突如、天窓から月明かりが射す薄暗い工廠内で、レッカーの耳が妙な音を捉えた。

まるで、何かが高速で這い回るような不気味な音だ。

 

「おい、誰かいるのか?」

 

大き過ぎず小さ過ぎない声で呼び掛けるが、誰からの応答も返って来ない。

 

「ったく。おい、タチわりぃぞー。冗談も程々にしてくれ」

 

今度はカツカツカツッと鉄板の上を歩いているような音が近くで聞こえたので、仲間の誰かが直ぐ近くの物陰にでも隠れながら、ビクついている俺を嗤っているんだろう。と思って苛立たしげに音の発生源へと歩いて行く。

 

「おい━━」

 

あとに続く筈だった「いい加減にしろ」と言う一言が喉の途中で詰まった。

なぜなら━━

 

「ウソ、だろ・・・」

 

長い触覚と、感情が一切窺えない大きな一対の複眼。そして、モソモソと忙しなく動かす口らしき器官。

 

機動力に特化した6本の脚。

 

自分と同等かそれ以上に大きく、月明かりを妖しく反射する皺の入った茶色い楕円形の胴体。

 

「眠気も一瞬で覚めたよ、畜生っ・・・!」

 

「グルル……」

 

昼間、雷を呼びに行った道中に食堂内を騒がせていた生物━━ゴキブリがこちらをじっと見つめていたのだから。

 

「まだ残っていやがったのか。いったい何匹家族なんだ?お前ら」

 

頭をヒョコヒョコと動かす相手からなるべく目を逸らさないようにして、艦内に続く先よりの扉を探す。

 

・・・あった!ここからそう遠くはないな。タイミングを見計らって走れば行けるか?

 

そう思い、ゆっくりと後退りを始めると、またもやカツカツカツッと音を立てながら、2匹目が姿を現した。

 

「・・・ああ、デート中だったか。そいつは邪魔して悪かった、なっ!」

 

「「キシャァァァ!!」」

 

一心不乱の猛ダッシュで鋼鉄製の扉へと走り込み、間一髪のところで扉を閉じてロックを掛ける。

ゴキブリが扉に頭突きでもしているのか、扉をガンガンと叩く音が聞こえる。流石に入って来る事は無いだろうが、安堵している暇は無い。

レッカーは廊下を走って居住区へと戻り、眠っている仲間を無理矢理叩き起こした。

 

「おいレッカー、夜遅くにこんな所まで連れてきて何のつもりだ?まさかおふざけじゃないだろうな?」

 

「せっかく良い夢を見てたってのに・・・」

 

「眠いぜ・・・」

 

眠そうな眼を擦りながら、トーンの低い声で不満を口にする妖精達。

 

「そんな下らないイタズラするかよ。今日の昼間にあった事件をお前らに話したろ?」

 

「ああ、例の・・・」

 

「コードネーム『G』か・・・」

 

「それがどうしたんだ?連中なら、ザンクードさんと提督が片したろ?」

 

首を傾げながら、「?」と言う表情を浮かべる妖精達に、レッカーは1度深呼吸をしてから口を開いた。

 

「2匹出たんだよ、直ぐ外でな。危うく食われかけた。多分あれ以外にもまだまだ残ってると思うぞ」

 

「「「」」」

 

レッカーを除く3人が眉を八の字にして口をあんぐりと開けたまま固まる。

無理も無いだろう。彼が指差す小さな窓の先では、巨大な節足動物が動き回っていたのだから。

 

「クソッ!最悪の悪夢だ・・・」

 

「夢ならどれほど良かっただろうな?緊急事態だ。眠いのは分かるが、装備を整えろ」

 

「ハァ、了解」

 

「どの道、あんなの見ておいて今から眠れる気がしねぇ。やるか!」

 

「それに、俺達何もする事が無かったしな」

 

「よし、用意を全て終えたあと、30分後に格納庫に集合してくれ。ギャリソンには俺から伝えておく」

 

 

 

 

 

 

そうして、各々解散してから30分後の格納庫内。

 

「よし、全員集まったな」

 

レッカーが集合した仲間を見渡してから、ギャリソンの方に向き直る。

 

「先程レッカーから状況は聞いた。食堂を騒がせた奴らの生き残りが工廠に現れ、襲われた。とな」

 

ギャリソンが、ふぅ~、と大きく息を吐きながら腰に手を宛てて何かを考えるように俯くこと十数秒、静かに顔を上げた。

 

「連中は放って置けばいくらでも増殖する。根本から完全に叩く必要があるな・・・。一先ず、外のゴキブリを始末したあと、偵察バイクを使って食堂へ向かい、巣の大まかな位置を記録したら直ぐに帰って来るんだ。それと、なるべく静かに迅速にな。外で出待ちしてる連中を殺る時はサプレッサーを使え。艦娘寮までは距離があるが、この工廠には他の妖精達もいる。こんな時間に騒ぎを起こすと混乱を起こしかねない。眠っている妖精達には明日周知する。頼んだぞ」

 

「「「イエッサー」」」

 

4人がギャリソンに敬礼をし、彼からの答礼が返ってくると、直ぐ様バイクを押しながら格納庫から出て行った。

 

「よし、ゴキブリ共はまだそこにいるな。俺達が裏口から出た事に気付いては無さそうだ」

 

レッカーがサプレッサーを装着したアサルトカービンの照準を、未だザンクードの艤装に張り付くゴキブリの1匹に定める。

 

「お?レッカーは右か。なら、俺は左を殺らせてもらうぜ」

 

そう言って、少し体格の大きい妖精━━アイリッシュが、同じくサプレッサー着きのアサルトカービンをゴキブリの頭に向ける。

 

「アイリッシュ、同時に殺るぞ。3、2、1━━っ」

 

パシュッ、ピシュッ、という音と同時に2匹のゴキブリがボトリと床に落ち、裏返ったままジタバタともがき始めた。

 

「ヘッドショットだ。ゴキブリと言えど、保って数時間が良いところだろ」

 

双眼鏡を覗く妖精━━ダンが、冷静に敵の状態を確認する。

 

「周りに他の連中はいないな。早いこと任務を終わらせちまおう」

 

周囲を一通り確認したレッカー達は静かにバイクを走らせ、食堂を目指す。

道中、特に危なげ無く目的地に到着した彼らはバイクを降りて、徒歩による捜索を開始した。

普段は艦娘達の声で活気のある食堂も今は暗く、どこから敵が来るか分からない不気味な場所に感じる。

ハッキリ言って、ここの食堂を初めて見た時は不衛生の一言に尽きた。だが、第八鎮守府から引っ越したあと、提督や艦娘達が掃除を続けた結果、こびり付いていた油汚れなどはある程度除去ができた。

つまり、ゴキブリにとっての貴重な食糧が無くなった訳だ。そして、腹を空かせた連中はその強力な顎を使って共食いをするほど食欲旺盛であり、食べれるモノ、食べれそうなモノは何でも食べる。彼らは臆病なので、人間を襲う事はあり得ないだろうが、体の小さな妖精であるレッカーは、空腹に耐えかねたゴキブリにはさぞ美味そうに見えたのだろう。

 

「なあ、レッカー」

 

唐突に自分の後ろを歩いている妖精━━パックが声を掛けてきた。

 

「何だ?パック」

 

「ゴキブリってのは暖かい所を好む。冷蔵庫の下辺りは機械の排熱で温度が高いから、連中にとって絶好の住みかだと思うぞ」

 

「それもそうだな。調理場に行ってみよう」

 

パックの言う通り、4人は冷蔵庫のある調理場へと向かう。

 

「パック、お前の予想通りだよ」

 

業務用冷蔵庫の下の狭い狭い空間には彼の予想通り、奴らの巣があった。

 

「よし、さっそく記録を開始しよう。まだ結構残ってるな・・・。それに、殺虫剤が届かないように埃や何やらでバリケードを形成してる上に、人が気付かないようにカムフラージュまでしてやがる。中々賢いぞ」

 

「そう言えば、活発に動き回るのはオスだけだって聞いた事があるぞ。メスは基本的に巣の中で大人しくしてて、飯の時だけ動くそうだ。恐らく、ザンクードさん達が始末したのはオスだな。それも大量にいる内の一握りってところだ」

 

要塞のような巣を物陰からカメラに収めるレッカーの言葉に、ダンが巣を見据えながら静かにそう告げる。

 

「つまり、巣の奥にはレディー達がいて、それを何とかしないと更に増えるって訳か・・・」

 

「アイリッシュ、何なら1匹ナンパしてきても良いぜ?探したら美人━━いや、美虫がいるかも知れないぞ?」

 

レッカーがニヤリと笑いながらアイリッシュの背中をポンポンと叩き、それを見てパックとダンが、プッと吹き出す。

からかわれた本人であるアイリッシュは、苦笑いを浮かべながら「いんや、遠慮しとく」と、そう短く返した。

 

「オーケー、記録完了だ。(やっこ)さん達に見つかる前に撤収するぞ」

 

「「「了解」」」

 

メモ帳やカメラなど、記録用の道具を全てバッグに収納した4人は、静かにその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

「・・・まさか、そんな入り組んだ場所にコロニーを形成していたとはな」

 

「はい、放って置けば食糧への被害や、我々妖精への被害も危惧されます」

 

無事、ザンクードの艤装に帰還したレッカー達は、食堂の調理場で見た事をギャリソンに報告していた。

手渡されたカメラの映像とメモを見たギャリソンは机に両肘を立てた状態で指を組み、その上に額を乗せて俯く。

 

「分かった、ご苦労。巣に関しては早めに叩く必要があるな。レッカーの報告通りなら、直ぐにでも奴らを攻撃できるのは我々妖精だけかも知れん」

 

そう言ってギャリソンは一区切り付けてから、組んでいた指を解いてゆっくりと立ち上がった。

 

「先程君達に伝えたように、明日ここの妖精達に事態を周知する。工廠妖精達に協力を要請して、殺虫用の兵装を用意。バイク、ガンシップ(攻撃ヘリコプター)、使える物は何でも使って今度こそ奴らを叩くっ!

我々の安全と間宮さんの作る美味い飯を脅かそうとするゴキブリ共に、エルメリアン魂を見せてやるぞ!」

 

ギャリソンの言葉に、疲れていたレッカー達の瞳にギラギラとした闘志が一気に燃え上がった。

 

 

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