重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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『食』それは、過去に胡椒をめぐって戦争が起きたほど重要なものである・・・。


第15話 リトル・ウォーズ 中編

翌日、ザンクード艤装内のブリーフィングルームには、ザンクードの艤装妖精や他の艦娘達の艤装妖精、工廠妖精達が部屋に入れるだけ集まっていた。

 

「みんな集まってくれてありがとう。今日君達をここに招いたのは、重大な知らせがあるからなんだ。照明を落としてくれ」

 

部屋の明かりが全て消えると同時に、プロジェクターから照らされた画像が大きなホワイトボードに投影される。

 

「今日、02:20時にレッカーが工廠内で2匹のゴキブリと遭遇し、襲われた。その報告を聞き、生き残りがまだいる事を睨んで偵察を行った結果、食堂の業務用冷蔵庫の下に奴らの巣を発見した」

 

そこに映された映像とギャリソンの言葉に、妖精達は絶句した。

 

「このままでは連中は増殖の一途を辿るだろう。そこで、ザンクード艤装妖精のみんなには君達より早めに周知したが、我々はあの巣とその奥にいるであろうメスの排除を決定した」

 

彼がそう言い終えると同時に部屋に白い光が戻り、お互いの顔がハッキリと分かる程に室内が明るくなる。

 

「はい」

 

1人の妖精が手を挙げた。

 

「どうぞ」

 

「もし、巣を放置した場合の被害はどの程度に?」

 

「まずは冷蔵庫外の食品への被害からだな。それに、ここに在籍する者達の精神的にも身体的にも衛生上よろしくないし、さっき言ったようにレッカーが1度襲われている。これだけでも十分問題なんだが、このまま行くと最悪の場合、しばらくの間は食堂が使えなくなり、間宮さんの料理に多大な影響を及ぼす可能性も予測される

 

ガタガタガタン!!と席に座っていた妖精達が一斉に立ち上がる。その顔は、みんなが想像するようなとてもメルヘンチックな『妖精』からは遠くかけ離れた表情を浮かべていた。

 

「今夜、奴らを殲滅する為に出撃する予定だ。工廠妖精のみんなには頼みたい事がある。良いか?」

 

「勿論だ!」

 

「何でも言って下さい!」

 

工廠妖精達から、やる気に満ち溢れた声が返ってくる。

 

「ありがとう。次に作戦メンバーだが、今回はガンシップとトゥームストーン部隊を出動させる。しかし、彼らだけでは湧くように出てくる奴らを捌き切るのは難しいので、あと4名程部隊に同行する有志を募りたいんだが、誰か━━」

 

「「「はい!!」」」

 

ギャリソンが言葉を言い終える前に、室内が震える程の声と共に右手が一斉に高く挙げられた。

 

「よし、それじゃあ1人目は━━」

 

 

ブリーフィングルームでの会議が終わったあと、妖精達は各々の準備や頼まれた仕事に奔走していた。

 

「あら、妖精さん達じゃない。そこで何しているの?」

 

「ああ、明石さん。今、奴らとの(いくさ)の準備をしているんです。あの黒光り共(・・・・)め、覚悟しておけよ・・・!」

 

この子達も、小さいながら必死に深海棲艦と戦ってるのね・・・。

 

「何かあれば言ってね。私も手伝うから」

 

「ありがとうございます」

 

 

「いいかよく聞け!!今この時からお前らは全員ゴキブリ以下だ!!この訓練を終えるまでは自分達がこの世で最も最低の存在である事を忘れるな!!分かったらその口からクソを垂れる前に“サー”を付けろ!!分からなくても“サー”

を付けろ!!分かったな!?」

 

「「「サーイエッサー!!」」」

 

「声が小さ━━」

 

「何バカな事をしているこのアホがぁぁ!!」

 

「グハァッ!?い、いきなり何をするんですかギャリソン!」

 

「あ゛ぁ゛?誰が一昔前(ひとむかしまえ)のゴリゴリ海兵隊を作れって言った?ヘリから宙吊りにしてゴキブリ共の上に垂らされたいか?」

 

「ハァ、あそこで叱られているバカは気にしないでくれ。さっさと射撃の訓練に入ろうか」

 

「「「サーイエッサー!!」」」

 

「・・・・・」

 

 

「ボス、今回ヘリから鳴らすBGMどれにします?」

 

「何があるんだ?」

 

「そうですねぇ・・・お馴染み『ワルキ○ーレの騎行』、R○d Alert3の『ソビエ○マーチ』

・・・ああ!『イ○ペリアルマーチ』もありますよ!」

 

「イ○ペリアルマーチ?」

 

「ほら、ダー○ベイダーのテーマBGMですよ!」

 

「ふむ、どれも捨てがたいが、ここはワルキューレ一択だな」

 

「ラジャー!」

 

 

「・・・あの演習のあと、鎮守府復興の為、1ヶ月間出撃は無し」

 

「俺達1度も活躍の場がありませんでしたよね。演習の時もリキッドが大活躍でしたし」

 

「ふっ、ようやくだ・・・!ようやく俺達も暴れられるぜ!俺達のコールサイン、ランナーの名の通り、思いっきり駆け回ってやろうぜ!」

 

「派手にやってやりましょう!」

 

そうこうしている内に時は過ぎて行き、夜も更けて艦娘達や提督が寝息を立て始めてから数時間後。午前01:30時。

静まり返った第五鎮守府工廠の床上では妖精達が忙しなく動き回っていた。

 

「よし、おさらいだ。ガンシップは調理場の1km前の地点(妖精換算)で歩兵を展開。展開後、歩兵は巣を目指して前進。ガンシップは歩兵の援護を行え。ランナー機は当基地にて待機し、リキッド機と交代で継続的な火力支援を行え」

 

ギャリソンがホワイトボードに貼られた写真や図にマーカーペンで印を付けながら説明していく。

 

「それと、今回使用する兵装は全て殺虫用の特殊弾だ。通常の弾では室内に傷を付けたり、火災の恐れがあるからな。何か質問は?・・・無いな?よし、それなら各自ヘリコプターに搭乗してくれ」

 

彼がそう言ってパンッと手を叩き、視線をとある方角へと移す。そこには巨大なローターブレードをゆっくりと回転させている怪物のようなヘリコプターが1機、兵員室のハッチを上下に開放した状態で待機していた。

 

「よし、やるか!なぁに、ただの害虫駆除だ。駆逐してやれば良いのさ、文字通り1匹残らずな」

 

「害虫駆除?バカみたいにデカイゴキブリ共とのリアルファイトがか?」

 

「図体がデカくて数が多くても、所詮虫は虫だ。ただの案山子さ。帰ったら1杯やろうぜ?奢ってやるよ」

 

「おいパック、変なフラグを立てるな。あと、奢りの件は忘れるなよ?」

 

そんな軽口を交わしながら、レッカー達いつもの4人組みもヘリコプターに搭乗していく。

作戦メンバーのトゥームストーン部隊と有志の妖精達の合計8人が兵員室に乗り込むと、ハッチが自動で閉まり、軽く小刻みな振動と共にエンジンの出力が上がり始めた。

メインローターが本格的に回転を始めたのだ。

 

「よし、メインローター順調に回転中。ジャック、兵装の最終確認を」

 

「ラジャー、ボス」

 

そう返事をしたガンナーの妖精━━ジャックはコックピットの機器類を操作し、ヘルメットのバイザーを下ろした。

 

「30mmガン」

 

「チェック、問題ありません」

 

彼が操縦桿に取り付けられたスティックを左に倒すと、機首下部に取り付けられたターレットから伸びる30mmチェーンガンも同じく左に旋回し、右に倒すと機銃もまた、右を振り向く。

 

「よし、次はロケットポッドだ」

 

続いてジャックは、ヘリコプターの両スタブウィングに搭載された、多連装式の無誘導ロケットを確認する。

 

「チェック、安全装置もしっかり働いてます」

 

「オーケーだ。最後に対地ミサイルのチェックを」

 

「了解。・・・対地ミサイルクリア、全兵装オールグリーンです」

 

「ああ、こっちでも確認した。管制、こちらリキッド。離陸準備が完了した」

 

《こちら管制、了解した。リキッド機の離陸を許可する。グッドラック》

 

「リキッド了解。行くぞジャック」

 

「いつでもどうぞ、ディーレイ」

 

離陸準備の整ったヘリコプターはプロペラの回転数を更に上げていき、やがて太い着陸脚に取り付けられたタイヤが地面から離れる。

下方に猛烈なダウンウォッシュを起こしながら、トンボの如く器用にホバリングをする『空飛ぶ歩兵戦闘車』は着陸脚を格納し、その重鈍な見た目には似合わないような速度で食堂へ向けて飛翔して行った。

 

 


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