重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第18話 出撃

射撃訓練所での、あの出来事から数日。

朝食を食べ終えた俺はこのあと何をするかを考えていると、食堂の天井に取り付けられたスピーカーから全体放送のチャイムが鳴った。

 

《あーー、マイクテス、マイクテス》

 

スピーカーからは男性の声が聞こえる。

この声は提督だな。何かの呼び出しか?と思いながら、スピーカーから流れる声に耳を傾けた。

 

《ザンクード、木曾、古鷹、青葉、朝潮、曙。以上の6名は09:00時に執務室に集合してくれ》

 

そう言い終えると、プツッという音のあとに再度チャイムが鳴り、スピーカーが沈黙する。

 

6名・・・丁度1艦隊分だな。そうか、今日からだったよな。出撃が始まるのは。

 

そう思いながら、食器の入ったトレーを返却口へ置きに行ったザンクードは、このあとに下るであろう出撃命令を心待ちにした表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

放送のあと、指定された時刻通りに執務室に着いた俺達に下されたのは鎮守府より少し離れた海域の警備であった。

どうも戦艦、空母を含む深海棲艦隊発見の報が入ったらしい。

そして、現在は目的の海域を航行中だ。

 

「「「━━我らがエルメリア連邦軍は懲罰する!祖国と友に仇なす全てを!♪」」」

 

聞こえるのは、艤装妖精達から発せられる軍歌の大合唱。

 

「「「北半球から赤道を越えたその先まで!例え神であろうと我らの行進は止められない!♪」」」

 

この歌を聞き、艦娘達の何とも言えない表情を見た上で、改めて内心で呟こう。

お前らの選曲のセンス・・・と。

 

ヘーイ、妖精達ィ。歌っても良いけどサー、時間と場所をわきまえなヨー。

 

などと、バカな事を考えて現実逃避に走っている間も、彼らの歌声が嫌でも耳に入ってくる。

 

「ハァ、勘弁してくれ・・・」

 

俺は額を手で音を立てるようにして叩き、大きな溜め息を吐く。

ようやく出た出撃命令に気分が高まって歌いたいのは分からんでもないが、周囲が無人ならばいざ知らず、俺の周りには艦娘があと5人いるのだ。

 

あぁ・・・止めろ、止めてくれ曙。俺をそんなヤバい奴を見るような目で見ないでくれ。俺は悪くないんだ。それと青葉、写真は別に構わんがそのボイスレコーダーはあとで俺に提出しろ。

 

「「「諸君らは勇敢に戦った!敵であろうと敬意を込めてお辞儀しよう!この最強の軍隊から!♪」」」

 

おい、今すぐにその歌を止めさせろギャリソ━━あぁ、お前もだったよな・・・。畜生、何が最強の軍隊だ。これじゃあ本当にただのヤバい集団じゃないかッ。こんな歌を作るウチは本当にまともな国家なのか・・・?

 

「おい、ザンクード」

 

「ん?」

 

ゲッソリとした表情をしていると、横から声を掛けられた。

 

「ああ、木曾か。どうした?」

 

もしかして、この大合唱に対する苦情か?ほんと、迷惑を掛けてスマンな。マジでそろそろこいつらに注意を━━

 

「前々から気になってたんだが、お前の艤装に塗装されてるその・・・鯨のエンブレムか?そりゃあいったい何だ?」

 

「ああ、それ私も気になっていたんです。潮ちゃんが12.7cm連装砲にシールを貼っていたので、それと同じかな?と」

 

木曾と古鷹が俺の背中のタワーのような艤装の側面に塗装されているものを見て質問を投げ掛けてきた。

 

「・・・鯨?」

 

予想外の質問に、俺は少し上擦ったような声を漏らす。

 

ふむ、鯨・・・塗装・・・ああ!

 

「この鯨は『白鯨』。船よりも巨大な、文字通り白色の鯨だ。俺がこの世界の艦艇じゃないってのは知ってるだろ?こいつは俺の国の軍艦旗だ。見ての通り、俺は上部構造物の密集度合いと武装の関係上、旗を掲げる場所があまり無くてな。だから、艦首側面と構造物の目立つ場所に塗装をして旗の代替としてるんだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

この世界ではこんな旗章は何の役にも立たないが、艤装妖精達や俺としては、消すのは何と無く悪い気がして放置していたのだ。勿論、許可は取ってあるし、エルメリア連邦を知らない人間が見たぐらいなら、“変わったステッカー”程度のものだろう。

 

「そこで歌ってる軍歌といい、その白鯨の旗章といい、変わった国だな」

 

「分かる」

 

「お前が言うのか・・・」

 

そんな風に会話を交えていると、頭上のレーダーが敵影を発見した。

 

「おっと、敵艦隊捕捉。数は・・・9つか。反応からして、戦艦2、空母1、重巡2、軽巡2、それに駆逐が2だ。大きいぞ、報告のあった連中だな」

 

敵艦隊を発見した俺の声に反応して、他の面々の表情に緊張が走る。

 

「まずは戦艦と空母から片付ける。そのあとに随伴艦を仕留めよう」

 

そう言って俺は対水上戦闘を発令し、武器システムに火を入れた(・・・・・)

 

「ハンマーヘッド1番から12番、発射用意」

 

腰部艤装パーツの甲板上に並べられたハッチの内の12基がゆっくりと口を開き、重対艦ミサイルがその鼻先を露出する。

 

「ハンマーヘッド、ランチ!」

 

バシュゥゥゥゥ!!と、空に撃ち上げられたミサイルは小翼を展開後、目標に狙いを定めて飛翔して行った。

 

 

「電探ニ6隻ノ反応ガ出タ。恐ラク、我々ヲ嗅ギ付ケタ警備ノ艦娘共ダ」

 

「フン、所詮ハ6隻ノ警備艦隊。コチラノ規模ト比較スレバ、結果ハ目ニ見エテイルワ」

 

「コノ海域ノ制圧ガ完了スレバ、本土侵攻ヘノルートニナル。邪魔ナ連中ハ全テ沈メルゾ」

 

戦艦ル級2隻と空母ヲ級が邪悪な笑みを浮かべながら、その禍々しい艤装を動かす。

 

「艦載機デ、一方的ニ蹂躙シテヤル・・・」

 

ヲ級の頭部にある帽子のような艤装が、ガパリと口を開けて艦載機を発艦させようとした次の瞬間、ザンクードから放たれたミサイルの内の4基が高速で艤装の口内に突っ込み、炸裂した。

 

「「「ッ!?」」」

 

発艦前の艦載機をボトボトと海に落としながら、瞬く間に沈んで行くヲ級を目の当たりにした艦隊は大混乱に陥る。

 

「狼狽エルナ!指揮ハ私ガ引キ継━━」

 

続いて対艦ミサイルの第2波が到着し、戦艦ル級が轟沈。残ったもう一方のル級にもミサイルが着弾し、何が起きたのかも分からないまま、爆炎の中に消えて行った。

 

 

「敵大型艦艇、レーダーより消失。高火力の戦力を削ぎ落としました!」

 

「分かった。戦艦と空母は全て仕留めたから、あとは重巡2、軽巡2、駆逐2ずつだな」

 

ヘッドセットから状況報告を受けた俺は後ろを振り返りながらそう告げる。

しかし、そこには木曾と古鷹以外の全員が口を半開きにした状態で固まっている光景があった。

 

この光景、第八鎮守府での性能試験でも見たな・・・。

 

「青葉、あまりの事にシャッター押すのを忘れてました・・・」

 

と、カメラ片手の青葉。

 

「お、お見事です・・・」

 

「私達、こんなのと戦わされたのね・・・」

 

朝潮、曙と続く。

 

こ、『こんなの』呼ばわりか・・・。ま、まあ良い。

 

「もうじき砲の射程圏内だ。早く片付けて帰ろう」

 

そう檄を飛ばし、各種艦砲を駆動させ発砲する。

頭を潰されて混乱した艦隊を倒すのにそう時間は掛からず、深海棲艦は次々に沈められて行った。

 

「よぉし、索敵レーダーに反応無し。2人とも中々良いセンスしてるじゃないか」

 

周囲に敵が完全にいない事を確認した俺は、つい先程軽巡洋艦を仕留めた朝潮と曙の頭を撫でながら称賛の声を送る。

 

「あ、ありがとうございます・・・

 

と、赤くなる朝潮。

 

「なっ、なっ、なっ、にゃにするのよっ!?」

 

曙も同じく顔が真っ赤だが、猫が威嚇するかのように髪を逆立てていた。

 

「お、おう、悪い悪い」

 

そう言って手を話すと「ぁ・・・」と、曙は小さく声を漏らしたあと、「わ、分かれば良いのよ!」と、腕を組んで顔を背ける。

 

「ザンクードさん、ザンクードさん」

 

「ん、何だ?青葉」

 

唐突に青葉がニヤニヤしながら話し掛けてきた。

 

「曙さん、口ではああ言ってはいますが、内心では嬉しがってますよ。司令官に頭を撫でられた時も、表情と言葉が逆でしたからね~」

 

「なっ!?」

 

曙の顔が更に紅潮していくのが分かる。

 

「そうなのか?」

 

「はい、俗に言うツンデレってやつですよ~」

 

「ふむ」

 

ほうほう、これがツンデレなるものか。サブカルにはまったクルーが熱烈に語っていたのを思い出すが、成程。

 

「ちょっ、ちょっと青葉!何バカな事言ってるのよ!あんたも納得すんな!このザンクソ!!」

 

「ざ、ザンクソ?!」

 

思いもよらない飛び火に加え、更に追撃を受けた俺は、ズーンと効果音がなりそうな表情を浮かべながら周辺をしばらく哨戒したあと、鎮守府への帰路に着いた。

 

 




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