重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第24話 一触即発

あれから更に数時間後、レーダーが大型商船クラスとその護衛と思わしき反応を捉えた。

合流ポイントとも重なっているので、今回護衛する対象と見て間違いは無いだろう。

その事を他の面々に伝え、反応の発生源に向かったザンクード達の前に浮かんでいたのは大型のコンテナ船1隻とその護衛として随伴している濃灰色をした中型艦艇1隻だった。

 

「初めまして、私は本船の船長を務める岩瀬(いわせ)と申します。この度はよろしくお願い致します」

 

「これはご丁寧に。貴船の護衛を引き継ぎました。日本国国防海軍、第五鎮守府所属のザンクードです。こちらこそよろしくお願い致します」

 

護衛艦艇から任務の引き継ぎを行ったあと、コンテナ船の船長と軽く挨拶を交わす。

今回は九州地方の港までの護衛任務であり、距離はそこそこと言ったところだ。

帰投して行く護衛の艦艇から発せられた、航海の安全を祈る通信に返礼したザンクード達はコンテナ船を取り囲むように布陣しながら目的地への航路につく。

そして、昼夜のシフトを回して辺りを厳重に監視し、稀に現れたはぐれ(・・・)の深海駆逐艦や深海軽巡洋艦を撃沈しながら航路に沿って航海すること2日。

特に危なげも無く、無事にコンテナ船とそのクルー達を目的地まで送り届ける事ができた。

 

さて、無事到着できたし、そろそろ提督に連絡を入れる時間だな。

 

作業員達が忙しなく動いて作業行う様を横目にザンクードは、第五鎮守府で待つ提督に報告を行う為、無線のスイッチを入れた。

 

「提督、ザンクードだ。聞こえるか?」

 

《聞こえてるぞ。そっちはどうだ?》

 

「ああ。途中ではぐれ(・・・)の深海棲艦と何度か交戦したが、損失も損害もゼロ。問題無く到着できたよ。今は荷降ろしの真っ最中だ」

 

《そうか。何事も無くて良かったよ。引き続き、帰りの護衛も頼んだ》

 

「了解。それじゃあ」

 

そう言って無線を切り、港湾に設置された大型のクレーンがコンテナ船から積み荷を降ろす光景を眺める。

 

「ザンクード、何してるんだ?」

 

「うん?木曾か。ただ単にあれを眺めていただけだが、どうかしたか?」

 

「姉さん達が腹が減ったって駄々を捏ねてるんだ。そろそろ抑えきれない」

 

木曾が後頭部をガシガシと掻きながら、「お腹空いたクマ!」とか、「魚がたくさん載った海鮮丼を所望するニャ!」などと駄々を捏ねる2人の姉を見つめていた。

 

「あはは・・・、お前も大変だなぁ」

 

と言って苦笑を浮かべるザンクードは、木曾と共に球磨達の元へ歩いて行く。

軍が使用している倉庫に艤装を保管したあと、港町で手頃な飲食店(多摩の強い要望により海鮮系)を探して腹を満たした。

 

 

 

 

 

 

翌日 20:00時

 

 

港湾に立てられた電灯が辺りを照らす中、出港準備の整ったコンテナ船と共に、ザンクード達は港を出発する。

あとは来た道を戻り、彼らを母港まで無事に帰港させるだけだ。

しかし、『だけ』とは言ったものの、決して気を緩めている訳では無い。こんな時間帯(夜中)では水上艦艇よりも水中━━つまり、潜水艦による攻撃が危惧される。

加えてレーダーが通用しない相手なので、今の俺はレーダーで水上を監視する一方、ソナーやヘリコプターを使って水中にも目を光らせていた。

 

「ッ!・・・ザンクードさん、ソナーが微弱な音波を拾いました。方位1-2-0、これは明らかに人工的(・・・)な音です」

 

「分かった。古鷹、ソナーが潜水艦らしき物音を捉えた。少し行ってくる」

 

「分かりました。気を付けて下さいね」

 

「ああ、ありがとう」

 

そう言い残してコンテナ船から離れた俺は、音を拾った地点へと向かった。

 

音紋(おんもん)確認。・・・潜水ヨ級のスクリュー音と合致。1隻だけです」

 

「ソナーを見張っておいて正解だったな。対象との距離を測定する。ピンガー(探信音)を1発鳴らせ」

 

「ピンガー、了解」

 

コォォン・・・、という高音が水中へと放たれ、音の反射から相手との距離を確認すると同時に、12連装対潜ロケットに発射座標と爆発深度を入力していく。

 

「ザンクードさん、敵に動きあり。・・・発射管の開放音!」

 

「今打ったピンガー音で自分達が発見された事に気付いたな」

 

「敵艦、魚雷発射!放射状に4基接近中!」

 

その声と共に、ヨ級から放たれた魚雷がこちらに向かって来る。

 

「クソッ、今のは少し危なかったな。だが、発射機の各種入力は完了した。吹っ飛ばしてやる・・・!」

 

1発だけスレスレを横切って行ったが、持ち前の機動力でなんとか全てを回避したザンクードが、3基ある対潜ロケット発射機の内1基をヨ級のいる方角へ向けた。

 

「対潜ロケット斉射!」

 

「アイサー!対潜ロケット斉射!」

 

妖精が復唱しながらボタンを押し、ボボボボン!と勢い良く音を立てながら対潜ロケット弾がヨ級へ向けて放たれる。

数秒後、敵が潜んでいる辺りの水面に幾つもの水柱が噴き上がった。

 

《海面に浮遊物多数。敵潜水艦ヨ級の撃沈を確認》

 

「分かった。引き続き、警戒態勢を敷いておこう」

 

《ラジャー》

 

ヘリコプターからの報告を聞いたザンクードは「ふぅ」と一息ついてからコンテナ船の元へと戻って行った。

そして、行きと同じく昼夜のシフトを回しながら護衛を続けて約2日後。

一同はコンテナ船の母港へと到着した。

 

「この度はありがとうございました。またご縁があればよろしくお願い致します」

 

「こちらこそよろしくお願い致します。それでは失礼します」

 

敬礼をしたのち、ザンクード達は第五鎮守府への帰路につく。

 

「ふぁ~ぁぁ。疲れた、眠い・・・」

 

「典型的な昼夜逆転だな。これからは夜に騒ぐのを止めたらどうだ?」

 

大きなあくびをする川内に、木曾が呆れたような表情を浮かべる。

 

「え~、そんなの私じゃないじゃん。夜って言ったら川内、川内って言ったら夜戦でしょ?」

 

そんな川内の反論に「ハァ、もう手がつけられねぇな」と溜め息を吐きながら困ったようにかぶりを降る木曾をザンクードが横目に見ていると、レーダーに6つの反応が現れた。

 

「レーダーに反応、数6つ。・・・大きいな、反応の6つ全てが戦艦クラスだ」

 

「深海棲艦クマ?」

 

「いや、艦娘だ。にしても、ヘビーな編成だな━━って、おいおい・・・」

 

球磨の問いに答えるザンクードだったが、その進行方向を確認するや否や顔をしかめる。

相手はこちらの進路に搗ち合う(かちあう)ように航行していたのだ。

勿論、強引に航行しようとしているのは相手側である。

 

「ったく、無茶な真似するなぁ。我道を行くってか?」

 

そう言いながら、ザンクードは無線機のスイッチを入れた。

 

「ん゛ん゛!方位0-3-0より接近する戦艦部隊へ告ぐ。こちらは日本国国防海軍、第五鎮守府所属艦隊である。貴艦らは現在こちらの進路を強引に航行しようとしている。航行規定に(のっと)り、至急進路を変更されたし」

 

ヘッドセットを耳に押し当て、それの左パーツから伸びるマイクを口元に寄せながら無線通告を行うが、このあと、予想外の言葉が返って来る事になる。

 

《こちらは第十一鎮守府所属艦隊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目障りだ、貴様らが道を空けろ。駆逐艦(・・・)の分際で我々に指図するとは、烏滸(おこ)がましい》

 

「・・・なに?」

 

相手はザンクードが持つステルス性の影響で彼を駆逐艦と誤認しているようだが、言われようの無い突然の罵倒を聞かされたザンクードは片眉をピクリと持ち上げた。

彼は、自分達の声がマイクに入らないように設定したあと、怪訝そうな表情で自分を見つめてくる球磨達にゆっくりと振り返る。

 

「ザンクード、どうしたクマ?」

 

「・・・無線越しにいきなり罵倒された。目障りだから俺達が道を空けろとさ」

 

「「「はあ!?」」」

 

ザンクードを除く一同が一斉に声を上げた。

当然だろう。規定を破っているのは向こうにも関わらず、その事を伝えた途端に罵倒が返って来たのだから。

 

「所属は第十一鎮守府だそうだ」

 

「ッ!!?」

 

ザンクードの言葉を聞いた途端、木曾の顔色がみるみる悪くなっていく。

 

「木曾、どうしたニャ?」

 

「だ、第・・・十一・・・だと・・・?」

 

彼女の反応を目にしたザンクードは、まさか・・・。と内心呟いた。

 

俺の予想が正しければ、第十一鎮守府は木曾が第八鎮守府に来る前の基地だ。つまり連中は━━

 

《聞こえなかったか?退けと言っている。貴様ら風情が、我ら戦艦に対して“()が高いぞ”!》

 

━━連中は、木曾とその仲間の駆逐艦娘を撃ったクソ共だッ・・・!!

 

第十一鎮守府の戦艦部隊が肉眼でも目視できる距離にまで近付いて来ている。どうやら、本気でザンクード達に道を譲らせるつもりのようだ。

木曾が語っていた事を思い出し、頭の中で血が煮立ってくるのを感じながら、無線のマイクをオンにする。

 

「随分と言いたい放題だな。戦艦様だろうが国家元首だろうが、決められたルールすら守れん相手に()が高いもクソもあるか。いいか、よく聞け。違反してるのはそっちだ。戯れ言をほざく暇があるなら、辞書でも開いてそのピーナッツサイズの脳ミソに『規則』って単語を叩き込んでろ!」

 

《貴様ぁ・・・!》

 

相手の声が震えている。どうやら、怒らせてしまったようだ。しかし、ザンクードはそんな事はお構い無しに自艦隊の先頭に立ち、ギャリソンに「衝突警報を鳴らしておけ」と命令した。

艤装内から、ヴィー!ヴィー!という騒々しいブザーが鳴り響く。

 

《舐めるなよ!さっさと道を空けろと言っているのが聞こえんのかッ!!》

 

「さっきも言っただろうが。規定を破っているのはお前らだ。通信室(・・・)がイカれてるのか?それならモールス信号を打ってやろう。滅多に使わんものだから、巧く打てるかが怪しいところだがな」

 

と言う風な言い合いをしている内に、とうとう相手が直ぐそこにまで迫っていた。

 

《生意気な・・・!!今この場で沈めてやろうか・・・!!》

 

「やってみろ。その時は正当防衛で全員動けなくしてやる。勿論、このやりとりは全て記録してあるから、こっちは大手を振ってやれるぜ?」

 

そう言い残して無線をブチリと切ると、艤装内で鳴っている衝突警報の音が再度耳に入ってくる。

 

「ザンクード、お前何をするつもりだ?」

 

「・・・少しチキンレースをな」

 

まだ顔色が悪いままの木曾の問い掛けに、ザンクードはフッと笑いながら答えた。

 

「ザンクードさん、相手との相対距離が200mを切りました!」

 

「警笛を短く鳴らせ。どうせ意味は無いだろうが・・・」

 

機械によって合成された重低音が短く断続的に鳴り響き、衝突寸前である事を相手に一応(・・)警告する。

 

「残り50m!」

 

「ハンッ、やっぱりな。目ぇ見開いて驚いてやがる」

 

とうとう相対距離が50mを切ったところでザンクードが目を凝らすと、相手は心底驚いた表情を浮かべていた。

と言うのも、駆逐艦だと舐めていた奴が自分よりも巨大な戦闘艦だったなら、あの反応も頷ける。

そこからの展開は早かった。

 

「ッ!?艦隊、取り舵一杯!!」

 

そう艦隊の全員に命令を下す戦艦娘は、完全に焦りきった表情を浮かべていた。

あんな奴と衝突したら、タダでは済まない、と。

 

「覚えておけ・・・!!」

 

進路を変えた戦艦部隊はそんな捨て台詞を残しながら、ザンクード達とスレスレの距離を保った状態で横切って行った。

 

「こっちとしては、お前らの事なんざなるべく早めに忘れたいんだがな」

 

そう呟いたあと、木曾の元へ近付く。

 

「木曾・・・あいつらだな?」

 

「ああ、忘れもしねえよ・・・」

 

顔に影を落としながらそう呟く彼女と、事情を知っている俺と球磨。そして、何事かと慌てる古鷹、多磨、川内。

重苦しい空気のまま、一同は第五鎮守府へと向かった。

 

 

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