重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する! 作:Su-57 アクーラ機
ツポレフが操縦するフライング・デビルが、テストフライトを終えて滑走路に向けて徐々に降下して来る。
離陸する時も思ったが、やはりここまで巨大な機体が滑走路を離着陸する様は実に圧巻だ。
キュッ!と音を立てて地に脚を着けたフライング・デビルは滑走路を走りながら失速していき、やがてその巨体が完全に静止する。
「中々やるなぁ・・・」
零戦の6倍近くある機体を全く危なげも無く地に降ろしたツポレフの腕前に、ザンクードは無意識に感嘆の声を上げた。
「どうやら、ウチにはとんでもない凄腕が着任したようだな」
ゆっくりと工廠の横に建てられた格納庫へ移動して行くフライング・デビルを遠目に眺めていると、同じく横で眺めていた提督が口を開く。
そんな彼の言葉に、ザンクードは「ああ、随分と頼もしい奴らが来たもんだ」と笑いながら返した。
「さてと。良いもん見れたし、そろそろ中に戻るとするかな」
そう言って、提督は白い軍帽を被り直し、鎮守府内に向けて歩を進める。
「あ、すみませんが、ザンクードさんはこのあと工廠に来て下さい」
俺も帰ろうと思い、右足を1歩踏み出したところで、後ろから明石に呼び止められた。
「何かあるのか?」
「はい、実は開発機の件で少し・・・」
明石から発せられた『開発機』のワードを聞いたザンクードは、露骨に嫌そうな顔をする。
「あーあー、止めとけ止めとけ。俺がやってもガラクタしか出ない」
「その件なんですが、開発機を少しだけいじってみたので、3回だけお願いします」
「・・・・・・分かったよ・・・」
折れたのはザンクードの方だ。
彼は「ハァ」と溜め息をついたあと、「3回だけだぞ?」と念を押して了承した。
「ありがとうございます!それじゃあ早速取り掛かりましょう!」
「ヘイヘイ・・・」
ドンヨリした雰囲気のザンクードは、トボトボと明石の後ろをついて行く。
「よし、各資材の投入完了っと。今回は3連続で開発します。それでは、こちらのボタンを押して下さい!」
必要な資材を投入口に入れた明石は、以前と大して変わったようには見えない、忌々しき開発機のボタンを指差した。
どうせ出てくるのはクレバーフィッシュに決まってる。あれが出るくらいなら、失敗ペンギンが出た方が開発資材が減らずに済むのになぁ。
と思いながら、俺はボタンに人差し指を宛がい、ゆっくりと力を込める。
カチッ
ボタンを押し込んだ際の小気味の良い音のあと、開発機がガチャガチャと音を立てて震え、少ししてからあのチャイム音が鳴り響いた。
でき上がった開発品が入っているであろう部屋に繋がる鉄製の扉がゆっくりと開いていく。
その中にあったのは━━
「・・・・・」
3つある開発品の内の1つを手に取ったザンクードは、ジーッとそれを見つめる。
「な、7.7mm機銃・・・?」
そう呟く明石はザンクードからの反応が全く無い事に気付き、恐る恐る彼の表情を確認する。
「ふ、フフフ・・・フフフフフッ」
彼は7.7mm機銃を
「ざ、ザンクードさん?」
そんなザンクードを訝しんだ明石が彼に声を掛ける。
「やっと・・・やっとクレバーフィッシュ以外が出たぞぉぉぉぉ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!」」」
ザンクードは両手に乗せた7.7mm機銃を高く持ち上げて叫び、いつの間にか集まっていた彼の艤装妖精達も互いに抱き合ったりガッツポーズをしたりと、歓喜に打ち震えていた。
「え!?」
あまりの結果にとうとう限界を迎えたのかと心配していた明石は、予想外の反応に面食らってしまう。
「どうせ出るのはクレバーフィッシュだと思っていたよ!あと2つの開発品は・・・おお!7.7mm機銃がもう1
「ザンクードさん!折角ですし、艤装の見張り所にでも取り付けましょうよ!」
「ああ、やっといてくれ!最後のもう1つは・・・マジか!?こいつは攻撃ヘリだ!」
最後の開発品は、まさかの攻撃ヘリコプターだった。
「ザンクードさん、こいつは最新型の攻撃ヘリ━━サベージですよ」
「ブッシュマスターよりちっこいくせに、攻撃力は差して変わらないって言う代物ですね」
艦載ヘリコプターであるブッシュマスターの1番機、コールサイン、リキッドのディーレイとジャックが、ヘリコプターをまじまじと見つめる。
「見たところ、こいつは海軍仕様に手が加えられてるタイプなので、ザンクードさんにも搭載できる筈です」
「そうか・・・。よし、リキッド。お前達がこいつに乗れ」
ザンクードは少し考える仕草をしたあと、手に持っていたヘリコプターをディーレイとジャックの元に置いた。
「イエッサー!ありがとうございます!」
「へへへっ、マイク達が妬きそうですね」
2人は新しい玩具を買って貰った子供のような表情を浮かべながら、でき立ての新型ヘリコプターに寄って行く。
「いやぁ、明石。疑って悪かったなぁ!」
「は、はい、別に気にしなくても良いですよ」
眩しい程にキラキラしているザンクードに明石は若干引いてしまうが、7.7mm機銃を持って歓喜の叫びを上げる重原子力ミサイル巡洋艦なんてものを見てしまったのだから、彼女の反応も頷ける。
開発運が悪いとは聞いていたけど、この人はいったい開発でどんな目にあったのかしら・・・?
嬉々とした表情で艤装の見張り所に7.7mm機銃を取り付ける妖精達と、間宮の羊羮を食べた艦娘のような状態のザンクードを交互に見ながら、そう思う明石であった。
「どうした?工廠がお祭り騒ぎじゃないか」
不意に後ろから発せられた誰かの声を耳が捉え、ザンクード達は声の発生源へと首を動かす。
「開発で何か良いもんでも出たのか?」
そこには、格納庫から帰ってきたツポレフ達が不思議そうな顔をしてこちらを見上げていた。
因みに搭乗員である8人全員が、背中にヴァルチャー隊のエンブレムが刺繍されたお揃いのフライトジャケットを着用している。
「おお、お前らか。ふふん、見ろよ。開発で7.7mm機銃と最新型のヘリが出てきたんだぜ?」
「そいつは良かったじゃねぇか。だが、変に運を使い果たすと後々怖いぜ?」
「えっ・・・」
ツポレフが、ザンクードをからかうように意地の悪い笑みを浮かべて冗談を口にした。
「あ、そうだ。ツポレフさんも開発を1回だけしてもらえないかしら?」
何かを思い付いた明石は、開発資材を持ってツポレフに話し掛ける。
「俺がか?理由を訊いても?」
「異世界の住人がこっちで開発をしたらどうなるのか気になるのよ。実際、ザンクードさんは向こうの世界の攻撃ヘリを出したばかりだし」
「成程。・・・まあ、あんたには世話になってるし、別にそれぐらい構わんさ」
「やたっ!それじゃあ、早速資材を投入するわね」
言うが早いか、明石は開発機の投入口に資材をドバドバと流し込み始めた。
「オッケー!ツポレフさん、その赤いボタンを押して頂戴」
「あいよ」
明石の指示に従ってツポレフが開発機のボタンを押し込むと、またガチャガチャと音を立てて開発が始まるが、今回は最後にゴトンッ!と鈍い音のあとにチャイムが鳴り、扉が開く。
「・・・何だこれ?」
「キャプテン、これってアレですよね?」
ザンクードは開発機から出てきた物を見て目を丸くし、副操縦士のラミウスは横でボソリと口を開く。
「ああ、こいつはたまげたな・・・」
中には、丁度フライング・デビルの爆弾倉2つ分のサイズのコンテナが入っていた。
「ツポレフさんはこれが何かを知ってるの?」
「多分だが、こいつはフライング・デビル専用に開発中だったモジュールだ」
明石の問いにツポレフは目の前のコンテナを見つめながら答える。
「俺の予想が正しければ・・・」
彼はコンテナ側面の、恐らく点検用であろうハッチを開けて内部を覗き込んだ。
「やっぱり。30mmガトリング砲と40mm砲、105mm砲が入ってる。エアストライク・モジュールで確定だな。こいつはその名のとおり、空から直接打撃を与える為に本国で開発中だった兵装だ」
まさかそんな物が出るとは予想だにしていなかったのか、ツポレフ自身も困惑したような感じで説明する。
「35mm機関砲でも十分おかしいって言うのに、飛行機になんてもん積み込ませようとしてるんだよ・・・」
ザンクードが、「うわぁ・・・」と言いそうな表情でそう呟き、明石も横で同じ表情を浮かべていた。
「そんなこたぁデスペラード軍の上層部に言ってくれ。まあ、取り付けは比較的簡単だし、必要な時には猛威を振るってくれる事間違い無しだ」
こうして、フライング・デビルに新たな(凶悪)兵装が加わったのだった。
・『サベージ』攻撃ヘリコプター
角張った細いコックピット部と、横に出っ張った形の平らな形状をした胴体下部が特徴の攻撃ヘリコプター。
メインローターは先端に後退角が付いた4枚のプロペラで、テールローターも同じく4枚羽だが、こちらは騒音低減の為にX字型の特殊な形をしている。
着陸脚は機首に2基、尾部先端に1基の計3基。
胴体にはスタブウィングが取り付けられており、ミサイルなどの各種兵装を搭載可能。
固定武装として、凹凸の少ない腹部に30mm機関砲が取り付けられている。
この30mm機関砲はパイロットのヘルメットの動きと連動しており、パイロットの見ている方角に旋回する。
なお、本機は小柄ながら非常に丈夫な装甲を施しており、『ブッシュマスター』と違って兵員搭乗能力は無いものの、純粋な攻撃ヘリコプターとして仕上がっている。
モデルはAH-64
※サベージ:“野蛮”、“残忍”と言う意味
・『エアストライク・モジュール』
爆撃機フライング・デビルへの搭載を想定して開発された対地砲撃モジュール。
本来は輸送機を改造した機体が担う仕事だが、爆撃機の搭載量に目を付けられた結果生まれた。
砲撃と言う特性上、比較的低空を持続的に飛行する為、ある程度の制空権を確保する必要があるものの、搭載する機体自体に強力な自衛火器があるので、敵機がレシプロ戦闘機程度の性能ならば、多少強引に攻撃を推し進める事もできる。
砲撃の際は爆弾倉のハッチを開くと機体内部から下に展開される仕組み。
各火器は左右に135゜の範囲で旋回できるので、対地目標に対する即座の対応が可能。
全ての火器による集中砲火を食らえば、鉄筋コンクリート製の頑丈な要塞とて無事では済まないだろう。
搭載に際してはフライング・デビルの爆弾倉を2つとも使い、前部爆弾倉と後部爆弾倉との隔たりを取り外して行う。