重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する! 作:Su-57 アクーラ機
「・・・・・・どこだ?ここ」
見渡す限り海、海、海。陸地は見えず、ずっと先まで水平線が続いている。
「おかしい。確か俺は喫水下部をやられて沈んだ筈なんだがなぁ・・・」
先程沈めた筈の敵戦艦の破片も見当たらない。
それに、沈んだ時刻は午後4時を回っていた筈なのに、西日が射すどころかまだ昼前のような空だった。
おまけに体が重い。怠さからくるものでは無く、物理的な重さだ。
原因を探る為、視線を下へと動かしてみる。
「これは・・・」
その先には見慣れない人の両腕。更に下を見ると両足が伸びており、海面に立っていた。
「身体・・・人の四肢・・・?」
次に俺が纏っている衣服を確認してみる。上下両方とも青色の迷彩柄をした長袖、長ズボンだ。
だが、この服装は今まで毎日のように目にしてきた服装だった。
「エルメリア海軍の戦闘服じゃないか・・・」
今度は頭に被っている帽子を確認する為、ヘッドセットを首に掛けて退かし、帽子を手に取って確認する。帽子の全体色は藍色で、額の部分には
エルメリア連邦船 ザンクード
原子力ミサイル巡洋艦 艦番号95
と、黒地の上に金色の刺繍が施されており、一目で
そして、先程から感じる重量感だが、全身を確認している際に何度も視界に映り込んでいた━━と言うより、右手にしっかりとソレが握られていた。
正体は76mm単装高速射砲。通称マシンキャノンだ。
加えて手首には艦首に設置されていた筈の12連装対潜ロケット発射機の筒がしっかりと固定されていた。
次に左腕だ。前腕辺りに35.5cm連装主砲が盾のように取り付けられているが、こちらはそこまで重いとは感じない。
両足には形は変わっているが、主機と思われるパーツが足を守るように外側に付いており、片舷から2軸ずつスクリュープロペラが顔を覗かせていた。
で、腰と背中辺りなんだが・・・恐らくこれらが重量感の大半の原因だ。
まず腰だが、艦体中央部から艦首の
無論、VLSもCIWSも魚雷格納ハッチも、全ての兵装が変わり無く設置されていた。
こうやって見てみると、俺ってかなりの重武装艦なんだなぁと、そう染々と思う。
最後に背中辺りのパーツだが、巨大過ぎる。
高くそびえる煙突と一体化したタワーのような構造物が、胴体を守る艦橋を模した装甲の背後にしっかりと固定されており、その頂上ではこれまた大きな3次元レーダーがグルグルと回転していた。
これだけでも充分重いのに、そのタワーとの固定パーツからは太いアームが延びており、そこには130mm連装両用砲が左右合わせて2基。
そして、タワーの後ろには電子妨害用のアンテナタワーと、真上を向いて静止する61cm
・・・重いしデカイし、何より過剰過ぎるわっ!何だよ俺!大都市を1つ消すつもりなのか?!
いや、別にそんな事する気は無いけどさあ!
と、馬鹿な自問自答は止めよう。どうやら、これが今俺の全身を覆っている物のようだ。
配置が少し変わっている箇所が幾つかあったが、武装の数も、特徴的なオレンジ色の甲板も、まんま軍艦の頃と同じだった。
「ハァ、何なんだいったい・・・。沈んだと思ったら見知らぬ海域に人間の姿で立ってるし。かと思ったら艦艇のパーツが身体中を覆ってるし。とにかくまだ浮いてるのなら母港に戻るか。GPSで位置情報を・・・繋がらねぇ・・・」
衛星かこっちの機器が故障したのか、GPSはうんともすんとも言わない。
冗談じゃない。こんなバカ広い海で目覚めて早々、ゴーストシップに艦種変更だなんて最悪だ。
「勘弁してくれ・・・」と呟きながらGPSをいじっていると、肩に妙な違和感を感じた。
何かが歩いているような感覚だ。俺はゆっくりとその感覚の発生源へと顔を向ける。
「どうも」
「」
そこには親指サイズで人型のナニカがいて、そいつと目が合い、挨拶までされた。
「」
「あのー、すいませーん。・・・聞こえてますかー?・・・聞こえてますかー!」
「ハッ!?あ、ああ、スマン。君は?」
「はい、申し遅れました。私はザンクード艤装妖精のギャリソンです!」
ビシッと海軍式の敬礼をしてくるギャリソンと名乗る生物もまた、エルメリア連邦海軍の戦闘服を着用していた。
「よ、妖精?」
「はい!何かお困り事があれば遠慮無く言って下さい!」
「ああ、それは助かる。それならさっそくなんだが、今の現在位置を知りたいが、如何せんGPSが逝ってるようでな。直せるか?」
「ちょっと失礼しますね。ふむ・・・ザンクードさん、どうやらこれは壊れている訳ではないようです」
「壊れてないだって?」
「はい、我が国の衛星との交信が途絶されているのですが、そもそも
「見当たらないって、まさか人工衛星が墜とされたのか?」
「いえ、破壊されたと言うより、もとより存在していない、の方が正しいのかもしれません。例えば、別世界に飛ばされた、とか・・・」
「別世界・・・」
正直、本来ならば「何を馬鹿な」と彼を鼻で嗤ってもおかしくない言葉だ。
だが、この状況下ではどのようにSFチックな事を言われても信じる他はない。
そもそもの話、この生身の身体がある事が何よりの証拠だろう。
俺はもともと全長300mを超える合金鋼の塊だったのだから。
「・・・とにかく何とかできるか?ここがあの世だろうが、別世界だろうが、これじゃあ行動できない」
「少しお待ちを」
そう言ってギャリソンが艦内に入って行った。
「む?おお!GPSが動いた!成程、俺のいた世界とは全く違うな・・・」
ギャリソンが艤装内に戻ってから小一時間程待っていると、ようやくGPSが動き始めた。
俺の知っている地形とは全く違う大陸や海洋が存在しているな。同じなのは海と陸の比率が7:3だと言う点と、どこへ行こうが海は一繋がりだと言う点だけか・・・。どうやら、本当に別世界に来てしまったらしい。
「上手くいきましたか?」
「ああ、ありがとう。自分の位置が手に取るように分かるよ。いったいどうやったんだ?」
「まあそれは、ちょっと仲間にこの世界の民間衛星のコンピューターにお邪魔してもらいまして・・・」
ふーん、成程な━━って、ちょっと待て。
「おい、それってハッキン━━」
「ザンクードさん、GPSはちゃんと動いたんだから良しとしましょう」
「いやでも、ハッ━━」
「ザンクードさん。・・・お口、チャックで」
「はぃ・・・」
ギャリソンの威圧的な笑みに圧し負けて、この話は無かった事にされた。
「さあ、ザンクードさん。こんな所でボーッとなんてしてられませんよ」
「そうだな、とにかく今は陸地を目指そう」
こうして、俺達はGPSを頼りに先よりの陸地━━日本列島へ向かって進み始めた。
「ん?レーダーに反応、数6つ。こっちに近付いて来ているな。
日本列島へ進路を向けて早4時間。先程まで静かだったレーダーに反応が出た。
「今の我々では相手が敵か味方か分かりません。━━が、この艦隊は明らかにこちらを目指しています。無線による確認をしてみては?」
ギャリソンがそう進言してくる。
「そうだな。・・・接近中の艦隊に告ぐ。こちらはエルメリア連邦共和国海軍である。貴艦らの所属と目的を述べられたし」
《━━━━━》
応答が無い・・・。おかしい、これは全周波数の筈だ。聞こえない筈は無い。言葉が通じないのか?だとしても反応くらいは返ってくるだろう。とすると、無線を持っていない・・・?いや、相手は船だ。それも軍艦クラスの。無線の1つや2つはある筈だ。
「繰り返す。こちらはエルメリア連邦共和国海軍である。貴艦らの所属と目的を━━」
「不明艦より発砲を確認!!」
ギャリソンや他の妖精達の声が聞こえたあと、付近に水柱が幾つも上がった。
砲弾が至近に着弾したのだ。
「クソッ、それが答えかよ!敵の艦種は?!」
「戦艦2、重巡2、軽巡1、駆逐1!」
「そこそこヘビーな艦隊だな・・・。総員、対水上戦闘用意!」
艦内警報が鳴り響き、妖精達が慌ただしく配置についていく。
「対水上戦闘用意よし!」
「まずは長射程の戦艦からだ!ハンマーヘッド1番から8番ランチ!」
「了解!ハンマーヘッド、ランチ!」
復唱せる妖精の声と共に大型の対艦ミサイル8発が空へと撃ち上げられ、その場で一気に角度を水平に傾けたあと、一気に加速して敵に向かって飛んで行った。
「・・・命中!敵戦艦、2隻とも撃沈です」
戦艦1隻に対して各4発ずつ命中する。
重装甲を誇る戦艦と言えど、ハンマーヘッドを4発も撃ち込まれてタダでは済まなかったようだ。
本ミサイルは戦艦・空母などの大型艦艇に対して特に効果を発揮する兵器だが、長射程を誇るが故に誘導方法は一風変わっており、複数のミサイルがチームを組んで誘導を補助し合うというものになっている。
「どうやら俺のいた世界と違って、連中はCIWSの類いを持ってないようだな。この際、慣れる為の練習とさせてもらおう。次、目標敵重巡!ハンマーヘッドではオーバーキルになるな。スティングレイ1番から4番ランチ!」
「スティングレイ、ランチ!」
今度はハンマーヘッドより中型の巡航ミサイルが敵に向かって放たれ、諸に2発ずつ直撃を受けた敵重巡は戦艦のあとを追うように沈んで行った。
「撃沈!残るは軽巡と駆逐1隻ずつ!」
「敵艦、進路反転。離脱するつもりのようです」
「逃がして仲間を呼ばれたら最悪だ。残るは砲で方を付ける!」
言うが早いか、ザンクードは左腕を持ち上げて35.5cm砲を発砲した。
「命中、軽巡撃破!流石、レーダーやら何やらでゴテゴテしてるだけの事はあるな。あとは・・・!」
ガショッ!と、マシンキャノンを構える。
その照準器の先には黒光りする鯨のような体に入れ歯を付けた姿の怪物がいた。
「何だこの生き物は・・・。こんな輩が公海をのさばってるのか?」
若干困惑しながらトリガーを引くと、タングステン製の弾芯を用いた76mmの砲弾が毎分240発のレートで撃ち出され、目の前の怪物をズタズタにしていく。
トリガーを戻すと、そこには大小問わない大量の破片とオイルらしき液体が浮かんでいた。
「よし、敵艦(そもそも艦なのか?)撃破。周囲に残敵無し。初戦闘でこれだけやれたら及第点だろう?」
マシンキャノンの弾帯が入った弾倉を再装填しながら、ギャリソンに今の感想を聞いてみる。
「そうですね。その身体になってからそう時間は経ってないのにお見事です!まさにS勝利ってところですね!」
こうして、異世界に転生したザンクードの初戦闘は大勝利に終わった。
もっと文才が欲しいと思う今日この頃・・・
因みに、私としてはマシンキャノンの見た目は『PKPペチェネグ』と言うロシアの軽機関銃を想像しております。