重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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シャークマウスが塗装されたマイクロバスを見て、こんなのあるのか・・・と思った作者です。


第28話 直ぐそこにある実態

4日後 第十一鎮守府方面の洋上

 

 

「あと2~3時間で到着だ」

 

GPSで現在地を確認しながら、直ぐ横にいる木曾に話し掛ける。

 

「・・・ああ」

 

そう短く返す木曾の表情には微かに不安の色が見て取れた。

それもそうだ。自分達が今から行くのは、仲間を平気で撃つような者がいる場所なのだから。

 

・・・ギャリソン

 

そんな彼女を見たザンクードは、小声でギャリソンを呼び出した。

 

「はい、何でしょうか?」

 

ウチの軍歌を鳴らしてくれないか?

 

ザンクードの言葉にほんの一瞬だけ呆けるギャリソンだったが、彼の意図を察するや否や、「了解です」と言って艤装内に戻って行く。

 

~~~♪

 

しばらくすると、艤装内外のスピーカーから打楽器や管楽器などで構成された迫力のある音楽が流れ始めた。

 

「我らがエルメリア連邦軍は懲罰する!祖国と友に仇なす全てを!♪」

 

イントロが終わった辺りから、ザンクードが腹から声を出すように歌い始める。

 

「ッ!?ざ、ザンクード、いったいどうしたんだ?」

 

突然歌い始めた彼に驚いた木曾は、先程まで浮かべていた暗い表情も忘れて、勢い良くこちらを振り向いた。

 

「どうしたも何も、ちょっとした景気付けさ。

北半球から赤道を越えたその先まで!例え神であろうと我らの行進は止められない!♪

お前もどうだ?湿っぽい気分なんざそこらの小魚にでも食わせとけよ」

 

歌というものは偉大だ。こうして歌っているだけで力が湧き、相手を萎縮させる事だってできる。

 

「・・・へへっ、そんな歌を歌ってりゃ、逆に魚が逃げちまうぜ」

 

そう言って軽口を飛ばす木曾の表情が先程よりも明るくなる。

 

「ま、確かに景気付けには丁度良いかもな」

 

 

 

「「「諸君らは勇敢に戦った!敵であろうと敬意を込めてお辞儀しよう!この最強の軍隊から!♪」」」

 

いつの間にか、2人の周りは妖精達も交えた軍歌の大合唱となっていた。

 

 

ザンクード達が第十一鎮守府へ向けて航行中である一方、第五鎮守府の広大な滑走路では巨大な爆撃機が離陸の準備に入っていた。

 

「よし、フライング・デビルの全機器に異常無し。燃料と火薬もたらふく呑み込んだ」

 

ツポレフが頭上のスイッチを押したり捻ったりしながら、1つ1つ念入りにチェックしていく。

 

「さてと」

 

そう言うと、彼はおもむろに機内放送のスイッチを入れた。

 

「━━皆様、本日はヴァルチャー航空便、第十一鎮守府行きをご利用下さいまして、ありがとうございます」

 

態とらしく声に抑揚を付けて話す彼に、コックピットの妖精達が、プッと吹き出す。

因みにこのアナウンスは誰に向けてのものかと言うと・・・

 

「な、何だろう、この嫌な予感は・・・?」

 

「止めろ。お前の嫌な予感はだいたい的中する」

 

「機内食は何が出るんだ?」

 

「そんなもん爆撃機にある訳ないだろ」

 

「しまった、酔い止め飲むの忘れてた・・・。ん?何だ、この真っ黒なビニール袋は」

 

フライング・デビルの兵員搭乗席に座る事になった、哀れな工廠妖精達に向けてのものである。

 

「この便の機長を務めます、ツポレフです。当機は間も無く離陸致します。シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締め下さい」

 

一頻り言い終えた彼はニヒルな笑みを浮かべながら機内放送のスイッチを切ると、バイザーを下ろして酸素供給マスクを装着した。

 

「さぁて、今日は生憎の曇りだ。乱気流も発生しまくってるらしい」

 

ツポレフがコックピットの窓から見える、空一面を覆う雲を眺めながら、ラミウスに話し掛ける。

 

「はははっ、そいつはとんだフライトになりそうですね。キャプテン」

 

「ああ、まったくだ。よし、そろそろ上がるぞ」

 

「ラジャー」

 

8本のスラストレバーを奥に倒すとエンジンが轟音を立てて機体を前へと押し進めて行き、機体が浮き上がる時のフワッとした独特の感覚を機内の全員が感じ取ったあと、爆撃機は第十一鎮守府に向けて飛翔して行った。

 

 

 

 

 

 

離陸からしばらく高度を上げ続け、目標高度に到達したフライング・デビルは乱気流の中を飛行していた。

 

「こ、こここっ、これ、大丈夫なんだよな?!」

 

ガタガタ、ギシギシと金属の軋む音を耳で捉えた工廠妖精の1人が心配そうな声を上げる。

 

「ああ!全く問題無いぜ!これは飛行中の飛行機が立てる正常な音だ!」

 

工廠妖精の声に、兵員搭乗席から最も近い席に座る機銃手の1人が返答した。

 

「墜ちたりしないよな?!な?!」

 

「はっはっはっ!ちょっとした荒れようだが、そんな事でいちいち墜ちてたら『空飛ぶ悪魔』は名乗れねぇよ!安心しな!」

 

機体が大きく振動を続ける事にも全く動じず、機銃手の妖精は快活に笑い飛ばしながら、「こんなのまだ軽いもんさ!」と続ける。

 

「こっちの世界に来る前の話なんだがな!もうクルー達がゲロの吐きっ放しさ!大和皇国の近くでバカデカイ嵐に巻き込まれたんだが、あいつら胃袋がすっからかんになってたよ!」

 

その言葉を聞いた工廠妖精は、直ぐ横で青い顔をしてエチケット袋を持つ同僚を横目に見やり、機銃手の妖精はポケットの中からチョコバーを取り出したかと思うと、袋を剥き始めた。

 

「パイロットは前の風防にゲロをぶち撒けやがるし、俺の席に座っていた奴は機銃のコントローラーにリバースさ!あの時は流石に参ったぜ!いやもう、あっちこっち大変だったんだよ!なんちゅうか、もうバッチくてなぁ!これ食うか?」

 

懐かしそうにそう語りながら、彼はチョコバーを工廠妖精に差し出す。

 

「い、いや、止めとく。俺もそのパイロット達みたいになりそう・・・うぷっ!?」

 

兵員搭乗席が阿鼻叫喚となる中、フライング・デビルは乱気流を突っ切り、目的地へ着々と近付いていた。

 

 

「見えた。あれが第十一鎮守府か。木曾、行けるな?」

 

「愚問だな」

 

ザンクードの問いに、木曾は不敵な笑みを浮かべた。

 

「上等」

 

彼女の笑みに彼もニヤリと笑い返したあと、鎮守府の埠頭へと近付いて行く。

 

「よお、お前がザンクードか?」

 

埠頭には数人の戦艦娘を護衛に付けた、この基地の司令官━━三管史 照信(みくだし てるのぶ)が立っていた。

 

「はっ!本日付けで当鎮守府の着任となりました。ザンクード級重原子力ミサイル巡洋艦のザンクードであります!」

 

こんな奴に敬礼などしたくもないが、そこはグッと堪えて挨拶と共に敬礼をする。

 

「へぇー、お前がねぇ・・・。あんまパッとしねぇ奴だな」

 

三管史(みくだし)はこちらをジロジロと品定めするかのように見たあと、「ああ、それと・・・」と言って今度は横にいる木曾に視線を移した。

 

「久しぶりだなぁ、木曾。元気にしてたかぁ?」

 

そう言って木曾を小バカにするように顔を歪めて嗤うと、側に立っている戦艦娘達もクスクスと嗤い始める。

正直、今直ぐにでもこいつらの顔に右ストレートを食らわせてやりたい気分だ。実行に移さなかっただけでも誉めてほしい。

 

「ああ、元気にしてたよ。この通りピンピンしてるさ」

 

━━がしかし、バカにされた木曾本人はどこ吹く風であった。

その返しが面白く無かったのか、三管史(みくだし)はムッと顔をしかめる。

 

「チッ、釣れねぇ奴だな。・・・まあ、挨拶はこれぐらいで良いか。それより、爆撃機がまだ来てねえじゃねえか」

 

彼は顔を上げて曇り空を眺めながら、フライング・デビルの到着がまだである事に不満を漏らす。

 

「セットで来るって話の筈━━」

 

「だったろ?」と言おうとしたところで、彼は分厚い雲の中から姿を現した機影を発見した。

 

「おっと?ようやく到着したか」

 

三管史(みくだし)は滑走路に向けて降下して行くフライング・デビルを満足気に見つめる。

 

「これで全部揃ったって訳だ。それじゃ、俺ぁやる事があるから失礼するぜ。案内はそいつに任せてるから、まあ精々仲良くやってくれや」

 

こちらに背を向け、建物内へと帰っていく三管史(みくだし)

その背中に内心で中指を立てる俺は、案内を任せているという『そいつ』に顔を向ける。

見覚えのある顔だと思ったら、前のいざこざで旗艦を務めていた戦艦娘だった。

名前を覚える気にもなれないので、『戦艦A』とでも識別する事にする。

 

「ふん、まさかここで会う事になるとは思わなかったが、まあ言い。さっさと工廠で艤装を外してこい。屑鉄共」

 

ワーオ。随分とご挨拶なこった。

 

取り敢えず言われた通りに艤装を外し、ギャリソン達には俺と木曾の艤装及びフライング・デビルを厳戒態勢で見張るように命じたあと、戦艦Aの案内を受ける。

鎮守府内はボロっちい訳でも無く、むしろきれいな方であり、一見すると普通の鎮守府だ。

・・・ただ、活気の『か』の字さえも無く、他の艦娘達から怯えるような目を向けられさえしなければ。

 

「ここが貴様らの部屋だ。使わせてもらえるだけありがたく思え」

 

そう言い終えると、戦艦Aは不機嫌そうな足取りで去って行った。

 

ん?ちょっと待て。貴様『ら』?

ま、まさか・・・!?

 

「どうやら、オレとお前は同室みたいだな」

 

木曾が部屋のドアを開けて中を覗く。

 

やっぱりか。一応俺は男で、木曾は女なんだがなぁ・・・。

 

ザンクードは目元を左手で覆ってかぶりを振りながら、内心でそんな事を呟いた。

 

「ま、作戦会議はしやすくなるか」

 

そう言って自分を納得させ、自身も部屋の中を覗くが・・・何これ。

これで2人分か?と思う程狭い部屋の中には、低質な畳と薄い毛布、以上。

もう1度問おう。何これ。

 

「ハァ、まったく。これだけでも、ここがアウトである1つの証拠になるぞ」

 

あまりの待遇の悪さに、大きな溜め息を溢すザンクードだった。

 

 

工廠

 

 

「よう。おたくらはここの戦艦娘さんの艤装妖精かい?」

 

フライング・デビルから降りたツポレフ達は談笑していた妖精達に話し掛ける。

しかし、相手からは全く反応が返って来ない。無視されているのだ。

 

「おーい、聞こえてるかぁ?・・・おーい」

 

「チッ、たかだか爆撃機のパイロット風情が俺達に話し掛けんじゃねえ。相手を見てからものを言いやがれ」

 

ようやく返って来た言葉は、まあ粗方予想していた通りの言葉だった。

 

「空飛ぶ鉄屑が」

 

「あ゛?」

 

相手から放たれた言葉にクルーの1人が前に出ようとする。

 

「抑えろ。ザンクードに言われたろ?俺達は無法者じゃあないんだ」

 

「ですが・・・!いえ、すいません」

 

「それで良い。いや、(しゃく)に触ったようで悪かったなぁ。それじゃ、俺達は退散させてもらうとするよ。行くぞ」

 

未だ戦艦娘の艤装妖精達を睨み続けるクルーの肩に手を置いて、ツポレフ達はフライング・デビルの元へと戻って行く。

 

・・・ここの戦艦娘の艤装妖精も完璧にアウトだな。あとの会議でギャリソン達に報告しておくか。

 

内心でそう呟くツポレフであった。

 

 

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