重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第31話 トゥームストーン隊、潜入せよ

翌日、まだ日の出前の午前01:00時。

ザンクード艤装の格納庫内には、6人の妖精が集まっていた。

 

「ザンクードさんから、作戦を実行してくれとのお達しが来た」

 

ギャリソンは、自身の正面に立つ5人の妖精━━レッカー、アイリッシュ、パック、ダン。そして、今回特別に随伴するハーパーを見渡しながら静かに口を開く。

 

「目標は三管史(みくだし)の執務室にある棚の裏側だ。通気ダクトを通って侵入する事になる。それと、新たな報告によると、2名の武装した妖精が執務室内の見張りに就いているらしい」

 

「武装した妖精が室内に?そいつは怪しいですね」

 

茶色いミリタリー帽子にサングラスと砂漠迷彩の戦闘服という格好の妖精━━ハーパーが、戦闘服のベルトをキツく締め直しながら眉間に皺を寄せた。

因みにハーパーは工兵である。

工作関係は勿論、ロケットランチャーなどの火器はレッカー達よりも巧く扱えるので、その気(・・・)になれば結構怖い。

 

「その通りだ。巡回する私兵の他にも態々執務室の中にまで歩哨を立たせるという事は、それだけのモノがある証拠だろう」

 

「成程。お目当てのブツがあるのは、ほぼ確定って訳ですね」

 

レッカーがニヤリと笑いながら、ガチャリとアサルトカービンに弾倉をハメ込む。

 

「俺達にかかれば、奴らの尻尾を掴むなんざ軽いもんだぜ」

 

「捜し物は得意だ」

 

「1度で良いから、こんな感じの事をしてみたかったんだよ」

 

アイリッシュ、パック、ダンと続く。

 

「よし、最後に何か質問は無いか?・・・無いな?それでは現時刻をもって、作戦を開始する!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

工廠にたむろしている戦艦娘の艤装妖精達にバレないよう、静かに工廠から出たレッカー達はダクトに侵入し、執務室へと向かって行った。

 

 

 

 

 

執務室へ向けて移動を開始してからしばらく経った頃。

 

「やっぱり、ヘリやバイクが使えないってのは不便だな・・・」

 

パックが額の汗を拭いながら、ボソリと呟く。

 

「仕方ないさ。そんなので移動してたら、直ぐ見つかっちまう。証拠を押さえるまではバレないのが前提だからな」

 

そう説くレッカーも戦闘服の胸元を少し緩めて外気を取り入れるようにパタパタと扇いでおり、暑そうにしていた。

 

「通気ダクトを通って執務室へってのはバレずに進めるから良い考えだけど、迷路みたいになってるから道を間違えると面倒だな」

 

ダンが見取り図を広げながら、ポリポリと人差し指で額を掻く。

 

「そう考えると、ネズミってスゲェよな。外に繋がる道を簡単に察知できる訳だし」

 

「あ」

 

アイリッシュが腕を巻くりながらそんな事を呟いたその時、見取り図片手のダンがギリギリ聞こえるか聞こえないかの声を上げた。

 

「ダン、どうしたんだ?」

 

ハーパーがダンの方を振り向くと、それに釣られて他の者も一斉に「?」と言った表情を浮かべながら、ダンに視線を移す。

 

「・・・怒るなよ?・・・その・・・曲がる角を1つ間違えた。しかも、結構後ろの方だ」

 

「「「」」」

 

執務室まで、まだ半分以上も距離がある地点での出来事である。

 

 

一方、工廠では1つの事件が起きようとしていた。

 

「ギャリソン!大変です!」

 

1人の妖精が血相を変えて部屋に転がり込み、ギャリソンは思わずビクッと小さく跳び跳ねてしまう。

 

「い、いきなりどうした・・・」

 

バクバクと煩く鳴る心臓を鎮めようと深く呼吸するギャリソンは、ノックもせず盛大に部屋に入って来た妖精を恨みがましそうに見つめながら問い掛けた。

 

「そ、それが・・・!」

 

焦燥した顔つきの妖精は、肩でゼェハァと息をつきながら説明を始める。

 

「昨日の任務中にあの戦艦との間に起きた一悶着の件です」

 

「ああ、あれか。それが何か━━いや待て。そこから先は言わなくて良い」

 

彼が何を言わんとしているかを察してしまったギャリソンは額に手を宛がい、「ハァァ・・・」と大きく深い溜め息をついた。

 

勘弁してくれ・・・。それで、今どんな状況なんだ?」

 

「外で言い合ってます。あいつら、他の戦艦娘の艤装妖精も呼びやがったようで・・・」

 

「分かった。急ごう」

 

「こちらです」

 

妖精に案内されるギャリソンは艤装内の廊下を走り、外へと通ずる鉄製の扉を開いて下を見渡す。

 

「あれか・・・」

 

彼の視線の先ではザンクードの艤装妖精を筆頭とする第五鎮守府所属の妖精達と第十一鎮守府に所属する戦艦娘の艤装妖精達が睨み合っていた。

 

「よぉ、ギャリソン。随分と面倒な事になっちまってるぜ?」

 

タラップを駆け降りて現場へ向かうと横合いから誰かに声を掛けられ、彼は足を止めて声の主に振り返る。

 

「ツポレフか。いつからだ?」

 

「本当についさっきだ。突然向こうから絡んで来やがった。俺は偶然居合わせただけだ」

 

ツポレフは流し目で戦艦娘の艤装妖精達を見ながら、クイッと親指で指し示した。

 

「てめぇら、あん時は舐めた真似してくれたじゃねえか。えぇ?」

 

「ハンッ!五月蝿いのがなんか騒いでやがる。おい、誰か翻訳してくれ!」

 

ゴングを慣らせば、直ぐにでも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気である。

 

「ケッ!なぁにが、作戦の邪魔だ。てめぇらの方が邪魔だよ」

 

「あ゛ぁ゛!?」

 

「んだよ」

 

「━━お互いにストップだ」

 

お互いが掴み掛かろうとした寸でのところで、ギャリソンが間に割って入った。

 

「ギャリソン、止めないで下さい。こいつらふざけた事を・・・!」

 

「気持ちは分かる。だが、1度冷静に━━」

 

「おいおい。誰かと思ったら、あの巡洋艦の艤装妖精を束ねてる野郎じゃねえか」

 

ギャリソンの顔を見るや否や、相手はニヤニヤと嗤い始める。

 

「飼い犬の(しつけ)ぐらいしとけよ。ま、所詮見た目と派手さしか能の無い鉄屑は、その艤装妖精も同じく終わってるって事なんだろうけどよ。なあ?みんな」

 

同意を得るようにその妖精が後ろの仲間に問い掛けると、ゲラゲラと大笑いが返って来た。

 

「そこの雷巡の艤装妖精共も、さっさと魚雷でも磨いて来たらどうだ?お前らにはそっちの方がお似合いだぜ」

 

ブ チ ッ

 

互いの仲間を侮辱されたザンクードと木曾の艤装妖精の頭の中で、盛大に何かが切れる音がした。

 

「この野ろ━━」

 

「待て」

 

1人が飛び掛かろうとしたところで、ギャリソンがそれを制止する。

 

「ですがッ!」

 

「いいから。もう少し(・・・・)待ってくれ」

 

静かにそう告げたギャリソンは、ツカツカと相手の元へと歩いて行き、手を少し伸ばせば届くような距離で足を止めた。

 

「彼らは、君達のような奴らを相手に本当によく耐えたと思う」

 

「何だよ。なんか文句でも━━」

 

「ザンクードさんと木曾さん両名の艤装妖精を代表して、君達に一言だけこの言葉を贈ろう」

 

「あん?」

 

スゥと息を吸うギャリソンに、相手は眉を潜める。

そして━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━ファック・ユー(くたばりやがれ)

 

ギャリソンの口からは、確かにこの言葉が放たれた。

 

「なっ!?」

 

「こ、この野郎・・・!!」

 

プルプルと震えながら、顔を真っ赤にしてゆく戦艦娘の艤装妖精達。

 

「っし!」

 

「ナイス、ギャリソン」

 

「まさか、ギャリソンの口からそんな言葉が出るとはな・・・」

 

相手が怒りのボルテージを上げていくのに対し、ギャリソンの後ろにいた妖精達は小さくガッツポーズをしたり、フッと笑いながら彼を称賛したり、意外な姿に驚いたりと様々な反応を見せる。

 

「ワーオ。ギャリソンの奴、言うじゃねえか」

 

「そりゃああんだけ言われたら切れもしますよ」

 

「俺だって、初日の事は忘れてないですからね」

 

少なからず戦艦娘の艤装妖精達からバカにされていたツポレフ達も、その光景を満足そうな笑みを浮かべて見ていた。

 

「こりゃあ明日は槍の雨が降るな」

 

「なあ、コヴィッ()。ギャリソンはそう言った事は滅多に言わないタイプなのか?」

 

木曾の艤装妖精が、やれやれと首を横に振りながら苦笑を浮かべる妖精に問い掛ける。

 

「まあな。彼は基本的にその手の暴言は吐かん。それと、俺の名前はコヴィックだ」

 

「え?違ったのか?アイリッシュからはそう聞いてたんだが・・・」

 

あの野郎、あとで締め上げてやる・・・!なら、しっかり覚え直すんだな」

 

そうこうしている内に相手の怒りが頂点を迎えた。

 

「こ、こいつら全員絞めちまえぇぇぇぇ!!!」

 

1人が目を血走らせながらそう叫ぶと、他の妖精達が雄叫びを上げながら突っ込んで来る。

 

「向こうから先に仕掛けて来たんだ!総員、あのクソッタレ共に後悔させてやれ!!」

 

「「「おおぉぉぉ!!」」」

 

()くして、工廠内での大乱闘が幕を上げた。

 

 

「なあ、レッカー」

 

アイリッシュが引きつった表情で正面を見つめたまま、隣で呆然と立ち尽くすレッカーに声を掛ける。

 

「・・・何だ?アイリッシュ」

 

「俺達は夢でも見てんのか?・・・さ、さっきっから、バカデカイ夢の国の住人がこっちを見てるように見えるんだ・・・」

 

震えながら生唾をゴクリと飲み込む彼の視界には、通気ダクトの中で狭そうに身を屈めて二足立ちをするネズミが映っていた。

 

「夢は夢でも、1歩間違えりゃあ悪夢だぞ」

 

ヒクヒクと何かの匂いを嗅ぐように鼻を動かしながらゆっくりとこちらに近付いてくるネズミに、やむを得ないか?と思いながらレッカーはアサルトカービンを構えようとしたが、ネズミは彼を素通りし、ハーパーの元へ向かって行く。

 

「ハーパー!危ないから伏せてろ!」

 

彼を除く全員がネズミに銃口を向けるが、当の本人は「いや、待ってくれ」と言って、ポケットをゴソゴソと漁り始めた。

 

「お?あったあった」

 

そう言って笑みを浮かべる彼の手にはチョコバーが握られており、それの個包装を向いてネズミの眼前でチラつかせる。

 

「ほーら、美味そうだろー。欲しいか?食わせてやるからなー」

 

与えられたチョコバーをムシャムシャと食べるネズミを撫でるハーパーと、それに全く動じず、されるがままのネズミを見たレッカー達は心の中でこう呟いた。

 

た、ターザン・・・。

 

そんな彼らの心の声など露程も知らないハーパーは、完全に手懐けたネズミの上に跨がる。

 

「お、おい、ハーパー!何をしている?!変な事したらそいつを怒らせるだけだぞ?!」

 

レッカーが慌ててハーパーを止めようとするが、ハーパーは「大丈夫だって」と言って彼に手を差し出した。

 

「こいつは俺達を襲ったりしねえよ。ほら、お前らも乗れよ。執務室まではこいつに運んでもらおうぜ?」

 

「だが・・・」

 

「レッカー、ここはハーパーの言う通り乗せてもらおう。執務室まではかなり距離がある」

 

渋るレッカーの肩に手を置くダンが、持っていた見取り図を広げて見せる。

 

「・・・そうだな。ここは新しい仲間の手を借りよう」

 

少し考える素振り見せたあと、持っていたアサルトカービンを肩に掛け直したレッカーはハーパーの手を取り、ネズミの背中に跨がった。

 

「そう言やぁ、こいつの名前を決めてなかった」

 

全員がネズミの背中に乗り終えたところで、ハーパーが口を開く。

 

「名前だぁ?ふむ・・・ミッキ━━」

 

「アイリッシュ、悪い事は言わないから、命が惜しかったらそれ以上は止めておけ」

 

アイリッシュが全てを言いきる直前、パックが真顔でそれを制止した。

 

「お、おう・・・」

 

パックの気迫に気圧されたアイリッシュは何が何だか分からないまま、口をつぐむ。

 

「そうだな・・・。ジェリーなんてどうだ?」

 

「ジェリーか。良いんじゃねえか?よし!お前の名前はジェリーだ!よろしく頼むぞ!」

 

ダンが思い付いた名前がしっくり来たのか、ハーパーは上機嫌な表情で、自身に懐いたネズミの名前を呼んだ。

 

「さて、そろそろ任務に戻るとしよう。あまり油を売っている訳にもいかんからな」

 

「オーケーだレッカー。それじゃあそろそろ出発するかぁ!」

 

一同はジェリーの体毛にしっかりと掴まる。

 

「走れジェリー!風のように!ヒーハー!」

 

5人を乗せたジェリーは執務室へ通ずるダクトをタタタッと駆けて行き、あっという間に執務室に到着した。

 

「おーおー、職務熱心な事だ」

 

双眼鏡を取り出したレッカーは、異物混入を防ぐ為の網の隙間から室内を確認し、銃を携えた2人の妖精を発見する。

 

「他には・・・どうやらいないみたいだな。報告通りだ。ハーパー、どんな感じだ?」

 

双眼鏡から目を離したレッカーは、ダクトの網をヒートカッターで切断しているハーパーに話し掛けた。

 

「もうちょいで切れるから、見張っといてくれ。切断時の火花を相手に見られると面倒だ」

 

ジュゥゥゥ・・・!と音を立てるヒートカッターが徐々に鉄製の網を切り進めて行く。

 

「うっし、切れたぞ。あとは・・・」

 

四角く熱切断された網の一部を引き抜いた。

 

「完了だ」

 

サムズアップするハーパーの声を合図に、トゥームストーンの4人組が室内に侵入し、続いてハーパーとジェリーが踏み入る。

 

「侵入には成功したな。次は邪魔物の無力化だ」

 

「じゃあレッカーは右の奴を頼んだ。俺は左の奴をおねんねさせる」

 

レッカーとダンは、こちらに全く気付いていない2人の見張り妖精に背後から近付き・・・

 

「ヴェッ!?」

 

「ヴァッ!?」

 

せーので首筋を銃床で殴り付け、彼らの意識を瞬時に刈り取った。

 

「クリア。みんな、もう来ても大丈夫だ。あとはあの棚の裏を確認するだけだな」

 

「ささっとやる事やって帰ろうぜ」

 

見張りを縄で簀巻きにし終えたレッカー達は本命である棚の脚下まで歩いて行き、ビルのように大きなそれを見上げる。

 

「趣味わりぃ・・・」

 

「肥太と良い勝負だぜ、こりゃあ」

 

顔をしかめるアイリッシュとパックを他所に、ハーパーは棚裏の壁をコンコンとノックするや否や、「ビンゴっ!」と嬉しそうに呟いた。

 

「この音の響き具合だと、裏に部屋があるのは間違い無しだぜ」

 

彼はいそいそとバックパックから工具を出し、作業に取り掛かる。

 

「オープンセサミ♪」

 

巧妙に隠されていた配電盤の中をいじるハーパーがそんな事を言いながら配線を繋げ直すと、小さなモーター音と共に棚が横にスライドを始め、人間が1人入れる程度の入り口が現れた。

 

「ナイスだハーパー。それじゃあ今から中を探索してくる。行くぞアイリッシュ。ハーパーも一緒について来てくれ。パックとダンはジェリーと一緒に見張りを頼む」

 

レッカー達3人は銃に取り付けられたフラッシュライトで辺りを照らしながら、室内の奥へと前進して行く。

しばらくすると、隠し部屋の奥に金属製の引き出しを見付けた。

なんとか引き出しの上まで登った3人は頂上から1段目を開けて書類を取り出す。

 

「やっぱりな。こんなカラクリを施してまで隠すには、大抵それなりの理由があるもんだぜ」

 

書類を一通り確認したレッカーはポケットからカメラを取り出し、撮影を開始した。

 

「しかも、結構最近のやつだ。処分されちまう前で良かったな」

 

「こんな証拠を入手したんだ。これであの野郎はお終いだな」

 

アイリッシュが「ヒュ~」と口笛を吹きながら、足元に置かれた書類を見下ろし、ハーパーはニヤリと悪い笑みを浮かべる。

 

「オーケー。撮影はこんなもんで良いだろう。書類を元に戻してズラかるぞ」

 

「「了解」」

 

書類を元の位置に戻し、引き出しを閉じた3人は隠し部屋の外で待たせている2人と1匹の元へ戻って行った。

 

「待たせたな。目当てのモノはしっかりと押さえた。あとは艤装に帰って画像の解像度処理を行うだけだ」

 

「分かった。それと、そこで寝てる見張りはどうする?」

 

尻を上に突き出したような姿勢で気を失う2人の見張り妖精を、ダンは残念な奴を見るような目で見つめる。

 

「証拠を消す為に始末するって訳にもいかんだろ。簀巻きのままジェリーに括り付けて連れて帰ろう」

 

「了解だ。パック、手伝ってくれ」

 

「分かった。念の為にガムテープで口は防いでおくぞ」

 

手際良く簀巻きの2人をジェリーに括り付けていくダンとパック。

 

「一丁上がり!」

 

そう言って、ダンが手をパンパンとはたく仕草をしたところで、気を失っていた2人が目を覚ました。

 

「ムッ!?ム~~!!ムグ~~!!?」

 

全身をグルグル巻きにされた上に口をガムテープで塞がれた妖精は腕1本動かせない状態で、体を必死に揺さぶって抵抗する。

 

「おはよう、目が覚めたか?目覚めて早々悪いが、しばらくそのままで我慢しろよ?なに、捕って食おうって訳じゃない。少し俺達の艤装に招待してやるだけさ」

 

ニコニコした表情を浮かべるレッカーは「だが」と続けたあと、ピストルを腰のホルスターから引き抜いた。

 

「妙な真似をしたら・・・その先は分かるな?」

 

黒光りするピストルの弾倉を取り外し、中身をこれ見よがしに見せつける。

 

「ムッ!ムッ!」

 

口を塞がれて何を言っているのかは解らないが、相手が必死に頷いている事を確認したレッカーはピストルをホルスターに戻す。

 

「物分かりが良くて助かる。さあ、みんな。任務は終了だ。おうちに帰るとしよう」

 

 

「お、覚えてろよ!!」

 

数では勝っていた筈が、瞬く間に返り討ちに遭った戦艦娘の艤装妖精達はそんな捨てゼリフを残して逃げて行く。

 

「クソッタレ。あの野郎、今度会ったら蹴っ飛ばしてやる・・・!」

 

仲間達が歓声を上げる中、ツポレフは、ペッ!と血の混じった唾を吐き捨てながら悪態をついた。

 

「派手にやられましたねぇ、キャプテン」

 

副操縦士のラミウスが苦笑いを浮かべながら話し掛けてくる。

そんな彼も、顔に青アザを作っていた。

 

「うるせぇ。3人ボコってやったんだ。それでもまだ気が収まらんがな」

 

第十一鎮守府到着の初日、戦艦娘の艤装妖精から放たれた言葉にクルーの1人が掴み掛かろうとしていたのを止めたツポレフだが、自分だけでなく仲間までバカにされて何も思わない筈は無い。

ツポレフ自身も心の中で怒りを抑えていたのだ。

そして、今日の大乱闘である。

 

「確かに。あの時のキャプテンは獰猛な笑みを浮かべていましたからねぇ」

 

「まさに鎖から解き放たれた猛獣って感じでしたよ」

 

同じくボロボロの姿のクルー達が笑いながら冗談を口にする。

 

「いつつ・・・!おい、ラミウス。俺の鼻もげてねえか?」

 

「ちゃーんとくっついてますよ。それよか、ぷっ、前より男前になったんじゃないですか?ぶふぉッ、クククッ」

 

顔の半分だけパンダのようになったツポレフを見て、我慢の限界を迎えたラミウスは吹き出した。

 

「━━おいおい、何があったんだ?こりゃあ」

 

後ろから、誰かの困惑した声が聞こえる。

振り返るとそこには任務に向かったレッカー達と、なぜかネズミがいた。

 

「おお、レッカーか。仕事の方は終わったのか?」

 

「ああ、バッチリだ。それより、いったいどうしたんだ?」

 

レッカーはツポレフ達の顔を見て眉を潜める。

 

「奴らに分からせてやったのさ。俺達を舐めてたら痛い目に遭うってな」

 

その言葉である程度何があったのかを察したレッカーは「あぁ・・・」と言って小さく3回頷いた。

 

「それより、お前そのネズミはどうした?」

 

「こいつか?こいつは任務中に出会(でくわ)したんだが、随分と助けてもらってな」

 

「はぁ。まあ良い。ギャリソンなら艤装の医務室だから、報告してこいよ」

 

「おう。そうしてくる」

 

レッカー達はザンクードの艤装へと歩いて行く。

 

「ラミウス」

 

「はい、キャプテン」

 

「この鎮守府を制圧する日は近いだろうぜ?」

 

「そうですね。証拠を手に入れた今、ジッとしている必要はありませんからね」

 

「その通りだ。エアストライク・モジュールの点検をするから、工廠妖精を呼んでくれ。それと、ジェットエンジンにアレ(・・)をセットしておくぞ」

 

「イエッサー!」

 

 




無駄になっがい話になってしまいました。

それと、ツポレフが言っていた「今度会ったら蹴っ飛ばしてやる」はフラグです。

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