重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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最近、ちょっとした描写を書くだけでもかなり苦労するのですが、これが「書きたくても書けない」と言うやつなんでしょうか・・・。


第32話 作戦開始の秒読み

《ザンクードさん、ギャリソンです。証拠を押さえました。漏れはありません》

 

午前06:00時。

予め伝えておいた時間に合わせて、音を絞った無線機のスピーカーからギャリソンの声が響いた。

 

「解像度の処理は?」

 

《完了済みです。これを突き出せば流石に言い逃れはできないでしょう。いつつ・・・!

 

「そうか。よくやってくれた。レッカー達にもそう伝えておいてくれ」

 

横で固唾を飲んで見守る木曾にサムズアップして「成功した」と伝えると、静かな頷きが返ってくる。

 

《分かりました》

 

「最後にここの制圧の件だが、今日の出撃の帰還後を狙って実行だ。ツポレフ達には追ってゴーサインを出す」

 

《了解です。そう、フライング・デビルのクルーに周知しておきます》

 

「頼んだ。・・・あー、それとギャリソン。お前、何かあったか?」

 

打ち合わせを終えたザンクードは、先程から訊こうか訊くまいか悩んでいた事を意を決して口にする事にした。

 

《何がです?》

 

「いや、なんか喋り(にく)そうな声だったからな」

 

《・・・少し口の中を切りまして》

 

「口を切った?何かあったのか?」

 

《そのぉ・・・》

 

ギャリソンはバツが悪そうにポツリポツリと理由を説明していく。

 

《━━それで、相手からの殴打が諸に左頬に当たりまして・・・》

 

彼が口内を切ったのは今日の日の出前に起きた工廠での大乱闘が原因だそうだ。

予想だにしていなかった出来事を聞かされたザンクードと木曾は口を半開きにしたまま固まってしまった。

 

「マジか・・・。他のみんなは?」

 

我に返ったザンクードは他の艤装妖精達の安否を確認する。

 

《軽い内出血や擦り傷以外はありません。勝手な行動をしてすいませんでした・・・》

 

無線機からは、表情を見なくても分かる程に申し訳無さそうな彼の声が響いた。

 

「まあ、客観的に見たら叱責ものだろうが、俺個人として言わせれば、特に咎める事はない。その気持ちは俺にもよく分かる」

 

「それに」と続けるザンクードは、ニヤッとした笑みを浮かべる。

 

「どの道、本性を現すのが少し早まっただけの話だろ?」

 

《ぷっ。確かに》

 

彼の冗談を聞いて少し気が楽になったのか、ギャリソンから小さな笑い声が聞こえた。

 

「ま、悪かったと思うんなら今日はしっかり仕事を頼むぞ?それで帳消しだ」

 

《イエッサー!》

 

彼の威勢の良い返事を聞いて満足そうに顔を綻ばせたザンクードは「またあとでな」と言って無線機の電源を切る。

 

「・・・まさか工廠でそんな事が起きてたなんざ思いもしなかったな」

 

両手にグローブを装着し終えた木曾は最後に帽子を被りながら、あはは・・・。と苦笑いを浮かべていた。

 

「妙だと思って訊いてみたら、乱闘中に殴られて口を切りました。だもんな」

 

無線機をポケットに直しながら返答するザンクードも同じく苦笑いを浮かべる。

 

「まあ、その話は一旦置いておくとしてだ。必要な証拠は完全に押さえた。あとは連中を拘束するだけだ」

 

「それは分かったが、それ以外の艦娘達はどうする?」

 

彼女の言わんとしている事は分かる。

━━巻き添え。

連中を拘束するにしても、「お前達を刑務所にぶち込むから大人しくしろ」などと言って相手が素直に応じる筈が無いだろう。

三管史(みくだし)の私兵達であれば砲を突き付けるだけで静かにできるが、戦艦娘は当然のように抵抗してくるだろうし、最重要目標である三管史(みくだし)本人はその戦艦娘達に守られている状態なのだから厄介である。

どうしても戦闘は避けられないだろうが、その際に彼女達が巻き込まれてしまうのはほぼ確定だ。

 

「あの状態じゃあ自分の身を守るだけで精一杯どころか、それすら怪しい奴もいる」

 

「それに関してはあとで摩耶に伝えるんだが、彼女達には近くの岩陰か小島にでも待避してもらうつもりだ」

 

メモを取り出し、事前に軽く調べて記録しておいた情報を確認する。

 

「戦艦娘は全員で6人。練度はそれなりに高く、武装は性能の良い主砲とレーダー。そして、持ち前の重装甲。それを相手に、衰弱している彼女達も一緒に戦わせるのは自殺行為だからな。隙を見てここを脱出してもらうって寸法さ」

 

「成程。それなら一先ずあいつらは安全か。あとは残った連中を無力化して拘束するって訳だな」

 

納得したように頷く木曾。

 

「そう言う事だ。っと、早い内に行っとくか」

 

「摩耶の所か?」

 

「ああ。このあと直ぐに出撃だろ?今ぐらいしかゆっくり説明する時間は無いからな」

 

立ち上がったザンクード達は、いそいそと靴を履いて外に出る支度を始めた。

 

 

「キャプテン」

 

「んぁ?」

 

「先程ギャリソンから無線で連絡がありました」

 

格納庫に駐機してあるフライング・デビルの兵員搭乗室にてツポレフが椅子を後ろに倒して仮眠をとっていると、ラミウスがコックピットの方から早歩きでやって来た。

 

「来たか。それで何だって?」

 

「作戦は今日実行するそうで、ゴーサインが出たら速やかに離陸。離陸後は航空支援に当たってくれと」

 

その報告を聞いたツポレフは「ようやくか」と呟いたあと、勢い良く体を起こして立ち上がる。

 

「よし、最終点検だ。起爆カートリッジに余念が無いかチェックしておくぞ」

 

「了解です」

 

ツポレフとラミウスはコックピット後ろのハシゴを伝って下へ降りて行き、エンジンにセットされているカートリッジ式スターターの確認を始めた。

通常、フライング・デビルの離陸準備には長い時間を要するのだが、その時間を短縮する為の緊急用として開発されたのが、このカートリッジ式スターターだ。

これはエンジンに小型の起爆装置をセットし、その爆発によってエンジンが一気に点火される仕組みである。

このカートリッジ式スターターを用いる事によって、離陸に要する時間が10分程度にまで短縮できるのだ。

便利ではあるものの、無理矢理エンジンを点火させているので緊急時以外での多用は禁物だが・・・。

 

「オーケー。スターターに問題は無いようだな。おい、ちょっと来てくれ」

 

一通り点検を終えたツポレフは、近くで機体の見張りとしてついている3人のザンクード艤装妖精を呼び寄せた。

 

「どうした?」

 

駆け寄ってくる妖精達に、彼は親指で機体を指差しながら口を開く。

 

「お前ら、テレビゲームの類いは得意か?頼みたい仕事がある。ついて来てくれ」

 

「はぁ?分かった。俺達にできる事ならな」

 

「なに、簡単な話だ」

 

フライング・デビルの展開された爆弾倉によじ登りながら、ツポレフはその中にある巨大なコンテナのハッチを開いた。

 

「お前らにはこいつ(エアストライク・モジュール)のガンナー役を頼みたい」

 

「おいおい。こんな代物、俺達で使いこなせるのか?」

 

「大丈夫だ。カメラからの画像を見ながら手元のコントローラーで照準を合わせ、引き金を引く。単純だろ?」

 

「成程、それなら少し練習するだけでもやれるか・・・?まあ、物は試しだ。やるだけやってみよう」

 

「よし、それじゃあ諸々を教えてやるから、しっかり頭に叩き込んでくれよ?」

 

「ああ、頼んだ」

 

ツポレフ達はコンテナの中にある管制席に移動し、各種兵装の説明を開始した。

 

「いいか?こいつらは全て左右に135゜ずつの範囲で旋回ができ、下方には85゜まで俯角をとれる」

 

「つまり、下はほとんど死角が無いって訳だな?」

 

「そうだ。砲自体に旋回機構があるから、照準は楽だ。まずはこのマスターアーム(安全装置)スイッチを押して・・・」

 

管制席のコンソール左端に取り付けられた赤色のスイッチを指差す。

 

「マスターアームが『ARM』になってたら射撃可能だ。手元の操作桿で旋回・射撃。カメラ画像の拡大と縮小はこの絞りで調節してくれ」

 

「オーケーだ。今のでだいたいの要領は掴めた」

 

「飲み込みが早くて助かる。あとは実戦あるのみだ。途中で迎撃機が上がって来るだろうが、精々飛んで来たとしても零式観測機ぐらいだろう。お前達は支援砲撃に集中してくれ」

 

「迎撃は俺達に任せときな。プロの仕事を見せてやるぜ」

 

機銃手の1人が自信ありげな笑みを作りながら、胸を張ってそう言い切った。

 

「分かった。便りにしてるぜ」

 

「おうとも!」

 

2人が拳と拳を軽くぶつける仕草をする。

 

「よぉし!いつゴーサインが出ても動けるようにチェックは念入りにしておけよ!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

と、フライング・デビルのクルー達。

 

「「「了解だ!」」」

 

と、ザンクードのクルー達。

気合い十二分の彼らは忙しそうに各々の作業に取り組み始めた。

 

 

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