重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第33話 制圧作戦開始

ギャリソンからの報告を聞き、この鎮守府の制圧を決定した俺は木曾と共に摩耶の自室に向かう。

 

「ここだな」

 

部屋番号を確認した俺は、コンコンとドアをノックする。

すると、少ししてからガチャリとドアが開かれ、中からは摩耶ではない別の艦娘が顔を覗かせた。

 

「あ。あなたは昨日の・・・」

 

出て来たのは昨日の出撃を共にした巡洋艦娘だ。

 

「やあ、おはよう。摩耶はいるかな?少し話したい事があるんだ」

 

そう説明をすると、彼女は「?」と言った表情で室内にいる摩耶を呼びに、一旦部屋に戻って行く。

 

「おぅ、ザンクードか。なんかアタシに話があるって聞いたけど、何だ?」

 

先程の巡洋艦娘と入れ代わりで出て来た摩耶。

身支度の途中で急いでやって来た雰囲気の彼女は左手に水の入ったコップ、右手に歯ブラシを握り、まだパジャマ姿だった。

 

「スマン、タイミングが悪かったみたいだな。今日訪ねたのは作戦の最終段階。ここの制圧に関してだ」

 

真剣な顔で静かにそう告げる俺に、自然と摩耶も緊張した表情となる。

 

「いいか?まず始めに、今日も俺と木曾は出撃させられる。今回は戦艦2隻と俺、木曾だけの編成だ。まあ、奴の事だから、手に入れたばかりの俺と木曾を使い回したいって感じなんだろうが、これは好都合だ」

 

1度言葉を切った俺は左右に視線を動かして木曾と摩耶以外に誰もいない事を確認したのち、再度摩耶に視線を戻してから口を開いた。

 

「帰還中を狙って俺と木曾で戦艦2隻を無力化する。そのあと、フライング・デビル・・・あぁ、悪い。新しく来た爆撃機で俺達の仲間なんだが、そいつにゴーサインを出す。しばらくしたら外が騒がしくなって、“反乱を起こした爆撃機を墜とせ”って全員に命令が出るだろうから、それに乗じて艤装を装着後に近くの無人島へ避難してくれ。誘導は俺の航空艤装に担当させる。そのあとは任せてくれ」

 

作戦内容を伝え終えた俺が「いいな?」と言おうとした所で、摩耶が「ちょ、ちょっと待てよ」と遮る。

 

「お前と木曾、それと爆撃機だけ?!戦艦を2隻減らしたとしても、あと4隻いるんだぞ?!艤装を着けてりゃあの野郎の私兵は気にする必要ねえけど、戦艦は全員が高練度だ!」

 

彼女はあくまで辺りに響かないよう注意しながら、ザンクードに対して声を上げた。

 

「アタシも一緒に行く。他にも戦える奴が数人は━━」

 

「いや、それは無しだ。ボロボロの状態で高練度の戦艦とまともにやり合えるのか?」

 

「アタシはそこまで弱っては・・・!」

 

摩耶はなおも食い下がろうとする。

 

「だからこそだ。お前にはみんなを護ってほしい」

 

「・・・護る?」

 

「ああ。離れた所に待避するとはいえ、何が起きるか分からないんだ。そんな時、まともに戦える奴がいなかったら一巻の終わりだろ?」

 

「・・・・・・分かった」

 

渋々ながらも了承してくれた事に俺は内心ホッとするが、摩耶は「ただし!」と続けてこちらを睨み付けてきた。

 

「お前ら2人共、絶対に死ぬなよ!」

 

一瞬ポカンと口を開ける俺と木曾。

2人はその表情のまま互いに顔を見合せたあと━━

 

「「勿論だ」」

 

不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

あれから数時間後。

随伴としてついて来た戦艦2隻から「なんでこんな奴らと!」などとギャーギャー文句を言われてうんざりしながらも出撃任務を終わらせた俺達は鎮守府への帰路についていた。

 

ザンクード

 

第十一鎮守府が肉眼でくっきりと見え始めた所で、木曾が小声で話し掛けてくる。

「そろそろ始めよう」と言う合図だ。

 

「━━そう言えばあんた達。艤装妖精から聞いたわよ?随分とやってくれたそうじゃない」

 

木曾の合図に小さな頷きを返したところで唐突に戦艦Cが口を開いた。

“艤装妖精から聞いた”とあるので、恐らく工廠で起きた大乱闘の件についてだろう。

 

「ああ、その事か。俺の艤装妖精からも聞いたよ」

 

「怪我人も出たそうだけど、どう落とし前をつけてくれるのかしら?」

 

「おいおい、おたくの艤装妖精達から絡んで来たんだろうが。ま、速攻で返り討ちにしたらしいがな」

 

鼻で嗤いながら、戦艦Cの艤装に流し目を送る。

 

「いちいち(しゃく)に触る態度をとる奴ねッ・・・!」

 

「あんたらと仲良くしたいなんざこれっぽっちも思わないからな」

 

そう言いながら俺は艤装側面のハッチをゆっくりと展開し始めた。

 

「チッ!司令のお気に入りじゃなかったら、この場で沈めてやってたのに・・・!」

 

「へぇ、そいつは残念だな」

 

剣呑な雰囲気を孕んだ会話を続けている間にも、厚いハッチは上向きにゆっくりと開いていき、内部の5連装単魚雷発射管が側面を向く。

 

「・・・?ちょっと、あんたどういうつもりよ!魚雷がこっちを向いてるじゃない!」

 

俺の艤装に動きがあった事に気付き、何をしているんだ!?と言う表情でこちらを睨み付ける戦艦C。

 

「当たり前だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━今からお前らを黙らせる(無力化する)んだから」

 

「なっ!?」

 

次の瞬間、左側面の魚雷が5本射出され、その全てが直撃した戦艦Cを瞬時に戦闘不能に陥らせた。

相手からの抵抗がなく、完全に落とした(・・・・)事を確認した俺は木曾に任せていた戦艦Dへと視線を移す。

どうやらあちらも無力化に成功したようで、木曾が放った魚雷を全て受けた戦艦Dは目を白黒させて固まっていた。

 

「よし、目標1・2共にクリア。ナイス木曾」

 

「そっちもな。あとは鎮守府にいる連中を大人しくさせるだけか」

 

「ああ、今しがたツポレフ達に合図を送ったところだ。もうじき騒がしくなるだろうさ」

 

と言って第十一鎮守府の建物を見つめていると、ハッと我に返った戦艦Dが悔しそうに歯を剥きながら睨み付けてきた。

 

「あんた達・・・!こんな事しといてどうなるか分かってるんでしょうねッ!?」

 

「お前達は全員が海軍刑務所に叩き込まれるってのは俺でも分かるぞ?」

 

「スパイだったのね・・・!!不意討ちなんて卑怯よッ!!」

 

「自分達よりも力で劣る他の艦娘達を鉄屑と称して虐げるよりかは幾分マシだ」

 

淡々と言葉を返しながら、俺はマシンキャノンの照準を戦艦Dに向ける。

 

「ひっ!?」

 

そのまま、短く悲鳴を上げる戦艦Dを無視して引き金を引いた。

 

ドッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!

 

吐き出された砲弾は戦艦D━━その艤装の艦砲と主機を使えなくする程度に破壊していき、それを戦艦Cにも同じく行う。

これで抵抗する事も逃げる事もできないだろう。

 

「リキッド、速やかに発艦して第十一鎮守府に向かえ。待避する彼女らの誘導を頼む」

 

《リキッド了解。発艦後は第十一鎮守府に向かい、誘導を行います》

 

自身の航空艤装に命令を下すと、格納庫から攻撃ヘリコプターを載せたエレベーターが上昇してくる。

メインローターとスタブウィンクの展開・固定を終えた攻撃ヘリコプター━━サベージは静かな羽音を立てながら浮き上がり、俺達より一足先に第十一鎮守府へ向かって飛んで行った。

 

 

「キャプテン!ゴーサインが出ました!」

 

ツポレフが車輪止めを外して準備を行っていると、パイロットスーツ姿のラミウスが慌てた様子でコックピットから降りてきた。

 

「よぉし!全員持ち場につけ!ラミウス!エンジン点火だ!」

 

「イエッサー!」

 

言うが早いか、ラミウスは機体から伸びる細長いコードを引っ張り、カートリッジ式スターターの点火スイッチをオンにする。

プシュゥゥゥゥ!!と甲高い音を立てるジェットエンジンは排気口から真っ黒な煙と時折炎を噴きながら、火薬の力で一気にタービンを回転させ始めた。

 

「よし、完璧だ。俺も早くコックピットに━━うん?げっ!?やっべ!」

 

エンジンが順調に始動した事を確認したラミウスは点火用コードを元に戻してコックピットに戻ろうとしたところで、こちらに向かってくる1台の4輪駆動車を発見した。

 

「キャプテン、ヤバいですよ!どうやら連中に気付かれたようです!4駆が1台こっちに来てます!」

 

大急ぎでコックピットの副座についた彼はパイロットヘルメットの酸素供給マスクを片手で装着しながら早口で説明する。

 

「あんだけ派手に排煙を出したんだ。こっから近い工廠なら気付かれてもしょうがねえさ。よし、さっさと離陸するぞ」

 

ヘルメットのバイザーを下ろしたツポレフがスラストレバーを奥に倒すと、フライング・デビルはまだ硝煙臭い煙が充満している格納庫からゆっくりと移動を開始した。

 

「あ!あの車両です!」

 

滑走路にて離陸の準備に入っていた彼らの視界に、小型の4輪駆動車に乗った妖精達が映る。

 

「4駆なんて乗り回しやがって。贅沢だなぁおい。

・・・おっと?前に俺の顔に1発お見舞いしてくれた野郎も乗ってるじゃねえか」

 

へへへっと不気味に笑うツポレフは口角を吊り上げながら、スラストレバーを目一杯に奥まで倒した(ジェットエンジンをフルパワーにした)

 

ゴオォォォォォォォ!!

 

最大出力のフライング・デビルは轟音と共に滑走路を凄まじい速度で疾走して行く。

 

「B-56D フライング・デビル 対 軍用4輪駆動車。世紀の対決だぜ」

 

「キャプテン、離陸速度には既に達しています。機首の引き起こしを行わないのですか?」

 

「昨日言ったろ?“あの野郎、今度会ったら蹴っ飛ばしてやる”ってなぁ」

 

ラミウスの問いに対し、そう答えるツポレフはマスク越しに凶悪な笑みを浮かべる。

一方、巨大な爆撃機が躊躇(ちゅうちょ)無くこちらに突っ込んで来る事に恐怖した妖精達は半狂乱になっていた。

 

「バックだ!もっと速度を上げろぉぉ!」

 

「これで全力だ!」

 

「あ、あいつらイカれてやがる!俺達を()き殺す気かぁ?!」

 

そうしている間にもフライング・デビルが目と鼻の先にまで迫って来る。

 

アルファ()

 

操舵輪を握るツポレフが腕にグッと力を込めながら口を開いた。

 

マイク()

 

4輪駆動車に乗る妖精達は叫びながら、なおも必死に逃げようとする。

 

フォックストロット()!」

 

とうとうフライング・デビルが、機首に描かれたシャークマウスの歯の本数までハッキリと分かる程の距離にまで追い付いてくる。

 

「「「う、うわぁぁ!?来るなぁぁぁ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アディオス()マザー()ファッ()━━」

 

バキリッ!ガシャァァン!!

 

ここでようやく機首を持ち上げたフライング・デビルは、バック走行で逃げる4輪駆動車のボンネットとフロントガラス、そしてルーフを機体の後部降着装置で盛大に蹴り潰し(・・・・・・・・・・・・・・・・・)ながら離陸して行った。

ツポレフの操縦技術あっての芸当である。

 

「ひ、ひぃぃ・・・」

 

グシャグシャに潰された車の中で妖精達はあまりの事にカタカタと情けなく震える。

そんな彼らの後ろでは、フライング・デビルがまるで「ザマァ見やがれ」とでも言っているかのように8発のジェットエンジンから独特の甲高い音を上げながら飛翔していた。

 

 




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