重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第34話 

第十一鎮守府 執務室

 

 

「さぁてさてさてっと、今日ザンクードと木曾をメインとして出撃させたんだから・・・やっぱ明日はあの爆撃機を試しに出してみるかぁ」

 

明日が待ち遠しいと言った表情の三管史(みくだし)はフライング・デビルのスペックデータが記載された資料を眺めながら1人呟く。

 

「まったく。俺が海軍のトップになるのも近いってかぁ?」

 

自身の未来像を頭に思い浮かべながら悦に浸っていたその時。

 

「ッ!?な、何だ!?」

 

突如、基地内の随所に設置されたスピーカーから空襲を知らせる警報がけたたましく鳴り響いた。

三管史(みくだし)は何事かと思いながら執務室の窓を荒々しく開け放つ。

 

 

 

 

 

━━全身を濃灰色の機体色で包み、身の毛もよだつ怪物の咆哮のような不気味な音を立てる1機の爆撃機が空を飛んでいた。

 

 

 

 

 

「な・・・!?許可なんざ出した覚えはねえぞ!?」

 

両目を目一杯に見開けながらフライング・デビルを見上げていると、執務机に取り付けられた内線のベルが鳴る。

 

「おい!どういう事だ!?なんで爆撃機が勝手に飛んでやがる!」

 

《た、たた大変ですッ!!爆撃機が反乱を起こしました!!》

 

内線の受話器を引っ掴むようにして手に取った彼がそれに向かって怒鳴りつけると、妖精の焦燥した声が返ってきた。

 

「反乱だと?!」

 

三管史(みくだし)は驚愕の声を上げると共に冷や汗が滲み出てくるのを肌に感じる。

 

《反乱機は現在上空を旋回中━━》

 

ガチャンッ!!

 

「畜生、ふざけやがってッ!!」

 

途中で受話器を叩き付けるようにして内線を切った。

 

爆撃機1機だけが反乱なんてありえねえ。絶対仲間がいやがる筈だッ。

・・・まさか、同じ鎮守府から越して来たあいつら(ザンクードと木曾)か・・・ッ!!

 

「全艦娘に通達する!今直ぐ反乱機を撃墜しろ!それと、ザンクードと木曾だ!あいつらは見つけ次第拘束しろ!どれ程痛め付けても構わねえ!」

 

彼は全体放送のスイッチを押すや否や放送用マイクを鷲掴みにして強引に引き寄せ、口角から泡を飛ばしながらそう叫び散らした。

 

 

「おーおー、下はお祭り騒ぎだな」

 

フライング・デビルの機首カメラを通して基地を見下ろすツポレフは満足そうな表情を浮かべていた。

と言うのも、先程機体の降着装置で蹴り潰した車から妖精達が大慌てで出て来るのをしかと目に焼き付けたからである。

 

「近くに花火(・・)でもぶち込んでやりますか?」

 

仕返しを済ませて気が晴れ晴れした彼にラミウスは、はははっと笑いながら問い掛ける。

 

「いや、そいつはもう少しだけあとだな。もう直ぐリキッドから連絡が来る筈だ」

 

操舵輪で機体を微調整するツポレフが「その時が来たら下を月面みたいにしてやれ」と言うと同時に、開けっ放しにしておいた無線から聞き慣れた声が響いた。

 

《ヴァルチャー、聞こえるか?こちらリキッド》

 

ザンクードから飛び立った攻撃ヘリコプターに乗る2人のパイロット妖精の内の1人━━ディーレイの声だ。

 

「こちらヴァルチャー、感度良好。着いたのか?」

 

《着いたぞ。みんな予定通り艤装を装着中だ。

・・・戦艦も含めてな》

 

「分かった。今からもう少し下を騒がしくさせるから、それに乗じて避難させてくれ。連中は足止めしてやる」

 

《了解。頼んだ》

 

リキッドとの無線が切れる。

 

「聞いたな、お前ら。ショータイムだ!異動初日に空飛ぶ鉄屑だとバカにされたが、その鉄屑が悪魔に化ける事を教えてやれ!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

フライング・デビルの機体腹部が縦に割れ、内部から3基の砲が姿を現した。

展開された30mmガトリング砲、40mm砲、105mm砲のそれぞれは俯角をとって照準を定める。

目標は、さっきから掠りもしない機銃をバラバラと撃ってくる戦艦だ。

 

「エアストライク・モジュールの展開を確認。地上攻撃レーダーの作動・・・オーケーです」

 

ラミウスが正面の計器を確認し、兵装システム士官の妖精とサムズアップを交わす。

 

「さぁて、おっ始めるかぁ!派手にかましてやれ!」

 

フライング・デビルの腹部から顔を覗かせる3基の砲が一斉に火を噴いた。

 

 

一方、戦艦CとDを無力化したザンクード達は、発砲音や空襲警報で騒々しい状態の鎮守府にたどり着いた。

 

「ツポレフ達が上手くやってくれているようだな」

 

「ああ、摩耶達も無事に避難できたみたいだ」

 

彼らの視線の先には、空に向かって必死に対空砲火を放つ戦艦が3隻。

 

「ん?1人足りないな。・・・戦艦Aか」

 

「あいつはこの鎮守府の中でも特に高練度だ。恐らく三管史(みくだし)の護衛にでもついているんだろう」

 

眉を寄せるザンクードに木曾は顔をしかめながら答える。

 

「成程。倒すのに骨が折れそうだ・・・」

 

そう言って溜め息をつくザンクードだが、既に電子妨害装置は起動させており、マシンキャノンの弾倉も換装済み。

しっかり臨戦態勢をとっていた。

 

「言っても始まらねえだろ?」

 

「それもそうだ。とにかくあいつらをやろう」

 

ザンクードは未だこちらに気付いていない戦艦に主砲とマシンキャノンを、木曾が大腿部の酸素魚雷発射管を向ける。

そして、2人が同時に攻撃を仕掛けようとした次の瞬間だった。

 

ズドォォン!!

 

ザンクードの近くで━━いや、彼の左膝辺りで爆発音。

 

「ぐぁっ・・・!?」

 

「なっ!?ザンクード!!?」

 

直後に激痛が走り、思わずガクンと片膝をついた。

 

砲撃だと!?レーダーにはあの3隻しか映っていなかった筈だ・・・!

いったいどこから・・・?!

 

物資やコンテナが点在する鎮守府の埠頭へと視線を這わす。

 

「ふん、無様だな」

 

近くのコンテナの陰からは嘲笑を浮かべる戦艦Aがゆっくりと姿を現し、その後ろには三管史(みくだし)の姿があった。

 

「そんな所に隠れてやがったか・・・」

 

どれ程強力なレーダーを搭載していても、大きな遮蔽物に息を潜められたら探しようが無い。

故に、ザンクードは相手の攻撃を許してしまったのだ。

 

「司令から直々に貴様らを拘束しろと言われたのだ。多少痛め付けても構わんともな。これで気兼ねなく貴様らを(なぶ)れる」

 

笑みを更に深くする戦艦Aは「特に」と続けてザンクードに視線を移す。

 

「貴様だけは徹底的にな」

 

「チッ・・・」

 

気付けば、先の爆音に気付いたのか戦艦BとEが周りを囲んでいた。

残った戦艦Fはフライング・デビルの撃墜に専念すると言う事なのだろうか、対空砲とロケット弾をしつこく放っている。

3隻の戦艦に囲まれてしまったザンクードと木曾。

いつ集中砲火を浴びてもおかしくない状況であるが、ザンクードにはまだ隠し球があった。

 

前世では全くと言って良い程使った事が無くて、これを載せる意味はあるのか?とまで思っていた兵装がここにきて役に立つとはな。

 

思わずフッと笑ってしまう。

 

「・・・何がおかしい」

 

眉を寄せる戦艦A。

そんな彼女にザンクードは「いやなに」と口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━持ってて良かったなってな」

 

そう言ってニヤリと笑みを浮かべる彼は艤装の至る箇所から空へ向けて何かを撃ち出す。

放たれたそれらが空中でポンッ!と音を立てたあと、辺りが一寸先も見えない程の濃煙に包み込まれた。

ザンクードに搭載された煙幕発射機から射出された物だ。

 

「な、何!?煙幕!?」

 

「くっ!小賢しいッ!」

 

「ちょっと、どうなってるのよ!?」

 

「お、お前ら何してやがる!早くそいつらを撃て!」

 

視界を塞がれた戦艦娘と三管史(みくだし)は混乱し、その隙を狙って最も近場にいた戦艦Eに大量の砲弾を叩き込む。

 

「こっちだ!」

 

戦艦Eを倒して強引に退路を開いたザンクードは、突然の視界不良に戸惑う木曾の腕を掴んで煙幕の中から脱出し、陸地へ上がった。

 

「けほっけほっ。お前、煙幕まで持ってたのかよ」

 

「まあな。俺もこいつを使う日が来るとは思わなかったが・・・」

 

咳き込む木曾に苦笑を浮かべながら、彼は背後を確認する。

少しずつ煙幕が晴れてきており、その中では仲間をやられた戦艦AとBが鬼の形相を浮かべていた。

 

「こっわ。完全にぶち切れてるぞ、ありゃあ。マジ切れした艦長と良い勝負だ」

 

身震いしながら走るザンクードはそんな冗談を口にするが、左足を若干引きずっている事に木曾は気付く。

 

「お前、その足・・・!」

 

「・・・?ああ、さっき砲弾を諸に受けたからな。主機の片方が吹っ飛んじまった。これじゃあ海ではまともに戦えないな・・・」

 

そう告げるザンクードの青い迷彩ズボンの左裾は少なくない量の血が滲み、赤黒く変色していた。

 

「主機じゃなくてお前の『足』の話だ!」

 

「少し痛い事を除けば大丈夫だ。それよりお前の方こそ━━」

 

「ちょっとこっち来いっ!」

 

「うわっ!?」

 

苛立たしそうな声の木曾は鎮守府の建物の陰にザンクードを引っ張る。

 

「いきなり何すんだよ・・・」

 

ザンクードは抗議するが、木曾は聞く耳持たずと言った風で、おもむろに自身のマントの端をビリッと破き始めた。

 

「お前何やってんだ?」

 

「ほら、ズボンの裾を捲れ」

 

完全にこちらの言葉を無視する彼女は細長く千切られた黒い布を両手に持ったまま、ザンクードにそう言う。

 

「は?」

 

「いいから早くしろ。巻けねえだろ」

 

「・・・そう言う事か。分かった」

 

地面に座り込んだ状態の彼は木曾が何をしようとしているかを察して、言われるがままにズボンの左裾をたくし上げた。

 

「っつ・・・!」

 

血塗れた足が外気に晒される鋭い痛みに、ザンクードは思わず顔を歪める。

 

「こんなもんで良いか?」

 

「ああ、そのままジッとしてろよ?」

 

言うが早いか彼女はその左足に布を宛がい、包帯の要領で巻き始めた。

 

「いだだだっ!・・・悪いな、助かる」

 

「どういたしまして、だ。よし、こんなもんか。どうだ?」

 

「ああ、さっきよりは楽になったよ。ありがとう」

 

捲っていた裾を降ろしたザンクードは、しっかりと地に足を着けて立ち上がる。

 

 

「クソッ!どこに行ったッ!!出て来い屑鉄共ッ!!」

 

 

近くで戦艦Aの凄まじい怒声が聞こえた。

 

「おっと、もう来たのか・・・」

 

ガショッガショッという重量感のある足音が近付いてくる。

 

「戦艦はツポレフ達が相手をしている奴を除けばあと2隻。かなりの手練れだが、オレ達なら絶対に勝てる。やってやろうぜ」

 

「ああ、奴らに吠え面をかかせてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━ペイバックタイムだ!」

 

ガゴンッ!と音を立てて、35.5cm連装砲が次弾を装填した。

 

 

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