重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する!   作:Su-57 アクーラ機

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第6話 性能試験

翌日、妖精達に叩き起こされた俺は着替えたあとに朝食を口に掻き込まされると、今度は速攻で港に隣接する工廠へと引きずって行かれ、言われるままに艤装を装着してから埠頭へと連行された。

 

「さあ、あなたの力を見せて下さい!」

 

こんな朝早くからかよ・・・

 

「「「約束」」」

 

えぇ・・・、と言うような表情を浮かべる俺に、妖精達は拗ねた子供のような顔で、ボソッと痛い所を突いてくる。

 

「うっ・・・!分かった、降参だよ・・・。で、何から始めたら良いんだ?」

 

「そうですね・・・まずは航行性能のテストからお願いします!」

 

「見せてもらおうか、異世界の艦艇の性能とやらを!」

 

妖精達が俺に期待の眼差しを向けてくる中、外の様子に気付いた木曾、村雨、満潮、響、電、不知火、そして提督が埠頭に出てきた。

 

「第八鎮守府のメンバー全員集合か。これは良いところを見せないとな。な?ギャリソン」

 

「ええ、そうですね。かっこ良く決めてやりましょう!」

 

ギャリソンの声に、艤装内から気合いの入った声が聞こえてくる。

 

「よし、行くぞ!」

 

機関出力を上げて鎮守府正面を最大船速で大回りに1周してから元の場所に戻る。

 

「やっぱり小さくなってる分、抵抗も小さくなったから加速性が上がってるな。35ノットまで一瞬だったよ」

 

正直、こんな場所で全速なんて出せるのか?と思っていたが、この点は問題無いようだ。

 

「す」

 

「す?」

 

「凄いですよ!この大きさで35ノットだなんて!」

 

妖精の1人が目からレーザーでも出すんじゃないか?と思う程、目をキラキラさせる。

 

「お、おう、お気に召したようで何よりだ」

 

「「「はっやーい!!」」」

 

35ノットという速度を目の当たりにして固まる提督達と、妖精達のあまりの反応に若干たじろぐ俺を他所に、ギャリソン達は「チョロいもんさ」と言ってドヤ顔を作り、それを見て工廠妖精達は更に騒ぎ立てた。

 

「ふぅ、少し騒ぎ過ぎました。ザンクードさん、次はお待ちかねの射撃試験に入ります!」

 

「待て待て、こんな所で爆音を鳴らしたら不味いんじゃないのか?」

 

「ああ、それに関しては大丈夫だ。ここいら一帯に人は住んでいないからな。あるのはこの鎮守府だけさ」

 

俺の問いに提督から応答が返ってきた。

 

「そうか・・・。なんか悪い事を訊いたな」

 

「いやいや、気にするなよ。木曾から聞いたんだろ?俺は正しい事を言ったと思ってる」

 

そう言ったあと、「ここのみんなには苦労を掛けてるがな・・・」と、提督はバツが悪そうに後頭部をガシガシと掻きながら苦笑を浮かべる。

 

「・・・よし!今から取って置きを見せてやるから、腰を抜かすなよ!」

 

湿っぽい雰囲気を掻き消すように大声を出して、射撃試験の準備に取り掛かる。

 

「君達、1つ訊いておくが補充分の弾薬は本当に複製できるのか?」

 

「問題ありません。ギャリソンさん達に許可を頂き、各種弾薬を1発ずつ取り出させて頂きました。複製は可能です!と言うより、既に着手しています!」

 

優秀過ぎだろ・・・。これからは敬意を込めて『妖精さん』と呼ぶ事にしよう。

 

「助かる。総員、対水上戦闘用意!」

 

「了解!総員、対水上戦闘用意!急げ!グズグズするな!」

 

艤装内からアラートと共にギャリソンの喝と艤装妖精達の足音が聞こえる。

 

「全クルー、配置につきました」

 

「分かった。それで、何の武装から━━」

 

「「「後ろのデッカイ大砲からで!!」」」

 

工廠妖精さん達はEML発射をご所望のようだ。

 

おい、提督。何でお前まで子供みたいに目を輝かせながら妖精さん達に混じってるんだよ。

・・・まあ良いか。

 

「標的は?」

 

「あの無人島に向けて撃って下さい。あの島は射撃試験用に使用して良いと言われてますから」

 

「はいよ。EML射撃用意!弾種徹甲弾!」

 

耳をつんざく警報音と共に後部のEMLが低い動作音を上げながらゆっくりと島に向く。

 

 

「凄いですね・・・あのような艦砲が存在するなんて・・・」

 

「ああ、あれが戦艦棲姫を殺った砲だそうだ」

 

不知火が無意識に呟き、木曾がそれに返答する。

木曾自身、ザンクードと初めて顔を合わせた際、彼の後ろで上を向いてそびえるEMLを見て、随分と大きなアンテナだな。と、そう思っていた。

しかし、それはアンテナなどでは無く、あの大和型の主砲すら余裕で上回る口径のバケモノだったのだ。

その事を知った時、彼女は内心で大きく驚き、そして改めて確信した。

やはり、あの海域で戦艦棲姫に殺されそうだった自分を助けてくれたのは(ザンクード)なのだと。

 

 

「EMLの発射準備が整いました」

 

「よし、EML撃てっ!!」

 

体の芯に響くような轟音と共に砲弾が放たれ、無人島の岩壁に着弾する。

炸薬を持たない砲弾は爆ぜる事なく岩壁を抉り、削り、巨大な孔を形成した。

 

「命中確認、完璧だな。提督、妖精さん、これで満足したか?」

 

「「「」」」

 

自慢気な表情で振り返ると、その場にいた全員が「うっわぁ・・・」と言いそうな顔で島の岩壁を見つめていた。

 

「おーい、大丈夫か?」

 

「ハッ!?あ、ああ、大丈夫だ。それにしても恐ろしい威力だな」

 

固まっていた提督が再起動する。

 

「これでも撃ったのは徹甲弾だ。あと2種類残ってるし、俺の武装はなにもこいつだけじゃ無いぞ?」

 

「・・・お前が味方で本当に良かったよ・・・」

 

「さあ、残りの兵装試験も終わらせてしまいましょう!」

 

 

 

 

 

 

このあと、ヘリオスやハンマーヘッド、スティングレイなどの対空関連を除いたミサイルと、主砲、副砲、艦載ヘリなど、ここで披露できるだけの試験を行った。

対空兵装の試験に関してはウチには空母がおらず、標的用の機体も無いので無理らしい。

CIWSをフルオートで撃ちまくりたかったのに残念だ・・・。

因みに散々ミサイルや砲弾を撃ちまくった結果、島は坊主になるどころか絨毯爆撃以上の規模で破壊されており、俺は妖精さんや艦娘達から前世での戦いや搭載兵装に関して質問責めに。

提督は消費した資材の量を見て真っ白な灰になりながら、彼の初期艦である電に頭を撫でられていた。

 

 




レールガン妖精「まあ、正確に言うとEML撃ったのは俺なんですけどね━━うわ何する止め━━」
【この音声は消去されました】

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