重原子力ミサイル巡洋艦 ザンクード、抜錨する! 作:Su-57 アクーラ機
性能試験の翌日 工廠
朝食を食べ終わったあと、提督に呼び出された俺は「工廠で5回ほど開発をしてきてくれ」と頼まれ、説明係として村雨が同行していた。
何か役に立つものができれば良いが、正直あまり自身が無い。
「資材を投入してっと。村雨、あとはこのボタンを押せば装備品がランダムで出てくるんだな?」
「そうですよ。何が出て来るか楽しみですね!」
ランダムで出てくるとか意味が分からん。そんな性能で大丈夫なのか?多分大丈夫じゃないと思う。この機械に投入した貴重な資材が粗大ゴミとなって出てきた時のショックは計り知れないものだろう。
「あまり期待はしないでくれよ?」
そう言って、ボタンを押す。
すると、機械の内部でガチャガチャと音が鳴ったあと、電子レンジのようなチャイムと共に扉が開いた。
煙が晴れ始め、中が見えるようになってくる。その中に鎮座していたのは━━
「「・・・・・」」
工廠内に沈黙が走る。
「あれ?これって魚雷・・・ですか?」
「ハァ・・・何でよりにもよってお前が出て来るんだよ・・・」
ガクッと肩を落とすザンクードを見て、村雨が魚雷とザンクードを交互に見てから口を開いた。
「え?でもこれって魚雷ですよね?そこまで落ち込む物なんですか?」
「村雨、お前はこいつの恐ろしさを知らないからそんな事が言えるんだ。こいつの正式名称は『ソナー・磁気探知機搭載自律誘導魚雷』名前だけなら単に長いだけで、何か高性能っぽい魚雷だと思うかも知れんが、こいつはれっきとした駄作兵器だ」
「えぇ・・・自律誘導が可能な魚雷なのにですか?」
村雨が、それなら凄い戦力になりますよね?
とでも言いたそうな顔をして魚雷を見つめる。
だが、彼女はザンクードの過去を知らない。ザンクードは魚雷を忌々しげに見つめながら、ゆっくりと口を開いた。
「・・・実はな、昔これの試験の任を受けて俺に搭載された事があるんだ。試験は簡単。敵艦を模した標的に向けて射出し、あとは経過観察をするだけだった・・・」
『魚雷の発射を確認。現在、標的に向けて順調に・・・ファッ!?』
『観測員、どうした?状況を報告せよ』
『ぎょ、ぎょぎょぎょっ!』
『ぎょぎょぎょ?まったく、どこの魚博士だ・・・。真面目にやれ』
『ぎょ、魚雷180゜回頭!真っ直ぐこちらに戻って来ています!!』
『は?・・・はあ!?も、戻って来てるだと!?あの魚雷には炸薬が・・・!迎撃用意!俯角をとれる両用砲で対処しろぉぉぉ!!』
「という事があってな。原因はソナーに加えて、何を思ったのか磁気探知機まで無理に纏めて押し込んだ事と、限度を知らない開発陣がこいつの中身をこれでもかといじり倒しやがったせいで逆にポンコツ化したかららしい。ついた渾名は皮肉を込めて『
ハァ、と大きく溜め息をつくザンクードを見て、村雨は「大変だったんですね・・・」と彼を労う事しか出来なかった。
あんな魚雷、例え高級将校クラスの人間に頼まれたって搭載してやるもんかっ!
そう思いながら、2回目の資材を投入してボタンを押す。
クレバーフィッシュ「待たせたな!」
「・・・気を取り直して次行くか」
「はい・・・」
3回目
クレバー(略)「べ、別にあんたの為に来た訳じゃ無いんだからねっ!」
「・・・次」
「は、はひ!」
4回目
クレ(略)「ドーモ。ザンクード=サン。クレバーフィッシュです」
「・・・・・」
「」
5回目
ク(略)「来ちゃった♡」
プチッ
「ふ、フフフ・・・フフフフフ。そうかぁ、そう言う事かぁ」
「ざ、ザンクードさん?」
突然、俯いたまま不気味な笑い声を上げるザンクードに村雨は恐る恐る声を掛ける。
その瞳はハイライトが総員退艦しており、口元は三日月のように歪んでいた。
「・・・・・・少し待っててくれ。35.5cm砲でこの
「え?!ちょちょちょ、それはダメですよぉ!!」
声と表情がまったく合っていないザンクードが艤装の元へと歩いて行こうとするのを村雨が必死に止めに入る。
「離せぇぇ!俺は何としてもこの
「だからダメですってば!!誰か!誰か助けてぇぇぇ!!」
こうして、彼の初開発は終わった。
「落ち着きましたか?」
「ああ、悪かったな。少し取り乱した」
え?少し?と村雨は思いながら、提督に報告を始める。
「えっと・・・ザンクードさんが行った開発の結果なんだけど、5回中全てが欠陥を持つ魚雷らしいの」
「Oh・・・ま、まあ気にするなザンクード。こういう事もあるもんさ。俺だって━━」
「提督!大変だッ!!」
提督が俺を励ましている最中、誰かが執務室の扉を勢い良く開け放つ。
そこには焦燥した顔付きの木曾が立っていた。
「そんなに慌ててどうしたんだ?木曾」
肩で息をする木曾を訝しみ、提督が声を掛ける。
「どうしたもこうしたもねぇ。来やがったんだよ。
━━肥太中将が・・・!!」