蒼の大狼(改訂版   作:綾式

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第1話 イムカ

ガリアと帝国。両国の接する国境線は、東部の国境線に存在する市であるブルールと、北東部に存在するギルランダイオ要塞の、2つの場所を通るように作られた街道が主な主要路である。そのうちの1つであるギルランダイオ要塞は、帝国とガリアを分断するように存在する、山脈の途切れた部分に建築された中世の砦を、近代的に改修を続けたものである。この要塞は、帝国と連邦の開戦までは出入国管理所として機能しており、駐屯軍も国境警備隊しかおらず、約100名ほどしか居なかった。だが、両国開戦の影響を受けてからは、新たに要塞守備隊が駐屯し、国境警備隊の増員や要塞砲の設置や、塹壕やトーチカといった野外陣地の構築が、行われていった。

 

要塞にほど近い森の中、木々が生い茂る場所にポツンと小さな広場のように開けた場所があり、そこで、1人の人物が木に背中を預け、根に腰掛けて座っていた。その人物の姿は、夜闇に紛れており、所々月明かりに当たることで、シルエットでしかわからないが、誰かいることはわかる。辺りは既に日が落ちており、森の中にいる虫たちの鳴き声や、木々に止まる鳥たちの鳴き声が、静かに響いていた。夜風に揺られる木々の葉の隙間からは、夜空に輝く月の光が森の中に入ってきており、その光景は一つの絵になっていた。そこへ、新たに1人の人物が、木々に覆われた夜の闇の中から現れた。その人物は、ガリアの兵士に一般的に支給されている兵士服に、上からジャケットを着ている姿である。ジャケットには、その人物の兵科である偵察兵の証である双眼鏡をイメージできるような刺繍が入っており、肩の部分にギルランダイオ要塞所属であるという証の刺繍と、警備隊の人間であるという証の刺繍が縫われている。その人物は、木に持たれて座っている人物に近づくと、声をかけた。

「イムカ、やはりここに居たか。おまえはここが好きだな。」

そう声をかけられたイムカと呼ばれた人物は、声をかけた人物に顔を向けず、森の方をみながら黙ったままだった。いつも通りの対応なのか、声をかけた人物は気にした様子をせずに、イムカと呼ばれた人物の座る木に立ったまま背をもたれ、話を続けた。

「もう夜も遅い、偵察任務を含めた野外訓練もとっくの前に終わっているぞ。イムカ、帰るぞ」

そう言いながら、腰掛けて座っている方に目を向けながら話していると、イムカと呼ばれた人物は腰掛けていた根から立ち上がり、一言「問題ない」とだけ呟くと、あとから来た人物が持たれている側とは反対側に立て掛けて置いてあった身の丈程の巨大な鋼鉄の塊を肩に担ぐように持ち、そのまま要塞方向に歩きだした。それをみながら、その場に残された人物は「やれやれ…」と呟くと、先に歩いて行った人物を追った。

「イムカ。一応俺はお前が所属している小隊の隊長なんだがな、迎えに来た奴を無言で置いていくのは、どうかと思うぞ」

先に歩いて行った人物に追いついた人物は、横に並びながら言った。すると、先に行ったイムカと呼ばれた人物は、立ち止まることなく隣に並んだ隊長と名乗った人物に向けて、

「問題ない。そっちが勝手に来ただけ」

とだけ返すと、また歩き始める。返された人物は肩を竦めため息を吐くと、またイムカの横に並び、歩き始めた。

 

しばらく歩くと、森を抜けて、野外陣地が設営されている場所に出てきた。森の夜闇から出て、陣地を照らす光を浴びることにより、イムカと呼ばれた人物の全体がよく見えるようになる。

その人物は紺色の長髪を持ち、それを後ろで結んでいる女性である。顔はまだ、子供の時の童顔を持ちながらも、綺麗に整っており将来が楽しみな顔をしている。

身体は、全身をバトルドレスで包んでおり、無駄な肉の無い引き締まった身体をしている。また、両腕両足の関節部分に、動きが阻害されないように作られた装甲を身につけ、胸部を守るように厚めの同じく装甲を身につけている。腰部分には、軍用ナイフと拳銃を装着できるように作られたベルトに、各種グレネードや応急処置用ラグナエイド等を入れることができるように厚めのポーチがある。

だが、それらの印象がまるで無くなるものがあり、右手に持ち肩で担ぐようにして、そこにあるだけで畏怖を与えれるような巨大な獲物があった。それは、先端に銃身、その下部分に砲身を持ち、胴体部分にはブレードがあり、側面部分には装甲が施されている。握り手部分には、握りやすいようにグリップが施され、さらに、銃身を使うためのトリガーが備えられており、見た目だけでもかなりの重量級だが、それを軽々と片手で扱っている彼女の実力がかなりのものであるということがわかる。やがて、陣地入口から陣地内に入ると、中にいた隊員から声をかけられた。

「隊長、おかえりなさい。イムカを見つけれましたか」

「おう、今戻った。俺の居ない間に何かあったか?」

「いえ、何も。こちらはいつも通りでした。イムカはやはり?」

「あぁ、いつもの場所にいた」

そう、隊長と呼ばれイムカと共に陣地に戻ってきた男と、陣地内にいた隊員との話を横目に、イムカは、陣地内の自分のテントに向かおうと身体をその方向に向けたが、すぐに後ろから隊長と呼ばれた男から呼び止められたが、その場で立ち止まると、顔を動かして耳だけを男に向けた。

「イムカ、そろそろ要塞内部に撤収するぞ。準備しておけ」

そう告げられると、イムカは「ん」とだけ呟きながら首を頷け、再びテントに歩き出した。

ギルランダイオ要塞国境警備隊第2中隊第4小隊所属。それが、イムカの所属している部隊である。

 

 

 




9/11 読みにくかった場所の修正と足りない部分の修正
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