仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
この本によれば·····普通の高校生
作り直された世界で彼に残されたのは深い悲しみと怒りだけだった。そんな彼は再びアナザージオウの力を手にするが·····おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
そう言うと
これは怒りと憎しみで生きてきた彼が仲間を知るかもしれない物語
彼の選択次第で光を掴み取れるかもしれない物語。
「きえないキオク 2019」
目覚ましの音で彼、加古川飛流は目を覚ます。いや、少し語弊があったかもしれない、何故なら彼は半年前からまともに眠れてないからだ。
ベットから起きそのまま顔を洗いに洗面所に向かう。鏡を見る度に自分に腹が立つので、加古川家の洗面所に鏡は無い。
顔を洗い終わって制服に着替え、光ヶ森高校に向かう。
「行ってきます」そう言って扉を閉める、加古川飛流が出たあとの家にはもう誰も居ない。
この世界は1度作り直されてる、そんな事を周りにいる人間に伝えたらどう思うだろうか?加古川はいつも登校途中そんなことを思う。そして彼はこの世界が1度作り直されてるという事を真実だと信じてる。
別に彼は頭がおかしい訳では無い、彼は今日から遡ること半年前に思い出したのだ。
自分が今生きてる世界は作り直された物だと、そして思い出した。自らの両親を奪った10年前のバス事故、その事故の原因の1人である
最初に思い出したのは常磐ソウゴという名前だけだった、しかし、日が経つにつれ作り直される前の世界の記憶が戻っていった。同じ事故で両親を失ったにも関わらず“家族”を持つことが出来た常磐ソウゴに対する嫉妬、常磐ソウゴが仲間を得た事、その仲間と共に仮面ライダーとして戦ってた事、自らがスウォルツという男によって力を得て、常磐ソウゴと戦った事、他にも自分の欲望の為に世界をめちゃくちゃした事。全て思い出した。
もし、今、前の世界でスウォルツから手に入れた力を持っていたら·····醜く歪んでいるまるで自分の鏡のようなあの力があれば·····
「フッ····」
彼は思わず吹き出した、半年前から何度この事を考えているのだろうか、もう無駄だと知っているのに。
たとえ あの歪んだ力を再び手にしたとしても彼、加古川飛流が戦うべき相手は、その命を奪おうとした相手はもう作り直されたこの世界には居ないのだから·····
と言っても、常磐ソウゴ自体は今の世界にも存在する
それどころか加古川と同じクラスにいる。しかし、その常磐ソウゴは加古川の知る常磐ソウゴとは少し違っていた。
前の世界では未来から後の魔王になる常磐ソウゴを倒す為に来てた明光院ゲイツとツクヨミ、この2人が何故かクラスメイトになっており、常磐ソウゴと仲良さそうにしている。そして何よりも違うのが彼ら3人には、というより、加古川以外の人間は前の世界での記憶が無いらしい。
何度か常磐ソウゴ等に声を掛けたが彼らはあくまでただのクラスメイトとして加古川に接する、本当に忘れてしまった、本当に忘れられてしまった·····そう考える度何故か胸の奥が締め付けられるようだった、加古川飛流はまだこの気持ちの名前を知らない。
そんなことを考えながら歩いていると加古川飛流のそして常磐ソウゴ等が通う光ヶ森高校に着いた。
ちょうど彼が正門を通ろうと来た時、反対の方面から常磐ソウゴと楽しそうに話してる明光院ゲイツとツクヨミの姿が見えた、その姿はどこからどう見ても普通の高校生だった。とても世界を作り直した魔王には見えない。
「あ、加古川おはよう」
その挨拶を受けて加古川は何も返せなかった、ただ学校の反対側に向かって走り出した。
そのまま加古川は家には帰らなかった、誰も居ない家に帰って何になる?復讐の対象がいない学校に通って何になる?半年間我慢してきた思いが何故か込み上げてきた。両目から涙をボロボロこぼしながら、その唇を血が出るほど強く噛み締めながら彼は行く宛もなく街をさまよった。
そのままどれくらい時間が経ったのだろう。
歩き疲れてその足を止めた時にはもうすっかり日が暮れていた、何をしているんだ俺は·····そんなどうしようも無い思いが胸から離れない。
このままいっそ死んでしまおうか·····そんな事を考えた時、前触れもなく女性の悲鳴が聞こえた。彼はその悲鳴を聞いてすぐに走り出した。逃げたのではない、むしろ悲鳴の方向へ走っていった。
別に加古川飛流に誰でも助ける正義感がある訳でもない、ただ今の状況から脱したかった。それだけである
彼は全てを失っても生きたかった、加古川飛流は今を失いたくなかった。
「もうひとりのキング2019」
加古川飛流が走って向かった場所は少し前まで使われてたであろう工場の跡地だった、加古川が聞いた悲鳴の主はそこにいた。
20歳前後くらいに見える女の子が怪物に襲われている、その怪物は人間のような見た目をしていながらその容姿は大きく歪んでいる、そして加古川はその怪物を知っている。
「アナザー····ライダー?」
何故ここに、この世界にアナザーライダーがいる?そんな疑問を持つ暇もない。アナザーライダーは女の子を今にも食らいつきそうな勢いで壁際まで追い込む。
「くそ! うわぁぁぁぁ!」
そんな雄叫びにもならない叫びを上げながら足元に落ちていた鉄パイプをアナザーライダーの頭目掛けて思い切り振り下ろす。少しは効いたようで、アナザーライダーは少しよろめいたようだ。
「早く!何してる、早く逃げろ!」
加古川がそう叫ぶと女の子は声を出さずに頷いてうろたえながら逃げていった、アナザーライダーはその真緑の肌とは対象的な真っ赤な瞳で加古川を睨みつける。
あぁコイツはアナザーアギトか·····加古川がそのアナザーライダーの姿をハッキリと認識した時にはアナザーアギトは加古川に飛びかかる。
何をしているんだ俺は·····アナザーライダーに鉄パイプなんかじゃ敵わないことは分かっていた、見ず知らずの女の子を助けたかった?自分が?
「違うな···俺は死にたかったのか」
彼はそう呟いて自分を納得させた、その時点でアナザーアギトに対する抵抗を辞めた。アナザーアギトは一瞬不思議そうに加古川を見たがすぐに加古川を捕食しようとカチャカチャと音を立ててその口を開く、あぁもうどうでもいいや加古川飛流はここで自らの人生を終わらせようとした。
「死んでしまっては困るな、我が魔王」
そんな声が響くと同時に謎の衝撃波でアナザーアギトが吹き飛ばされる、驚いて加古川が衝撃波の放たれた方向を見るとそこには、重厚そうな本を片手で持っている男が立っていた。
「ウォズ·····?」
加古川は不思議そうに呟く。
「常磐ソウゴの手下のお前が何故ここにいる?なぜ俺を助けた!」感情のままにウォズに怒鳴りつける。
「手下ではなく家臣なのだが·····まあ、そんな事はどうでもいい」呟きながらウォズは加古川に近付いてくる。
「なに、ひと時でも我が魔王となった君だ、見殺しにするわけには行かないのでね」
そう言うとウォズは加古川に丸型のアイテムを渡す。仮面ライダー達の力が込められた懐中時計型のアイテム、ライドウォッチだ。
だが、ウォズが渡したウォッチには何者も写っていない
「ブランクウォッチか·····俺に戦えと?」
加古川はブランクウォッチを受け取らない。
「あぁ、その通りだ君に死んでもらう訳には行かないからね」その瞬間、加古川は察した。
このウォズの目は俺にアナザージオウの力を渡したスウォルツと同じ目、俺のことを利用しようとする目·····
加古川はブランクウォッチとようやく立ち上がったアナザーアギトを交互に見る。
いいだろう·····次は逆に自分が利用してやる、そう決意しウォズからブランクウォッチを受け取る。
ブランクウォッチを加古川が力強く握ると。
《ジ・オーウ》低い声でそう響いた、続いて天面のスイッチを押すと、加古川の腰部分に真っ黒なベルトが現れた。
「変身!」
そう叫びながらベルトの右側のスロットにアナザージオウウォッチを差し込む、《ジ・オーウ!!》の声と共に加古川の体が真っ黒なオーラに包まれる、オーラが晴れるとそこから現れたのは、薄汚れた白色の皮膚に上半身にはシルバーにピンクのラインが入った鎧。
その顔はまるで無理やり仮面を剥がされたように皮膚と歯が露出している。額部分には2時55分を指す時計の針がある。
「祝え!」ウォズが声高らかに叫ぶ
「全アナザーライダーの力を引き継ぎ、過去と現在をしろしめす裏の王者その名もアナザージオウ!今再臨の時である」
ウォズの祝いを横目に加古川飛流もといアナザージオウは真っ直ぐとアナザーアギトを睨みつける。
「さぁ我が魔王、存分に戦われよ」
ウォズが一歩後ろに下がる
「あぁ、言われなくてもな」
そう言うアナザージオウの両手には、いつの間にかまるで時計の短針と長針のような剣が握られていた。二つの剣を構えながらアナザーアギトに向かって走り出した。
その後ろでウォズが不敵な笑みを浮かべた事を加古川は知る由もない。