仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
この本によれば·····普通の高校生 加古川飛流、彼には魔王にして時の王者オーマジオウになる未来など待っていなかった。
警察官泊進ノ介と共にアナザードライブを追う彼は、変身できない仮面ライダードライブと共にこの窮地を脱することは出来るのか。加古川飛流の選択とは·····
おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
そう言い終わってウォズが見上げた空の一部が灰色に歪んで、ビルがひとつ消えた。急がなければ·····そう呟いてウォズは足早にどこかに消えていった。
「真っ赤な体の警察官2019」
さて、どうするか。
泊進ノ介は仮面ライダードライブに変身出来ないらしい、そうなると戦えるのは加古川飛流のみだ。
出来れば、変身した姿を見られたくもないしこれ以上疲弊したくもない。
しかし、目前のアナザートライドロンからでてきたアナザードライブはゆっくりこちらに向かってきている。
「シ···ニィ···」
何か呟いているように見えるが、どうでもいい。
加古川が必死に頭を回していると、進ノ介は腰のホルダーから拳銃を取りだし。
「君はここにいて、大丈夫俺が何とかするから。」
「は?」
加古川が聞き返すより前に進ノ介はトライドロンから出て、拳銃をアナザードライブの方に向けている。
「止まれ!お前は何者だ!ロイミュードか!」
たとえ目前の化け物がロイミュードだとしても、拳銃など何の役にも立たないことは100も承知だった。
では、何故?泊進ノ介は自分を庇う形でトライドロンを降りたのか。加古川にはそれが分からなかった。
だけれども、進ノ介に言わせてしまえばその理由は単純明快。
加古川飛流は市民で泊進ノ介は警察官だからだ。
そう、分からないはずだった。
五代雄介に出会っていなければ。
彼は五代と関わることで学んだのだ、世の中には理屈抜きで人のために戦える人間がいるということを。
故に加古川はいつもの彼より一瞬早く動けた、そしてこの一瞬が確かに進ノ介の命を救う結果になったのだ。
トライドロンの外ではアナザードライブが進ノ介の拳銃をはじき飛ばして首に手をかけていた。
「やめろ!」《ジ・オーウ》
低い起動音が響き一瞬で加古川の姿がアナザージオウに変化し、アナザードライブをタックルではじき飛ばした。
「君は·····」
むせながら進ノ介は疑問を口にする。
一方アナザージオウはアナザードライブとの戦闘に移っていた、アナザードライブから繰り出される高速の拳撃を弾いてかわす。
少し早いが見切れないほどじゃない、そう加古川が思っていた瞬間アナザージオウの脇腹に重い拳がめり込む。
「グガッ·····!」
アナザージオウが少し後ろに仰け反る、その瞬間先程よりも早くなった拳撃がアナザージオウを襲った。
アナザーライダーはオリジナルの能力をコピーしている事がある。
先程からさらに加速し、加速する事で一撃の威力も上がる。
まんまとやられた、加古川は連打を受けてる最中そんなことを考えていた。
「グッ!クソ·····」
アナザージオウが進ノ介の方に吹き飛ばされて転がりながら変身が解除される。
やはりダメだ、アナザーにはオリジナルの力をぶつけなければ。
「泊進ノ介、仮面ライダーになれ·····ドライブに!」
加古川を心配そうに見つめる進ノ介は困惑する。
「でも、もうベルトさんはいないんだ」
進ノ介は唇を噛みながら言う。
「このブランクウォッチを使え、もう一度ドライブになれるはずだ」
進ノ介はブランクウォッチと加古川の顔を交互に見て、決断したように
「これは···分かった、君のことを信じるよ」
進ノ介がブランクウォッチを手にした瞬間、それはドライブウォッチに変化して瞬く間に光の軌跡を描きながら進ノ介の腰部分に装着されドライブドライバーに変化する。
ドライブドライバーの中央の円形部分が発光して顔文字のようなものが浮あがる。
「進ノ介?これは一体···」
そう声を発したのはドライブドライバー本体もとい通称ベルトさんだ。
「ふむ、どうやら緊急事態のようだね」
「あぁ、悪い力を貸してくれるか?」
「もちろんだ、君のためならいくらでも」
ベルトさんがそう言うと進ノ介の手に空中にレースサーキットのような物を作りながら、赤いミニカー ···シフトカーがやってきた。
進ノ介がドライバーの右上部に付けられてる車のキーの様な部分を捻る。
車のエンジンの駆動音の様な音が空間を揺らす。
シフトカーを左手首に巻いてあるシフトブレスに装填する。
「それじゃあ、ひとっ走り付き合えよ!」
装填されてるシフトカーをまるで車のレバーの様に前に倒す。
《ドラーイブ タイプ・スピード!》
ベルトさんの声のシステム音声が鳴ると、進ノ介の体の周りに装甲が現れ進ノ介の体に装着される、トライドロンからタイヤが射出されドライブの上半身に装着された。
「シ・ニィぃぃ!」
大きく振りかぶったアナザードライブの攻撃をかわし、ドライブは後ろに回って蹴りを放つ。
「グ、ガウァニイ」
先程と同じ方法でアナザードライブはドライブに襲いかかった、先程と同じなら避けれるはずだった。
しかし
「クッ」
僅かなうめき声を上げてドライブは少し吹き飛ばされる。
その隙を逃さずアナザードライブが連撃を繰り出してきた、反撃できずひたすらドライブは防御に徹する。
「進ノ介こちらもシフトアップだ」
「わかってる!ベルトさん、でも···っ!」
アナザードライブには隙がなかった。
「クソが··ッ」
「加古川君!無理に動いちゃダメだ!」
《ジ・オーウ!!》
「くぅ、うおおぉ!」
アナザージオウが先程食らわされた腹を抑えながら、自らの短剣をアナザードライブに投げつけ、避けられる。
その一瞬さえあれば十分だった。
「進ノ介!今だ!」
「あぁ、ベルトさん」
ベルトさんのキー部分をまわし、腕のシフトカーを前に倒す。
瞬間、ドライブがシフトアップしアナザードライブとの戦いは変身が解除された加古川には追えない物になった。
《ヒッサーツ!フルスロットル、スピード!!》
大きな爆撃の中でドライブが立っていた、先程までアナザードライブがいたであろう場所には少し焼き焦げた白色のパーカーを着て倒れている人物、詩島剛が倒れていた。
詩島剛が目を覚ますと隣には自分と同じくトライドロンにもたれかかっていて、手にはアナザードライブウォッチが握られている。
「進兄さん?」
「静かにしろ、今は2人だけにしてやれ」
加古川は剛の言葉を遮る。
ボロボロの2人の反対側に数年ぶりの談笑をしている2人の姿があった。
「霧子、君の奥さんはどうしてる?」
「あいつは凄いやつだよ···すっかり昇進しちゃってさ、もう完全に上司だぜ?」
「ふむ、彼女は優秀だからな。ところでこっちの世界はどうだい?何か変わったかい?」
「いや、全くだ。ずるい奴も悪いやつもちっとも減らない」
「そうか」
ベルトさんの悲しそうな顔が表示される。
「でも···前よりもいい笑顔で笑う奴は増えたかな」
「そうか、それは良かった」
ベルトさんが笑顔を浮かべる。
「そういえばこの前剛がさ」
進ノ介がそう切り出した所でベルトさんの体を淡い光が包みだした。
「すまない、進ノ介どうやら時間切れらしい」
「·····そうか」
「どうだい?そろそろ私が目覚めてもいい頃合いかな?」
「いや、まだだ、まだ俺達は弱いまんまだ」
「ふむ」
しかしベルトさんの表情は暗くない。
「だから、それまで持っていてくれ。あんたが託してくれたこの世界を必ず守り抜いてみせるから」
「あぁ、任せた····友よ」
淡い光が強くなりベルトさんは光の粒になり、収縮してドライブライドウォッチになる。
名残惜しそうにドライブウォッチを加古川に渡そうとした。
「これは加古川君の物だろ?」
「いや、そのウォッチはあんたが持っていてくれ」
「いいのかい?」
進ノ介はまっすぐ加古川を見つめる。
「多分、あと1回くらいなら使えるはずだ。いざと言う時に」
「····わかった、ありがとう」
そんな会話を交わす2人を、まるで戦友のようだと剛は眺めていた。