仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
この本によれば·····普通の高校生 加古川飛流、彼には魔王にして時の王者オーマジオウになる未来など待っていなかった。
着々とアナザーライドウォッチを集める彼の前に門矢士が現れ加古川に役目を手渡す。そして、終わりは刻一刻と近づいて来るのだった。
おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
ウォズの手には小さい茶封筒とアナザーライドウォッチが握られていた。
「旅人たち2019」
「俺の事はもういいのか?重要参考人とやらでは?」
「いや、大丈夫だよ。疑って悪かった」
そう言いながら進ノ介は深々と頭を下げた、その行為に驚いて加古川が顔を上げるように言う。
「君は紛れもなく仮面ライダーだった、一瞬とはいえ疑ってしまった」
あの怪人の様なアナザージオウの見た目では仕方ないだろうに、進ノ介は本当に申し訳なさそうに言う。
「本当にやめてくれ、あんたは何も謝るような事をしていない」
「ありがとう····良かったら乗っていくかい?」
トライドロンのドアを開けてそう言う。
「いや、家とは逆方向だしな。傷も大したことないから家で休む」
「そっか、助けてくれて···ベルトさんと会わせてくれて本当にありがとう」
感謝の言葉を残すと進ノ介は走り去っていった。
かなり苦戦したがまた1つアナザーウォッチを手に入れた、順調だと加古川は思った。
「挨拶は終わったのか?」
不意に加古川の背後から声がする、振り返ると先程までそこにいなかった人物が立っていた。
マゼンダピンクと黒の二眼レフカメラが印象的なスーツを着た男性、世界の破壊者、ピンクの悪魔、仮面ライダーディケイド数々の異名を持つ男。
「
加古川は咄嗟にアナザージオウウォッチを構える。
「大丈夫だ、今はお前に敵対するつもりは無い」
士のそんな言葉に思わず安堵してしまった後に尋ねる。
「お前は、今回のお前は何者だ?」
仮面ライダーディケイド 門矢士には旅をする世界ごとに役割があるはずだ。
「俺はいつも変わらない、通りすがりの仮面ライダーだ」
「通りすがりは半年も滞在しないと思うんだが?」
「あぁ、その通りだ」
分が悪そうに士は続ける。
「俺はこの世界から出られないんだ、俺のこの世界での役目は終わったはず····なのにな」
「一体なぜだ?」
疑問をそのまま口に出した加古川に対して士は答える。
「恐らくだが常磐ソウゴが世界を作り直し、自らの記憶を無くし仮面ライダーじゃなくなったからだ。」
加古川はソウゴの名前に反応するが士は気にせず続ける。
「今この世界にはこの世界の仮面ライダーが存在しない状態·····だからこそ俺が渡れる世界でもないという事なんだろうな」
「それは災難だったな、それで?どうして俺の前に現れた?」
「お前に
そう言うと士は何処からか小さめのボストンバッグを取り出して加古川に投げる。
「これは····っ」
中身を確認して、信じられないような顔で士を見る。
「どうしてお前がこれを?」
「気にするな」
それだけ言い残して士が振り向くとそこには灰色のカーテンのようなものが出現していた。
「じゃぁな、加古川飛流しっかりとお前の役目をこなす事だな」
「俺の役目·····」
「あ、そういえば」
加古川は下を向いて考え始める思考を遮るように士が嘲笑を浮かべながら。
「ミラーワールドに転がって行ったお前の表情は中々に傑作だったぞ」
その言葉で加古川は瞬時に理解する、アナザー龍騎との戦いで鏡に向かって加古川を蹴り落としたのは·····
「お前だったのか!?」
最後に加古川を鼻で笑ってから門矢士は灰色のカーテンの中に消えていった。
「くそ、疲れた」
1人で静かに呟いて加古川は玄関で靴を脱ぎ、横になるために自室に向かった。
「おかえり、我が魔王 ずいぶん疲れてるようだね」
「あぁ、色々あってな」
「そのバッグはなんだい?」
「なんでもない」
ウォズに言葉を返しながら門矢士から受けとった
「それよりもどうして二階にいる?珍しいな」
「あぁ、まあ、少しね」
ウォズは明らかに言葉を濁した。
「なんだ?言いたい事があるならハッキリ言ったらどうだ?」
「君には申し訳ないのだけど、君がいない間に家を少し調べさせてもらったんだ」
「なに?」
明らかに加古川が不満の表情を浮かべる。
「どうしてだ?」
「少し時間がなかったというか、予想以上に早まったと言うべきか」
加古川には分からない事を呟いた後にウォズは話題を変える。
「その中でこれを見つけたんだ、良かったら受け取ってもらえるかな?我が魔王」
ウォズが手にしているのはどこにでもあるような小さい茶封筒だった。
「中身を見たか?」
「いや、私は見ていない。ただこの本に従っただけだからね」
この本というのはウォズが持っている裏逢魔降臨録の事だろう。
「わかった、部屋で見る」
ウォズから茶封筒を受け取って加古川は部屋に戻って行った。
結果から言えば茶封筒の中には手紙が入っていた。
いつなのか加古川飛流の両親が20歳になったであろう加古川に当てた手紙。そこには交互に女性が書いたであろう文字と、恐らく加古川の父親が書いたであろう力強い文字で書いてあった。
『飛流へ
この手紙はお前が大きくなった時に渡そうと思っています。
飛流はどれくらい大きくなったかな?もうお父さん達の背は追い越したかな?
あなたは幼い頃から物事をよく考える賢い子だけど、少し考えすぎる時もあるから私達は少し心配です。
それでも父さん達の自慢の息子だ、飛流ならきっと正しい選択をして生きていってるのだと思います。
私達は普段手紙なんて書かないからおかしな所があったら、ごめんなさい。
最後に2人からです、私達の子供に生まれてきてくれて、ありがとう。
P.S.今でも相当ヤバいんだけど、そっちの父さんはハゲてますか?』
恐らく加古川の何歳かの誕生日に両親が記念として気まぐれで書いたものだろう、そしてこの手紙は加古川に今まで避けてきた現実を自覚させるには十分すぎた。
読み終わると加古川は泣いていた、目が覚めて両親が死んでしまったのを告げられた時と同じくらいに。
声を押し殺してすすり泣きながら、様々なことを考える。
父さんの身長なんてとっくに追い越した事
まだ一緒に居たかった事
どうして自分だけ置いていったのか
どうして·····
どうして??
どうして!!
気付けば加古川は産まれたての赤ん坊のように声を出して泣き喚いていた、それはまるで10数年ぶりに愛する人達がもうこの世界には居ないことを受け入れたようだった。
その夜彼はまるで母のそばで眠る赤ん坊のように深い眠りについた。