仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
この本によれば·····普通の高校生 加古川飛流、彼には魔王にして時の王者オーマジオウになる未来など待っていなかった。
アナザーアギトの力を手にした彼はウォズから世界の真相を知ることになる。
そして、再び我らが魔王 常磐ソウゴと接触を果たすが····
おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
そう言うと裏逢魔降臨録を数ページ捲って、ウォズは姿を消す。
「消失ヒーロー2019」
廃工場での戦闘から少し時は進む。
「はぁ·····」
先程の戦闘で疲弊したのだろう、加古川飛流は浅いため息を吐きながら自宅のリビングにある椅子に腰を下ろす、椅子は加古川の座るものを入れて3つある、その内2つの椅子はもう10年程誰も触れてない椅子だ。
加古川に気を使ったのかどうなのか、ウォズは椅子には座らずに加古川の斜め前に立っている。
「さて、我が魔王 少し落ち着いてきたようだし、さっきの質問に答えようか?」
加古川は机に並べた自らのアナザージオウライドウォッチとアナザーアギトライドウォッチを見つめながら問う。
「あぁ、まずなんで俺とお前だけ前の世界の記憶がある?」
ウォズは手にしている裏逢魔降臨録のページを眺め、目線を加古川に移して言う。
「我が魔王、それは違うよ」
「違う?」
すかさず加古川が反応する
「前世界の記憶があるのはキミと私だけではない、個人差はあるようだが·····アナザーライダーになった者なら記憶があるはずだ」
その言葉を受け取りながら加古川は少し考える。
「·····!!」
加古川の反応を見てウォズが。
「おや?早くも気付いたようだね」
加古川は考えながら喋る。
「アナザーライダーになった者に記憶が戻るなら、スウォルツはどうなる?あいつも前世界の記憶を持っているなら·····」
加古川は恐る恐る口を開く、まさかの可能性を考えながら·····
「なぁウォズ、さっきのアナザーアギトを作ったのは前世界の記憶を待っているスウォルツか?」
ウォズは嬉しそうに両手を広げながら言う。
「素晴らしい!その通りだよ、我が魔王」
アナザーアギトの発生に納得がいったのか、加古川は次の質問に移る。
「俺がアナザージオウに変身できた理由は?俺はこの世界でスウォルツに会ったことなんてないぞ?」
ウォズはまだ少し嬉しそうに。
「君の中に残っていたアナザーライダーの力が引き出されたまでの事だ」
と、さも当たり前のように言う、その答えを受け取りながら加古川は少し考えてから。
「さっき言ってた世界が混ざったってのは、どういう意味だ?この世界は·····」
1度唾を飲み込んでその名前を口にする。
「この世界は常磐ソウゴが作り直したんだろ?それぞれの世界に分けたんじゃないのか?」
そう、加古川は知っている。
常磐ソウゴこと最低最悪の魔王にして時の王者「オーマジオウ」と スウォルツことアナザーディケイドとの決戦の後、常磐ソウゴが世界を作り直し、それぞれのライダーの世界線に世界を分けた事をただ、見ていた。
ある意味では世界の終わりを·····
「そこなんだ、今回の問題は」
ウォズは軽いため息をつきながら言う
「もう1人の我が魔王の力が薄まってるといえばいいのか·····もう1人の我が魔王はこの世界では仮面ライダーの力を失っている」
加古川は静かに聞く。
「前世界を作り直し、我が魔王は普通の高校生となってしまった。
その結果、我が魔王はライダーの力を失いオーマジオウが分けた世界が再び混ざりあっている」
常磐ソウゴがライダーの力を失っている事は既に知っている、だからこそ。
「何故だ?」
加古川は続ける。
「なぜ常磐ソウゴは、ライダーの力を失っている?」
ウォズは苦い顔をしながら。
「これに関してはもう1人の我が魔王が、そう作り直したのだろう·····ライダーの力を持たない、普通の高校生としての常磐ソウゴを」
加古川は椅子から立ち上がって。
「もういい、分かった。常磐ソウゴは普通の高校生として、仲間と一緒にいる世界を作った。そのせいで世界が混ざっているとも知らずに、その可能性を考えずに」
歩き出した加古川を見て。
「どこへ行くんだい?」。
振り返らずに加古川は答える。
「もう寝る。明日、常磐ソウゴに接触する」
加古川はボソッと「身勝手な奴だ」と呟いて、寝室に向かった。
「身勝手なのはどちらもだと思うんだけどね·····」
そんな独り言を呟いてウォズはどこかに消えた。
その夜加古川は夢を見た。常磐ソウゴ、仮面ライダージオウと黒いローブを纏った青色のライダーが共闘してる夢を·····
次の朝、いつもより早く家を出て常磐ソウゴを待ち伏せするために通学路で仁王立ちしてると後ろからウォズが話しかける。
「もう1人の我が魔王と接触してどうするつもりだい?」
加古川はその問いに答えない、答える前にソウゴが現れたからだ。
目前で仁王立ちする加古川にソウゴが気付く。ソウゴが口を開く前に。
「常磐ソウゴ、俺はこの世界を元に戻そうと思う」
「·····は?」
ソウゴは意味がわからないと言った顔をする、しかし、加古川は続ける
「お前が高校生ごっこを続けるなら、お前が仮面ライダーとして戦わないなら俺がやる。」
加古川は1呼吸おいて。
「お前がやらないなら、俺が世界を救ってやる」
「さっきから何を言って·····」
ソウゴの言葉を最後まで聞かずに加古川は背を向け歩き出した。
現状仮面ライダーが誰一人として存在しない不安定な世界を、まがい物の仮面ライダーの力を持つ加古川飛流は今を前に進めるために歩き出した。
光ヶ森高校に下校のチャイムが鳴る、常磐ソウゴは教室の机に頭を着けて項垂れている。
「ソウゴ大丈夫か?やはり早退した方が良かったんじゃないのか?」
一日中そんな調子だったソウゴを心配しているのだろう、ソウゴのクラスメイトにして現柔道部部長の明光院ゲイツは声をかける。
「う〜大丈夫、熱があるわけじゃないから」
ソウゴは顔を上げずに答える。
「ねぇゲイツ」
「じおうって知ってる?」
ソウゴは頭を抱えながら、ゲイツに問う。
「じおう?なんだそれ?」
「いや、知らないならいいよ」
ソウゴは再び机にひれ伏してしまう。
ちょうどその時教室に入ってきた長い黒髪の少女はソウゴの元に歩いてきて。
「ソウゴー調子はどう?」
「見ての通りだツクヨミ、朝から変わらん」
ソウゴの代わりに答えたゲイツにツクヨミと呼ばれた少女はソウゴのカバンを持ちながら。
「とりあえず帰ろ?明日も良くならなかったら、病院に行って休みましょ」
「·····ねぇツクヨミ?じおうって知ってる?」
「じおう?なにそれ?」
ツクヨミはゲイツと同じ反応を返す。
「いや、知らないならいいよ。うん、帰ろう」
今朝にクラスメイトの加古川飛流と会話した時から、頭の中にじおうと言う単語が離れず、ずっと頭痛がする。
深く気にするのをやめて、立ち上がり2人の肩を借りて帰路に着く、そんな3人を校舎の屋上からウォズは眺めていた。
ウォズの手元の裏逢魔降臨録がまた1ページ捲られた·····