仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
この本によれば·····普通の高校生 加古川飛流、彼には魔王にして時の王者オーマジオウになる未来など待っていなかった。
アナザーダブルとアナザー龍騎の力を手にした彼は次の事件の調査に向かうが、そこで一人の戦士と遭遇して·····
おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
ウォズは持っている裏逢魔降臨録を見て少し微笑んだ。
「戦士と怪物2019」
左翔太郎らと別れた加古川飛流は家に向かう。
次のアナザーライダーの力を手にする為に·····
家に帰る途中で翔太郎に言われた事は気にしないと決めた、今はそんな事に囚われてる場合ではないと彼は判断した。
家の玄関を開けるとすぐ目の前にウォズが立っていた。
「おかえり、我が魔王」
加古川はリビングに向かいながらウォズに言う。
「しばらく見なかったな、どこに行っていた?」
加古川の3歩ほど後ろを歩きながらウォズは答える。
「私にも色々とやる事があるのでね·····」
「·····そうか」
加古川はぶっきらぼうに答えて机の上に置いてある新聞紙たちに再び目を通す。
「次はこれにするか」
〈長野県の巨大怪物!!〉とその記事には書いてある。
「我が魔王?何故それにするんだい?」
ウォズは少し焦ったように加古川を止める。
加古川は不思議そうに聞く。
「なんだ?何か問題でもあるのか?」
ウォズは少しためらいながら言う。
「その·····今の君にはまだ早いかと思うよ?」
だが、そんなウォズの制止を振り切って
「そんな事言っても、いずれは全てのアナザーライダーの力を手に入れなければいけない。先も後も関係ないだろ?」
そう言う加古川に諦めたようにウォズは
「分かった、我が魔王。君がそう言うのなら」
「あぁ、昨夜は疲れたから少し寝る」
そう言い残し加古川は自らの寝室に向かった。
「全く我が魔王には困ったものだ·····」
誰も居なくなったリビングでウォズはため息をついて、どこかに向かった。
その手には他と少し形が違うウォズライドウォッチが握られていた·····
加古川が眠ってから少し時間が経った昼過ぎに彼は目覚めて、長野県に向かう為に家を出ようとした。
結果として彼が長野県に辿り着くことは無かった、そして彼は対峙する。新たなアナザーライダーと1人の戦士に·····
家の扉を閉じ外に出た瞬間、加古川は唖然とした。
家から少し離れた場所の上空に彼が追おうとしていたアナザーライダーは居た。
まるで昆虫を無理やり人型に歪ませて、赤い装甲を付けたかのようなおぞましい怪物の様な姿·····アナザークウガである。
離れた場所でも加古川が認識できたのは、アナザークウガが10メートルはある体躯を持ち、その背中から生えてる羽で飛行しているからだ。
一瞬あまりに唐突な出現に唖然とした加古川だったが、考えるよりも今はアナザークウガの元に向かうのが先だと判断して、走り出した。
上空から火球を放っているアナザークウガの元に、いくつもの悲鳴が飛び交う場所に·····
現場は彼が思っている以上に過酷だった。
上空から人間を狙って火球を、時に直接昆虫のような手で捕獲し捕食しているアナザークウガ、泣き叫ぶ人々、立ち向かおうとして喰われる人、誰かの亡骸に縋っている人·····
加古川は似たような光景を知っている。
かつて自らが常磐ソウゴに復讐するために世界を作り変え、ソウゴの関係者達のみをアナザーライダーと対峙させ襲わせた。
しかし、それでも·····それだとしてもこれは
「惨すぎる·····ッ」
瞬間加古川はアナザージオウに変身して、アナザークウガの未来を見る。
「うおおぉぉ!」
未来を見た彼は走り出した、見た未来でアナザークウガに食べられるはずの目の前の子供を助けるために。
「クシャァァァア!!」
間一髪口を開けて地面に向かってきたアナザークウガの喉元に剣を突き立て、アナザークウガが怯んでる隙に子供を抱え救出する。
自らの獲物を取られたアナザークウガはアナザージオウに向かって火球を放つ。
その火球を背中で受け、アナザージオウは倒れてしまった。
両手から子供を離し。
「行け!早く逃げろ!」
そう叫ぶアナザージオウに子供は心配したように
「でも·····」
「うるさい!早く走れ!!」
子供は涙目になりながら何も言わずに、背中を向け走り出した·····
アナザージオウが振り返るとアナザークウガがすぐそこまで迫っていた。
先程の一撃を受けてもう反撃する力も残っていない·····
彼は諦めたかのように力を抜いた。
結局俺は半端止まりか·····スウォルツの言う通り、王の資格なんてものは俺には無かったのか·····そんなことを考えて彼は目を瞑った。
数秒してから違和感に気付く。
全く痛みがやって来ない、もうとっくに食べられてるはずなのに·····
恐る恐る目を開けるとそこにはアナザークウガと戦う1人の戦士がいた。
真っ赤な胸の装甲と肩の装甲、クワガタ虫のような大きな金色の角が特徴的な1人の戦士·····
「仮面ライダー·····なのか?」
アナザージオウがそうつぶやくと同時に赤い戦士の飛び蹴りを受けたアナザークウガは羽を広げ空に飛び去って行った。
飛び去って行ったアナザークウガの姿が見えなくなると、赤い戦士はアナザージオウの方に向かってく。
見た目からして自分の事を怪物だと思っているのだろう、今攻撃を受けるのはまずいと思い、加古川は変身を解除した。·····まあ、怪物であること自体は間違いいではないが。
「まて、俺は違う·····」
加古川のそんな言葉を受け取り、赤い戦士も変身を解除する。
赤い戦士の皮膚が一瞬で人間のそれに変わった。
そこには優しそうな笑顔をうかべる青年が立っていた。
「俺は五代雄介、クウガだよ。よろしく!」
「·····クウガ?」
加古川は今更ながら気付く、この男が仮面ライダークウガである事に·····
「さっきの見てたよ、子供を助けたよね?」
五代は倒れたままの加古川に手を伸ばしながら
「君もクウガなの?よろしくね!」
「··········違う」
加古川は落胆したように肩を落とした。
それから少し時は進んで、加古川は仮面ライダークウガこと五代雄介と一緒に喫茶店ポレポレで食事をしていた。
「君は食べないの?ここのカレー美味しんだよ」
「·····いや、俺はいい」
そう返して加古川はコーヒーをすすりながら、目の前の男を観察する。
五代雄介·····聞いた話が確かなら彼は平成の時代の1号のはずだ。
しかし、目の前の彼は優しい笑顔を浮かべる人の良い青年にしか見えない。
とても平成の始まりの戦士には·····
「お前は」
先に口を開いたのは加古川だった。
「お前はさっきなんで俺の事をクウガだと言った?」
五代は口に含んでるカレーを飲み込み答える。
「さっき子供を助けてたでしょ?だから、俺と同じで変身して戦う人かなって」
数秒黙ってから加古川は
「俺の見た目は化け物にしか見えなかったはずだ、それに子供を助けたってのも偶然だったらどうするつもりだった?」
加古川はあくまでも子供を助けたのを認めないらしい。
「たとえ君が見た目通りの怪物で、子供を助けたのも偶然だったとしても」
五代は水を1回飲んでから。
「例えそうでも、1度話し合いしないと分からないでしょ?」
そう言って笑顔をうかべる五代を見て加古川は1つの事を確信した。
こいつは戦士なんかじゃない·····ただの平和ボケしたバカだと。
「そうか·····」
加古川は席を立って、店を出ようとする。
「待って待って、どこに行くの?」
慌てたように五代も席を立って、加古川に追い付く。
「さっきのアナザーライダー、怪物を探す。そして倒す」
「そういう事なら、俺も協力するよ。味方は多い方が心強いでしょ」
そう言って五代は笑顔になりながら、サムズアップポーズをする。
加古川は軽くため息をつきながら考えた。
こんな平和ボケした男に戦いなど無理だろう、着いてきても五代が怪我をするだけ。さっきのも偶然に違いないと。
「着いてきてどうするんだ?あのアナザークウガにも話し合うのか?」
加古川は小馬鹿にしたような言い方をする。
「いや、話し合わない。あいつは命を奪いすぎた」
そう言ってまっすぐ前を向いた五代の瞳に先程の人の良い好青年の印象はなかった。
そこに映っていたのは明らかな戦士の風格·····
加古川は一瞬怯んだが、次の瞬間には五代はさっきまでの好青年に戻っていた。
「分かった、一緒に行こう」
加古川は五代雄介と言う人間に興味を持ち始めていた。
加古川は初めて人の戦う理由を知りたいと思っていた。
「ありがとう、じゃあ行こうか。これ以上人の笑顔が消えない様にね」
かくして、1人の戦士と1人の怪物は共通の目的のために少しの間行動を共にする·····この出来事が加古川にどんな影響を与えるか、それはまだ誰も知りえない。