仮面ライダージオウ外伝 ひとりぼっちの裏の王 作:タコわさび
普通の高校生 加古川飛流、彼には魔王にして時の王者オーマジオウになる未来など待っていなかった。
2人のクウガを見届けた彼は新たなるレジェンドに出会う事になるが·····おっと、ここから先は皆様には少し過去のお話
そう言って足早に立ち去ったウォズの手元には2つのアナザーライドウォッチが握られていた。
「真っ赤な車の正義漢2019」
アナザークウガを撃破した山を下山した2人の男、平成最初の仮面ライダー五代雄介と我らが加古川飛流、2人は別々の方向に進むらしく加古川は自らに家の方に、五代は全くの逆方向に歩を進めようとしていた。
「ありがとう、今回は助かったよ」
そんな五代の感謝の言葉を聴きながら、助けられたのはこちらの方だと加古川は言う。
「またどこかで会ったらお礼させてね」
どうやら五代は本気で加古川に恩を感じてるらしい。
「そうだな·····じゃあ今度あった時はあの喫茶店のカレーでもご馳走してくれ」
加古川が冗談で言ったのかはさておき五代はそれを快諾した。
「なぁ五代、一つだけ納得できないことがある聞いてもいいか?」
「いいよ、なんだい?」
少し前から加古川には1つの疑問が残っていた、それはもう1人のクウガ、小野寺ユウスケや門矢士達のことより分からない事。
「俺が作戦を提案した時なんでお前はあんなにすんなり承諾した?」
五代は不思議そうに首を傾げる、加古川は続ける。
「だから、なぜ俺の事を信用出来た?」
加古川のそんな質問に五代はすぐに答える。
「さっき君が助けた子が無事だって伝えた時、君は安心したような嬉しそうな顔をしたでしょ?だからだよ」
五代の答えに加古川は驚いた、自分がそんな顔をしたことも·····誰かを助けて満足していたことも。そして今の今までそれに気付かなかったことも。
「そうか·····そうなのか、俺は嬉しかったのか」
俯いてそう呟く加古川の言葉が聞き取れなかったようで五代は不思議そうに覗き込む。
「いや、なんでもない 大丈夫だ」
顔を上げた加古川を見て、とりあえず体調は良さそうだと五代は理解し。
「そっか、なら良かった!」
「じゃあな、五代雄介またどこかで会ったら」
「うん、じゃあね!」
そう言って五代は加古川家の反対方向に歩き出した。
何気に誰かに別れの挨拶をするというのは数年ぶりじゃないか?そんなことを考えながら、加古川は帰路に着いた。
加古川が下山ししばらく歩いた所で1台の車に声をかけられた、情熱を連想させる真っ赤な車。左前輪が丸出しになっている特徴がある。
その赤い車·····トライドロンから一人の男が降りてきた。
「きみ、少しいいかな?」
「なんだ?お前は」
「えっとね、こういうものなんだけど·····」
そういうと男は警察手帳なるものを加古川に見せる。
そこには警察庁特状課 泊進ノ介と書いてあった。
「·····警察?」
「少し君に話が聞きたくて、今時間あるかな?」
進ノ介はそう言いながら加古川を観察しているように見えた。
「何の話だ?」
「さっき、君が降りてきた山で爆発みたいなのがあったよね?何か知っている?」
恐らくアナザークウガを撃破した時の爆発か。
「何も知らない」
加古川は涼しい顔で嘘をついた、加古川は嘘をつくのは慣れていた。
「どうして嘘をつくの?」
そして同じく進ノ介も嘘を見抜くのは慣れていた。経験の差というものが出た形になる。
この相手を騙し切るのは不可能だと加古川は悟った、しかしそれならばどうする?まさか全て正直に話す訳にはいかない。
こんな時五代ならどうするのだろう····と加古川が珍しくそんなことを考えている。
「率直に聞くよ、さっきの爆発はロイミュードかい?」
「ロイミュード?」
爆薬の種類か?いや、聞き覚えがある。
人工生命体ロイミュード 仮面ライダードライブが戦った相手·····スウォルツから聞いた話だが。
この男が言っているロイミュードはそれだろう、だとすると目の前の男は少なくとも仮面ライダードライブに近い人物なのか?
「···いや、ロイミュードじゃない」
「そうなんだ」と進ノ介は安心したような表情で言う、しかし、次の瞬間には険しい顔つきになり。
「じゃぁロイミュード以外の怪物が現れたんだね?君はそれと戦っていたんだね?」
怪物は何を隠そう目の前の俺なのだが·····と思ったが面倒くさくなるので加古川は言わなかった。代わりに
「あぁ、その通りだ俺がアナザーライダーを倒した」
まあ、嘘ではない。他の2人のことは言わない。
長引きそうだからだ、加古川は一刻も早く帰って休みたかった。
「そうなんだ、じゃぁ君も仮面ライダーなんだね?」
「··········まあ、そうかもしれないな」
ハッキリとは言わないながらも肯定した、今まで散々否定してきたのに。
「そうかも?」
しかし、その曖昧な言い方が進ノ介には引っかかったらしい。
「·····ッ!」
不味い事になったな、どうにか現状を突破できないか加古川が考えてる。その時ものすごい速さで赤い車が2人の脇を通り過ぎて言った。
さながらスポーツカーの様なスピードに2人は一瞬唖然とする、先に口を開いたのは加古川だった。
「今の、明らかにスピード違反じゃないか?あの速さで人を轢きでもしたらシャレにならないぞ?」
そう言って、加古川は進ノ介に違法車両を追うように促し、自分は帰るつもりだった。
「あぁ、その通りださっきの車を追う!」
よし、どうやら思いどおりにいったらしい。
「何ボーっとしてるの?君も乗って!」
「はぁ!?」
結局加古川はトライドロンの助手席に乗ることになり、違法車両を追うことになった。
進ノ介いわく、重要参考人をみすみす逃す訳には行けないし、スピード違反も見逃せないという事らしい。
「なぜ、こうなった···」
加古川は助手席で1人うなだれる、しかし加古川はすぐに前を向く。
過去を必要以上に後悔しても意味の無いことは彼は誰よりも知っている、知っているのだが·····
「加古川君って言ったよね?あいつ恐らく普通じゃない」
ナイーブモードに入りかけた加古川を進ノ介はそんな言葉で引き戻す。
「普通じゃない?」
確かにこの超スピードで走っているのだ、普通じゃない。
車に乗ったことがほとんどない加古川でも明らか違法速度だとわかるくらいだ、時速500キロは出てるんじゃないか?まあ、よく知らないけど。
ふと、隣を見ると進ノ介が何やら深刻な表情で何か呟いている。
「お前、あの車両に見覚えがあるのか?」
「いや、見覚えって言うか···なんかトライドロンに似てるような」
すると突然違法車両が動きを止める。
カーチェイスを初めて3分弱だ、こちらの存在に気づいたのだろうか?
「なぁ、あの車に乗っているのがお前の言ってたロイミュードなら仮面ライダードライブを呼んだ方がいいんじゃないか?」
これは進ノ介がドライブの関係者であるとこを明らかにするための、加古川なりのカマかけと言うやつだった。
しかし、帰ってきた答えは意外なもので。
「ん?俺が仮面ライダードライブだけど?」
「なっ!本人なのか!?」
さすがに予想外だが、これは好機だ。
違法車両に乗っているのがロイミュードなら、進ノ介に戦ってもらえばいい。
「いや、俺はもう変身できないよ?」
「なんだと!?」
·····今日は予想外な事ばかり起きる日だ。
となるとこの場には戦えるのは加古川だけとなる。
そして、加古川は目の前の違法車両には実は見覚えがあった。
扉を開けて中から人型のものが出てくる。
赤いスポーツカーを思わせる外装に、顔には半分機械の鉄肌が露になっている。所々切れた配線が垂れている。
うん、アナザードライブだ。
「あぁ、帰りたい····」
先程までの疲れがどっと押し寄せてきて加古川は再びうなだれる。