最近は、燿哉殿の護衛が増えました。
人間だった自分が死んだ事は覚えていた。
病室で、病で痩せ細ってしまった自分の手を握って泣いてくれていた両親。足を温めようとして擦ってくれていた兄と妹。親友と恋人は泣いていた。
覚えていた。病室から見えた高層ビルも飛行機も。親友と兄と妹が暇潰しにと持ってきてくれた漫画や小説の内容も。恋人が持ってきてくれた洋菓子の美味しさも。
中学高校で捧げた走る事への情熱も、走る事を病に奪われておきた渇望も。
…転生なんてないと思っていた。だけど、実際に我が身におきてしまうとなんともいえない気持ちになった。
人狼草紙の世界かと思ったが、父親は人間との共存を望み、私達家族と一族を深く愛してくれていた。一族は生き残り繁栄をしている。
次代の長とされていたが、人狼は永い時を生きる―ぶっちゃけると、エルフみたいに寿命で死ぬがないに等しい生き物だった。驚異の再生力と回復力で核戦争後、生命が死に絶えた世界でも平気な顔、いや笑顔で生きていそうだ。だが、愛する対象が死んでしまうと寂しくて死ぬという繊細な―生き物だったので、気長にのんびりと生きようと決めていた。
人間と共存を望む父親に連れられて、人間の代表や鬼の姫君、妖怪の大将や鬼達と出会った。安倍晴明にあった時に控えていた従者が封殺鬼の主人公だった時に確信した。色々な漫画と小説が混ざった世界のクロスオーバーだと。
そして、偉そうな小心者パワハラ無惨が現れた時にはお茶を噴いた。
悲しい鬼や愛する人の肉を食べて鬼になった人と比べて、なんてこいつはみみっちいのだと。太陽の下で生きられる鬼もいるのに、こいつはそれができない。そのくせ人間を悲しみの連鎖に引きずり落とす。人の為に生きる鬼の優しさも、鬼を殺し名前を欲しがる、人間になる事を望む鬼の決意もない。唾棄すべき存在だ。
《私の下僕にしてやる》
その言葉にぶち切れた大人達の命を受けて、嬉々として狩りをした。
残念な事に殺せなかったけど、恐怖をその身に染み込ませてやった。
可愛い妹に酷似している可愛い朔太郎が、旅立って直ぐにお手紙をくれた時には、再度お茶を噴いた。
鬼殺隊のお手伝いをする許可を求める手紙内容。
原作で爆死した当主の呪いを解いたとあった。悲しさと哀しさをバンバン破壊しよう。むしろ鬼舞辻無惨を破壊しよう。鬼を破壊しよう。特にサイコな教祖を。不死川兄弟の生存無一郎君の生存。そして私の推しの珠世様と胡蝶姉妹を助けてあげてっ。そしてやっぱり朔太郎自身の身の安全を一番に考えてねっ。俺の前世の妹に酷似している美少女じゃなくて可愛い幼児なんだからっ。可愛い禰豆子ちゃんを鬼にした無惨はロリコンだ。ロリコンに明日を生きる資格はない。朔太郎、頑張るんだよ。
あと、猛おじさんの事は諦めて。猛おじさんは俺の前世の兄貴だからっ。俺と妹が大好きで世界の中心に据えていた人だから。俺の前世の妹は今は姉上になった桜だからね。自分のお洒落に無頓着だったくせに客観的に自分を見たらウォーター(革命&革新&啓蒙)しちゃったから…婿はないけど双子の弟(お気に入りの着せ替えぬいぐるみ)扱いだからこれまた諦めて。
体には気を付けるんだよ。後、もっとお手紙をだしてくれると嬉しいな。
※※※
「朔太郎様、先日は私の娘を救って頂き、真にありがとうございますっ」
「私からも御礼を言わせて下さいっ。息子と娘の鬼化を止めてくださった事、生涯忘れませんっ。朔太郎様の里と鬼殺隊への援助はお任せ下さいませ」
「遠坂さん、抜け駆けはよくありませんなぁ。儂らだって朔太郎様のご慈悲により家族を救って頂いたのです。恩返しは皆でするべきでしょう(肉球をさわらせて下さいっ。握手会に参加したいから金に糸目はつけないよ)」
「…それはそうですが。私は二人の子供を助けて頂いたのです。いえ、朔太郎様や産屋敷様のまえで言い争うのは止めておきましょう(良いなぁ産屋敷様。呪いが解けて健康になれて。息子と娘の鬼化を止めてくれてありがとうございます。あと、お願いですから私の死に絶えた毛根も甦らせて下さいっ。お願いします)」」
「「そうですな(人狼様の御前でしたな。ああ、もふもふたいむに参加したいっ。会議の途中で人型から狼型になった時は驚いたけど、でっかいお昼ねワンワンのお腹に凭れて眠りたいっ。出資金と寄付金いくら出せば許可をくれるんだっ。もふもふたいむに参加したいよおっ)」
「(…作戦通り。ありがとうございます朔太郎殿)ありがとうございます。朔太郎殿は今は産屋敷と柱の屋敷の客室にて暮らしておいでです。そろそろ朔太郎殿専用の屋敷を建設したいのですが…」
「「「「お任せ下さいませっ!」」」」by人狼推しの権力者&資産家達。
「ありがとうございます。(朔太郎殿をなに柱とするのかも考えないと。客柱?獣柱?狼柱?犬柱?ワンワン柱?幼児柱?…狼柱が一番だね。それにしても、鬼殺隊の援助をしぶっていた方々のご家族が鬼化していたなんて。気づいて治してくださった朔太郎殿、お手柄です。ありがとうございます)」
「しかし、儂達がすがり、騙されかけていた宗教は糞ですな。教祖がまず胡散臭い」
「そうですな。年を取らぬらしいがどうせ化粧でしょう。治療後に人狼様の尊いお姿を見てもふもふたいむをした息子が捕らわれていた宗教施設に荷物を取りにいったら酷く脅えて逃げたと言ってましたからな。きっと狐か狸でしょう」
「…風柱に花柱、頼みましたよ」
「「はい、お館様。お館様、皆様、人狼様。御前失礼いたします」」
…意地を張らないで、正式に鬼舞辻無惨や無惨産の鬼を討伐してもらうべきだろうか?
お館様と人狼様の護衛任務は倍率が高すぎる。