大きな着物にくるまって泣き疲れて眠っている仔犬をみたら当番の人に渡して下さい。
資産家の邸宅から出た。
優秀な隠達から報告書を渡された。
「《万世極楽教》ですか。ああ、確かに行方不明になる信者が多くいますね」
「知らないうちにいなくなった。わが教団とは無関係だといえば済むからな。…なんだこの《犬や狼や妊婦に子持ち女性は大切にしましょう。でないと鬼の悪魔が召喚されます。犬や狼を可愛がって大切にして命乞いの交渉をしてもらいましょう》…朔太郎様方、人狼様が関わっていそうだな」
「…女性信者の行方不明者が、琴葉という方以降皆無になっています。この女性が人狼だった可能性もありますね」
「くくくっ。傑作じゃねーか。人間の女を食おうとしたら人狼様で逆に殺されかけたって事だろ?鬼だったらざまぁだな。取り敢えずは入信を考えていますって言って入会してみるかぃ」
「そうしましょう。お守りとして朔太郎様の抜け毛と血液を持っていきましょう」
「お昼寝用の敷き毛布も持っていこう」
「朔太郎様、悲しみませんか?」
「俺の部屋に避難してきた時用の毛布だから大丈夫だ。お前も持っているだろう。持っていくぞ。…恋柱を見ると最近は自動で仔犬のお姿に戻られてしまう。同じ女として、たしなめてくれ。おい、悲しげに顔を横に振るな。諦めるのが早すぎだ」
「それはそうと、朔太郎様の着物や洋服は不思議ですね。あの不思議な現象について知っていますか?悲鳴嶼様の大きな上着を常に腰に巻いている理由はご存じですか?」
「…不自然に誤魔化すほどに無理難題かよ。朔太郎様の毛皮に魔力や霊力を込めて人間の着物や洋服にしているんだとよ。悲鳴嶼さんの着物は大きいから隠れて泣くのに…ぐすっ…最適だから七着貰ったとっ」
「…っなんと、おいたわしいっ」
二人でちょっと泣いた。俺達鬼殺隊に協力して下さっている尊い御方に報いるどころか、恩を仇で返している、まったく悪気のない同僚をどうする事もできない無力さに泣いた。
一柱合会議に止める間も無く一爆弾を笑顔で投入して優しく尊い方を必ず一回は泣かせてしまうのだ。仔犬化した朔太郎様は、その日の全ての任務を可愛らしい仔犬姿で行う。仔犬姿で鬼を退治する。可愛いは正義だ。
万世極楽教の教祖を訪ねたのはいいが、すで教祖は逃げ出した後だった。
「いきなり、《来たっ。あの悪魔犬と化物狼が来るっ。今度は二匹も来るなんて!今度こそ喰い殺されるっ!》と叫んだと思ったら飼っている犬に泣きながらご飯をあげて《よしよし。俺は悪い鬼だけど犬に優しくして女は食わないようにしていたと言っておくれよ。足止めをして俺が逃げる時間をかせいでくれ》《…よしよし、元気でな。俺が追い付かれて喰われてしまっても、俺を忘れないでくれ。嫌だ、死にたくないっ。かといって永遠に彼奴の玩具にされてなぶられて喰われる玩具を兼ねたおやつになんてなりたくないっ》いったと思ったら消えてしまったのです。あ、あのう教祖様は鬼なのでしょうか?」
信者の言葉に脱力した。
人狼様が関わっている事が確定した瞬間だった。しかも俺達のお守りがお守りだと気づけないくらいに恐怖を与えている。むしろ恐怖で鬼を支配している。
教団幹部に、教祖が鬼である事を説明して教団は鬼殺隊と政府の監視下に入るという事を告げた。
…鬼よ、大声で思いっきり言わせてくれ。ざまぁ(*´ω`*)お前が怯えて逃げ出した事がすっげぇ嬉しいわ。お前が人狼様になぶられていた事がわかっただけで今夜は祝杯だ。勇気を出して可愛い玄弥に、今度の休みはお袋達の墓参りに一緒に行こうと誘えるわ。人狼様、ありがとうございますっ。俺が嫌いな義勇の奴も、朔太郎様の血と俺の可愛い弟の活躍で(もう一人いた?気のせいだろう?)仇の鬼が愉快な死にかたをしたしな。玄弥が告げた内容に、あの無口だった男(今は悲しい事に愉快なダンスぃー化)が満面笑顔で鬼の死体を見るために駆け足で去って行ったのをみて、思わずあいつの師匠にも教えてやったっけ。
「花柱、帰ろうか。朔太郎様と皆にお土産を買って帰ろう。甘い団子とかおはぎにスイカを買って帰ろう」
「ふふ。そうですね。お土産を買って帰りましょう」
すっごく満たされた気持ちでいた。人狼様と俺達鬼殺隊とざまぁな鬼に乾杯っ。
(^_^)/▼☆▼\(^_^)
…あの、ですね。たぶん、それ朔太郎です。
十年とちょっと前くらいだったかな?お使い帰りに通りかかった山で、臭い鬼がよい匂いの雌を喰いかけているのをみてかっときてやりました。
鬼を散々になぶっていたぶって半分ほど喰いました。鬼の魂をね、ちぎった首に縛り付けて、足の爪先から胸まで喰う姿を見せてやりました。痛覚生かしたままだからよい声を出しましたよ。再生するから無意味だと笑っていたけど、再生しないことに気づいたらヒィヒィと泣いていました。なんで造られたにすぎない鬼が生粋の人狼に勝てるなんて思うのでしょうかね?命乞いをしてきたから呪をかけてやりました。《人狼・狼・犬に敬意を払い大切にしろ。人間の雌、妊婦と子持ちの雌を大切にしろ。絶対に喰うな。喰ったら四肢が爆散するぞ》と。
で、雌を治してやろうと雌に近づいて治療していたら、鬼は逃げていました。楽器の音がしましたね。雌の名前は琴葉ですかって?よくわかりましたね。琴葉は朔太郎が一番最初に眷属にした人狼です。
琴葉は、子供を鬼から守るために崖下に落としました。崖下が川になっていたので、朔太郎と琴葉は懸命に探しました。でも琴葉の子供は見つからなかった。
琴葉は、朔太郎と里に帰って、人狼としての歴史と掟、生き方や狩の仕方を学んだ後にあの山と人狼の里を交互に住んでいます。今も自分の子供を探しています。死んではいない。私の亥之助は生きていると、母親の琴葉が言っているのです。だから亥之助君は生きています。
…もうね、琴葉って群れの子供や奥様方に可愛がられて愛されていて。本人はよく笑いよく働く子供好きでお世話を焼くのが大好きっこだから…生き別れた子供の代わり無茶苦茶愛される子供達が爆誕しましたよ。ええ、筆頭は朔太郎ですが?それがなにか?はっはっは。大丈夫、着せ替え人形とかお化粧とかお風呂に添い寝に子守唄にはい、あーんはすでに耐性がついてますからね。雌を大切にする、雌を守るためには自分のプライドはポイっですよ。ポイっ。あ、亥之助という名前の隊士がいたら人狼化の勧誘をしますからね。生け贄?滅相もございません。ただ、琴葉に紹介して息子役をちょっと代わってあげるだけですよ。
…朔太郎様の目は、現実を見ていませんでした。
宗教施設にいた犬達は無事里親が決まりました。