人狼の少年が鬼退治を手伝う話。   作:黄色いうちわ

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  好意でやったけど、裏目に出ることは残念だがある。


 朔太郎少年、うっかり爆弾発言をする。

 

  

 

   逃げたのはわかっている。

 

  これは弱さだ。鬼殺隊隊士としてあってはならない弱さだ。鬼化した人間は、それがなんであろうと斬る。

 

   知っていたはずだ、鬼となったものは最初に側にいた存在を喰うと。

 

   彼女は言ったのだ。皆、逃げてと。鬼化して人でなくなっても逃げて、柱を呼んで私を殺してと。

 

   彼女は面倒見が良く、年下の隊士を可愛がっていた。頼りがいがあり同僚達から信頼されていた。上司からも可愛がられていた。

 

   鬼殺隊で出会い、結ばれた最愛の女性だ。

 

   誰かが言った。《殺せないっ。殺したくないっ。柱が、人狼様が来るまで足止めをしよう》《そうだ、そうしよう。柱と人狼なら苦しませずに一瞬で終わらせてくれる》と。

 

   規律違反とはわかっている。だけど、彼女は自分達の誰よりも強い存在だ。返り討ちにあうくらいなら、強い隊士に任せて…できないと思った。だって約束した。お互いに鬼化をしたら残った方が必ず殺そうと。どちらが先に死んでも、残ったほうは鬼殺隊をやめないで、鬼に殺されるまで戦おうと。

 

 

  がむしゃらに剣を振るった。

 

  かわされても、何度でも斬りかかった。

 

  鬼は防戦一方だった。けして襲ってこない。攻撃をしない。それは彼女の強い意志に他ならない。

 

  それに気づいたら、心が折れた。

 

  彼女は飢餓と狂気に呑まれまいとしている。一番に食べたい存在がへたりこんでいるのに攻撃を耐えている。

 

   …俺にできることなどはなにもないのだ。

 

   「どけよっ。羽柴さんを封じるからっ。泣くなっ。全部終わってから泣けっ」

 

   「下がっていろ。お前が一番、あの鬼が喰い殺したい存在だ。生きろ。それだけが羽柴さんの最後の希望だ」

 

   「…ごめん。俺が彼女を封じる。剣はダメだけど、封印術は俺が一番だ」

 

   自傷し自分の手首に噛みついている妻を封じた。結界から逃れるために暴れながらも逃げろ殺してと叫ぶ。一言も人間を食わせろ喰いたいとは言わなかった。

 

   叱責と懲罰は覚悟していた。

 

   だけど、風柱様は俺達を痛ましそうに見つめただけだった。

 

   「…鬼を憎め。鬼舞辻無惨を憎め。殺された人と鬼にされた人は悼め」

 

   わかっています。わかっています。俺達はみな同じ痛みと哀しみをしり慟哭してきた。

 

 

   決意を込めて懇願した。

 

   「慈悲を。人狼様の手で彼女を終わらせてあげて下さい」

 

   泣きながらそう言った。

 

   「終わらせない。あの雌は助けます。朔太郎は、貴方達が鬼舞辻無惨を倒す為のお手伝いをする事がお仕事です。総員退避。結界を解いたら全員下がって下さい」

 

     結界を解いた。

 

   妻は朔太郎様を見ると一瞬戸惑った後に背を向けて逃げ出した。

 

   鬼舞辻無惨の血で鬼化した鬼は、大昔に朔太郎様達人狼に狩られた鬼舞辻無惨の恐怖心を受け継いだのか、人狼様を見ると逃げ出す。

 

   朔太郎様は巨大な狼になり、妻を追いかけて飛びかかった。人の姿に戻り、指を傷つけて妻の背中に血を垂らした。

 

   人間の倍に膨れていた身体は、人間の身体へと戻った。気絶している裸の妻の身体に上着をかけてくれた。

 

   「終わりましたよー。雌の隠と隊士の皆さん、後はお願いします。雄はこの雌の番と兄弟以外は来ちゃダメですよ」

 

   目前で起きた奇跡に、俺達はただただ頭を垂れて涙を流した。感謝を祈りを捧げた。

 

   神仏はいないと思っていたが、神仏は人狼様を使わして下さったのだと。

 

   「あのね、上着を行冥に返しちゃめっですよ。あの上着は、朔太郎が行冥から貰った上着ですからね。朔太郎に返して下さいね。洗わないでね。やっと朔太郎の匂いがついてきたところなんです。人間の雌は直ぐに朔太郎が行冥から貰った大きな着物を洗ってしまいます。何度お願いしても洗ってしまうのいやだなあ」

 

   ぽそっと言われた言葉に和んだ。仔犬姿で毛布を噛んで逃げていた事がありましたものね。

 

   でもね、朔太郎様。あなたに顔を体を綺麗に治してもらえた女性からしたら、貴方は尊く大切な御方なのです。そんな御方には快適にすごしてもらいたいのですよ。毛布と着物に関しては、申告しておきます。

 

   でもって、尊く優しい朔太郎様のお言葉に絶叫するように反対した。

 

   (可愛いちっちゃな)指を切り落とすから食べさせて鬼化をとけと。

 

   だめっ。血をもらうのだって心を削られているのに、目前でそれをされたら心を殺される。見た目が幼く小さな男の子だって自覚してくださいっ。

 

  《俺達鬼殺隊は、鬼舞辻無惨と同レベルの外道です。人でなしです。人間の力だけでは鬼舞辻無惨を倒せないからって、小さな人狼の子を里から群れから無理矢理引き離して、戦わせるだけではあきたらず血を搾取して飲み肉を切り落として食べています。さらには誇りを傷つけて、お気に入りの毛布や上着を取り上げています》

 

   …想像したら、色々とやばすぎた。仲間も想像したのか、青ざめていた。どっちが鬼だよ。

 

 

 

   新入隊士の我妻善逸が、言ってはならない言葉を言った。

 

   …鬼よりも先にお前を退治するのが先のようだと。お前より先に鬼殺隊になった人間は全員がそう思っている。

 

   美人な御姉様達が冷たい。

 

  冷たいだけで許してもらえているのだと理解しろ。いや、許してはいないな。愛の反対で無関心なだけだ。

 

  亥之助隊士は、生き別れた母親に再会できて良かったな。

 

   朔太郎様の眷属になられた、人間から人狼に変生した元人間の琴葉様。

 

  優しい方で、良く働き良く笑う方だ。

 

   で、朔太郎様は亥之助隊士に人狼化を熱心に勧めている。…背伸びをして大人ぶりたい幼児が、乳母を乳兄弟に返すよの図式に見える。

 

   若様も亥之助も両方愛でますな琴葉様。

 

   人狼化して今よりも強くなれる!なりたいっ。でも人間として強く、最強になりたいんだよっ。苦悩する亥之助隊士。

 

   ほのぼの劇場だ。(*´ω`*)

 

   朔太郎は純血種ではないので、人狼化させても不老不死にはできません。不老長寿にしかできません。基本、人狼化させた人狼には絶対服従ですし、肉体強化と回復力再生力が人狼になるくらいです。犬や狼に無茶苦茶好かれます。だから亥之助はよく考えてから受け入れてくれると嬉しいです。

 

   女性陣と犬様の下僕達の目の色が変わって怖かったです。

 

 

 

 

 





  お話しをきいて、決心が揺らいでおります。産屋敷当主。


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