人狼の少年が鬼退治を手伝う話。   作:黄色いうちわ

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  私の朔太郎は優しい子だよ。





 朔太郎少年はプライドをくしゃっとされた。

 

 

    朱月朔太郎は恥ずかしかった。

 

   倒した鬼に八つ当たりをしてやりたいくらいだった。嗅いだ臭いを頼りに鬼の長の首を噛みちぎってやりたいくらいに八つ当たりをしたかった。

 

    旅立った後の、最初の若様の誕生日に必着する勢いでかつロマンチックな出来事をして若様への報告としたかった。東京で珍しいお土産を一緒に贈ろうとか。とにかくロマンチックでありたかった。 

 

 

    鬼滅に従事する人間の本気が、必死さが怖かった。

 

    足止めをしようとする剣士殿の必死さと少年のすがる眼差しが、しろの哀切な懇願に足を止めている時に、彼等はやって来た。

 

   明らかに、彼等の群れの長であろう人とその護衛である群れの部隊長達が。

 

   「に、人間っ。あなた達は自分達の長をなんで連れてきたっ。病人いや呪詛を受けた人間をこんな場所に連れてくるなんてっ。悲しい匂いを出すくらいなら全力で止めるべきだっ。飲めっ。《貴方を助けたい。番に同胞にならずとも、私は貴方の友となろう。友の身に巣食う悪意と病魔よ私の血により浄化されよ》」

 

   指先を切って、人間の長の口に無理矢理突っ込んだ。

 

   「人狼の血は、人狼自ら与えれば回復薬になる。誓句を唱えたから人狼化はしませんし俺の妻になることもありません。だから飲んで下さい」

 

   人間の長が、確かに嚥下したのを確認してから指を抜いた。

 

   「…ああ、本当に回復薬ですね。体がとても楽になりました」

 

   「…お、御屋形さまっ。良かったっ」

 

   「呪いも軽くなりました。ありがとうございます。朱月朔太郎殿。正式に貴方の力を借りたいのですが、私を貴方の群れの長に会わせて頂けないでしょうか」

 

   「お願いします。あなた達の、人狼の力を貸して下さい」

 

   「頼むっ。御屋形さまを助けてくれた力で俺の弟も助けてくれっ。あの馬鹿は強くなりたいからって鬼の肉を食っちまったんだ。俺のたった一人の家族なんだよっ」

 

   「お願いだ。僕も兄さんを鬼に殺されたっ。鬼を退治する力になってくださいっ」

 

   「人狼の里に派手に利益を与えると約束する。お前の狼としての姿を派手にもふもふさせろ下さいお願い致します」

 

   おい、最後。なんだお前は忍びか。いろんな匂いがしているから却下だ却下。

 

   「…町に行って、長に手紙を書く。人間の長、あんたも書け。一緒に送って、長からお手伝いを認められたら手伝う。俺に頼むよりは、正式に討伐依頼を出せば良いと思うぞ。人間の足では、俺の村には行けないくらいに遠いし険しい道程だ。忍びでギリギリ行けるか行けないかだ」

 

   「あのう、私もおっきなワンワンみたいです!」

 

   ふわふわな匂いの雌にプライドをくしゃっとされた。ワンワン。ワンワンか。ワンワンね……。

 

 

   俺がこんな辱しめを受けたのは、全部鬼のせいだ。おのれ鬼めっ。絶対に許さんっ。

 

 

   「…あのう、人狼の貴方は本当に人間を食べないのですか?」

 

   「姉さんっ。失礼ですよ、御屋形さまの恩人に対してっ。失礼いたしました」

 

   「はい食べませんよ。ワンワンですからねワンワン。ワンワンはワンワンと人の食べ物を食べています。ただ、たくさん食べますから、雇う場合はワンワンにお給料とご飯をたくさんと暖かい毛布を与えて下さいねワンワン」

 

   ふわふわな匂いの雌はきゃあきゃあとはしゃいでいる。

 

   俺に俺も見たいぞお前の狼の姿と目で語っている無口な人間。旨そうな蛇が逃げようとしているが止めなくていいのか?なんだ忍び。指文字や忍びの暗号でもふもふさせろ下さいと言っても許可しないからな。

 

   「それでは、私達と共に私の屋敷に来ていただけますか?」

 

   「ああ、わかった。貴方の子供達にも血を与えよう。狩りをするのに、後顧の憂いがあってはだめだからな。ああ、剣士殿にちゃんと報酬を払えよ。あと坊っちゃんの身内を探してくれ。出来ればしろと一緒に暮らせるように便宜を図ってほしい」

 

   「ワンワンは優しいねぇ。ちっちゃいのにすごいわ」

 

   若様、助けて下さいっ。朱月朔太郎の最大のピンチですっ。心の鎧に皹が入りましたっ。

 

   「…わ、ワンワンはながくいきているからねっ。人間の子供に見られていても、無惨の生まれる前からいきているからねっ。あのガキは俺達誇り高き人狼に向かって下僕になれなんて寝言をほざいたから一族の子供達全員で狩りをしてボロボロにしたこともあ、あるんだからねっ。成獣になれるまであとたった千年なんだからねっ」

 

   他の人間は驚いてくれたのに、ふわふわな匂いの雌だけはキョトンとしている。直ぐに笑顔になってワンワンすごいねぇと言った。

 

    力がもりもりと抜けていって、変化がとけて本性に本体に戻った。

 

    「「「「「「「もふもふたあいいいいむうううっ!!!!!」」」」」」」

 

    七人の男女にもみくちゃにされたのが、朔太郎の初日の最後の記憶でございます。

 

 






   や、やつらがきばをむいてきたっΣ( ̄ロ ̄lll)
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