人狼の少年が鬼退治を手伝う話。   作:黄色いうちわ

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  お兄ちゃんの心、弟知らず。



 朔太郎少年と会う前の柱様達。

 

 

   「ジンロースケダチ!オニシュンサツ!」

 

   「ホウコク!ハシラセットクモトム!」

 

   その声に、一縷の希望を見いだした。

 

   …ジンローが正しく人狼ならば、俺の差し出せる全てを差し出して血を分けてもらう。その血を、たった一人生き残ってくれた弟に飲ませたい。憎い鬼の様に異形化してしまった身を人に戻せてやれる。

 

   人間になったあいつに土下座をして隊士を止めてもらう。普通に生活をして普通に恋をして普通に結婚をして、可愛い姪や甥を俺に見せてくれ。亡くしてしまったお袋や弟妹もそれを喜んでくれる。

 

   「「「お舘様っ。俺に(派手に)行かせて下さいっ。」」」

 

   …声が重なった(ハモった)

 

   「人狼を派手にもふもふしたいっ。忍犬の教育に力を貸してもらいたい」

 

   「大きな犬。背中に乗って走ってもらうのは誰しも叶えたい夢ですよね」

 

   同僚の平和さにムカついた。必死さが一番の俺に行かせろよ。こっちは弟の命と平和な人生がかかっているんだよっ。可愛い弟と可愛い義妹に可愛い姪っ子と可愛い甥っ子に貢ぐための俺の貯金を無駄にさせんなよっ。

 

   「…人狼。お伽噺ではなくて実在したのか。会ってみたいな」

 

   こいつは《弟》だから許可する。

 

   「鮭大根食べるかな?あげたらもふもふさせてくれるかな?」

 

 

   待て。人狼様に何を捧げる気だ。お前の好物と人狼様の好物が一致するわけないだろう。だが、あの言葉足らずが喋ったし興味を持った。流石です人狼様。お舘様、ご指示にしたがいますが、何卒、俺に人狼様に会う事をお許し下さいっ。

 

   「私も興味があります。おっきなワンワンっ!」

 

   …恋柱さんや、人狼様は不思議で尊い存在でな。おっきなワンワンとはちゃうねんで。

 

   「鬼と同じでも太陽で焼かれない。鬼以上の身体能力に生命力。鬼を倒す為に多大な犠牲を払う我らには無理ですね。祭って山に還って頂くしかありませんな」

 

   …岩柱さんや、正しいねん。あんたが一番正しいねん。でも、頼みますから弟を治すだけの血液をもらってからにして下さい。頼んます。

 

   「狼と人のどちらにでもなれるのか。素晴らしいなっ。ぜひとも、俺がなぜ犬と猫から嫌われてしまうのかを狼としてからの意見を聞きたいものだ」

 

   しつこいしあつくるしいしねっけつかんでぐいぐいせまってくるからだよ。犬は基本的に人間大好きな生き物だ。その犬に嫌われてはいねーからちょっと落ち着いて可愛がれ。

 

 

 

    「いいえっ。人狼様には何とかして私達の味方に協力者になってもらうべきです。伝承されてきた治癒の薬、人狼様の血液を分けてもらって新薬を造るべきです。私達の怪我が、戦闘中でも瞬時に治ればその分たくさんの鬼を倒せて人間を救えます。風柱の弟さんだって治せます。正直、何度鬼と間違えて切りかかって意識不明の重症にしてしまい証拠隠滅で蝶屋敷に軟禁いえ強制入院させて治療したかいえなんでもありません」

 

   蟲、表に出て死闘をしよう。つーか、殺すっ。

 

   「本当に人間を食べないのですか?鬼よりも強いのに。人狼となら解りあえるのでしょうか?人間を食べない優しい化生なら、頼みこめば力を貸してくれますよね?」

 

   …花が蟲の分の優しさを吸収して先にうまれたんだな。ははっ。うちと逆だな。あいつ優しいから俺が置いてきたものを持って来ちまったんだ。

 

 

   「私が直に人狼殿にお会いしよう。皆、私と一緒に来てくれないか?鬼を憎む私達全員で誠意を持って懇願をしたい。誠意には誠意を返してくれる種だ。子供達、私もね、君達と外を歩きたいんだ。伝説上の神獣の末裔に会ってみたい」

 

   お舘様のお言葉に、俺達は従った。

 

   お屋敷を離れる距離が伸びれば伸びるほど、お舘様の具合は悪くなった。旅の中止を進言した俺達に、これが最初で最後の旅だ。君達が見る世界が見れて嬉しいんだよ。と笑ってくれた。

 

   人狼様、お願いします。助けて下さいっ。この優しい人を、俺達の大切な父を助けて下さい。

 

 

   小さい子どもと白い犬を宥めている幼児と少年なら幼児よりの方が人狼様なのだろうか?

 

   あ、だめだ。こんなちっこい方に血を分けてくれだなんて鬼舞辻無惨クラスの外道になっちまう。俺は自分の身勝手さを嫌悪した。

 

   「「「「「チッ。おっきなワンワン・狼じゃないのか」」」」」

 

   …俺よりも身勝手なやつらがいた。

 

   だけど、人狼様は慈悲深かった。

 

   怒りながらも、ご自分の指を噛みちぎると、血の滴る指先をお舘様の口に突っ込んだのだ。

 

         奇跡はおきた。

 

   お舘様の顔色は、健康的な色に変わり、皮膚は正常の人間のそれに変わった。身に絡み付く鬼の気配が薄れたのだ。

 

   泣いた。泣いたが、恥を承知で嘆願した。

 

   交渉の末に、長からの許可が出たらお手伝いをしてくださることになった。

 

   恋柱ェ。いいか、幼児でもな男には男には、プライドが誇りがあるんだ。それをお前ときたら踏みにじってダンスを踊りやがって。

 

   ま、まあそのだな。もふもふたあいいいいむうううは最高だった。控え目にいって最の高だった。おっきなワンワンは正義だ。俺の弟の次にだけどな。

 





   いや、止めるか助けるかをして下さいよ。つーか、結局もふるんかいっ。by朔太郎ワンワン。
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