人狼の少年が鬼退治を手伝う話。   作:黄色いうちわ

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  ワンワンの御世話係りになりたいのに反対されちゃった。


 朔太郎少年はお手紙を書いた。

 

 

  拝啓  紅葉様

 

  旅に出て初日で心がくしゃっとされた朔太郎です。ふわふわとした匂いの雌は、けして悪い人間ではないのです。

 

  朔太郎に対する悪意の匂いは欠片もしません。

 

  …そう、悲しむべき事にあの雌は、真実朔太郎をちっちゃいワンワンだと思っているのです。

 

  本性であり本体である狼の姿になって、背中に乗せて走ってやったとしても、恋柱という名前の雌は大きな姿にもなれてワンワンはすごいねぇと笑いながら言いました。朔太郎は思いました。この雌には逆らうまいと。

 

  あれです。紅葉様の姉上である桜様と同じ生き物なのです。桜様と同じであるなら、朔太郎に勝てるわけはないのです。

 

  あの恋柱は、とてもたくさんのご飯を食べます。里の大人達と同じくらいに、いえ、里一番の大食漢の巌勇さんと同じくらいに食べます。ぶっちゃけ負けました。そして、『ワンワンはたくさん食べると言ったのに食べないねぇ。おおきくなれないよ』と言いました。朔太郎は耐えきれずに泣きました。なぜ、この雌は朔太郎の将来性を全力で完膚なきまでに踏みにじるのでしょうか?しかも悪意なき善意と心配でっ。

 

  「恋柱、人狼様は育ち盛りになる前だ。俺だって今の人狼様と同じくらいの時は少食だった」

 

  「幼児としては食べていらっしゃる」

 

  「鮭大根、美味いからどうぞ」

 

  上から風柱、岩柱、水柱です。優しいよい人間です。鮭大根は美味しかったです。泣きながら食べたら眠くなってしまったので、墜落睡眠をしてしまいました。

 

  こんな雄の気持ちを理解してくれない雌ですが、番、嫁にしたいと望む雄がいるのです。蛇柱がそうです。蛇の一途な恋心と献身的な愛に気づかぬのです。そうして恋がしたいと言うのです。恋をされているのと恋をしたいのとは違うのでしょうか?恋愛とはなんなのでしょうか?成獣になれたらわかるのでしょうか?

 

  そうそう、満月の夜に改めて産屋敷燿哉殿と御家族に、朔太郎の血を飲んでもらいました。これで完全に憂いはなくなりました。全員百まで生きられますね。

 

  紅葉様や桜様の高貴な純血種の血ならもっと生きられますが、それを優しく真面目な人間は望みませんからね。愚かな権力者は望みますが。…愛する者と、同種と生きる時間を変えてしまっても生きたいのでしょうか?それだったら人狼化をして同族になった方が悲しくないと思うのですが、権力者は人のままでの長寿を望みますね。

 

 

  権力者といえば、産屋敷燿哉殿は素晴らしい御仁です。

 

  産屋敷燿哉殿と御子息の二人は、健康になれたからと言って、剣の鍛練と体力作りを始めました。朔太郎はこのお二人をすごいと思いました。

 

  だってこのお二人と御息女達は、呪いと病魔に冒されて生きてきたのです。様々なものを諦めて、手放して生きてきたのです。そして、人の為に生きてきたのです。

 

   健康になれたのだから、少しぐらいは遊んだって良いし、美味しいものを食べたって旅行に行ってもいいではありませんか。好きな事もしたいではありませんか。手放してしまったものを取り戻したって許される。

 

   鬼殺隊の皆もそれを望み願っている。

 

   それなのに、このお二人は、剣の鍛練と体力作りをし始めたのです。皆が必死に止めていました。でも、お二人は言うのです。私達も皆に続くからねと。当然の事ですが、筋肉痛になりました。それでも嬉しそうに笑っているのです。これを積み重ねて皆は強くなったのだねと。

 

 

   御息女達と御内儀は術者として生きるために陰陽道を学び始めました。

 

   そんな当主一家を見て奮い起たない者はいません。戦えない鬼殺隊員や藤屋敷に勤める人々もそうなのです。そんな人々を見て朔太郎は愛しいと思いました。

   

  

   鬼舞辻無惨、あの無礼者も元を辿れば人間でしたね。人間は鬼になり、鬼は人に戻る事を願う。人狼化した人間が元に戻る事を願わないのは、番ができたからでしょうか。松子おばさんの旦那さんはいつも幸せそうに見えます。人狼化して真に幸せだと思っているのでしょうか。幸せであってほしいです。

 

 

  人狼の唯一の弱点を教えたら、人間達は驚いていました。伴侶、番、仲良しの友人や家族と群れの仲間の死、一族の群れからはぐれてしまう事。そんなくらいでと言いましたが、朔太郎達にとってはそれが一番の苦しみで悲しみなのですが。まだまだ相互理解の道は険しいです。またお手紙を書きます。

 

 

   追伸 納豆はあまり無理をなさらないで下さい。紅葉様、納豆を食べて具合が悪くなってしまうのは体質的に合わないのかもしれないとしのぶが教えてくれました。

 

         敬具  朱月朔太郎。

 

 

   手紙を何度も書き直して、やっと書き終えた。書けやしない、燿哉殿に御息女とのゆ、結納を考えてほしいと言われてしまったなんて。無理だ。書けやしないっ。若様の言っていらした《ロリコンに明日を生きる資格はない。見つけたら食い殺す》に触れてしまう気がする。ロリコンって幼女愛だよな。でもって御息女どころか燿哉殿よりも俺はずっと年上。燿哉殿、現実を見てくれ。

 

 

 

 

   しかし、音柱は豪気だよな。俺は結納の話が出ただけであわてふためいてしまったのに、かの御仁は三人も番が嫁がいる。

 

   獅子の血でも引いているのか?

 

   あ、若様へのお手紙に俺の仕事内容を書いていなかったな。次にはちゃんと書こう。

 

   さてと、今日も頑張って鬼を生け捕りにして山に放り込んできましょうね。つーか、こんな簡単なお使いでお金をもらっていいのかな?

 

 

 





   お前が御世話係?させねぇな、させねぇよ。男性の柱達。
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