人狼の少年が鬼退治を手伝う話。   作:黄色いうちわ

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  ご立腹なワンワン。







 朔太郎少年は満月の夜に感謝された。

 

 

   人狼様、朱月朔太郎さんは優しい方だ。

 

  お館様や柱様達だけでなく、俺達新入隊士の傷も癒してくださる。

 

  俺にとっては、命の恩人でもある。

 

  豪商が、愛妾が亡くなった為に引き取る事になった息子を東京に呼ぶ事にした。鬼が出る事を懸念して護衛に鬼殺隊を雇った。お館様が断れないくらいに力のある豪商だった。

 

   案の定、鬼は出た。お付きは食われ、同僚は逃げた。逃げられたのかはわからない。たぶん死んでしまったと思う。

 

   幼い子供と、子供を守る様に吼える犬。死を覚悟しながらも子供と犬だけは守ってあげたかった。

 

   家族を殺されて、一人だけ生き延びた日に、神様に祈る事はやめた。だけど、奇跡はおきた。

 

   背に沢山の荷物を背負った幼児。

 

   朱月朔太郎さんだった。

 

   鬼が踏みにじった人間の血肉に眉をしかめながら歩いてきた。

 

   鬼が同輩と言っていたので、俺は絶望した。

 

   犬がさらに吼えて、ボロボロの毛布やおもちゃのボールを荷物から咥えてきていた。

 

   朔太郎さんは、鬼を瞬殺した。

 

   そして、俺の傷の手当てをしてくれた。守れなかった人々の埋葬を手伝ってくれた。

 

   「鬼殺隊。そうですか、鬼舞辻無惨を祖とする鬼を殺す隊ですか。いいですね、頑張って下さい。あ、そうだこの余った塗り薬と増血剤を差し上げましょう。うちの村の秘薬ですから、良く効きますよ。なんだったら売ってもいいです。貴方は恐怖に負けなかった。幼い子供の命を守った。眷属たる犬を守ってくれたお礼です」

 

 

   効き目は、我が身がよくわかっていた。この幼い人狼様の強さもわかっていた。だからすがった。自分を、自分達人間を助けて下さいと。お館様と柱様達、同士の傷と呪いを解いて下さいと懇願した。

 

   「じんろうさま、お兄ちゃんのおねがいをきいてあげてくださいっ。おねがいします」

 

 

   「ワンワン!ワンワン!」

 

   一番に効いたのは犬の鳴き声だと思う。だけど、人狼様の足止めに俺は成功した。柱様方が間に合ってくれた。お体の悪いお館様までもが一緒にいらっしゃったのには驚いてしまった。

 

   そうして俺は、二度めの奇跡を見た。

 

   《人狼様の血肉には神仏のご加護がある》

 

   言い伝えは本当だった。俺達の大切な《尊父》を救ってくれた。

 

   実弟嫌いだと思っていた風柱様が、実は真逆だった事にも驚いた。なんだか時代を先取りし過ぎているような。(後のツンデレ・ブラコンである)

 

   そして、恋柱様の会心の一撃っ(クリティカルヒット)俺の、いや俺達の恩人恩狼に大きな傷(主にこころに)を与えてしまったのだ。

 

   おっきなワンワンのもふもふの毛皮は正義だ。もふもふたいむは魅力的だった。ぬこさまの下僕だけど癒された。柱様方の満面笑顔という貴重な物も見れて幸せだった。

 

 

          ※※※

 

   そうして、今日も俺は、俺達は朔太郎様に命を救われた。

 

   壊滅的危機に駆けつけてくれた。そうして鬼の首に噛みつき、鬼を引き倒してそのまま走り去ったのだ。そう、藤襲山の方角へと。

 

   「やめろおおおおなんだこの馬鹿デカイ犬はあああぁぁぁ……」

 

   小さくなり聞こえなくなった鬼の悲痛な声に、ちょっとだけ同情した。お前は俺達鬼殺隊の入隊最終試験の踏み台になるんだよ。それか人狼様のご機嫌を損ねた場合の八つ当たり対象だ(サンドバッグ)。鬼舞辻無惨をあの方呼びしてどれくらい血をもらったかなんて自慢するなよ?一発で首が体とサヨナラだからな。

 

   朔太郎様、左手を噛みちぎって食べたらしいけど、人狼だから鬼にはならないのか。…今、現存している鬼全部より多くの血を得たんだな。

 

   いったい何をどうしたら、あの優しい朔太郎様にあんなにも毛嫌いされてしまうのやら。

 

 

   「人狼様っ。ありがとうございますっ!」

 

   「た、助かったあ~」

 

   「おいっ!傷薬が落ちているぞっ。手当てを早くするんだっ」

 

   「カステラまで落ちているっ!夜警の俺達に差し入れに来てくださったんだな。ありがとうございますっ」

 

   「あの鬼、藤襲山に放り込まれればいいな。なんか朔太郎様の猟の練習素材にされそうだ。お気に入りの三津屋に手ぇだされたら怒るだろ」

 

   「「「あっ!ちょっと鬼が哀れでざまぁだ」」」

 

   「お気に入りのって俺がか?」

 

   「気づいていなかったのか?お前は人狼様が最初にあった人間だぞ。そりゃあ、気にするだろ」

 

   「俺が落ち込んでいたら背中に乗せてくれた。その時に《三津屋は元気にしていますか?》って聞いてきたぞ。ちょっとお前が羨ましい」

 

   今日はおっかない目にあって死を覚悟したけど、最後にすごく幸せな気持ちになれた。

 

 

          ※※※

 

 

   満月の日になった。力が湧いてくるのがわかる。

 

   産屋敷燿哉殿の執務室に向かった。

 

   執務室の前に座っていた柱が俺に気づいた。たしか、水の義勇だ。そうだ、こいつにお使いをしてもらおう。

 

   「人狼様、どうしましたか?お館様、人狼様がお出でになられました」

 

   「いらっしゃいませ、朔太郎殿。お入り下さい」

 

   「失礼する」

 

   執務室に入室した。退室しようとする義勇を俺の隣に座らせた。

 

   「今日は満月だから。燿哉殿達の呪いを完全に解こうと思う。柱達と隊士の怪我も治せる。岩に光を戻せるし風の傷を消せる。風の弟の中にやどった鬼も消せる。三人と、いや柱達と隊士に伝えてきてほしい」

 

   「わ、わかった!ありがとう朔太郎殿っ。御前失礼いたします!」

 

   「呪いをこれ以上に解けるのですか?」

 

   「解けます。今日は満月ですから。完全にあの無礼者とはお別れです。寿命もね三十なんて記録…百まで生きれます。俺の血ではその程度で申し訳ない…泣くほど不満ですか?そ、そうだ若様に頼めばもっと」

 

   繋げたかった言葉は言葉にはならなかった。

 

   泣いている燿哉殿に抱き締められたからだ。

 

   「ありがとうございますっ。そんなにも永く生きられるなんてっ。私の子供達が生きられる。嬉しいっ。ありがとうございます…」

 

   泣き止んでほしくて背中を撫でた。

 

   夜、綺麗な満月になったから、血を飲ませた。呪いが完全に解けた当主一家は泣いた。傷が消えた隊士達が喜んでいた。雌が泣いているのが嬉し泣きとわかっていても胸が痛かった。岩と風に抱き締められて苦しかった。ちなみに風の弟は今回も逃げた。おれのちはまずくないよ?( ´△`)

 

 





  だって、あの兄貴が様付き呼びして敬語で喋っている化物の血なんて怖くて飲めねぇよっ。

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