日菜さんの勢いに任せた合同文化祭の提案から2週間が経った。あれから俺も花音さんもハロハピの練習がない時は劇の練習に励んだりしていた。千聖さんの時間がある時は千聖さんの指導の下演技のいろはなどを教えてもらったりした。演技に関しては俺と花音さんは素人に近いので天才子役だった千聖さんに教えてもらうことは『水を得た魚』に近かった。花音さんにとっては初めてのヒロイン役だったとのことなのでこれは何としても花音さんにとっての晴れ舞台にしたいと思っていた。そんな時・・・
11月23日
【午前8時:2ーA】
宥凪「おはようございます千聖さん」
千聖「あら、おはよう宥凪くん。今日は一人なのね。花音はどうしたの?」
宥凪「それが…花音さん、風邪をひいちゃったみたいなんです。昨日は俺がバイトのシフトに夜遅くまで入ってて一緒に練習ができなかったので花音さんに聞いてみたら夜寝るまでずっと一人で台本を読みなおしたりしていたみたいで、今日体が重いって言っていたので熱を測ったところ38度も熱があったらしく今日は学校と劇の個人練習は休むみたいです」
千聖「そう…花音は頑張り屋だから一人で頑張っていたのね。」
宥凪「はい、だから今日は花音さんのお見舞いに行ってあげようって思ってますけど千聖さんはどうしますか?」
千聖「今日は仕事もないから私も一緒に行こうかしら。」
宥凪「すみません、お時間を取らせてしまって。」
千聖「いいのよ。花音は私の親友だからお見舞いに行かないと」
宥凪「それじゃあ放課後にゼリーとか簡単に食べれるものを買って花音さんの家に行きましょうか。」
千聖「ええ。一日も早く花音には元気になってもらってまた3人で劇の練習もしたいもの。」
宥凪「あ、そうでした千聖さん。これ・・・」
そう言って俺は千聖さんに一封の封筒を渡した
千聖「これは?」
宥凪「前に行っていたことをまだ花音さんに黙ったままなので…俺がこっちからいなくなってから花音さんが悲しんでいたら花音さんに渡してあげてください。もちろん中身は見たらダメですよ」
千聖「わかったわ、大事に預かっておくわね。」
宥凪「何から何まですみません千聖さん…花音さんに見つからないように頑張ってください」
千聖「ええ。宥凪くんもしっかりね」
などと話していると先生が入ってきてその日の午前中の授業は終わって昼休みになった
【昼休み:屋上】
彩「そっかぁ…花音ちゃん、今日は風邪で学校休んでるんだね…」
宥凪「はい、最近は一人でも劇の練習をしていたみたいなのでその無理が重なった、という感じですね…」
彩「花音ちゃん、大丈夫かな…?もう文化祭まで一週間ないよね?」
千聖「そうね。もし花音が文化祭までに復帰できなかったら代役として私が出ないといけなくなるから花音には早く戻ってきてほしいわね」
彩「え?今回の劇のヒロインって花音ちゃんなの?」
宥凪「あれ、言ってませんでしたっけ?今回の劇は俺が主人公で花音さんがヒロインなんですよ」
彩「え!?そうなの千聖ちゃん!?てっきり千聖ちゃんが主人公だとばかり…」
千聖「彩ちゃんは小道具担当だったから知らないのも無理はなかったわね。私は劇の役者っていってもセリフは少ないけど」
彩「そう言えば千聖ちゃん、時間があったらこっちを手伝ってくれてたね…」
千聖「ええ。今回はあの二人が主役だもの。」
彩「それで二人とも、今日は花音ちゃんのお見舞いに行くの?」
宥凪「はい。もしかしたら俺たちの知らないところでまた無茶してるかもしれませんし、今日は休ませないといけませんからね…」
彩「それだったら、私もお邪魔していいかな?」
宥凪「彩さんもですか?俺は別に構いませんが、千聖さんはどうですか?」
千聖「そこまで大所帯にならなければいいと思うわ。でもあまり病人に前で騒がしくしちゃだめよ?」
彩「わ、わかってるよー!」
宥凪「それじゃあ帰りはコンビニよりスーパーとかに寄ったほうがいいですね。コンビニだとモカとかリサさんに出くわす可能性があるので」
彩「そっか、リサちゃんはコンビニでバイトしてるから変に勘付かれるかもしれないんだね?」
宥凪「そういうことです。そろそろ昼休みが終わるのでまた放課後ですね」
彩「うん!校門で待ってるね!」
そう言っていると昼休みの終わるチャイムが聞こえて昼は解散した。
【放課後:校門前】
宥凪「すみません彩さん千聖さん。日直の仕事が長引いちゃって…」
千聖「今日は花音がいないから一人でやっていたわね。私は手伝ってもよかったのだけれど宥凪くんが頑張っているところを見ると加勢ができなくなっていたわ」
宥凪「いいんですよ、今日はそんなに日直の仕事はなかったので」
彩「それよりも早く行こうよ!早くしないと売り切れちゃうかもしれないし…」
宥凪「そうですね、早く買うものを買って花音さんのお見舞いに行きましょう」
俺たちはスーパーへと足を進めた
【スーパー】
宥凪「さて、と・・・何を買いましょうか。果物ゼリーとかお粥に入れるものとかでしょうけどお粥は作ったことがないのでどちらかお粥を作ったことはありますか?」
彩「私は友達が風邪をひいたことがなかったから作ったことはないなぁ…千聖ちゃんは?」
千聖「私は小腹が空いたときとか夕食の時に食べたりするから作り方は知ってるわよ」
宥凪「ならお粥の方は千聖さんに任せて俺たちは花音さんが食べれる果物ゼリーとか少食を買いに行きますか」
彩「うん、それじゃあ千聖ちゃんまた後でね」
千聖「ええ、そっちも気をつけてね。特に宥凪くんは浮気しちゃダメよ?」
彩「え、え?どういうこと?」
宥凪「後で話しますからとりあえず買いに行きましょうか彩さん」
彩「ま、待ってよ海月くん!」
俺たちは一旦分かれ、彩さんと一緒にスーパー内を見て回った…のだが
彩「ねえ海月くん、さっき千聖ちゃんが言ってた『浮気しちゃダメ』ってどういうこと?」
宥凪「ああ、そのことですか…実は、俺と花音さんは付き合ってるんっですよ。といってもまだ付き合い始めて3ヶ月なんですが」
彩「えぇっ!?バイトでもそんな素振り見せてなかったよね!?」
宥凪「あんまりベタベタしてると周りから気を遣われますしね。それに付き合ってるっていっても最近は花音さんの方がハロハピの練習で忙しいことが多いのでお出かけとかはできてませんが」
彩「そっかぁ…おめでとう、海月くん!」
宥凪「ありがとうございます彩さん。彩さん、実はこのことは花音さんにはまだ言ってないんですが…」
彩「何かあったの?」
宥凪「実は…」
俺は千聖さんに話したように先々週にあったことをそのまま伝えた
彩「そんな…宥凪くんはどうするの?」
宥凪「…俺は東京を離れようと思っています。」
彩「どうして花音ちゃんには黙ってるの?」
宥凪「…花音さんに心配の種を増やしたくないんです。きっとこのことを話したら花音さんは俺についてくるって言いだすと思いますし、何より俺の子供のころからの夢だったんです。だから…」
彩「・・・海月くん」
宥凪「さて、そろそろ行きましょうか。一応俺たちの分も買っておきましたし」
彩「み、海月くん待ってよー!」
そう言って俺たちは千聖さんと合流してから花音さんの家に向かった
【松原家前】
ピンポーン
花音「はーい・・・あ、千聖ちゃんと彩ちゃん、それに宥凪くん・・・?どうしたの?」
宥凪「どうしたもこうしたもありませんよ。花音さんが風邪を引いたっていうのでお見舞いに来たんです。」
千聖「ほら、病人は早く布団に寝てた方がいいわよ。今は大丈夫そうに見えるけ風邪がぶり返したら文化祭も何もないわよ」
彩「それじゃあお邪魔するね!お邪魔します!」
【花音の部屋】
花音「ごめんね宥凪くん、こんな大事な時に風邪ひいちゃって…」
宥凪「いいんですよ、まだ1週間も準備期間がありますしゆっくり風邪を治してまた劇の練習をしましょう。」
花音「うん…ところで彩ちゃんと千聖ちゃんは何をしてるの?」
宥凪「ああ、それは…」
千聖「お待たせ、二人とも。お粥を作っていたの」
彩「私は粉薬をゼリーに混ぜて飲みやすくしたんだ。」
花音「千聖ちゃんと彩ちゃん…ありがとう」
宥凪「それじゃあ俺は部屋の外にいますね。パジャマを着替えないといけないでしょうし着替えを除くなんて男のすることじゃないですし」
千聖「宥凪くんって変なところで紳士よね」
宥凪「俺だってこころに巻き込まれる以外は紳士ですよ…」
そう言って俺は一度花音さんの部屋から出て花音さんの気がwが終わったのを彩さんから教えてもらった時にまた花音さんの部屋に入った
宥凪「でもチャイムを鳴らした時に起きてきたところを見たのはよかったですね。少しは元気そうで」
花音「だって、初めての文化祭の劇で宥凪くんと一緒に舞台に立てるから早く風邪を治して練習に戻らないといけないから・・・」
千聖「初めての花音の晴れ舞台だから私も楽しみにしてるから早く治してまた戻ってきなさい」
花音「うん…」
彩「それじゃあ私は帰るね。風邪をうつされたらパスパレの仕事を休んじゃうかもしれないし・・・」
千聖「なら私も帰るわ。明日は放課後から仕事が入ってるの」
宥凪「なら俺も・・・」
千聖「宥凪くんは花音の側にいてあげてちょうだい。少しでも花音のことを支えてあげた方がいいわ」
宥凪「俺も今度の劇の主役なので風邪をうつされたら困るんですが・・・」
千聖「残 り な さ い ?」
宥凪「…はい」
千聖「それじゃあ私たちは帰るわね。花音、お大事に」
彩「またみんなで集まろうね花音ちゃん!」
そう言って彩さんと千聖さんは帰っていった
宥凪「…なんか千聖さんにうまく丸め込まれたような気がします」
花音「あはは・・・千聖ちゃんらしいっていうか・・・」
宥凪「花音さん、体調はどうですか?」
花音「まだ咳が時々出るけど、体は重くないよ。」
宥凪「でもまだ体調は悪い、ということですね?ほら、早く布団に入ってください。風邪が悪化しますよ」
花音「う、うん…」
俺がそう言うと花音さんは布団に入った
宥凪「あまり無茶しないでください花音さん。俺だって花音さんと一緒の舞台に立つことができてうれしいんですから。」
花音「えへへ、私も宥凪くんと一緒に劇を演じることができてうれしいんだ。来年もまた一緒に舞台に立てたら嬉しいなぁ…」
宥凪「そうですね。また一緒に舞台にたてたら・・・(来年…か。そうだったらよかったんだけど…そうなるかどうかは俺次第だ)」
花音「宥凪くん?どうかした?」
宥凪「いえ、大丈夫ですよ。」
花音「体調が悪いならもう帰ったほうが・・・」
宥凪「俺のことは俺が一番よくわかっていますから大丈夫です。心配してくれてありがとうございます花音さん。ただ…もうそろそろ帰ったほうがいいのには同意ですね。もう7時を回ろうとしてますし。また明日あいましょう花音さん」
花音「うん、またね宥凪くん」
俺は帰り際に一度部屋から出た際に作っておいたおにぎりを花音さんの部屋に置いていった。
宥凪「(来年また同じ舞台で…か。その願いは叶うのだろうか・・・いや、叶えたい。花音さんと一緒に。そしてできることなら・・・)」
いかがだったでしょうか?
文化祭前に風邪をひくのは誰だってきついものですよね…主はあまり風邪をひかない体質なので割と助かってますが疲れが人一倍蓄積されやすいのは悩みですがね…
それではここまで読んでくれてありがとうございました